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3.「暮らす」「働く」を提供して、路上生活の脱出と再出発を支援する「Homedoor」

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ICC FUKUOKA 2021で設けられたランチタイムのセッションで行われた、注目の産業トレンドのプレゼンテーションの書き起こし記事を4回シリーズでご紹介します。その3「サステナビリティを考える」というテーマで登壇したのは、Homedoorの川口 加奈さん。ホームレス状態を生み出さない社会への取り組みをプレゼンします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 ダイヤモンド・スポンサーのノバセル にサポート頂きました。


【登壇者情報】
ICCサミット FUKUOKA 2021
Session 3B【ランチョン・セッション】 サステナビリティを考える
Supported by ノバセル

<ホームレス状態を生み出さないニホンに>
川口 加奈
認定NPO法人 Homedoor
理事長

14歳でホームレス問題に出会い、ホームレス襲撃事件の根絶をめざし、炊出しなどの活動を開始。19歳でHomedoorを設立し、シェアサイクルHUBchari事業等で生活困窮者ら累計3000名以上に就労支援や生活支援を提供する。Googleインパクトチャレンジ グランプリ、人間力大賞グランプリ・内閣総理大臣賞等を受賞。日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」に選ばれる。現在、29歳。大阪市立大学卒業。1991年 大阪府高石市生まれ。著書:14歳で“おっちゃん”と出会ってから、15年考えつづけてやっと見つけた「働く意味」(ダイヤモンド社)

その他もチェック! 注目の産業トレンドプレゼンテーション

1. 輸送や点検を担う産業用ドローンで、生活インフラを変えていく「ACSL」
2.「ハチドリ電力」は、実質自然エネルギー100%の電力への切り替えで、地球温暖化を止める選択肢を提供する
4.「メタジェン」は、「茶色い宝石®」から価値ある情報を取り出し、新たな医療・ヘルスケアの創出を目指す


川口 加奈さん 認定NPO法人 Homedoorの川口と申します。

ICCサミットでは初めての試みであるランチョン・セッションということで、皆さんが食事をされている前で話すテーマとしては少し重たいのですが(笑)、ホームレス問題についてお話しをします。

私たちは大阪で、ホームレスになったとしても、もう一度やり直せる社会を作るべく活動を行っており、今年で10周年を迎えます。

Homedoorがなぜ活動を始めたか、どういう活動をしているのか、聞いていただけたらと思います。

活動のきっかけは、ホームレス問題をめぐる親との会話

私は14歳から活動を始めましたが、そのきっかけについてお話しします。

大阪には、釜ヶ崎という日本で1番ホームレスが多いエリアがあります。

中学校に入って電車で学校に通うようになった私は、この新今宮駅周辺の釜ヶ崎にホームレスの人がたくさんいる景色を見ていました。

ある時、親に「なんで新今宮駅にはホームレスの人が多いん?」と聞きました。

すると親は一言こう言ったのです、「絶対、駅から降りたあかん」と。

ちょうど反抗期を迎えていた私は、「何としても、降りてやろう」という気持ちになりました。

ホームレスの人たちがいるエリアに行く方法を探したところ、炊き出しというものが行われていることを知り、炊き出しに行ってみたら何か分かるかもしれないと思いました。

貧困の連鎖、病気…、ホームレス状態になる理由は様々

炊き出しに参加してみたものの、私は、心の中ではホームレスの人に良い印象を全く抱いていませんでした。

彼らに対して、「もっと頑張ったら良かっただけではないの?」と思っていたのです。

「もっと勉強して、良い高校、良い大学、良い企業に入って、勤め上げて、定年後は厚生年金をもらっていれば、悠々自適な生活が待っていたのではないか。

今ホームレスになっているのは、彼らが勉強をしなかったから、頑張らなかったからで、自己責任ではないか」と思っていたのです。

しかし炊き出しでホームレスの人々と話してみると、色々な事実が分かってきました。

例えば若いホームレスの人の多くは、児童養護施設出身者や母子・父子家庭出身者が多いというデータがあります。

つまり、貧困の連鎖によって、大人になっても貧困に陥っている人がいるのです。

そして、うつ病やがんなどが原因でホームレスになった人もいます。

東京都で行われた調査では、ホームレスの人の6割近くが何かしらの障害を抱えていると言われています。

ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)の分析結果(厚生労働省)

ホームレス生活の厳しい現実

ホームレス生活とは、どういう生活なのでしょうか。

これは、当時の大阪市内の数字ですが、路上で凍死や餓死をする人が、年間213人いることを知りました。

ホームレスは怠けているとそれまで思っていた私は、この数字を知り、路上生活は楽にできるものではないと感じました。

その後、中学・高校生活において、炊き出しに参加するようになりました。

炊き出しを続けてきましたが、親しくなったホームレスが亡くなられてしまうこともありました。

その方たちは、どこの誰か、名前も分からずに亡くなられるのですが、ある方は、「もう一度、畳の上で寝たい。」とおっしゃっていました。

▶編集注:亡くなられたホームレスの方と川口さんの交流については、貧困の連鎖を断ち、ホームレス状態からの再出発を支援する「Homedoor」(ICC FUKUOKA 2020)【文字起こし版】を、ぜひご覧ください。

