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4. 地方の農業現場における人材不足の現実「80歳のおばあさんをパート採用。1週間後……」

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「人口減少社会の到来! 地方創生・活性化のための取り組みとは?」6回シリーズ(その4)は、地域資源の活用についてのディスカッションからスタート。そして話題は、地方での人材採用へと展開します。地方の農業現場における採用難の現実とは? ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2020は、2020年2月17日〜20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

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HRMOS


【登壇者情報】
2018年9月4〜6日開催
ICCサミット KYOTO 2018
Session 6F
人口減少社会の到来! 地方創生・活性化のための取り組みとは?
Supported by HRMOS(ビズリーチ)

(スピーカー)

岩佐 大輝
農業生産法人 株式会社GRA
代表取締役CEO

岩田 真吾
三星グループ
代表取締役社長

栗田 紘
seak株式会社
代表取締役社長

山野 智久
アソビュー株式会社
代表取締役社長

(モデレーター)

西村 勇哉
NPO法人ミラツク 代表理事 /
国立研究開発法人理化学研究所 未来戦略室 イノベーションデザイナー

「人口減少社会の到来! 地方創生・活性化のための取り組みとは?」の配信済み記事一覧


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最初の記事
1. 徹底議論!少子高齢・人口減少の波に「地方」はどう立ち向かうのか?

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3. 地方創生の勝機は「一農村一事業」レベルの選択と集中にあり!?

本編

西村 岩田さんは、もし自分のビジネスの場所を変えられるとしたら、変えたいですか?

今日の4人のうち、動きたくても一番動きにくいのが岩田さんだと思います。

動いた方がやりやすいのでしょうか?

岩田 今の場所(岐阜県尾張地区)で良いと思っていますが、二拠点生活は覚悟しなければいけないです。

地域に入るとネットワークは築けますが、視野が狭くなりがちですす。

ですから、東京ではなく大阪でもいいのかもしれませんが、生産地と消費地の両方を知ることが大事だと思います。

また、我々の会社は繊維業ではありますが、もともとは今はない手工芸から始まり、ウールを始め、樹脂も加工して、と変化していっています。

例えば岐阜県羽島市は、水がきれいで豊富です。

繊維業はそれを活かしている産業だと思いますし、日本の中央に位置しているのでロジスティクス面でも強みがあると思います。

西村 産業によっては、「ここでないとできない」というものがあるのでしょうか? 言い換えると地方の産業にとって、そもそも「地の利」はどこまで重要なのでしょうか?

自然、歴史、食事…地域資源なき観光業は成立しない

山野 観光に関して言えば、人口が減少して地域の内需が減っても、外貨を稼いで地域経済を維持することができます。

また、観光は総合産業です。

誰かがその地域に来て泊まるということは、枕、お箸、食料、交通機関など色々なものが必要になります。

地域全体の事業者が満遍なく潤ういうことで、DMO構想(※)が出来上がり、観光業は注目されてきました。

▶参照:DMO(デスティネーション・マーケティング・オーガニゼーション)とは、観光物件、自然、食、芸術・芸能、風習、風俗など当該地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域作りを行う法人のこと(JTB総合研究所より引用)。観光庁では、DMOを“観光地域づくり法人”と位置づけ、日本版DMO登録制度を敷くことでそれらの法人と観光地域の支援を実施している。〔参照:日本版DMOとは?(観光庁)

そうなると、全国の自治体に多くの補助金がつきますから、1,700超の自治体のほとんどが「観光をやりたい!」となりました。

しかし、色々な地域にお邪魔した結果、無理な地域はあります。

歴史的なストーリーがない住宅地では、観光は難しいです。

西村 そういう地域でも、観光をやりたがるのですか?

山野 補助金が出ますから、外から人を呼んで、何かできないかと考えるのです。

しかし地域資源がないと難しいというのが見解で、西村さんの質問への回答は「地域性は重要だ」ということです。

西村 その地域ごとに、できることが何なのかを見極めることが必要ですね。

山野 観光は特にそうですね。

気候、風土、歴史、食事、自然において競争優位性がなければ、観光は成り立ちません。

例えば、なぜ沖縄に行くかと言うと、暖かいからですよね。

京都に行くのは、歴史があるからです。

岩佐 観光のために、温泉を掘ったりしますよね。

近隣の地域でも温泉を掘っていましたが、歴史のない温泉に行く人は多くありません。

イチゴの品種は、日本に300種類もあるのに……

(写真右)株式会社GRA 代表取締役CEO 岩佐 大輝さん

岩佐 もう1つ、各地域が団結し、協力し合うことも大事だと思います。

例えば、こんな狭い日本の中に、イチゴの品種は300種類もあります。

なぜかと言うと、開発元が各都道府県の農業普及センターや農業試験所だからです。

イチゴは冬の果物なので、本来、雪が降るとハウスがつぶれるような地域では作るべきではありません。

しかし、日本海側でも多くのイチゴ農家があるのが現状です。

つまり、多くの地域で同じよう農業をやっていますが、本来、予算は静岡などそれが得意な地域に割り振られるべきだと思います。

西村 岩佐さんの場合、なぜイチゴだったのですか?

