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ICC FUKUOKA 2023のセッション「伝統工芸・1次産業の今後求められるプロダクト開発とマーケティング戦略とは?」、全6回の①は、8,200軒の生産者が登録する「食べチョク」を運営するビビッドガーデン 秋元 里奈さんが、商品開発力に長けている生産者を紹介します。モデレーターは三星 岩田 真吾さんと、電通 各務 亮さん。マーケットインの発想を取り入れることで、多くのファンを獲得している事例を、ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは ノバセル です。
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【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 2G
伝統工芸・1次産業の今後求められるプロダクト開発とマーケティング戦略とは?
Supported by ノバセル
(スピーカー)
秋元 里奈
株式会社ビビッドガーデン
代表取締役社長
中川 政七
株式会社 中川政七商店
代表取締役会長
平田 はる香
株式会社わざわざ
代表取締役
坊垣 佳奈
株式会社マクアケ
共同創業者 / 取締役
(モデレーター)
岩田 真吾
三星グループ
代表取締役社長
各務 亮
株式会社 電通
Creative Director
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▶「伝統工芸・1次産業の今後求められるプロダクト開発とマーケティング戦略とは?」の配信済み記事一覧
各務 亮さん(以下、岩田) 岩田さん、登壇前にいろいろ盛り上げてくださいましてありがとうございます。
坊垣 佳奈さん(以下、坊垣) そもそもモデレーターが2人のセッションは、あまり多くないですよね。
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坊垣 佳奈
株式会社マクアケ
共同創業者/取締役
同志社大学卒業後、2006年に株式会社サイバーエージェントに入社。株式会社サイバー・バズの他ゲーム子会社2社を経て、2013年株式会社マクアケの立ち上げに共同創業者・取締役として参画。
アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」の事業拡大に従事しながらも、 全国各地での講演や金融機関・自治体との連携などを通した地方創生にも尽力。女性社員が多いマクアケでは、多様なライフスタイルを望む若い世代の活躍推進を意識した組織運営を行う。また、ENECHANGE株式会社の社外取締役、ACAO SPA & RESORT株式会社の社外取締役も務めており、XTalent株式会社の外部アドバイザーにも就任している。教育分野ではiU(情報経営イノベーション専門職大学)の客員教授なども歴任しており、ACCやTBDAなどのクリエイティブ・デザイン・PRやブランディング関連賞の審査員なども務めている。2021年4月、著書『Makuake式「売れる」の新法則』を出版。
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岩田 真吾さん(以下、岩田) そんなに多くないです。
唯一かなと思ったら、もう1つくらいありましたが、ここでは完全にちゃんと締めてくれる各務さんと、拡散させる私と役割が分かれています(笑)。
坊垣 すごく素敵な組み合わせだなと思います。
岩田 ありがとうございます。
各務 このコロナ禍での3年間、京都の伝統工芸、一次産業に携わる方々のお手伝いをさせていただいて、切実に大変な思いをしていらっしゃること感じています。。
本日は、そんな方達へのヒントとして、今後のプロダクト開発とマーケティング戦略を指南いただくのにこの上ないプロフェッショナル達が、揃っています。
京都のそんな切実な状況にある仲間の代理として、素直に教えを請いたい、今日はそんな気持ちです。
ですので、本日のトピックは、主催者のICC小林 雅さんからいただいたお題そのまま、伝統工芸・1次産業の今後求められるプロダクト開発、そしてマーケティング戦略とは?へのそれぞれのお考えを順番にお伺いしていきたいと思います。
坊垣 モデレーターのお2人にも、自己紹介をしてほしいです。
会場の皆さんに、何をやっている方々か、伝わるといいかなと。
モデレーターは三星 岩田さんと電通 各務さん
岩田 確かに。考えてみたら、知らない方も結構いますものね。
お話しいただくのはスピーカーの皆さんですが、ちゃちゃを入れる僕と締める各務さんはいったい何者なのか、最初に簡単に自己紹介しますね。
