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5. 繁忙・閑散期のある「観光業」にこそ求められる“働き方改革”とは?

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「人口減少社会の到来! 地方創生・活性化のための取り組みとは?」6回シリーズ(その5)は、地方での人材不足を解消する“働き方改革”のアイデアと、都会と地方の教育格差についてです。ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2020は、2020年2月17日〜20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

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HRMOS


【登壇者情報】
2018年9月4〜6日開催
ICCサミット KYOTO 2018
Session 6F
人口減少社会の到来! 地方創生・活性化のための取り組みとは?
Supported by HRMOS(ビズリーチ)

(スピーカー)

岩佐 大輝
農業生産法人 株式会社GRA
代表取締役CEO

岩田 真吾
三星グループ
代表取締役社長

栗田 紘
seak株式会社
代表取締役社長

山野 智久
アソビュー株式会社
代表取締役社長

(モデレーター)

西村 勇哉
NPO法人ミラツク 代表理事 /
国立研究開発法人理化学研究所 未来戦略室 イノベーションデザイナー

「人口減少社会の到来! 地方創生・活性化のための取り組みとは?」の配信済み記事一覧


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最初の記事
1. 徹底議論!少子高齢・人口減少の波に「地方」はどう立ち向かうのか?

1つ前の記事
4. 地方の農業現場における人材不足の現実「80歳のおばあさんをパート採用。1週間後……」

本編

西村 山野さんの場合、色々な地域でもっとアクティビティを盛り上げてもらわないといけないですよね。

その際、人材は足りていないと思いますか?

「夏は海で、冬はゲレンデで」観光業の働き方改革

アソビュー株式会社 代表取締役社長 山野 智久さん

山野 人材は足りていません。

観光業界では、日本の土地資源を活用したアウトドアレジャーのカテゴリーがあります。

しかし繁忙期と閑散期があるため、安定して雇用できないという課題があります。

今、アウトドアレジャーは川・海・雪といった形でカテゴリーが完全に分かれてしまっています。

そういった季節性に基づいて、雇用を流動化させるべきだと思います。

つまり、ホワイトカラーに副業推進するよりも、繁忙期と閑散期のある職業の方に副業を推進することこそが働き方改革だと思います。

海で働く人に対し、冬にはゲレンデでも働けるようコミュニティを拡げたり、そのために派遣法の改正をするなど、法整備も必要です。

農業と観光業も、雇用上の相性は良いのではないかと思います。

一次産業、サービス産業の雇用の流動化に伸びしろがあると思いますね。

NPO法人ミラツク 代表理事 西村 勇哉さん

西村 兼業農家で観光業もしている方は、多くないのでしょうか?

山野 多くないですね。

最近は農家の民泊などの話も出ていましたが、民泊新法ができて、熱が下がってしまいました。

ただ、利益を出している農家は基本的に休んではいないので、民泊と言ってもピンとは来ないようですね。

岩佐 農業の場合、夏だけ働いて冬は働かないというスタイルが可能です。

西村 それは、都会に住んでいる人が、1年の半分だけ地方に行くということですか?

岩佐 可能ですね。

山野 二拠点生活の話が出ましたが、これは真剣に進めるべきだと思います。

例えば住民税も、居住日数で別の自治体に納めればいいと思います。

それくらいやれば、地域に新しいアイデアがもたらされるのではないでしょうか。

岩田 実はファッション産業も、季節性があります。

我々はウールを扱っていますが、冬に向けて夏に大量生産し、冬は閑散期です。

山野 夏はその工場で働いて、冬は我々のパートナーのところでスノーシューツアーのガイドとして働くのも可能です。

スノーシュー・スノートレッキング〔asoview!(アソビュー)〕

年収も2倍になりますしね。

岩田 そうですね、労働基準法の整備が必要かもしれませんが、雇用の流動化が可能になる気がします。

西村 「地方は仕事がない」というイメージがありますが、それは可能なのでしょうか?

山野 仕事はめちゃくちゃあります。

沖縄では、新規求人倍率は1を超えて2に迫っています。

地域に仕事がないというのは神話です。

岩田 我々の会社は、就業規則が非常に古いのです。

既存社員は「今までそうだったのだから」という考えになってしまっていますが、今の法律に合わせたり、アップデートの必要があります。

そうすることで、フレキシブルで色々な働き方を実現したいですね。

栗田 地方に仕事があると言いつつも、「選択と集中」の議論は進める必要があると思います。

つまり、今ある仕事がこの先もずっと必要な仕事なのか考えなければいけないということです。

新しい事業モデルやチャレンジによって、雇用や産業の新陳代謝を促す必要があります。

求職者やパートタイマーが選択できる機会を提供していかなければと考えています。

西村 では、残り15分ほどとなりましたので、会場から質問を受け付けたいと思います。

もう少し深掘りしたいポイントなどがあれば発言をお願いします。

農業では南半球との「越境ダブルワーク」も可能?

