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3. 読書で出会う「関係ないノイズ」「異質なもの」が、自分のアルゴリズムを強化する

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「大人の教養シリーズ『読書』〜ビジネスパーソンこそ本を読め!(シーズン2 )」全9回シリーズ(その3)は、今回加入した研究者、経営者、禅僧といったプロフィールの登壇者たちがいよいよ登場。自分にとっての読書を少しずつ明らかにしていきます。ただ読むだけでなく、読みながら何を意識しているのか。自分の仕事とのリンクを感じている方もいるようです。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2021は、2021年2月15日〜2月18日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

ICCサミット KYOTO 2020のプレミアム・スポンサーとして、Lexus International Co.様に本セッションをサポート頂きました。


【登壇者情報】
2020年9月1〜3日開催
ICCサミット KYOTO 2020
大人の教養シリーズ「読書」〜ビジネスパーソンこそ本を読め!(シーズン2 / 90分拡大版)
Supported by Lexus International Co.

(スピーカー)
嶋 浩一郎
株式会社博報堂 執行役員/株式会社博報堂ケトル エグゼクティブクリエイティブディレクター

渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー / 慶應義塾大学SFC特別招聘教授

(ゲスト)

川上(全龍)隆史
宗教法人 春光院
副住職

琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)

高田 修太
一般社団法人HLAB/株式会社エイチラボ
共同創設者COO / プロマジシャン

丸 幸弘
株式会社リバネス
代表取締役 グループCEO

大人の教養シリーズ「読書」〜ビジネスパーソンこそ本を読め!(シーズン2)の配信済み記事一覧


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最初の記事
ビジネスパーソンにとっての読書とは? シーズン2も本を語り尽くす!

1つ前の記事
本から学ぶのか、読書体験から学びを生むのか。前シーズンの名言を振り返る

本編

渡邉 シーズン1では、エアークローゼットの天沼さんが、本という対象を通して、価値観の相対化ができ、それがよい討論につながる、とおっしゃっていました。

ヤフーの井上さんも、西洋の企業文化には弁証法があり、アウフヘーベン(止揚)に至るにはまず対立が必要。アンチテーゼ、反論が要るとおっしゃっていました。

8. 本は「正解」ではない。異分子への健全な反論がイノベーションを生む

日本の組織だと、反論が嫌われるところもありますが、外資だとむしろ反論しないと怒られてしまう。

異分子が必要だということですね。日本の大企業だと、反論せずにうっかりこの異分子を受け入れてしまいます。黒船が来たら、「そういうものか」と受け入れてしまう。

井上さんは、これを「ダイバーシティの罠」と呼んでいます。異質であれば良いというわけではなく、既存のものと敢えて戦わせる中で、別の答えに至ったり、そこからジャンプしたりできる。少し労を費やすことが必要なんです。

 僕も読書の1つの魅力は、自分にとっての異分子というか、自分の価値観とは違う外部のものを受け入れることだと思います。

クリエイティビティやアイデアというのは、結局異なる価値観の摩擦の中で生まれるから、異分子をどんどん取り入れることは大事だし、むしろとんでもないところから飛んできた異分子の方が、新しいアイデアを生み出しやすかったりします。

例えば仕事で出版不況をどう解決しようみたいなことをやると、たいていの人は出版市場のことを調べまくります。

でも、例えばファストフード市場のことを調べた方が、出版市場の課題を解決するといったように、畑違いのものを自分の中に入れ込む方が、アイデアが出るのではないかという話をしました。

一方で井上さんは、そこに対して反論をするという自分のポジション、つまりきちんと自分の考えをぶつけていくことについておっしゃっていたのが面白かったです。

読書とは自分がアップデートする“捕食”である(慶応義塾大学 琴坂さん)

渡邉 琴坂さん、突然ですが、この異分子のぶつかり合いを経営的に捉えると、いかがでしょうか。

琴坂 将広さん(以下、琴坂) いつもモデレーターなのでかなり集中していますが、今日は「なんだか楽しいなぁ」と聞いていたので、突然意見を求められてどうしようという感じです(笑)。


琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)