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岩田 真吾
三星グループ代表
1887年創業の素材メーカー「三星グループ」の五代目アトツギ。慶應大学を卒業後、三菱商事、ボストンコンサルティンググループを経て2010年より現職。欧州展開や自社ブランド立ち上げ、ウール再生循環プロジェクトReBirth WOOL等を進める。2019年にジャパン・テキスタイル・コンテストでグランプリ(経済産業大臣賞)を、2022年にForbes JAPAN起業家ランキング特別賞を受賞。2021年に産業観光イベント「ひつじサミット尾州」の代表発起人を務め、1.5万人超を動員。2022年にはベンチャー×アトツギ共創基地TAKIBI & Co. (タキビコ)をスタート。個人として認定NPO法人Homedoor理事、株式会社AB&Company(東証GRT9251)社外取締役、フィンランド・サウナ・アンバサダー等も務める。
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三星グループは、1887年に、私のひいひいおばあさんが創業した繊維の会社です。
ウールを中心とした天然繊維を、きっと皆さんがお持ちの、LとかVとか付いたりする服だったり、GとかHとか付いているブランドに直接卸しています。
つまり日本の中で一番高品質なものづくり、素材づくりを頑張ってやっている会社の5代目のアトツギです。
先ほど拡散の話もしましたが、僕はセッションは登壇している側だけで作るものではないと心底思っているので、会場の皆さんをいかに巻き込むかや、会場の皆さんが聞きたいだろうなということを代表してツッコむ係です。
もし、もっとこれについて聞きたいということであれば、積極的に参加してください。
よろしくお願いします。
各務 よろしくお願いします。
僕は京都に10年間住まわせていただいています。
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各務 亮
株式会社電通
クリエイティブ ディレクター
2002年から中国、シンガポール、インドなど電通海外拠点を移り住み、2012 年から京都支社へ。京都から日本ならではのグローバル価値を生み出すべく 「GO ON」「太秦江戸酒場」「夕暮能」「THE KYOTO」など伝統に異分野を掛け合わせた全 く新しい商品、サービス、事業を多数立ち上げ。佐治敬三賞、カンヌライオン、D&ADなど受賞。内閣府 クー ルジャパン戦略推進会議メンバー、経産省 クールジャパンビジネスプロデューサー、観光庁 目利きプロデューサー、 京都市 産業戦略懇談会委員、京都市 京都市伝統産業活性化推進審議会 委員など歴任。著書に「すべてのビジネスに日本らしさを。」(クロスメディア・パ ブリッシング)
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先ほど申し上げたように、京都の職人さん、茶の湯、能、生け花のような伝統文化に携わる皆様とお仕事させていただいています。
素晴らしい伝統ながら、次世代への継承が難しくなっている文化、それを、アート、ファッション、デザイン等と掛け合わせ新しい商品開発したり、サービス開発したりしています。
京都の前は海外で10年、仕事していたので、よそ者ならではの強みで、お節介をさせて頂いております。
岩田 各務さんは世間的な電通マンのイメージと一番対極にいらっしゃる。
坊垣 本当に。
各務 いやいや……、僕の話はこれくらいにして、本題に入らせていただいてよろしいですか?
岩田 じゃあ許してあげます、はい(笑)。
各務 スピーカーの皆さんに、先ほどのお題を出させていただきました。
秋元さん、平田さんにはお付き合いある生産者さんの具体的な成功事例を多数ご用意いただきましたので、それをご説明いただきながら、中川さん(中川 政七さん)や坊垣さんは、今後の大きな流れや成功の法則を整理頂いておりますので、それを紹介頂きながら、進行させていただければと思います。
早速、1つ目のトピック、「これからの商品開発のポイントは?」です。
本当に京都も大変です。大きく言うと、過去10年で工芸企業の出荷額は半分になりました。
そんな中でも、一部のDXに成功している、D2Cに成功している企業は売上を伸ばしています。
この環境は、1次産業、その他地域の工芸産業の中でもきっと共通すると思います。
では、DXに成功している企業は何が違うのか?どんな商品を開発しているのか?その辺りを解像度を上げて、ぜひ聞かせていただければと思います。
まずは秋元さんから、自己紹介と一緒に、事例ご紹介いただけますか?
