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「最先端の研究者/クリエーターが描く未来像」9回シリーズ(その8)では、テクノロジーにより死や老化が克服された未来を想像します。子孫を残すことが恋愛の本能的な背景であるならば、子孫を残す必要がない未来では「恋愛」はどのように形を変えるのか? ぜひご覧ください!
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ICCサミット KYOTO 2017のプラチナ・スポンサーとして、IBM BlueHub(日本アイ・ビー・エム株式会社)様に本セッションをサポート頂きました。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18日〜21日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをご覧ください。
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【登壇者情報】
2017年9月5〜7日開催
ICCサミット KYOTO 2017
Session 8B
最先端の研究者/クリエーターが描く未来像
Supported by IBM BlueHub
(スピーカー)
稲見 昌彦
東京大学先端科学技術研究センター 教授
博士(工学)
川原 圭博
東京大学 情報理工学系研究科
准教授
澤邊 芳明
株式会社ワントゥーテン
代表取締役社長
森本 典繁
日本アイ・ビー・エム株式会社
執行役員 研究開発担当
(モデレーター)
田川 欣哉
Takram
代表取締役
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最初の記事
1. 東大先端研・稲見教授が語る「人機一体のロボットシステム」とは?
1つ前の記事
7. 東大・稲見教授「2030年には『人型』という概念はなくなる。私はコップになっているかもしれない」
本編
田川 澤邊さん、今と2030年と決定的に変わっていることは何だと思いますか?
澤邊 僕は稲見先生の研究の話とかをよく面白いと思いながら聞いています。
先ほどの森本さんのお話にもありましたが、いろいろなハードルになっている時間とか、距離とか、そういったハードルがどんどん短縮されていって、効率が上がりますよね。
(写真左)株式会社ワントゥーテン 代表取締役社長 澤邊 芳明氏
そうすると脳みそがガンガン回転して、回転数が上がって、疲れますよね。
ずっと仕事をし続けることはできないし、ずっと効率のよい状態を継続することはできないし、遊びたくなります。
今、遊びたくなっている人が増えている気がしています。
すなわち、可処分時間の増加の中で余暇時間が増えていくと。
そこをどう使うかという段階に来ているように思います。
「トランスヒューマニズム」という概念がありますが、チップなどを体に埋めたりして、絶えず通信されている状態というのは、10年以内、もしくは2030年くらいには来ているだろうなと思っています。
▶編集注:トランスヒューマニズムとは、新しい科学技術を用い、人間の身体と認知能力を進化させ、人間の状況を前例の無い形で向上させようという思想。(Wikipediaより)
そうすると、絶えずクラウドやオンラインにつながりながらコミュニケーションを取っているわけです。
2030年には、恋愛の在り方が大きく変わる?
森本 そうしたら何が起きるのかということを考えると、コミュニケーションで一番負荷がかかったり、面倒くさかったりするのは「恋愛」ですよね。
僕は別に恋愛研究家ではないですけれど、自由に発言させていただきます。
日本アイ・ビー・エム株式会社 執行役員 研究開発担当 森本 典繁氏
ここに来て誰と結婚したらいいかよく分からなくなってきていますが、恋愛の在り方というのがここ10年くらいできっと大きく考え方が変わるんじゃないかと思います。
人工知能との恋愛みたいなのも、もしかしたら出てくるのかもしれません。本気でね。
ただその時に、ヒトは何をもって相手をヒトと認識して、恋愛対象として見ているのかというのが曖昧になってくるのではないでしょうか。
最近、LGBTが話題にあがることも多いですよね。
非常に大事な部分であって、弊社でも取り組まれていますし、そういうのは自然な流れだと思っています。
つまり、男と女だけではないレベルの恋愛も増えてきているし、人とメカとか、段々と変わってくるのではないかと思います。
死や老化の克服が、恋愛の概念を変える
田川 全然違う入り口からなんですけど、僕も今の話は結構そうだろうなと思っています。
人があまり死ななくなるのではないかな、という変化がその背景にあるんです。
なぜ恋愛をするのかというと、突き詰めて言えばそういう本能があるからですが、なぜその本能があるのかというと、人は死ぬので、自分が死なないうちに次につなげなければという生物学的な理由があるわけです。
では死ななくなった時に人間は生殖をしなければいけないのかという話がおそらくあって、そうすると恋愛は今とまったく違うものになるのではないでしょうか。
すべて死からの逆算なのかなとは思うんですよね。
