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5. プロダクト開発とユーザーコミュニケーションは企画の段階で考えよう

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ICC FUKUOKA 2023のセッション「伝統工芸・1次産業の今後求められるプロダクト開発とマーケティング戦略とは?」、全6回の⑤は、これからのマーケティングのポイントを議論します。ビビッドガーデン 秋元 里奈さんによる好事例は切り口もさまざま。マーケティングではなく自分たち起点で商品開発を進める中川政七商店の思想も語られます。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください

本セッションのオフィシャルサポーターは ノバセル です。


【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 2G
伝統工芸・1次産業の今後求められるプロダクト開発とマーケティング戦略とは?
Supported by ノバセル

「伝統工芸・1次産業の今後求められるプロダクト開発とマーケティング戦略とは?」の配信済み記事一覧


各務 すでに流れで、今後のマーケティング戦略にも話が及んでいますが、2つ目のトピックの「これからのマーケティングのポイントは?」ということで、食べチョク秋元さん、事例をご紹介いただいてもよろしいですか?

生産者と地元メディアのタッグに活路

秋元 生産者さんの中でマーケティングをすごく頑張られている方をご紹介していますが、ふく成さんはどちらかというとPR寄りですね。

広報PRがすごく上手で、先ほど(Part.1参照)もご紹介しましたが、商品開発をちゃんとやっているところもそうですし、届けるところもすごく工夫されています。

生産者さんは地方の方が多いですが、ふく成さんは熊本のテレビ局とすごく仲がいいです。

地元のネタだと、タイミングが合えば、地方のテレビ局には取り上げてもらいやすかったりするんですね。

それが良ければ全国放送に流れたりするので、テレビ局の取材が来たときに、ふく成さんはディレクターさんとすごく仲良くなって、新商品を出すたびにちゃんと連絡をしています。

生産者さんですけれどしっかり広報PRをやっていて、熊本のテレビで頻繁に露出をして、実際に全国放送にも出られている方ですね。

すごく上手くメディアを活かしてやられています。

ふく成さんに入っていただいてから、突然、食べチョクの生産者数が熊本で激増しました。

熊本のテレビで、ふく成さんが「食べチョクで販売しています」と言ってくださったのを生産者さんが見て登録してくれたりしました。

それぐらいメディアのインパクトを上手く活かしている事例ですね。

次は、こちらは…、CAMPFIREじゃないですか? 大丈夫かな。

岩田 (笑)。

坊垣 全然どっちでも大丈夫(笑)。

秋元 ありがとうございます(笑)。この稲作本店さんはお米の農家ですが、まさにストーリーをしっかり伝えてファンを作っていく目的でクラウドファンディングの活用をされています。

ひろの屋さんは、ちょうどこの会場にいらしていて、ICCでは北三陸ファクトリーさんとして出ていらっしゃいます。

「ICC 北三陸ファクトリー」で検索していただけると、プレゼン動画が出てくるので、ぜひそちらを見てください。

Made by Japanを世界へ。「北三陸ファクトリー」はうにの再生養殖で地域と水産業の新時代を創る(ICC FUKUOKA 2023)

すごく簡単に書いていますが、ひろの屋さんは大学と共同研究されたりしていて、うにの養殖技術で新しい技術を開発されて、それを日本だけでなく海外で展開していかれています。

それぞれ全然切り口が違いますが、皆さん、拡大されている事例です。

岩田 食べチョクが支援したりするんですか?

秋元 お声がけいただいたらサポートさせていただくこともあります。

ものによってこういった事例をご紹介したり、うちは結構メディアさんとのつながりがあるので、生産者さんが新商品を出したとお知らせいただいたら、興味を持ってもらえそうなメディアさんにご連絡したり、広報PRのサポートはさせていただいています。

ユーザーの声で商品の独自性に気づくことも

各務 先ほど、メロンをジュレにしたり、いくつかの商品開発のポイントを教えていただきました(Part.1参照)。

僕の周りにいらっしゃる農家さんでも、無農薬などで、手間をかけて、とても良いものづくりをしていらっしゃるのに、どう発信していいのか分からない、そういうときに、これとこれはやったほうがいいというアドバイスは、いくつかありますでしょうか?