岩佐 イチゴって…、赤くて、かわいくないですか?

(会場笑)

岩佐 真面目に答えると、イチゴはマーケットサイズが4桁億円あります。

また、グローバル市場においても年間10%ほどマーケットが伸びている、珍しい作物だからです。

栗田 イチゴの種類が300あるということですが、各品種によって生育応答は全然違いますよね。

つまり、産業やプロダクトとして、再現性がないのです。

現在、農協関連の組織は非常に細分化されており、封建制度です。

僕は、中央集権型に戻し、1つの農業技術基盤として集約し、再現性のあるものを地方に落としていくようにすべきだと考えています。

農業は食べ物ですから、どんどんコモディティ化していきます。

よって、再現性のあるシステムを作るべきですね。

西村 さて、人的リソースが足りないという話が冒頭で出ましたが、そもそも、どういう人と働きたいですか?

例えば、どういう人がいれば会社を変えていけると考えますか。

三星グループが創業130年で初めて設定したバリュー

三星グループ 代表取締役社長 岩田 真吾さん

岩田 我々は130年目にして初めて、3つのバリューを設定しました。

メルカリに倣って、3つくらいしか覚えられないだろうと…(笑)。

「プロフェッショナルとして働こう」

「チームワークを大切にしよう」

「ワクワク生きよう」

この3つで、これに共感でき、実践できる人が欲しいと思っています。

「ワクワク生きよう」は、楽しいことをしようというよりか、新しいことにチャレンジしている時にワクワクを感じるだろう、という意図があります。

社員全員がそうというわけではありませんが、この方向を目指していかなければ、次の100年が望めません。

地方の中小企業を、選択肢として知ってもらいたいですね。

西村 そういう人材は、地元にはいるのですか?

岩田 入社した社員のうち、半分は地元で、半分は少し離れたところからですね。

地方の中小企業としては、引越しを伴っての入社が半分というのは珍しいと思います。

面接の際には、働く内容だけではなく、工場を見せたり、一緒に食事をしたりしています。

これは、岐阜のことを好きになってもらわないと、定着できないと思うからです。

seakでは、パートタイム社員にも「変化」を求める

(写真中央右)seak株式会社 代表取締役社長 栗田 紘さん

栗田 我々は農業なので、フルタイムだけではなく、パートタイム社員もいます。

僕は最近「脳の可塑性」という言葉が気になっていて、意識や知性は進化・変化するという前提に立つべきだと思います。

僕らが目指す世界観やビジョンについて、地域の人々に理解してもらうための努力が非常に重要だと思うのです。

ですから、年齢が高いパートタイム社員にも変化していってもらい、コミットメントやパフォーマンス向上を期待するということです。

年齢が高くても、最初の面接時と、1年後の勤務態度は大きく変わります。

経営者は、組織に関するフレームワークを、フルタイム社員のみならず、パートタイム社員に対しても使うべきですね。

そこまでやらないと、地方で人材採用は難しいと思います。

マインドを一緒に作り上げること、相互理解を高めることが重要です。

西村 できる人を採るというよりも、一緒に成長していけるという考え方ではないと、地方では難しいということですか?

栗田 変化していけるポテンシャルを見極めるのが、スクリーニングで必要だと思います。

西村 なるほど。岩佐さんは、いかがですか?

将来人口の半分がインド人に? 農村の人材不足の現実

岩佐 人が採れないというよりも、物理的に人がいません。

例えば、80歳くらいのおばあさんをパートに採用しても、1週間後に暑くて過労で来れなくなってしまったということもあります。

結論としては、日本の農業生産の現場においては、日本人だけで回すのはもはや難しいです。

先日、ホワイトカラーのビザでインド人を採用し、研究者として働いてもらっていますが、彼がどう町に溶け込むかというのも重要です。

町の人の半分がインド人、という状況が農村地域で起こってくると思います。

西村 町の反応はどうだったのでしょうか?

岩佐 インド人が作る本場のカレーパーティーを計画すると、みんな喜んでいました(笑)。

何か悪いことが一度起きると大変ですが、それを言っていると必要な人材を採用できないので、どんどん進めたいですね。

西村 山野さんの場合、色々な地域でもっとアクティビティを盛り上げてもらわないといけないですよね。

その際、人材は足りていないと思いますか?

(続)

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続きは 5. 繁忙・閑散期のある「観光業」にこそ求められる“働き方改革”とは? をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/尾形 佳靖/戸田 秀成/大塚 幸

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