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6. アート作品の購入は、手軽にできる「不確実性へのチャレンジ」だ【終】

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「教えてほしい!経営とアート」6回シリーズの最終回。経済の連続的な成長は頭打ちとなり、暗闇でジャンプすることが求められる時代。そんな不確実な時代だからこそ、アートという“不確実なもの”に投資することが大切だとGO三浦さんは語ります。最後までぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2020は、2020年2月17日〜20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2019 プレミアム・スポンサーのHRMOS(ビズリーチ)様にサポートいただきました。

HRMOS


【登壇者情報】
2019年2月19〜21日開催
ICCサミット FUKUOKA 2019
Session 4E
教えてほしい! 経営とアート
Supported by HRMOS(ビズリーチ)

(スピーカー)

遠山 正道
株式会社スマイルズ
代表取締役社長

松本 恭攝
ラクスル株式会社
代表取締役社長CEO

三浦 崇宏
The Breakthrough Company GO
代表取締役 PR/Creative Director

山口 周
ライプニッツ
代表

(モデレーター)

渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー /
慶應大学SFC 特別招聘教授

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最初の記事
1. 徹底議論!なぜ今、経営者が「アート」を学ぶべきなのか?

1つ前の記事
5. 日本企業は「意味がある市場」で戦うべき。「役に立つ市場」で戦う時代は終わった?

本編

質問者3 講談社の碓氷と申します。

講談社は創立110年ほどなので、オフィスに美術品や有名な画家の絵が飾っているようなところです。

昔は「のん気だな」と思っていましたが、今は、非常に良いことだったのだなと思います。

伸びている会社の代表取締役であるにもかかわらずアートを買いにくいと仰っていましたが、それだと他の会社はもっと買いにくいですよね(笑)。

この状況はどうしていけばいいのでしょうか?

アートの購入は、手軽にできる“不確実性へのチャレンジ”?

The Breakthrough Company GO 三浦 崇宏さん

三浦 僕はその状況を変えようと思って、アートを共有するビジネスを応援し始めました。

▶アート作品の共同保有プラットフォーム「ANDART(アンドアート)」

僕が思うのは、誰しも不確実なことにチャレンジすべきだ、ということです。

それが僕の場合はたまたまアートだったわけで、それはもしかしたら、起業をすることかもしれません。

山口さんの本にもあるとおり、経済の連続的な成長はすでに頭打ちで、暗闇の中でジャンプする行為が社会の中で漠然と求められています。

その中で、何か1つ“手軽に”チャレンジできるものがあるとすれば、それはアートを買うことじゃないかなと思うのです。

例えばですが、いったん年収の15%でアートを買ってみましょうと。

それによって、何かしらの変化が人生に起きるかもしれません。

松本さんだって、いきなり年に2作品ずつ買い始めたのですよね?

松本 はい。とはいえ、最初は1つ30万円とかそれくらいのものでした。

三浦 そうですよね、だからちょっとずつでもいいんですよ。

遠山さんも先ほど、合理性で説明できないものもあると仰っていましたが、合理性で説明できないものに価値がないかと言うと、そうではありません。

だってインスタ映えするメシって、たいてい美味しくないじゃないですか。

(会場笑)

数値などで表せない、特定の価値軸がないところにアートで賭けてみることを楽しめればいいのかな、と思います。

松本 アメリカやヨーロッパに行くと、投資家や証券会社のオフィスにはギャラリーのようにものすごい量のコレクションが置いています。

アートを所有することに対して世の中がポジティブになると、もっと動きやすくなりますよね。

例えば今日は寺田倉庫さんがいらっしゃっていますが、寺田倉庫さんは、倉庫業の一方でアートフェア東京のメインスポンサーをされています。

アートのスポンサーシップがかっこいいと思うムーブメントが起こればいいなと思いますね。

アートの嗜みは、登山のごとく

(写真左)株式会社スマイルズ 代表取締役社長 遠山 正道さん

遠山 私は逆の意見を持っていまして、それはなかなか難しいと思いますね。

なぜならアートは合理性で買うものではないし、簡単に言うと、好きか嫌いかで買うものだと思うからです。

オーナー企業がオーナーの好みで集めていかないと、それこそインスタ映えするような作品がただただ並んでいるだけで、アート側の人にバカにされる、みたいになるのではないでしょうか。

