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外注ではイノベーティブなプロダクトは生まれないのか?【F17-1C #6】

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「イノベーティブなプロダクトを生み出す開発/エンジニアリング・マネジメント」【F17-1C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!10回シリーズ(その6)は、外注してもイノベーティブなプロダクトは生めるのか?について議論しました。発注者にはどのような能力が求められるのか考えていきます。是非御覧ください。

ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2017年2月21〜23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 1C
イノベーティブなプロダクトを生み出す開発/エンジニアリング・マネジメント

(スピーカー)

岩田 和宏
JapanTaxi株式会社
取締役CTO

柄沢 聡太郎
株式会社メルカリ
執行役員CTO(※2017年4月より執行役員VP of Engineering)

平山 宗介
株式会社メドレー
取締役CTO

山崎 大輔
Supership株式会社
取締役 CTO室室長

(モデレーター)

松岡 剛志
株式会社レクター
代表取締役

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本編

松岡 次のテーマに移りましょうか。

またひどいのが出てきましたね(笑)。

「外注に出していては、絶対にイノベーティブなプロダクトは生まれない」

本当ですか?

(登壇者 笑)

見つめ合われるのは、どうしてなのですか?(笑)

山崎さん、先陣を切りますか?

山崎 ちょっと時間が欲しい。

平山 では、時間潰しで(笑)。

基本的には僕は内製派です。

特に我々の医療業界というのは、結構古い業界なんですよね。

そういった中で、エンジニアリングだけではなくて、お医者さんや法律のスペシャリストなどがタッグを組んでいかないと適切なプロダクトが作れない状況で、カチッと要件を決めて外部に発注するのはそもそも難しい・向いてないと思います。なので我々は内製重視でやっています。

老舗の古い業界を変えるためには、職種間連携が特に重要になってきますから。

ただ、必要に応じてカチッと決まっている要件を作りたいということであれば、逆に外注に出した方が賢いかなと思っています。

という時間稼ぎでした(笑)。

山崎 色々やり方はあると思うのですが、弊社では両方使っています。

外注もするし、フリーのエンジニアを準委託のような形で使っているケースもありますし、内製もしており・・・と方法が3つくらいあります。

外注する場合に一番よくないなと思うのが、発注する側と発注される側のモチベーションというかインセンティブがずれているということですね。

発注する側/される側のインセンティブ設計が大事

山崎 どういう話かといいますと、発注側はお金を払ったら然るべきアウトプットが欲しいと思っているのですが、よくない外注さんだと、いかにそれを安く達成するかといった話に帰着してしまうんですよね。

内製をしていたら、早く正しく作るということに対してものすごくインセンティブが働いてそれがよいことなのですけれども、外注すると「2か月でお願いね」という話になったら、本当は彼らとしては1か月くらいでできるとしても、人月でお金を払っている訳なので、2か月ダラダラするということにもなってしまいがちなんですよね。

双方でそういうインセンティブというかモチベーションの差があるので、そこを上手くコントロールすることでできるような気がしているんですね。

山崎 一例として、外注ではないのですが、以前弊社で外部のエンジニアにお願いしたケースがありました。

僕が作ったら多分3か月くらいでできるだろうなというプロダクトに対して、あるエンジニアにある金額を出して作ってよという話をしたんですね。

その方も起業準備をしていたのでお金が欲しいという話で、その辺りの利害は一致したのですが、彼が一つだけ「インセンティブが欲しい」という条件を出してきました。

具体的に言うと、早く作るからその分に関して報酬をカットせずに、要するに3か月分の給料を下さいという話をされたんですね。

結局その人は僕が全力でやったら多分3か月かかるであろうプロダクトを、多分1か月半くらいで作ってくれました。

もちろん契約上貸担保など色々、1年以内に何かあった時には直すよといったそういうものはありましたが。

外注というのはそういう感じで上手くインセンティブを合わせることで活用するのが良いなとは思いますね。

特にいわゆるSIer屋さんと言われるところは、先ほど申し上げたインセンティブが合っていないという問題、つまり同じ方向を向いていないという問題があるのですが、例えばそういうミドルウェアを作ってあるシステムを作って、それを拡散させるために企業に入ってそれを温めたいという人など色々いるんですよね。

だから使い方によるのかなと。

使い方というかやり方にもよるのかなというのが思うところですね。

松岡 ありがとうございます。

確かに「外注」と今一言で申し上げたのですが、外注にもオフショアとニアショアがあり、準委任契約の方がいて、フリーランサーがいてと様々ある中で、インセンティブ設計、すなわち向いている方向を一緒にするのが大事だよねという話でした。

▶︎編集注「オフショアとニアショア」:オフショアは海外(主に発展途上国)への委託、ニアショアは日本国内での(もしくは比較的近い遠隔地に)委託のことです。

「発注者力」とは何か?

柄沢 「発注者力」かもしれないですね。

山崎 そうそう、そういう話ですね。

松岡 「発注者力」というのは、どうしたら鍛えられるのですか?

