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ICC FUKUOKA 2023のセッション「伝統工芸・1次産業の今後求められるプロダクト開発とマーケティング戦略とは?」、全6回の②は、パン屋からスタートし、こだわりの品々を揃えるショップ「わざわざ」を運営する平田 はる香さんが、ものづくりにおける5つのルールを解説します。中川政七商店の中川 政七さんが語る、わざわざがセンスのいい店にとどまらない理由とは? ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは ノバセル です。
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【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 2G
伝統工芸・1次産業の今後求められるプロダクト開発とマーケティング戦略とは?
Supported by ノバセル
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▶「伝統工芸・1次産業の今後求められるプロダクト開発とマーケティング戦略とは?」の配信済み記事一覧
各務 話題を広げるためにも、工芸も含めさまざまな商材を扱っていらっしゃる平田さんの事例も、お聞かせいただけますか?
5つのルールでものづくり。わざわざ 平田さん
平田 はる香さん(以下、平田) はい、ありがとうございます。
わざわざという会社をやっています。
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平田 はる香
株式会社わざわざ
代表取締役
1976年生まれ 2009年長野県東御市の山の上に趣味であった日用品の収集とパンの製造を掛け合わせた店「わざわざ」を一人で開業する。段々とスタッフが増え2017年に株式会社わざわざ設立した。2019年東御市内に2店舗目となる喫茶/ギャラリー/本屋「問tou」を出店。2020年度で従業員20数名で年商3億3千万円を達成。2023年度に3,4店舗目となるコンビニ型店舗「わざマート」、体験型施設「よき生活研究所」を同市内に出店。
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小売を中心にやっているのですが、売上高の20%はオリジナル商品で占めていまして、それをもっと上げていこうという取り組みをしています。
その中で、うちの商品の作り方は2軸あります。
1つ目が「機能性商品」というタイプで、機能性、耐久性、汎用性、普遍性と書きましたが、左側の写真は、そういうものを大切にした、「パン屋のTシャツ」という名前のTシャツです。
パン屋が着ても大丈夫というコンセプトにしていて、堅牢性が非常に高く、汚れや水にも強い商品です。
他には、湯たんぽみたいに暖かい靴下(「アランウール靴下」)など、機能に特化させた商品づくりをしています。
残反や残糸をアップサイクル
平田 2つ目は「再生系商品」といって、残反、残糸、つまり工場で余った布や糸を使った商品をリサイクルやアップサイクルの視点で作ります。
右側は「わざわざ 残糸靴下」ですが、長野県の靴下工場で余った糸を使い、最も簡単に編める編み方で単純化して作りました。
残糸は糸の種類が全部違うので、工場と連携してシステムを組んで、残り糸があと何mあるのか、何gあるのかを共有してデータ化して、そのデータをもとに私が糸の色を組んで作っています。
人気商品になりまして、今、年間でだいたい1万足ぐらい売れています。
3〜4年か経って、工場の残糸をほとんど使い尽くしました(笑)。
岩田 じゃあ、もう作れなくなっちゃう?
平田 そういう話をネットに書いていたら、困っている工場から連絡があって、買い取ってくれないかと。
それで、私たちはトラックを出して買い取りに行きました。
先方は捨てる予定だったので、すごいありがたいと思っていただいたようです。
岩田 尾州にもたくさんあると思うので、今度買いに来ていただけると。
平田 (笑)。私たちの事例でしたが、その2軸で今商品を作っています。
岩田 ちなみに僕は今回湯たんぽみたいに暖かい靴下を履いています。
平田 あっ! ありがとうございます。
坊垣 あったかいですか?
岩田 めちゃめちゃ今あったかくて。
坊垣 今、足元からサーキュレーターの風が当たって少し寒いですけれど。
平田 そうですね(笑)。
岩田 足がすごくあったかい(笑)。
(一同笑)
工場の困りごとと得意をかけ合わせて、世の中にないものを作る
岩田 会場の方で、わざわざのサイトを見たことがあるという方はいらっしゃいますか?
平田 (会場で手が挙がる様子を見て)ありがとうございます。嬉しいです。
岩田 まあまあいらっしゃいますね。
わざわざは、一つひとつが非常に丁寧にストーリーというか背景も書いていらっしゃって、この靴下は最初の商品ですと書いてあったと思いますが。
▶<湯たんぽみたいに暖かいは嘘じゃない>(キナリノモール)
平田 そうです。2012年に。
岩田 何ページあるんだろうみたいな、情報のアップデートもしていて。
それはこのルールにつながってくるんですね。
平田 はい。5つのルールを最初に定めました。
これだけもののあふれた社会の中で、作る必要性が本当にあるのかということで、世の中に見当たらなかったら作りましょうというきっかけを定めています。
作る必要性があったら、工場の技術を活かして生産効率のよい作り方を目指します。
あとは丈夫で長持ち、ゴミになりにくいものづくり、ゴミになりそうな余っている資源を活かしたものづくりをします。
梱包はできるだけNO PLASTICで、ほとんど梱包にプラスチック材を使っていません。
右側の「残糸ザンシンバッグ」というバッグも工場の余り糸で出来ていて、包装資材も印刷工場の残紙を使っています。
しかもそれをまとめる紐も靴下工場で余った紐を使っていて、もともと世には出なかった、捨てられる運命だったものを拾い上げてプロダクトにしています。
岩田 では、売上をいくらにするぞという目標があってものづくりをするというよりは、こういうものを世に出したいというか、ものづくりをしたいという想いがあって、結果的に売上が来るみたいな発想ですか?