アートは相当にわがままなものですから、何の意思もないところにはむしろ、アートを置かないほうがいいと思います。

先日「アートが分からないのですが、アートを好きになるにはどうしたらいいでしょうか?」という質問を受けたのですが、「山下達郎を好きになるにはどうしたらいいでしょうか?と言われているような気分です」と答えました。

(会場失笑)

つまりテクニックで好きになるとかではなく、好きじゃなければやめておけばいいだけなのです。

逆にそういう質問をするということは、実はある程度は興味を持っているわけで、すでに登山口にたどり着いているとも考えられます。

山に登るのはきついですが、登ってみれば色々な発見がありますよね。「あ、シメジがあった」とか。

でもそれがアートの楽しみ方であって、組織として「シメジがあってね」と共有するのは難しいじゃないですか。

三浦 ダ・ヴィンチは電通で、アートはシメジという。

なんだか見立ての世界になってきましたね(笑)。

個人の感覚や意思が財産になる時代、アートの役割とは?

写真左から、遠山さん、松本さん、三浦さん、山口さん、渡邉さん

三浦 でも確かにアートは個人の感覚や意思によるとは思いますが、意思自体が財産になる時代になっている気もします。

「わがままなものだ」というのは、現状を良しとしないということですよね。

例えば満員電車に乗っていて、満員電車はおかしいと思った人が起業家になるのです。

現状を良しとしないことの象徴、選択肢の1つとして、アートがあってもいいと思います。

遠山 私は、自分の仕事は恋のようなものだと思っています。

つまり、ときめきや、言葉では説明できないものだということです。

社員が300人いれば、300人に恋をしてほしい。

私は、ハンコの要らない、つまり合議もいらない些末な仕事ほど、やりがいがあると思っています。

例えばこのセッションだけ壇上の飲み物を水ではなくルイボスティーに変えてみるとか、それって例えばスポンサーのコンセンサスを得なくてもいいようなものですよね。

アートとは、そういった、自分自身が仕事や生活を楽しむためのヒントをくれる気がします。

渡邉 山口さんが以前、美意識やセンスは習うものではなく、自分自身がワクワクできる軸を見つけることで身につくものである、と仰っていました。

今日、会場の皆さんは長期的にすべきことは見えたと思うのですが、今日明日、何か始めるとしたらどのようなことに取り組むべきでしょうか?

山口 答えになるかどうか分からないですが……僕はアートはラーメンと同じだと思うんですよね。

三浦 3つ目が出ましたね(笑)。

(会場笑)

ラーメンに対しては、誰もが評論家になれるのに……

ライプニッツ 代表 山口 周さん

山口 皆さんに好きなラーメン屋はありますか?と聞くと、たいていの男性はその答えを持っています。

ですが、それは食べログで何位ですか?と聞いても、あまり気にしていないのです。

「食べログでたとえ順位が低くても、自分は好きなんだ」というわけです。

しかしアートとなると、世の中の評価を気にするようになります。

例えば5つの絵を見せて、好きな絵を選んでもらうとします。

最初はどれかなと楽しく選んでいる人に、「実はこのうち4つは美術史における傑作で、1つはうちの幼稚園児が描きました」と言うと、途端に選べなくなるのです。

ラーメンは権威など関係なく選べるのに、なぜ絵は選べないのだろうと思いました。

そこで気づいたのですが、それは見ている回数かなと思うのです。

ラーメンは何度も食べますよね。だから自分の好みが分かるし、評価ができる。

ですから、子どもの頃から色々な美術館に行って色々なアートを見ていれば、何となく好きなものが分かってくるものだと思います。

音楽が好きと言う人でも好きなジャンルとそうではないジャンルがあるように、アートも好きなアートとそうでないアートがあるのは当然です。

そして良いと思うアートやアーティストに出会えるかは確率の問題なので、たくさん見ることが大事なのではないでしょうか。

アーティスト支援アプリ「ArtSticker」でアートは身近に?

