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9. コンテンツの魅力ではなく「ユーザーとのコミュニケーション」に頼りすぎることの弊害

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「コンテンツ・コミュニティのグロース戦略を徹底議論」11回シリーズ(その9)は、コンテンツビジネスがユーザーとのコミュニケーションに偏重しつつある現状に、クラシコムの青木耕平さんが警鐘を鳴らします。ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2020は、2020年2月17日〜20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2019のダイヤモンド・スポンサーのMotivation Cloud(Link and Motivation Inc.)様にサポートいただきました。

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【登壇者情報】
2019年2月19〜21日開催
ICCサミット FUKUOKA 2019
Session 10E
コンテンツ・コミュニティのグロース戦略を徹底議論
Supported by Motivation Cloud(Link and Motivation Inc.)

(スピーカー)
青木 耕平
株式会社クラシコム
代表取締役

緒方 憲太郎
株式会社Voicy
代表取締役CEO

武田 和也
Retty株式会社
代表取締役

前田 裕二
SHOWROOM株式会社
代表取締役社長

(モデレーター)

占部 伸一郎
コーポレイトディレクション
パートナー

「コンテンツ・コミュニティのグロース戦略を徹底議論」の配信済み記事の配信済み記事一覧


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最初の記事
1. コンテンツ・コミュニティの今後を語る!登壇者紹介①:クラシコム青木さん/Voicy緒方さん

1つ前の記事
8. コミュニティをつくって「コンテンツをつくったつもり」になるべからず

本編

緒方 僕は青木さんのお話を伺って、一つ思うことがありました。

それは何かと言うと、青木さんは、すごくモテているんですよ。

株式会社Voicy 代表取締役CEO 緒方 憲太郎さん

モテているから、自分がこれぞと思うコンテンツを世に出して、ついて来れる人だけがついて来ればよいということなんだと思います。

トップの人たちは、そんな感じでコンテンツでファンを引っ張ってくることができます。

でも、とるべき手段に多様性がある中で、自たちの存在意義にぴったりあったものを探したいという我々にような者にとっては、コミュニティが持つ色々なカラーが必要になってきます。

つまり、多様性戦略を取っている時にはコミュニティの相性がよいのです。

サービスに多様性を取り込むためのコミュニティの存在

緒方 僕たちVoicyの場合は、音声コンテンツとしてどういうものが世の中に受け入れられるのか、それが分からない状態から始まりました。

ラジオが散々落ちている中で、コンテンツの長さは8分がよいのか10分がよいのか、初めは挨拶がよいのかコミュニケーションがよいのか、それとも一人語りがよいのか、全く分かりませんでした。

だこらこそ、とにかく自分なりに良いものが出せたと思った時に、これが刺さるのか刺さらないのか、そしてこれは文化になりうるのか、それを明らかにするために、フォロワーをつけてコミュニケーションを取ることが求められました。

そういう時には、コミュニティがすごく役立ちます。

ある意味、僕らは事業戦略の種探しをコミュニティでやっているのです。

SHOWROOMの初期も、サービスをきちんと形にして押し上げるために多様性を持った人たちが必要だったと思います。

前田 本当にそうですね。多様性という観点も本当にそのとおりだと思います。

SHOWROOMを開いてみると分かるのですが、大体どこの部屋に行っても、配信者が視聴ユーザーに「◯◯さん、ありがとうございます」「△△さん、ありがとうございます」と言っているんですよね。

まさに今のコミュニケーションの誤謬なのですが、やはりそれをやったほうがファンが増えるのです。周りにいる人たちも、「配信する時は視聴してくださっている方の名前を呼び、コメントを読み上げ、インタラクション性を担保することが生配信の成長の秘訣だ」と言います。

それは確かにそうなのですが、他方で、コミュニケーションの多様性が失われるという課題も出てきていると思っています。

「ユーザーとのコミュニケーション」に頼りすぎることのリスク

(写真左)株式会社クラシコム 代表取締役 青木 耕平さん

青木 今のは、芸能っぽい話ですよね。

楽屋で芸人仲間を爆笑させられる芸人が、実際のネタ番組や舞台では面白さを発揮できないことがあるとはよく聞く話です。

この「楽屋ネタにはパワーがあるが有限である」ということは、コンテンツに関わる人なら誰もが知っています。

けれども、素人が楽屋話がウケるということを経験して、それが有限であることに気付かないまま疲弊するのが、その「◯◯さんありがとうございます」に近い話だと思います。

楽屋話でウケているうちに芸を磨かなければならないというのが、芸能の世界なんですよね。

前田 まさに。

青木 その芸が確立していれば、例えばテレビでパワーやインパクトのある暴露話などをしなくても、地方を営業するだけでテレビよりも遥かに稼げるといったことがあるわけです。

ですから、コミュニケーションの議論をする我々に責任があるとしたら、これからはそういうリスクとリターンをよく睨みながら運用する必要があるということを、まず言わねばなりません。

とても危険なことを始めているという認識は持ったほうがよいと思います。

前田 ポイントは2つあって、リスクとリターンをきちんと認識しなければならないということと、皆が絶対できないのが、「メタ認知」と言いますが、客観カメラで自分を見るということです。

「君はコミュニケーションに寄っているよね」とか、「コンテンツを提供していないよね」とか、「このコンテンツはあまり面白くないよね」といったことが、自分では本当に気づけないものです。