商品開発力に長けている生産者を紹介。食べチョク 秋元さん
秋元 里奈さん(以下、秋元) ありがとうございます。食べチョク代表の秋元と申します。
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秋元 里奈
食べチョク
代表
神奈川県相模原市の野菜農家に生まれる。 慶應義塾大学理工学部を卒業した後、2013年に株式会社ディー・エヌ・エーへ新卒入社。webサービスのディレクター、営業チームリーダー、新規事業の立ち上げ、スマートフォンアプリのマーケティング責任者などを経験。 2016年11月に一次産業分野の課題に直面し株式会社ビビッドガーデンを創業。2017年8月にこだわり生産者が集うオンライン直売所「食べチョク」を正式リリース。リリース3年で認知度/利用率No.1の産直通販サイトに成長。2020年4月にアジアを代表する30歳未満の30人「Forbes 30 Under 30 Asia」に選出。2020年9月にTBSの報道番組「Nスタ」の水曜レギュラーコメンテーターに就任。その他、日本テレビ「スッキリ」コメンテーター、フジテレビ系列「セブンルール」、テレビ東京「カンブリア宮殿」など出演。オンオフ問わず365日24時間着ている「食べチョクTシャツ」がトレードマーク。2021年2月に初著書『365日 #Tシャツ起業家』を出版。
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「食べチョク」はマーケットプレイスのサービスで、全国の農家さん、漁師さんから直接食材を購入できるサービスを運営しています。
今、全国から8,200軒の生産者さんにご登録いただいています。
だいたい5万点くらいの商品が出されているサイトです。
食べチョクは1次産業の方が商品を作って販売しているサイトですが、今日はその中でも商品開発力に長けていて、人気のある方の事例をご紹介します。
左側は、とらふぐと真鯛の生産者さん(ふく成)の事例です。
もともと飲食店の卸だけをしていましたが、コロナで販路が無くなってしまったので、消費者向けに一気に舵を切って、前年対比2倍ぐらいにV字回復した漁師さんの事例です。
右側は、メロン農家さんで、個人の農家さん(篤農)ですが、ブランドとしてすごく際立っている方です。
この生産者さんたちに共通しているのは、コロナなどで時代が大きく変わったときに、一気に自分のターゲットをガラッと変えて、商品もそこに合わせたことです。
例えば、ふく成さんの場合は、今までtoBだったところをtoCに売るために、どういうニーズなんだろうといろいろユーザー調査をして、簡単にとらふぐや真鯛が食べられる状態を作ろうと、冷凍設備などを全部整備して、冷凍食品を開発して販売しました。
▶養殖xテクノロジーで、こどもたちの未来に持続可能な水産業をつなぐ「ふく成」(ICC FUKUOKA 2023)
マーケットインの発想を持てるかどうか
秋元 そういうマーケットに合わせて、しっかり手段や商品を変えていける、いわゆるマーケットインの発想を持てることがベースとして重要なのかなというところですね。
普通のビジネスからすると当たり前かもしれませんが、やはりプロダクトアウトの思考が強くなってしまいがちなので、そこが上手くできている生産者さんは多くのファンを作れている印象です。
▶マーケットインとプロダクトアウトの違い(リブ・コンサルティング)
坊垣 今日、フード & ドリンク アワードの会場にいらしているんですよ。
秋元 そうです!
坊垣 私は審査員を務めていたので、さっき食べてきました。
秋元 ああ、そうなんですね。
岩田 両方あるんですか?
