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「最先端の研究者/クリエーターが描く未来像」9回シリーズ(その4)では、テクノロジーがもたらした人間の進化を探ります。飛行機やネットの誕生は、私たちに「距離」と「時間」の概念変化をもたらしました。では、次に訪れるのはどのような変化なのか? ぜひご覧ください!
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ICCサミット KYOTO 2017のプラチナ・スポンサーとして、IBM BlueHub(日本アイ・ビー・エム株式会社)様に本セッションをサポート頂きました。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18-21日 福岡市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2017年9月5〜7日開催
ICCサミット KYOTO 2017
Session 8B
最先端の研究者/クリエーターが描く未来像
Supported by IBM BlueHub
(スピーカー)
稲見 昌彦
東京大学先端科学技術研究センター 教授
博士(工学)
川原 圭博
東京大学 情報理工学系研究科
准教授
澤邊 芳明
株式会社ワントゥーテン
代表取締役社長
森本 典繁
日本アイ・ビー・エム株式会社
執行役員 研究開発担当
(モデレーター)
田川 欣哉
Takram
代表取締役
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最初の記事
1. 東大先端研・稲見教授が語る「人機一体のロボットシステム」とは?
1つ前の記事
3. 50年前の『少年サンデー』で描かれた“20年後の未来”はどれだけ実現したか
本編
田川 それでは、ワントゥーテンの澤邊さん、お願いします。
澤邊 芳明氏(以下、澤邊) よろしくお願いします、ワントゥーテンの澤邊です。
皆さんひどいんですよ、先週くらいに田川さんから、「スライドはあまり使いませんので」と皆にメールが送られて、スライドは使わないのだと思って持って来なかったんですよね(笑)。
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澤邊 芳明
株式会社ワントゥーテン
代表取締役社長
1973年、東京生まれ。京都工芸繊維大学卒業後、1997年にワントゥーテンデザインを創業。
京都・東京・シンガポール・上海を拠点とし、広告クリエイティブからプロトタイピング、ロボティクス、空間まで総合的にプロデュースするクリエイティブスタジオ「ワントゥーテン」を率いる。世界初のパラスポーツVRエンターテイメント「CYBER WHEEL(サイバーウィル)」を開発、ソフトバンク社が誇る世界初の感情認識パーソナルロボット「Pepper」の人工知能・感情認識と連携した会話エンジン開発なども行う。公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会アドバイザー、超人スポーツ協会理事など。
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(壇上笑)
「ワントゥーテン」で検索していただくとサイトがありますので、そちらをご覧いただければと思います。
あらゆる世界観をテクノロジーで実現する「1→10(ワントゥーテン)」
澤邊 一応ご説明しておくと、ワントゥーテンというのは、IoTとか広告クリエイティブ、ロボティクス、空間クリエイティブなどをやっている会社です。
出所:「ワントゥーテン」ウェブサイトより
IoTの分野では、サンスターの「G・U・M PLAY」という歯ブラシだったり、ワコムの感情認識ペンというのを発表したりしています。
▶G・U・M PLAY
ソフトバンクのペッパーの開発にも6年前から大きく関わっています。
空間クリエイティブについては、僕はオリンピック、パラリンピック組織委員会のアドバイザーをやっていまして、パラリンピックを特に盛り上げたいということで、サイバーシリーズという、「CYBER BOCCIA(サイバーボッチャ)」や、「CYBER WHEEL(サイバーウィル)」という車いす型のVRなどを発表しています。
サイバーボッチャは、ボッチャ(※)という競技をテクノロジーで拡張して、全国のバーなどにバースポーツとして広げていくという活動をしています。
最後に1つだけ、2016年にアイ・ビー・エムさんともお仕事をご一緒させていただきました。
これは後のSFの話ともつながってくるかと思いますので、映像をご紹介します。
▶ソードアート・オンライン ザ・ビギニング Sponsored by IBM 〜テクノロジーが拓く未来の可能性〜
世界観を実現するためのテクノロジーが大事なんですね。
これを伝えるために、このような大げさなものを日本科学未来館で展開したのですが、一瞬でスキャンして人体に入れて、仮想空間内で歩いたり、触ったり、4人が同時に敵を倒したりできます。
大変話題になり、関連のYouTube動画が7万個できて、「Oculus Rift」を作ったラッキー・パルマーからやらせてくれとメールが来たり、なかなか面白いプロジェクトでした。
これは『ソードアート・オンライン』というSFアニメで、映画化もされています。
2022年の物語で、「ナーヴギア」という、脳に直結して夢を見させる装置のようなものがあり、その装置が直結した状態で、サドンデスのゲームが繰り広げられます。
ゲームの中で死んでしまうと実際に死んでしまうという、そういう極限状態でどのように人々が生き残っていくかという物語なのですが、それを現代のテクノロジーで実現してみたというものでした。
田川 ありがとうございます。
稲見 これを実際に体験させていただきましたが、非常に感銘を受けましたね。
澤邊 よかったでしょう(笑)?