質問者1 これは質問というより情報共有ですが、和歌山県にある観音山フルーツガーデンでは、繁忙期に「果物栽培に興味のある人」という形で人材を募集したらオーストラリアから人が殺到しました。

オーストラリアは季節が逆なので、冬の暇な時期に勉強のために日本に来るのですが、それが貴重なリソースになりました。

それを成功パターンとし、和歌山が冬になった際には逆にオーストラリアに手伝いに行きます。

農業は季節に左右されるので、国を超えたダブルワークも1つではないかと思いました。

(写真中央右)seak株式会社 代表取締役社長 栗田 紘さん

栗田 僕らの拠点である藤沢市と軽井沢町も、いわゆる中間地と呼ばれる地域と寒冷地なので気候に違いがあります。

以前軽井沢で人を採用しようとしたとき、全然人が集まらなくて大変困りました。

なぜなら、軽井沢の繁忙期は全員一緒だからです。

そこで僕らは発想を変えて「リゾートバイトとして、夏だけ軽井沢で働こう」と募集したのですが、そうしたら軽井沢以外の地域からの募集が殺到しました。

国内でも、そうしたダブルワークのノウハウが少しずつ蓄積しているのかなというのを感じています。

西村 ありがとうございます。それでは次の方、お願いします。

地方の「教育機会」は徹底的にサポートされるべき

質問者2 私は東京に住みつつ、地方で専門学校の経営をしています。

教育格差については、皆さんはどうお考えですか?

地方では年収が低くても暮らしていけますが、教育費に関しては全国で水準が同じなので、進学が難しいのが現実です。

西村 地方の現状を見ている皆さんが、教育についてどう思われているかという質問ですね。岩佐さんいかがでしょうか?

岩佐 非常に大きな課題だと思っています。

例えば僕らの町では、小学校の1学年の児童数が1桁ということもあります。

都会と地方の教育格差が広がりつつありますが、ここは「選択と集中」ではなく、行政が教育機会に関するサポートは徹底的にすべきだと思います。

そうしなければ、都会並みの教育を受けるのは難しいと思います。

栗田 ゲリラ的に寺子屋を作るべきではないでしょうか?

今はインターネットやMOOC(※)があるので、初等教育の段階から色々な知識、情報にアクセスできる“寺子屋2.0”を生活インフラの1つとして作るべきだと思います。

▶編集注:MOOC(Massive Open Online Course またはMassive Open Online Courses)とは、大規模でオンラインに開かれた無料講義のこと。スタンフォード大学が創設したCouseraや、マサチューセッツ工科大学とハーバード大学が共同開発したedXなどが有名。一般的に“ムーク”と発音する。

その際、場所はあまり問題にはならないので、そういう仕組みができたらいいなと思っています。

山野 子どもの教育問題は課題ですが、抜本的に改革するには「親」が大事になると思っています。

地方では、「今いる住空間と経済環境が、サステイナブルに続いていく」という錯覚を持って生活している人が本当に多いです。

子どもたちにはほとんど意思決定権がないので、改革すべきは親の意識ではないかと思います。

その際、公共性の高い行政のリーダーシップが非常に重要です。

親に対し、「この環境はもう続かない」という意識を持たせるように動かなければ、なかなか子どもたちに投資をする意思決定に至らないと思うのです。

スタディサプリ(※)などの学習コンテンツは充実してきていますが、親の意思決定の基準を変えていくことを、まずやるべきだと考えています。

▶編集注:スタディサプリ(旧称:受験サプリ)は、リクルートマーケティングパートナーズが運営しているインターネット予備校。小学生の学習から大学受験まで幅広い授業をオンラインで提供する。

岩田 僕も、親に問題があると思っています。

(写真右)三星グループ 代表取締役社長 岩田 真吾さん

しかし、地方の中小企業で働く人の中で、「スタディサプリ」を知っている人はほとんどいません。

ですから、岐阜のいち中小企業としてできることと言えば、こういったICCのような場に社員を連れてくる、学んだことを社員に伝える、などを地道にやっていくことかなと思います。

地方の中小企業がアップデートされると、そこで働く人もアップデートされていくという考え方です。

西村 岩田さんに聞いてみたかったのですが、遠くから引越しを伴って入社する方がいるというお話でしたが、その際、教育面は問題になるのでしょうか?

岩田 岐阜県羽島市や隣の愛知県一宮市は人口が10万人を超えているので、学校や幼稚園が存在します。

ですから我々の会社において、問題になったことはありません。

むしろ、教育には良い町だという理由で来られたりもするくらいです。

ただ、そこですら人が足りていないという状況なので、もっと人口の少ない地方については別の話になると思います。

西村 ありがとうございます。

(続)

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続きは 6. 来たれ若者!地方で新たな産業を共に創り出そう!【終】 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/尾形 佳靖/戸田 秀成/大塚 幸

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