慶應義塾大学総合政策学部准教授。数社の起業を経験の後、マッキンゼー・アンド・カンパニーの日本およびドイツを拠点に主に海外企業の経営支援に従事。その後、オックスフォード大学に移籍し、経営学の優等修士号と博士号を取得。立命館大学経営学部を経て、2016年より現職。専門は、経営戦略、国際経営、および、制度と組織の関係。慶應義塾大学政策・メディア研究科委員、一橋ビジネススクール特任准教授、上場企業を含む複数のスタートアップの社外役員を兼務。著書に『STARTUP 優れた経営者は何を考え、どう行動したか』、『経営戦略原論』、『領域を超える経営学』、監訳書に『VUCA時代のグローバル戦略』、分担著に『Japanese Management in Evolution』などがある。

考えてみると、私の読書の仕方というのはすごくその中身にディープダイブしていて、本の登場人物やストーリーに半ば同化していて、ほぼ自分の人生として追体験しています。受け入れるとか反論するとかではなく、たぶん実際は読んでいなくて、それに反応している自分がアップデートされているだけなのです。

伝わりにくいでしょうか? 本との対話というよりも、本と一体化する作業をしているという感じです。

 憑依に近いでしょうか?

琴坂 そう、それに近いです。別に反論もしていないし、同意もしていなくて、その考えそのものを取り入れています。捕食している感じです。エヴァンゲリオンみたいな感じです。

渡邉 “食っちゃう”やつですね。

 その距離感は面白いですね。

琴坂 その情報を自分の一部にしてしまう。だから反論でもないし、受け入れるのでもない。両面があるわけです。それそのものを受け入れている感じです。

渡邉 主張Aと真逆のことを言っている主張Bの本を読むとしたら、読む順番や流れによって、自分の中が変わりそうですね。

琴坂 その通りですね。良くも悪くも、これまでに読んできた本の歴史が、私を作り出しているのだと思います。もちろん、仕事としての読書は少し違います。仕事の読書と人生の読書は違っていて、仕事の読書はすごく構造化されていて、効率化されています。

私は社会科学を探求する人間なので、仕事の読書では学術論文のデータベースを常用していますし、ソフトウェアを使って論文を収集して、整理して、マーキングして、メモも取っています。批評もするし、反論もします。中身を吟味します。一方で、人生の読書は人生の拡張をするものなので、反論とかそういうものではないんですよね。

人生の読書では、自分が経験できないことや、自分が考えようもないものを、読書によって考えたことに、そして経験したことにしています。まさに“捕食”です。

 自分の体験の代わりになるものですね。

琴坂 そうなのです。この人生では絶対に経験し得ないものであり、私のこれまでのプロファイルと発想と頭脳では絶対に行き着かない結論を、結論として受け入れることができる作業だと思います。

だから、ビル・ゲイツなどの圧倒的な成功者もきちんと読書をするのではないでしょうか。

読書で自分にないノイズを取り入れる

 渡邉さん、他にも気になった発言はありましたか?

渡邉 山内さんの、3,000冊読む中で自分の中のアルゴリズムを強化していく、というお話がありましたね。

これは琴坂さんの話に近いかもしれませんが、まずインプットに没入するプロセスを経る。没入をした後、そこにアップデートされた自分が生じるんだと思いますが、ポイントは「過学習」という概念です。

AIのアルゴリズムにおいて「過学習」が起こると、つまり同じようなものを学び過ぎると、多様性に弱くなってしまうそうです。

そういう時には、一度関係ないノイズや異質なものをあえて取り入れると、むしろ汎用性が高まって堅牢なアルゴリズムになるのだそうです。

これは組織にも言えることで、ローカルルールで固まってしまうと脆弱になりやすい。黒船が来た時に突然崩壊してしまったりすることがあります。

 AIというのは結局、人間のルールの中で活動するものだから、最初に教える人間がその人の分かり切っていることだけを教えてしまうと、その人の想像の範囲内でしか機能しません。