秋元 そうですね、坊垣さんのお話に近いかもしれませんが、お客さんがどう使っているか、まず見ましょうという話をさせていただきます(前Part参照)。

だいたい食べチョクに出品すると、少なくとも数件くらいは売れたりします。

お客さんがこういうふうに食べましたとかレビューを載せてくれるので、まずはどのように使っているか、そこでのやりとりを通して、自分の商品が刺さった人がどういう人なのかを具体的にイメージしていったほうがいいのではないかという話は、よくさせていただきますね。

本当に手段はたくさんありますし、同じやり方をして全員が売れるわけではないですが、自分たちの商品の独自性がどこなのかを生産者さんが実は説明できなかったり、お客さんのほうがそれを知っていたりするので、お客さんの声を聞くことを最初にお伝えしているところです。

坊垣 そうですね、多分話しているうちに自分では分からなくなってしまうんですよね。

あそこにも、ここにも、そこにもこだわっているのだけれど、それが客観的に、世の中的にどこが一番強みになりそうか、いわゆるユーザーニーズにどうはめていけるのかは、客観性を持ってアドバイスしてもらって初めて気づくところがあります。

まさに、ユーザーヒアリングの中で整理されていくことは結構あります。

秋元 そうですね。あと今思い出したのですが、小さいメディアさんにでも取材を受けると、メディアさんが言語化してくれますよね。

岩田 ああ、それありますね。

秋元 それが一番いいなと思っています。

メディアさんは、バーっと話したことを、いわゆる初めて聞いた視点で、一番エッジが立ったところを上手く記事にしてくれるので、小さいところでも取材を受けることで、言語化されてくることはある気がします。

各務 確かにそうですね。

食べチョクさんのユーザーの中には、ライフスタンスに共鳴して購入される方もある程度いらっしゃると思います。

そんな、農家さんの想いに共感して購入するユーザーがどんな年齢層で、どんな価値観をお持ちなのか?など、ユーザーペルソナを教えて頂けますか?

秋元 食べチョクの場合、登録ユーザー数が85万人ぐらいいるのですが、8割が主婦の方で、年代で言うとだいたい40〜50代が多いです。

少し上の世代で、少し落ち着いて料理をする時間もしっかりあるような方たちなので、時短のニーズは勿論ありますが、どちらかというと時短ニーズというよりは、丁寧な暮らしをしたいという方もボリュームとしては結構いらっしゃいます。

世の中的には時短ニーズのほうが大きいですが、食べチョクでは半々ぐらいというか、両方とも結構いらっしゃる感じです。

各務 そんな2つの異なるユーザーへ訴求するのに、コアになるメッセージは何か見えていらっしゃいますか?

秋元 結構、うちの悩みのポイントではありますが、ユーザーのニーズが幅広いのです。

つまり丁寧な暮らしをしたい方もいれば、実は時短ニーズがある方もいて、贈り物で使う方もいてと、お客さんの幅が結構広いので、商品もその分幅広いです。

いろいろな商品が売れるのでそれはそれでいいのですが、プラットフォームとして何のメッセージを1つ出すかというのは、結構難しいよねという話をしています。

坊垣 難しいですよね。多分同じ悩みを。

岩田 ライフスタンスをバシッと出してしまったら、プラットフォームとしては狭まってしまいますものね。

秋元 そうなんですよね。

坊垣 プラットフォームとしてのターゲットの設計はすごく難しいです。

岩田 ちょっとずれた話かもしれませんが、中川政七商店とわざわざの顧客層は同じ人がいそうだなという感じがするのですが、今回自分でも買ってみて思ったのですが、食べチョクとわざわざの客層が一緒かなといったら違うような気がします。

Makuakeは、もうちょっとテック寄りというか。

坊垣 そうですね、テック寄りの商品も。

岩田 その辺りで、みんなお互いどこが似ているよねとか、あったりしますか?