遠山 宣伝になりますが、この度ローンチする「ArtSticker(アートスティッカー)」というアプリが手助けになるかなと思います。

絵を購入した時、その作品のアーティストに300円や1,000円を投じることができるアプリです。

コメントも書けるようになっていて、例えば購入した理由や好きな理由が「自分の持っているセーターに似てるから好き」とか、そんな単純なものでもいいんですよ。

要は、アートへの入口を作るわけです。

アート作品を買ったらそのままギャラリーに預けて取りにすら来ないコレクターが非常に多いと聞きます。

それは、買う行為そのものがアーティストへの意思表示であって、それを鈴木芳雄は「契りを交わすようだ」と表現しましたが、このアプリもある意味アートへ対する意思表示をサポートするもので、作品に自分の名前を刻んでいくというものです。

渡邉 スタートアップに投資するのに似た感覚かもしれないですね。

ところで山口さんが仰っていた「回数を見る必要がある」という点について、実は僕の妻は朝吹真理子という小説家なのですが。

遠山 芥川賞作家ですよね。

渡邉 はい。もともと小説家になるつもりはなかったものの、たまたまある場でマイクを振られてスピーチをしたところ、小説を書かないかと言われて、書いてみたら評価されたというわけなのですが、彼女は小説家こそ目指さなかったものの、子どもの頃からものすごく本を読んでいたようです。

厖大な読書経験が感性を強化していったんですね。

この例も、アートを見ている回数が大事というのにつながるのかなと思いました。

さて、最初の松本さんの問い、「アートと経営がどう結びつくか?」に戻りたいと思います。

今日、このセッションで松本さんが得た気づきを教えてもらえますか?

セッションの締めは、Takram渡邉さん名物の……

松本 想像していなかった、アート的な振りですね。

(会場笑)

アートのように「意味を作る」という行為について、ビジネスにおける稀少性が今後上がると思います。

そして表現をしていくことがビジネスにおいても重要だということで、経営とアートのつながりを感じることができました。

色々なものを見て、その中から好きなものを見つけ、それがビジネスに活かされるのではないかなと感じました。

今日はありがとうございました。

渡邉 では最後に、今日皆さんから出た名言を読み上げて終了としたいと思います。

・アートを年に2つ買うと80歳の頃には100作品
・アートは企業で勝手に買うとお叱りを受ける
・アートは「サイエンスやロジックだけでは持てないプライド」を取り戻す
・アートはリベラルアーツとも。文学、哲学、美術
・アートとは「自分ごと」でつくること
・アートは見方を発明する
・アートはみんなで解きたくなる、大きな問いを見つけること
・アートは人をオフィスに呼びやすくするもの
・アートは余ったお金で買うものではない
・アートは「合理的な説明ができない」からいい
・アートは言葉にならないことを受け止める
・アートは暗闇から仄かなものを見つけ出すもの
・アーティストと起業家はとても似ている
・150年前、アートはビジネスと一体だった(ダ・ヴィンチは電通。慶派は乃村工藝社)
・アートは意味を作る。「役に立つ」は1社しか残れないが「意味がある」は多様化する
・アートは意味をイノベートする
・アートは不確実性を楽しむこと
・アートは年収の15%で必ず買っておこう
・アートは合理性でもマーケットでもない。好きか嫌いか
・アートは山に自生するシメジ。体験は共有できない
・アートはラーメンと同じ。価値は自分で決めていいし、見てる回数が大事
・アートスティッカーがローンチされる
・アート作品を買うことは、契りを交わすこと

というわけで、今日はこの4名にお話を伺いました。

ありがとうございました!

(終)

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/戸田 秀成/大塚 幸

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