稲見 いや、よかったですよ。
物語を「見る」のではなくて、物語に「入れる」ように、ようやくできるようになったということに感銘を受けましたね。
田川 ワントゥーテンは、エンジニアの方とクリエーターの方と、ハイブリッドなチームで構成されているのですよね。
澤邊 そうですね。
田川 空間から、エンタメからいろいろやっていらっしゃるという感じですよね。
このように今日は、アカデミアから稲見さん、川原さん、日本アイ・ビー・エムで事業と研究の間をやっていらっしゃる森本さん、クリエイターという立場で澤邊さんに来ていただいています。
それでは、ここからディスカッションの本題に入っていきたいと思います。
先ほど森本さんからも歴史の話がありましたが、未来を考えるには過去から辿っていく必要があると思います。
僕は「テクノロジー」と言った時の切り口は4つ、「身体」、「環境」、「知能」、そして「人工物」だと考えています。
今日ここで話している未来というのは基本的には、人工物とか、人間が作るものと人間というものの関係の話なのだと思います。
いま4つに分類しましたが、身体と、道具(人工物)と環境と知能の観点から進化の歴史を整理できるのではないかと思います。
人間が石器時代くらいから今までどのように進化してきて、何が進化のトリガーになったのかということを、稲見先生に整理をしていただいてもよいでしょうか。
ヒトの進化の歴史からテクノロジーを考える
稲見 道具とヒトの関係性ということですよね。
スポーツなどをやっていても面白いのが、人間が霊長類の中で投てき能力が一番優れているというような話があります。
投てきが優れているということが何を意味しているかを考えると、そもそも石ころなどを道具として使う能力が非常に進歩しているのが我々人間だったという考え方もできます。
ただし道具とヒトの関係性というのは、今までは恐らく離散系だったと申しましょうか、不連続につながっていたかもしれません。
例えば、考える時もそうですね。
今までは、外側に投げて返ってきた答えを解析する。
ボールを投げて、ボールが返ってくるのを待つという感じでしたよね。
それが昔のコンピューター、つまり対話型コンピューターだったわけです。
ですが、今は連続的な状態自体を作ることができるようになりました。
人と、道具やコンピュータの両方をインテグレートしたシステムとしてとらえ始めたのがここ数十年のことであり、知能に関しても同様なインテグレーションが実現し始めているところかなというのが、ざっくりと思ったことです。
田川 他に何か、これが過去に、人間を飛躍的に進化させた、変えてきたということはありますか?
テクノロジーによる「距離と時間」の概念変化
日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員 研究開発担当 森本 典繁氏
森本 1つ、私なりのまとめを申し上げると、距離と時間ではないかと思っています。
先ほどの投てき能力もそうなのですが、いわゆる自分から離れたところのことを考えたり、想像できるという能力は非常に大きいと思うんですね。
棒で叩いたり、手で届く範囲のものではなくて、ずっと先のものを狙う。
そこから槍やピストルといった形で、どんどん遠くを目指すようになります。
そして飛行機に乗ったり、移動することによって、今の自分がいる場所でないところに行ったり、そのことを想像したり、そこに対して何か働きかけるということができるようになりました。
飛行機が出てくることによって世界は縮まり、その先にインターネットが出てくることによって、世界中がグッと縮まりました。
そういうことによって、空間的な距離だけでなくて、時間というものも縮まるし、概念というものも縮退していく、これが1つの進化なのかなと思っています。
先ほどから伺っていました話も、多分そこから先、宇宙に広がっていくものか、あるいは逆に人体の内側や、より複雑なものに入っていくというものでした。
今見たもの、直接見たものではないものまで想像したり、あるいは先ほどの仮想空間のように、空間と時間というものの概念がどんどん変わっていくというのが、私なりの軸で見た1つの考えです。
物欲が満たされると、ビジョナリーなものに惹かれる
澤邊 最近の持論なのですが、戦後すぐというのは物が足りていませんでしたよね。
だからカラーテレビが欲しいとか、車が欲しいとかという状態があって、50%くらいしか物に満たされてないとしても、残り50%を埋める豊富な物欲のようなものがあったからこそ、広告が機能していました。
「いつかはクラウン」という言葉にあったとおり、当時は「クラウンに乗りたい」という憧れが広告の訴求力でした。
皆が物が足りていないので、それを満たすためのソリューションが作られていったわけです。
そして、より安く、より早く、より便利にというように発展してきました。