平田 うちの主力の客層は、割と広いんですよね。

データを取ると、店舗とオンラインとでかなり分かれています。

オンラインは食べョクさんとかなり似ていて、40代女性が一番多いです。

でも、店舗でデータを取ると20代が一番多くなるんですね。

最近男性のユーザーも店舗で増えていて、20〜70代までの男女になっています。

すごく幅広い層が来店していて、主力は30〜40代の女性です。

坊垣 どちらかというと、年齢や男女というよりは嗜好性、まさにライフスタイルや価値観、属性とかで、ターゲットを分けたりしています。

岩田 そういう意味でいうと、4社とも丁寧な暮らしや社会性を持って活動をするという部分で、共通した人が買い回っている可能性はありますかね? それとも使い分けているのかな?

坊垣 ゼロではないと思いますが、例えばMakuakeで言うと、比較的サイトの成長に合わせてユーザーゾーンが変わりつつ広がりつつみたいなところがあります。

初期から上場ぐらいまでのタイミングは、ガジェット系も含めてアメリカ的クラウドファンディングのイメージを、私たちも多少持っていたところもあります。

運営がそちらに多少寄っていたところもあって、そうするとやはり客層は30〜40代の新しいもの好きの男性でした。

そこからコロナなどもあって、飲食店もクラフト系も、実際フード・ドリンク系、日本酒なども増えてきて、より幅が広がった中で女性が増えてきたり、年齢層の幅が広がったりみたいなこともあるので、うちは成長に合わせて多少変遷があるんですよね。

ブランディングは自分たち起点で

各務 皆様のお話の中で、やはりマーケティングが大事だと、ユーザー像を思い浮かべて、そのペインを解決するものを商品開発すべきだみたいなお話があったと思います。

中川さんは、そのユーザー像を思い浮かべるときの発見の仕方というか、そういうことで工芸の皆様にアドバイスしていらっしゃることはありますか?

中川 今回、この「これからのマーケティングのポイントは?」という質問への答え方が難しくて、マーケティングって何?と思いながら、マーケティングと呼ばれるものはしていないし、ユーザー像も作っていないんです。

各務 作っていないんですね。

中川 作っていないですね。一切そういうことをやらないですね。

各務 逆に言うと、では何をベースに商品を開発されていますか?

中川 マーケットを全く見ないわけではないけれど、基本的には自分たちがつくりたいもの起点だと思っています。

多少語弊はあるものの、マーケティングが市場起点だとするならば、ブランディングは自分たち起点だというふうに言っています。

どのみち中小企業なので、別にこの商品で100億円売り上げなければいけないとかなく、自分たちの良いところをちゃんと商品に出して、そして思想がその商品を通じて届くように作れば、共感していただけると思っています。

だから考えたことは、あまり無いです。

坊垣 マーケティングもいろいろな手法が出て進んできた中で、行き着くところが同じになってしまうというか、いわゆるマーケットインの発想になりすぎると思っています。

結局、本当のオリジナルは、中からしか生まれないと思っています。

実は、メーカーさんとの打ち合わせで、そのストーリー、その技術の歴史、今語っていらっしゃることが強みですよみたいなお話をすることも結構あります。

そういう意味でも、中川さんがおっしゃることにすごく共感できます。

コンテンツとコミュニケーションはセットで考える

岩田 ブランディングを、自分起点で作ったものが合う人に適切に知ってもらうきっかけ作りが必要ですよね?

中川 そうですね。

岩田 そのときにはマーケティング的思考で、こういうところに出稿すべきだとか、こういうところに出すべきだということを考えるということなんですか?

ブランド作りは自分でやるじゃないですか。

中川 「ブランディング」を何と定義するかなのですが、コンテンツとコミュニケーションの掛け算だと思っているので、コンテンツを作るときにコミュニケーションはもう見えています。

それはセットで考えないといけないと思うんですね。

さっきのお話を聴きながら、うちで言うとどういうことかなと思っていたのは、うちは商品企画を社内でやっていますが、商品企画をするとき、デザインをする前に組立シートというものを書きます。

この商品をお客さんに説明するときに、何を一番に、どう伝えるのかみたいな。

言い方を変えると、例えば雑誌インタビューで、「この商品は何で開発されたのですか?」と聞かれたときに、どう答えるのかということを先に、デザインなどする前に書かせられるんですよね。