平田 そうですね。
どちらかというと、私たちが小売をやっていく中で、工場とかなり関係性を深めていて、工場に通っていると、「平田さん、糸が余っているけれど、どう思う? 何か使い道ない?」など、困りごとを生産者の方から相談されるのです。
それがきっかけになって、「じゃあ考えてみますね」となって、そこで意見交換します。
ずっと工場を回っているので、その工場では何が得意かも把握していて、その技術を使って、単純化して、生産効率を上げて、たくさん作りましょうみたいになります。
定番商品しか作らず、とりあえず1回それが回れば毎年回るので、工場はすごく喜ぶんですよね。
そういう協働して作って世の中に出したいみたいな、それが売れると一番いいんじゃないかという考え方をしています。
岩田 先ほど(前Part参照)秋元さんからマーケットイン的な話もあった中で、プロダクトアウトというわけでもないですか?
平田 インしながらアウトするみたいな(笑)、両方やりたいですね。
プロダクトアウトばかりし過ぎるとユーザーの方に届かなくなってしまうので、やはりそこはすごく大切にしています。
ユーザーからお話を聞いて、こういうものが欲しいといった声から拾い上げて、そこから5つのルールの1番目の、世の中に見当たらないから作るというところにつながっていますね。
わざわざがセンスのいい店にとどまらない理由
中川 政七さん(以下、中川) わざわざの新しいところは…、全国の地方にだいたい1軒くらい、めちゃめちゃセンスのいいお店ってあるじゃないですか。
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中川 政七
株式会社中川政七商店
代表取締役会長
1974年生まれ。京都大学法学部卒業後、2000年富士通株式会社入社。2002年に株式会社中川政七商店に入社し、2008年に十三代社長に就任、2018年より会長を務める。業界初の工芸をベースにしたSPA業態を確立し、「日本の工芸を元気にする!」というビジョンのもと、業界特化型の経営コンサルティング事業や教育事業を開始。現在は学生経営×地方創生プロジェクト「アナザー・ジャパン」や、志あるブランドを世の中に届ける共同体「PARaDE」を発足。企業やブランドのビジョン・思想を「ライフスタンス®」と提唱し、新しい経済の形を生み出している。
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岩田 うんうん、ありますね。
坊垣 ある!
中川 でもその多くには、基本的にセンスしかないんですよね。
そこに社会性とかロジカルな思考回路みたいなところがあるのが、わざわざの、日本全国でここしかないという感じを作っていて、それが素晴らしいなと思います。
岩田 こうやって、ちゃんと言語化もできていて。
中川 そうなんですよ。別にセンスのいいお店を批判しているわけではないんですけど。
坊垣 どちらかというと、こぢんまり、こだわりの中でやられているところが多くて、そういうところを探していくのも楽しいですが、内に閉じ切らず、そのセンスと考え方を協業の中で活かしていく。
中川 いい意味でちゃんと経済に結びついているところが素晴らしいです。
坊垣 そうですね。素晴らしい。
技術を活かしながら効率をよくする
岩田 伺っていて思ったのですが、ちゃんとシンプルにして、作りやすくするみたいなことを言ってくれるデザイナーは、本当に少ないじゃないですか。
平田 そうですね。
作りたいものを作ろうとすると、工程が複雑になってしまって、結構工場泣かせになるんですよね。
そこは、技術は活かすのだけれども、効率をよくします。
技術が無くなってしまうと、その工場の色が無くなってしまうので、得意なところは絶対活かしたくて。
このバッグも全部ホールガーメント(無縫製ニットウェア)で作られているのですが、島精機製作所の編み機を非常にたくさん持っている靴下工場だったんです。
そんな工場はなかなかないのですが、その靴下工場には20台ぐらい、あるんですよね。
それを繁忙期以外に回すには、靴下だとちょっとだめだねとなって、バッグだったら通年でできるということで、工場の生産稼働率も上げるような仕組みを作ってやりました。
坊垣 売り方は、店舗がメインですか?
平田 今はもうECが7〜8割ぐらいです。
坊垣 店舗から始められてですよね?
平田 はい。
岩田 パン屋さんからですものね。
平田 はい、パン屋さんからです(笑)。
各務 良いものを作っているけれど、なかなかお客様に出会えないという課題が僕の周りでも非常に多いので、その辺りをぜひ次の質問で教えていただきたいなと思います。
平田 はい。ありがとうございます。
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成