澤邊 あと、アンチエイジングの技術が、きっとこの十数年で非常に進化するのではないかという考えがありますね。
田川 年齢が分からなくなる。
澤邊 そう。
田川 それは2030年に来ていそうですね。
澤邊 60歳でもピッチピチとかね。
そうした時に、一体誰と付き合っていくか。
澤邊 これは結構来る気がしますね。
田川 あるかもしれないですね。
澤邊 そうしたら年齢の差って何なのだろうとかね。
今は見た目の差で認識していますけれど、見た目に全く差がなかったら、経験の差になっていきますね。
田川 確かにそうですね、年齢の克服はかなりあり得る気がします。
稲見 それはもう、オンラインで起きていますよね。
小学生から説教されたりとか、そういう現象が起きています。
森本 ゴルフでも、シニアツアーの方が成績が良かったりするかもしれません。
田川 確かに。
時差なしで地球どこでも働ける「リモート日本」があればいい
田川 僕も、2030年に実現しているといいな、というのが1つだけあるのですが。
今、仕事場がロンドンと東京にあるので、どうしても時差があるんですよね。
テレプレゼンスのテクノロジーとかで距離と時間は解消できるのですが、一番最後に人間がやはり戦って勝てない相手の1つに「地球」というのがあるのではないのでしょうか。
地球が丸いがゆえにどうしても時差というものがあった時に、この時差の克服というのをテクノロジーの技術課題として設定し解ききった人というのは、多分この上なく儲かるだろうなと思います。
例えば北米の企業が日本に事業所を作った時に、時差なしで働けますよということは、今はできません。
一企業のなかで全世界中の社員が時差なしで働けますよということになれば、移民する必要も多分ほとんどなくなると思います。
この時差をどうやってなくすことができるかなと考えています。
全部デジタルスペースで暮らしていれば大丈夫かという話を一度妄想したことがあります。
1万人くらいが普通に住めるような、超巨大な体育館のような建物を日本の田舎かどこかにドカーンと作って、病院や学校もあるんです。
そこには人工太陽も設置されていて、完全にアメリカ時間で動いています、という環境を作る。
稲見 エンタープライズ号(※)みたいな。
▶編集注:「スタートレック」シリーズに登場する宇宙船。
田川 そうです。
そのような「リモート日本」みたいな環境をブラジルとかインドで作れば、移民の必要もなく、十分に人材を確保してそこで働けるのではないかということを思ったことがありました。
森本 それに近い話がありまして、実は弊社はインドにオペレーションがあります。
グローバル・デリバリーと呼んでいて、そこで多くのサービスを担当したり、お客さん対応をしたり、あるいはコールセンター業務を置いたりしているのですが、お客さんはアメリカにいます。
ですから、そこはおっしゃるように完全にアメリカ時間で動いています。
田川 どうしているんですか?
森本 人工太陽は入っていませんが(笑)、ビルの電気使用量を見ると、完全にアメリカ時間で動いています。
そういう場所はあります。
田川 そうなんですね。
これができるとね、すごく楽でいいなと思っています。
時差ボケというのは、その建物から出た瞬間に起こる、という感じにならないかなと。
“人間スイッチ”で時間価値のイノベーションが起こる
稲見 何か、人間のスイッチが欲しいんですよね。
田川 人間をやめるってことですか?
稲見 いやそうでなくて、自分のスイッチを切れるようにするということです。
要は寝ている時間を飛ばすことにも近いのですが、夢か麻酔かの違いは時間感覚があるかどうかだと言われているので、時間感覚がないくらいパシッとある時間からある時間に飛ばすということです。
例えば火星に通信して帰って来るまでの間はスイッチを切っておくとか。
そうすると、その人にとってはリアルタイムだと。
田川 ちょっと……全然……おっしゃる意味について行けていませんが(笑)。
川原 5分だけ眠れるとか?
稲見 つまり主観的に待ち時間というものを無くすということ自体ができると、本人の価値、主観的な時間の価値のイノベーションが起きるかもしれない。
田川 気絶していると。
稲見 そういうことです、それをコンピュータで場合によっては無意識のうちに制御できるということです。
澤邊 20年後くらいには、稲見先生ご自身はどうなっているんですか?
稲見 おそらく、20年後にボケている私よりは、もう少しまともなことを言うような、稲見ボットができているでしょうね。
田川 ボットができている。
稲見 はい、それでその人たちが何か代わりに稼いでくれるのではないでしょうか。
気の利いたことを言って(笑)。
(続)
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続きは 9. 最先端研究者・クリエイターが、2030年に向けた「Will」を語る!【終】 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/本田 隼輝/尾形 佳靖/戸田 秀成/鈴木ファストアーベント 理恵
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