坊垣 左側のふく成さんの商品がありました。
実際、社員さんの中にも子育て中のお母さんたちがいらっしゃいましたが、食卓にすぐ出せるという点ですごく使いやすいですね。
▶15社が食を通じて伝えたい想いとは? ICC FUKUOKA 2023フード&ドリンクアワード全ブース紹介
岩田 農家さんのマーケットプレイスというと、てっきり生鮮品がそのまま箱に入った状態で届くのかなと思いましたが、今はすぐ食べられるように加工してあるもののほうが多いですか?
秋元 生鮮品も多いですが、入り口として加工したものを用意しているケースが多いですね。
例えば、このメロン農家さんはメロンをすりつぶしたピューレを作っているのですが、それが飛行機のファーストクラスに採用されているらしくて、それでブランド化して、ピューレを買う人はメロンも買うみたいな感じです。生鮮品も加工品も両方やるという方は、最近増えてきていますね。
▶【JALファーストクラス機内食に採用】無添加マスクメロンピューレ(食べチョク)
岩田 逆に言うと、素材だけでいいんだというスタンスの方は、あまり上手くいっていないんですか?
秋元 いえ。生鮮品だけ販売している方もたくさんいらっしゃって、ブランドで成功している事例だと、桃などですごく良くできたものを一部高値で販売しています。
例えば、1個1万円とか非常に高価ですが10個ぐらいしか採れないので、それ以外は普通の値段ですが、ベースがもともと1個1万円で売っているものという形になるので、売値が上がってブランド化している事例はありますね。
コロナ禍で「規格外」「未利用魚」の検索が増加
坊垣 最近、規格外とか、熟しすぎてしまったものを加工品にしているケースや、いわゆるサステナブルな発想で、商品開発をしている農家さんがすごく増えてきた印象があります。
秋元 まさに、次のスライドに入っているかもしれません。
左側は、リンゴ農家のもりやま園さんです。
リンゴには間引きの作業があって、小さい段階で間引きしますが、間引いたものは酸っぱくてそのままでは食べられません。
その酸っぱさを利用して、シードルとアップルサイダーに加工しています。
▶りんごの郷の未来を照らす、もりやま園の“摘果果”シードル(SHUN GATE)
真ん中の方(Koike lab. )は、まさに規格外の野菜でお菓子作りをされています。
右側の養鶏場の方(薄羽養鶏場)は卵を産めなくなってしまった鶏を使ってカレーを作っています。
今だとSDGsの文脈でも注目されていて、特にもりやま園さんはメディアに取り上げられています。
サステナブルな発想で、商品開発をしている農家さんは増えていますね。
岩田 ファッションだとサステナビリティは前提条件としては必要ですが、それが理由で買い物はしてくれないというのがよく言われる話です。
今紹介してくださったものはSDGsが理由で買い物するというよりは、お得に買えるとか、そういう理由ですか?
秋元 そうですね、やはりSDGsだけでということはないので、単純に商品が美味しいとか、独自性があったりします。
ただストーリーがあるとメディアで取り上げられやすいので、露出が獲得しやすいところはあると思います。
坊垣 結局味は変わらないと思うんですよ。規格外といっても品質は変わらないことが多いから。
岩田 1つ目の事例は、むしろ規格外の酸っぱいもののほうが、シードルとしては美味しいぐらいな感じですよね。
坊垣 そういう意味では、消費者も良いことに関われているけれど、いつもと同じものが手に入ると考えると、食の領域のそういう商品はすごくとっつきやすいような気がします。
秋元 食べチョクでどういうワードで何回検索されたかというデータを取っていますが、コロナ禍で「規格外」とか、「未利用魚」という漁獲量が少なかったり認知度が低い魚で市場価値がつかないなどの理由で普段は破棄されてしまうお魚の検索数が、この2年間ぐらいで3倍ぐらいになりました。
岩田 へえ。
秋元 そういう意味だと、そもそもそういうものの認知が進んだというのと、それを買いたい人もかなり多いんだなと感じますね。
長くなりましてすみません。
各務 いえいえ。もっと聞かせていただきたいのですが、話題を広げるためにも、工芸も含めさまざまな商材を扱っていらっしゃる平田さんの事例も、お聞かせいただけますか?
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成