でも21世紀に入って、僕らは物欲を満たすだけでは満足できないようになってきたように思います。
物については、我々は既に80%くらい満たされていて、残り20%を何で埋めるんだというようなことで皆悩んでいます。
会社に行っていてもこの20%は埋まらないし、じゃあボランティアをしてみようかなとか、地方創生をやってみようかな、英会話をしようかなとか、何かそういう方へどんどん進んでいます。
例えばイーロン・マスクが火星に宇宙船を飛ばすというのもすごく面白いですし、飛ばしたからといって別に火星から鉱物を取ってこようとか、実用性うんぬんの話ではない思うのですが、そういったものに惹かれます。
先ほど稲見先生や川原先生に見せていただいた技術なども、すぐに何かに役立つというよりも、何か面白いというか、ワクワクする、そこにフロンティアがある気がしています。
技術の革新・進歩が、ただ困るから解決しよう、便利にしよう、というのではないところに、今どんどん発展していっていると思います。
それが結構面白いのではないかなと、それがイノベーションなのではないかという気がしています。
田川 今の話を聞いていると、皆さんは人間がタッチできなかったすごく遠くとか、ものすごく細かい時間単位とかというところに到達できた時に、何か快感を覚えるのですかね。
イーロン・マスクもよく言いますが、前人未到のことであったり、森本さんが先ほどおっしゃった時間と空間と距離もそうです。
稲見さんや川原さんはどうお考えですか?
21世紀の前半は、情報エントロピーの時代?
稲見 今の移動の話で思ったのは、エントロピーという状態量のとらえ方の変化が非常に大きいのではないかということです。
つまり、熱力学的エントロピーから情報的エントロピーに移ってきたととらえています。
20世紀を含めエネルギーの時代には、移動とはエネルギーをかけてするものだったのが、今の時代では、テレプレゼンス、例えばテレビ会議のような情報技術によって代替できているのではないでしょうか。
つまり「動かす」にしても、物の世界を動かすことから、心をどう動かすかへシフトしています。
そして心を動かすのは実は情報エントロピーの貢献が大きい。
最近話題になっている量子コンピューターや、ナノテクなど、そういうものは実は熱力学的な世界と、情報の双方に関わる技術であり、そういったものが今一番話題になっています。
たぶん、「21世紀の前半までは情報エントロピーの時代だった」となるでしょう。
その後ナノテクのように熱力学的エントロピーと情報エントロピーがインテグレートされたところが発展してくるのかなと、お話をうかがっていて思いました。
田川 そのフレームワークで考えると、ICCサミット関連でビジネスをしている人たちは全員、情報エントロピーに対して向き合っているということですよね。
稲見 リアルテックなどが出てきたのも、科学とエントロピーの世界の話ですし、それを今度は情報的にどうアプローチしていくかとか、そういうところに進んで行くのかなという気もしました。
森本 多分それが均質に進むのではなくて、ところどころスポット的に進むから、そのギャップとギャップの間に、何か機会があるのかもしれません。
田川 ブレークスルーがあると、ポーンと非連続的に進むと。
森本 はい。
田川 川原さん、その辺で何かありますか?
川原 人間が面白いのは、ある道具を手にして使いこなせると分かった瞬間に、それが体の一部になり、当たり前になります。
5年、10年前には到底できなかったことができるようになり、それを当たり前に思って、さらに次のチャンスを狙っていこうという話になると思うんですね。
例えば、AIがまさにそのいい例だと思っています。
少し前までは画像1枚処理するのにパソコンなどで5分、10分かかった処理が一瞬でできるようになり、何万枚、何十万枚という画像を学習させられるようになったため、いろいろと高度な判断ができるようになりました。
特にコンピューター技術があてはまりますが、ある成果が当たり前に道具として使えるようになったことで、世界中にインターネットが広まり、非常に大きな影響力を持つようになりました。
ステップバイステップのちょっとした貢献であっても、人類全体として前人未到の段階に近づくために、科学者として貢献できているという感覚があります。
(続)
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続きは 5. “関節なしで動く”イモムシやナメクジはロボット工学の最前線? をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/本田 隼輝/尾形 佳靖/戸田 秀成/鈴木ファストアーベント 理恵
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