僕らもそうなるかもしれないということを、常に思いながら生きていかなければなりません。

芸能界においては、マネージャーやプロデューサーが「君はここがダメだよね」と言ってくれますが、自分で客観カメラを持てる人がいたら強いですね。

コンテンツ・プロバイダーには、受け手を豊かにする責任がある

緒方 弊社にもコンテンツ・プロバイダーとしての責任があるなと思っています。

ユーザーがどんどん貧しくなっていくのは、絶対に避けたいことです。

新しい文化を創り、そこに価値が生まれるところまでやるけれど、ユーザーが虚弱していったり中毒になって人生が面白くなくなっても自分たちは知らない、ではなくて、その文化や価値があることによっていかに受け手が豊かになれるか、あるいは発信者側がより豊かになれるかです。

だから僕は、ユーザーが「匠」になっていくかどうかにすごくこだわっています。

占部 匠というのは、高い質を生み出せるかということですか。

緒方 そうです。やればやるほどよりよいアウトプットを出していき、それが文化に繋がっていき、やがてGDPが上がっていくのか。

ユーザーが自分たちの寂しさをただ紛らわすだけのコミュニティになっていったり、色々なニュースが面白いということを知る前にゴシップだけで楽しくなってしまったりしたら、もうそれで終わってしまいます。

雑なものをたくさん消費しているだけの、「楽屋トーク」のみのサービスにはしたくないんです。

「楽屋トークが面白いよね」となってコンテンツをつくる人がいなくなれば「和紙がなくなったから、普通の紙でいいよね」というように、文化はどんどん衰退してしまうからです。

コンテンツカルチャーには「揺り戻し」がある

SHOWROOM株式会社 代表取締役社長 前田 裕二さん

前田 それについて僕は思うことがあって、それは「揺り戻しが起こる」ということです。

世の中が雑なものばかりになるとどうなるか?

例えば自分の雑な写真をSNSにアップしても「いいね!」がつけば気持ちがいいし、それで承認欲求が満たされます。

だから今のSNSに流れるコンテンツは、「自分の物語」が主流になっていますよね。

すると圧倒的な他人の物語をバーンと突きつけられた時に、「これはすごい!」となります。

すると今度はそちらでヒットが生まれるので、またそちらに戻っていって、行ったり来たりがあるということです。

緒方 なるほど。浅くても皆がわーっとやっているのが楽しい時代が今で、そのうちまたブランドがボーンと上がってきて、映画のようなものがドンと流行るということですね。

前田 それにはもう理由があって、一度演者側に回ると、演者のすごさが分かるからです。

僕らは一旦、人を楽しませる側に回っています。インスタもTwitterもFacebookも、コンテンツ供給側に回っています。

そこでユーザーを楽しませようと努力してみるけど、「いいね!が10個しかつかないね」、「楽しんでくれていないのかな?」というふうに思ってしまいがちです。

青木さんや緒方さんは、多分、どちらかというと他人の物語側の価値観を持たれているので、コンテンツの競争性を高めるようなものを届けていかないとダメだという価値観だと思います。

なぜ今、Facebookやインスタが「コンテンツづくり」に躍起なのか

青木 対立構造というか、そこに違いがあるというよりは、そもそもコミュニケーションはコミュニケーションだけの中から生まれているのか、という話なんですよ。

どういうことかというと、例えば、今YouTubeがオリジナルドラマをつくっています。

FacebookはFacebook Watchを、インスタグラムはIGTVをという形で各社が動画サービスに取り組んでします。

これは何を意味しているのか? 彼らはコミュニケーション・プラットフォームなのに、そういう形でコンテンツを提供する側も含めようとしているのです。

つまりどういうことかというと、彼らの強みであるコミュニケーションからはコミュニケーションを生むのは限界があるということなのです。

コンテンツからコミュニケーションが生まれている。

今までは実は、テレビや映画や本がコミュニケーション・プラットフォームのさらに下層にあって、それが起点でコミュニケーションが生まれていました。

ところが、コミュニケーション・プラットフォームでコミュニケーションだけに時間を使う人が増えた結果として、コンテンツが痩せてしまったのです。

コンテンツが痩せたから、自分たちでコンテンツもつくらなければならなくなってきたという認識だと思っています。

前田 おっしゃる通りですね。

青木 他人の物語か自分の物語かということだけではなくて、「語るに足りるコンテンツ」が少なくなってきているということなんですよ。

前田 そういう意味で言えば、「語るに足りるコンテンツ」側への揺り戻しの局面が本当に来ているかもしれません。

青木 そうなんです。ですから、大きいプラットフォームが明らかにそちらに張り始めていることは、意識しておいたほうがよいと思っています。

コミュニケーションを取れば取るほどよくなっていくのかというと、先ほどおっしゃっていたように、一人分の体験というのは非常に薄いものなので、コミュニケーションの燃料として「物語」が久しぶりに求められているんですよ。

前田 まさに。

緒方 そうですね。

青木 僕は、物語は再生産可能な上に古くからものすごい量があるので、これはすごいことだなと思っています。音楽もそうですよね。

そうした再生産可能な物語は、個人の私小説的なコンテンツに比べると一つあたりのパワーは薄いのですが、再生産可能であるが故に、やはりそこにエネルギーを求めざるを得ないというのが、最近YouTubeやFacebookやインスタグラムがコンテンツをつくり始めていることの意味のように思います。

緒方 面白いですね。

前田 おっしゃる通りですね。僕らもそちら側に向かわなければなりませんね。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/尾形 佳靖/戸田 秀成/Froese 祥子

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