「あそこに行けば、絶対になんとかなる」と思える場所を作りたい

そこで、ホームレス状態になったとしても、もう一度やり直せる、路上生活から脱出できるチャンスがあれば何とかなるのではないかと考えました。

高校生だった私は、1枚の、施設の間取り図を描きました(※) 。

▶編集注:この図をもとにして、川口さんは宿泊施設「アンドセンター」を設立されました。アンドセンターを2019年に訪問したレポート記事 高校3年生で描いた夢の施設が実現! Homedoorが作る、ホームレス状態脱出の仕組みもぜひご覧ください。

ここに駆け込めば路上生活から脱出できる、そんなコンセプトで始まったのが、Homedoorです。

6つのステップで路上脱出を支援

Homedoorでは、「路上から脱出したいと思ったら、脱出できる選択肢がある。」を理念に、6つのチャレンジと呼ばれる、6段階のホームレス支援のステップを考え、サポートをしています。

6つのチャレンジについて、動画をご覧ください。

1つ目のチャレンジは、「届ける」ことです。

お弁当をホームレスの人たちに配って、「良かったら、相談に来ませんか?」と声をかけます。

Homedoor(16-9)7分 19

翌日、相談に来られたら、まずは宿泊して頂きます。

5階建てのビルを1棟借り上げて、18部屋の個室を提供できる宿泊施設です。

行政が提供する宿泊施設は、250人が1部屋で、2段ベッドが並ぶような環境です。今はコロナの影響もあって、個室は重宝されています。

そして、彼らのための「仕事作り」をしており、大阪市内でシェアサイクル事業「HUBchari」を行っています。

例えば、大阪駅でホームレスをしていたおっちゃん(※) も、今では英語で接客の仕事をしています。

▶川口さんは、ホームレスの人を親しみを込めて”おっちゃん”と 呼ぶ。

他にも、行政や企業から受託した駐輪管理などの仕事を提供しています。

女性と若者の相談者が増加

Homedoorへの相談者数は、年々増え続けており、2019年度は前年の2倍でした。

そんな中でコロナの影響から、この1年の相談者数はついに1,000人を超えました。

Homedoorへの相談者の特徴は、個室であるからか、女性が2割という点です。

水商売が女性のセーフティネットだと言われますが、「Homedoorに来れば、ゆっくり個室に泊まれるから」と相談に来られる方が増えています。

もう一つの特徴は、若い相談者が増えていることです。

若い相談者の多く、親から虐待を受けた児童養護施設出身などの家庭環境に課題を抱える方、そして非正規雇用を転々としているような若い方々です。

おそらく、今日参加されている皆さんとそこまで年齢が変わらない人たちが相談に来られています。

相談者の選択肢を広げ、暮らしを支える

動画にも出てきましたが、相談に来られた際は5階建ての宿泊施設に滞在いただきながら、今後に向けてどうしたいかを話しつつ、次のステップに進まれていきます。

また、宿泊頂く際にも色々な生活サポートを提供しており、健康相談やカットモデルなどのメニューを開発しています。

仕事を提供し、「働く」を支える

仕事は、2019年度は8種類を提供しています。

Homedoorが雇い、Homedoorが支払う賃金を少しずつ貯めて、家を借りる資金にして頂くというサポートです。

その仕事の中でも、HUBchariが有名になりました。

これはシェアサイクルで、大阪市内に250拠点を構えています。

東京で、ドコモ・バイクシェアの赤い自転車を見たことがあるかと思いますが、ドコモ・バイクシェアにシステム提供いただいているのがHUBchariです。

再出発・再出発後に寄り添う

貯めた資金で家を借りられたら再出発ですが、その再出発に寄り添う、卒業後のサポートとして色々なイベントを開催し、来ていただくこともあります。

また、先ほどのアンドセンターと呼ばれる宿泊施設の横に、卒業生は月に1回無料でご飯を食べてもらえる、オカエリゴハンというカフェを作りました。

食×就労体験×交流カフェがオープン!
~ホームレス支援団体が「おかえりキッチン」を6月からオープンします~(PR TIMES)

もう少し詳しく知りたいという方がいらっしゃれば、2020年9月にダイヤモンド社から出版した本『14歳で”おっちゃん”と出会ってから、15年考えつづけてやっと見つけた「働く意味」』を、ぜひ読んでみてください。

▶編集注:6番目のステップは、「伝える」。Homedoorは、ホームレス問題への「誤解と偏見」を「関心と理解」に変える機会を提供する活動をされています。

「おっちゃんサポーター」になってください!

もう一つ、お願いがあります。

アンドセンターは、100%寄付で運営しています。

行政の施設だと、民業圧迫になってしまう等の理由で、250人1部屋、2段ベッドが並ぶような環境になってしまいます。

そこで私たちは、困っている時だからこそ個室でゆっくり休んでもらい、「もう一度頑張ろう」という英気を養ってもらえると信じて、サポートを続けています。

私たちは「おっちゃんサポーター」と呼んでいますが、毎月1口1,000円から定期的に寄付して頂ける方を集め、支援の輪を広げています。

ちなみに、Homedoorは認定NPO法人なので、寄付額の半分近くが税制優遇で還元されます。

今日の話を聞いて、本を読んで、気持ちが動いてサポーターになって頂けたら、とても嬉しいです。

サポーターになるためには、こちらのQRコードからアクセスできます。

ご静聴ありがとうございました。

▶編集注:サポーター(寄付会員)の申込み方法は、こちらをご覧ください。

▶こちらも合わせてご覧ください。
新企画のランチョン・セッションで、社会の変化に応える最新テクノロジーにキャッチアップ【ICC FUKUOKA 2021レポート】

(終)

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編集チーム:編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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