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3. 世界が注目する「松尾芭蕉」に学ぶ、イノベーション・サイクル

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「新シリーズ 世界の偉人伝 (シーズン1) 」全9回シリーズの(その3)は、引き続き石川善樹さんの解説。そのイノベーティブな試みが歴史に刻まれる偉人ですが、新たな開拓だけではなく、あえて原点回帰させた偉人もいるといいます。また、松尾芭蕉のように、既存のものを進化させることで大きく成長している企業についても紹介します。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 プレミアム・スポンサーのリブ・コンサルティング様にサポート頂きました。


【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICC FUKUOKA 2021
Session 12E
Nizi Projectから学ぶ採用と人材育成の仕組みとは?
Supported by リブ・コンサルティング

(スピーカー)

石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事

小林 正忠
楽天株式会社
Co-Founder and Chief Well-being Officer

深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役

丸 幸弘
株式会社リバネス
代表取締役 グループCEO

(モデレーター)

井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
パートナー

新シリーズ 世界の偉人伝 (シーズン1)


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最初の記事
1. 新シリーズ誕生! 登壇者が選んだ「イチオシ偉人」を語る

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2. 石川 善樹さんが紹介する日本の偉人1位「松尾 芭蕉」はなぜ偉大なのか

本編

「終わりなきイノベーション」はつらくないか?

石川 改めて考えてみると、今あるものを新しくして質を高めると、その時はいいのですが、またそれがだんだん普通になってきます。

そうすると、また新しくして、質を高めてということをバミューダトライアングルではないですが、人類は永遠にやり続けることになるのでしょうか?

これを僕たちは「イノベーション」と呼んだりしますが、「これはちょっとつらくないか?」と思うのです。

「新しくする」→「質を高める」という終わりなき作業を、終わらせた人はいないのかな?と思いました。

600年続くものを作った「世阿弥」

石川 先ほどのランキングには登場しませんでしたが、個人的に大好きな人がいて、600年続くものをつくりました。

能をつくった「世阿弥(1363?~ 1443?)」です。

世阿弥の業績(文化デジタルライブラリー)

世阿弥のすごいところは、もともとあった「大和猿楽(やまとさるがく)」の題材を新しいものにしたことです。

お寺などで行う「地獄というのは、こんなにつらいんだ」という題材の能がありましたが、誰もが知っている『源氏物語』や『平家物語』のようなエンタメを演じ始めたのが、観阿弥(1333~1384)、世阿弥の親子です。

これに、「幽玄」という質を加えたのが、まさに世阿弥です。

あの人の人生を知ろう~世阿弥/観阿弥(文芸ジャンキー・パラダイス)

1周してまた原点へ戻る成長

石川 世阿弥は晩年どこに行き着いたかというと、「エンタメ」にしたものを「幽玄」で質を高めて、最終的に「却来」といって、また「大和猿楽」に戻っていったのです。

正忠 「ダウングレード」したということですか?

石川 いえ、「ダウンデート」したんです。

自分たちがもともといた大和猿楽から離れよう、離れようとしたのに、1周してまた戻ってきたのです。

もともと大和猿楽は、若い人が激しくやるようなもので、そもそも老いた人がやるものではありません。

それを色々経験した人がやることによって、「老い木に残る花のように美しいものである」と、ここで永遠のトライアングルから抜け出したのです。

まさに春夏秋冬のように、こうやって能の役者は成長していくものだよ、ということをつくった人です。

これはすごいなあと思いました。

「アップデート」して、「アップグレード」した後に、最後また「ダウンデート」して原点に戻るというか、古くするというか、このようなことが、僕が一生懸命やっているWell-beingという分野でも何かできないか、芭蕉や世阿弥などの偉人たちから、何か自分の仕事にも生きないかと考えています。

▶石川善樹さんがレギュラー登壇するWell-beingセッション最新シリーズはこちら
【一挙公開】組織のWell-beingとは何か?(シーズン3)(全9回)

「ダウンデート」とは何か?

井上 「ダウンデート」とは、どういうイメージですか?

「伝統化」みたいな話とは、また少し違いますか?

石川 これはピカソ(1881〜1973)も同じなんです。

深井 面白いですね。共産主義が帝政になる感じも近いなと思います。


深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役

新卒で入社した大手電機メーカーの経営企画を2年で退社し独立。新規事業立上コンサルタントとして3年働く。その後福岡でベンチャー企業取締役を2社経験し、株式会社COTENを起業。現在も複数社のスタートアップ・ベンチャー起業の取締役を兼任しながらCOTENの代表を務める。人文学・歴史・社会科学が大好き。3,500年分の世界史情報を体系的に整理し、200~300冊の本を読んで初めてわかるような社会や人間の傾向やパターンを、誰もが抽出できるように世界史の一大データベースを作成するプロジェクトを進行中。また会社の広報活動としてPodcastで「歴史を面白く学ぶCOTEN RADIO」を放送中で2018年末から開始し、2019年にはJapan Podcast Awards大賞とSpotify賞をダブル受賞。Apple Podcast総合ランキング過去最高1位を獲得。

帝政から離れて共産主義になる新しい感じなのに、結局帝政に戻っていくという(笑)。

石川 「ダウンデート」をピカソで言うと、ピカソは技巧をこらして描くという昔ながらの西洋美術から離れよう、離れようとしたんです。

最終的にピカソは晩年、フランスのニースで何を描いていたかというと、自分が離れようとした技巧派の絵をモチーフに、ピカソ流に構築し直すという「ダウンデート」の仕方をしています。

15歳から90歳までの75年間、ピカソの描く自画像を年代順に並べてみた(カラパイア)

原点に返るということかもしれませんが、原点に戻ってきた時は1周して戻ってきているから、同じことはできないということなんですね。

井上 そこに何か普遍性が生まれるから、600年続くみたいなことですね。

石川 そうです。

正忠 上から見ると1周だけれど、横から見ると1回アップグレードしているので、らせんが上がっているはずなんですよね。

井上 らせんが上がっているように見えますよね。

 まあ、すべては「らせん」ですね。

▶編集注:農学博士であり、研究者の丸さんは、DNAの基本構造である二重らせんについて言っているものと思われます。

石川 すごく概念的な話をしてきましたが、今日のお話は僕の人生の指針でもあります。

「今は新しくするフェーズだな」とか「今は質を高めるフェーズだな」とか。

井上 順番が大事というのはすごく示唆がありますね。色々なことに当てはまりそうですね。

「アップデート」→「アップグレード」で成功した企業

石川 例えば東京で生まれたサービスはなかなか、特に小売とかスケールしにくいという話があるのは、東京だと競争が激しすぎて質の高さを最初に求めてしまうからです。

でもユニクロやメガネのJINSのように、地方で新しいものが出てきて、広まった後に質を高めるという、やはりこの順番なんだろうと思います(※) 。

▶編集注:ユニクロは山口県発、JINSは群馬県発のブランド。

楽天もそうじゃないですか?

正忠 ずっと新しくしています(笑)。

井上 芭蕉はこれを意識していたのかちょっと分かりませんが(笑)、「アップグレード」をしたということで偉人だというお話でした(Part.3参照)。

ありがとうございます。

では続いて、深井さん、お願いします。

(続)

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続きは 4. COTEN深井さんが選ぶ偉人は、『三国志』に登場する「諸葛孔明」 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/尾形 佳靖/戸田 秀成/小林弘美

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