しかしそこにノイズを入れると、より世の中で機能するよう堅牢な動き方をするようになるというお話はなかなか印象的でした。

琴坂 まさに自分のアルゴリズムを客観視できるわけです。

これが絶対と思っていた人が絶対ではない世界観を体験することで、見直しの作業ができるのです。

川上(全龍)隆史さん(以下、川上) 自分の価値観を絶対視しないというのは、実は今回、お渡ししたパワーポイントの資料にも書いたことです。


川上 (全龍)隆史
宗教法人 春光院
副住職

1978年生まれ、高校卒業後に渡米、アリゾナ州立大学にて宗教学、主に宗教紛争について学ぶ。7年半の米国での生活の後、2004年に帰国。2005年より宮城県・瑞巌寺専門道場にて修行を行う。2006年に実家である春光院に戻り、その春より英語による坐禅会を開始。2007年に同院の副住職に就任。また2008年より米日財団主催の米日リーダーシッププログラムのメンバーとしても活躍。現在では、年間約5,000から5,500人の訪日外国人に坐禅や禅哲学をいかに日常生活に取り込むかを脳科学や心理学を交えながら国内だけでなく海外でも指導を行う。また米国を中心とした様々な大学とサマープログラムなどを春光院で共催。企業(トヨタ自動車、Microsoft、BNP Paribas、IDEOなど)やMIT、ブラウン大学、HBS、INSEAD、IESE、Sloanなどの大学や大学院で禅とマインドネスを基礎とした「セルフ・カルティベーション」や「おもてなし講座」を指導している。そして、2010年ごろより、LGBTの権利の支持のため、同性同士の仏式結婚式などを英語と日本語で行っている。慶應大学大学院のKeio Media Design(KMD)の研究員。CNNやBBCなどを始めとした海外メディアにも活躍を取り上げられる。著書に「世界のエリートが集う禅の教室」(角川書店)がある。

私は禅僧なので仏教ベースの考え方になりやすいのですが、仏教の考え方には「絶対」というものがないのです。

ですから極端な話、書いてあることといえば、その人なりに実在を理解しようとしたものです。

所詮人間ですから全部をキャプチャーできるわけではないし、言葉というものには限界があります。

ですから、半分こんなものかなと、こんなものなんだよねと受け止めつつ自分を拡張していくのです。

私も、歪みをどんどん作っていくという感覚で読んでいますね。

「異質なもの」との出会いこそが視野を広げる(HLAB高田さん)

 ここまで、シーズン1のハイライトをご紹介しましたが、高田さんはいかがですか?

高田 修太さん(以下、高田) たくさんの名言が生まれていて、「僕、大丈夫かな?」とこれからのセッションが心配になりました(笑)。


高田 修太
一般社団法人HLAB/株式会社エイチラボ 共同創設者COO
プロマジシャン

HLAB共同創設者。自身の受験体験から、進路指導に対する問題意識が生じ、東京大学在学中の2011年に現在のHLAB代表小林と数名の仲間と共にHLABを創設、高校生向けのサマースクールを東京で開校。その後、長野県小布施町や徳島等でサマースクールを立ち上げ。工学を専門として学ぶ傍ら、小中学校でのサイエンス・コミュニケーションにも実践/学術的に取り組んだ。ボストン・コンサルティング・グループではデジタル戦略構築、教育プロジェクト、ビッグデータ分析の社内講師を務めたのち、HLABに再参画し、日本でのレジデンシャル教育実現に従事。また、マジック歴15年以上の腕前を活かし、学生時代よりプロマジシャンとしても会員制バーやホテル・デパート、企業パーティ・懇親会等で演技。国内外のコンベンションにも積極的に参加し、最新のマジックを取り入れ活動中。

渡邉 大丈夫です。名言だけを選んだので。

高田 今、ここに出たコメントを拝見して思ったことがあります。

私は高校生や大学生に教育を行っていて、高校生向けのサマースクールなどもやっています。

教育というビジネスでは、先生1人に対して生徒が大勢ですが、我々は大学生メンターを大量投下して、大勢の高校生にメンタリングを行っています。

そうすると、予想もしていなかったような出会いがたくさん生まれます。

例えば、「医学部に行きたい、医者になるぞ」と思っていた高校生が、経済学部の先輩と話したり、少し年上の社会人と話したりすると、「それも面白そうだな」となったりします。

まさに「関係ないノイズ」や「異質なもの」というのは、高校生にとってもとてもポジティブなものなのだと、自分の事業と絡め合わせて思いましたね。

 先ほどの話をした、「買うつもりのなかった本を買う」というのと似ていますね。

高田 そうですね。それに近いですね。

(続)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成/フローゼ 祥子

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