それが多分そういうことなんだと思います。

岩田 コンテンツ×コミュニケーションが、もう企画の段階から。

中川 そうなんですよね。

だから、あまり切り離されたものとして見ていないし、商品企画の段階で見えているので、大手の縦割りの、研究開発チームがあって、商品企画があって、デザインがあって、広告宣伝という伝言ゲームではなくて、すべての伝言は、もう最初のところで全部作られています。

あとは、組織が動いていく中でそれをロスしないでちゃんと伝えていくということをやっている感覚です。

坊垣 私たち自身、多分、食べチョクさんもそうだと思うのですが、IT企業じゃないですか。

ITの機能開発においても、日本CPO協会のトップの方とかがおっしゃっていたのですが、新しく作った機能もPR(preview release)から使ってくれないと意味が無いので、だからリリースから考えるそうです。

岩田 ほう、なるほどね。

坊垣 そのとおりだなと思って。

中川 似た感覚ですね。

岩田 コードを書く前にですね。

坊垣 私はもともとサイバーエージェント時代に、PRの領域の人間だったので、そちらの知識はあるのですが、そうかそうか、そこもそうだよな、同じだよな、プロダクトだものねと思って、すべてそうなんだと思いますね。

ブランドのあり方で規模感が決まる

各務 それは適正サイズがあるのかなという気もしますが、このサイズ感まではブランド・オリエンテッドでいける、メッセージ・オリエンテッドでいけるみたいなのは、何か感じていらっしゃるものはありますか?

中川 ブランドの設計次第だと思うんですよ。

そのブランドがどういうあり方かによって、ブランドの適切な規模感が決まると思います。

ブランドの作り方によっては、1,000億円のブランドも、2,000億のブランドも作れるし、ある作り方をしてしまうと、それは10億円が限界だから、それ以上いくのはやめたほうがいいということになるかもしれないという感じです。

各務 マーケティングをしなくても、作り方次第では規模にかかわらず、そのやり方でいけるんじゃないかと。

中川 そうですね、先ほどの4:3:3ではないけれど(前Part参照)、伝わりにくいことが大切になってくるので、この「これからのマーケティングのポイントは?」に対しては、やはりリアルでちゃんとお店でやることだよねと僕は思っています。

コロナでだいぶいろいろなことが言われましたが、うちは一貫してリアルをやめるつもりは一切無く、この間もずっとお店を出し続けていて、近年お店は適正規模に近づいてきました。

中川政七商店が直営店を持つ理由

各務 お店でないと伝わらないものとは、どういうものですか?

中川 僕らは機能的にとか、値段で勝負とかではないので、僕らのように、いわゆるそういう分かりやすい便益で勝負しない場合、ライフスタンスまでいかずとも、やはり分かりにくいこと、伝わりにくいことで勝負しています。

伝わりにくいことが、深く話すことで共感され、それで買ってもらえるという世界なので、それをやろうと思うと、やはり人でないと無理なんですね。

かつ社内の人じゃないと伝わりにくいので、商売をやっていて思うのは、サバを売りたいと言って、サバを売ろうと言うんだけれど、途中でシメサバになって、しまいにお寿司になって、最後に柿の葉寿司になってみたいなことって起こってしまうんですよね。

だから、そうではなくて、サバ、サバ、サバ、サバと、ちゃんとつないでいくには自分たちの中でやっていく。

だから直営店は、これからもちゃんとやっていかなきゃなという感覚です。

岩田 1次生産者や工芸の人自身は、正直SKU(Stock keeping Unit 在庫管理の最小単位)とかレパートリーが少ない中で、店舗をやるのは難しいと思いますが。

坊垣 難しいですね、直営の実店舗は。

中川 直接伝えるという意味では、食べチョクさんやMakuakeさんが規模に関係無くやらせてくれるじゃないですか。

だから、フェーズによっては非常にありがたいと思うんです。

岩田 でも将来的には、やはり自分のお店を持ってということですか?

中川 それはどこを目指すか、規模感、どういうブランドを作るかによるので、生産量として限られているのであれば、Makuakeや食べチョクで定期的にお世話になるだけで回っていくという世界があるので、それを間違わないことだと思うんですね。

(続)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

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