山崎 例えば、3か月のプロダクトを1か月半で終わらせても1か月半のお金しか払わないよというのはたぶんよくない発注者ですよね。

その辺りをちゃんと上手に割り切れる、本当に欲しいものは何なのかを伝えられるということだと思います。

この辺りは信頼関係の問題もあるのですが、逆のケースで3か月分の給料を払ってもできないケースもある訳じゃないですか。

SIer屋さんなどにはその辺りの「きちんと作り切るよ」という担保がありますよね。これは結構重要かなと思いました。

後でこれもあれもといった話はせずに、きちんと切り分けて、どういう結果になろうとも文句を言わないということは、胆力と言いますか、「発注力」としてあるのかもしれませんね。

内製についても同じで、先ほどあがった“Will“を大事にされるというお話に近いかもしれませんが、社内のメンバーのモチベーションを上手に一つの方向へ向かわせるということは結構大事かなと思っています。

すごく雑な言い方をすれば、経営者以外のメンバーも全員「外注」みたいなものではないですか。

松岡 言葉が適当ではないですけれども。雑ですね(笑)。

山崎 ただ利害を一致させるというのはすごく大事で、それはすごく意識した方がいいなとは思います。

だから外注も使いようという。

柄沢 おそらくその「向いている方向」というところが重要なのだと思いますよ。

利害というか、向いている方向が一緒で、自分達はお客さまに何かの価値を届けたいと思っていて、そのためにプロダクトを作っているという、その利害の一致のさせ易さのようなところは大切ですね。

当然、自分達の会社では、自分たちの会社のプロダクトを作りたいと入って来たエンジニアは同じ方向を向いている前提で話していて、ずれていたら「どうしてずれているの?こっちでしょう。」という風に言える、そういうコミュニケーションが取れるではないですか。

ですから同じ方向を向き易いというのがあります。

外注の場合、もしかしたら同じ方向を向いてくれる人もいるかもしれないけれども、基本的にはお金という契約で繋がっている人達なので、そんなに同じ方向を向いていないことが多いと思うんですよ。

ですから、その人達を同じ方向に向かせる工夫が色々あるかもしれないのだけれども、「使わない方がいい」という話になり易いのかなとは思いますね。

JapanTaxiさんはいかがですか?

岩田 JapanTaxiには、常駐のフリーランスが4、5人いて、エンジニアなどは全部で40人くらいいます。

また、ラボ型のオフショアでベトナムにも10人ほどいます。

これは、先ほど申し上げた、MVP(Minimum Viable Product、実用最小限の製品)的なものをどんどん作っていく部隊で、その代わりしっかりとPM(Product Management)をやろうということで、月に1回、2週間程度2名の担当者が交代で行き、一緒にPMをやっています。

メルカリはカスタマーサポートも内製化を進めている

柄沢 これは開発以外でも言えることで、実は最近、メルカリのUSのカスタマーサポートオフィスをポートランドに作ったというニュースを出したのですが、今、USのカスタマーサポートの内製化を進めているところなのです。

元々、日本ではリリース当初からカスタマーサポートは内製なのですが、USではカスタマーサポートの一時受けをアジアに外注していたのです。ただ、やはり社内情報の頻繁なアップデートをキャッチアップするというところや、いかにお客さまのトラブルを解決してメルカリを好きになって頂けるかというところで、やはり少し折り合わないところがあったんですよね。

単純にタスクをこなすという点では、物量に対してはすごくよいのですが、+αの部分、例えば日本のカスタマーサポートは東京と仙台と今回新しく福岡にも設けたことを発表しましたが、内製することによって自分達がメルカリのお客さまの体験を支えているという自負が生まれます。

カスタマーサポートのメンバーも、それがもうプロダクトの一部であるという風に自覚していて、例えばテンプレート化された回答に一言加えるというように、プロダクトへの愛というのが対応に表れてくると思います。

USではこれまでそのようなことがなかなかできていなかったので、それを切り替えようという判断をしました。

山崎 ノウハウの蓄積というのは、結構大切かもしれませんね。

確かに、外注するというのは、ノウハウが蓄積されないということとイコールなので、確かにそうかもしれないですね。

松岡 ノウハウの蓄積が競争優位性につながるなら、内製化したほうが良いというお話だと学びました。それから、この場で語られていない論点として、「ビジネスモデル」があるかなと思っています。

皆さんのビジネスモデルは、全体的にじっくり積んでいく類のものですよね。

それに対して、例えばゲーム等の起伏が激しいモデルにおいても、外注していては絶対にイノベーティブなプロダクトは生まれないのかといった議論が抜けているのですが、ここにいる方は誰も語れないので。

語れる方はおられますか?

山崎 いや語れるでしょう(笑)。

岩田 そこは「モンスト(モンスターストライク)」が…

松岡 ああ、昔の話ですね(笑)。

初期の「モンスト」は外注というか、協力して下さっている会社の方が中心になって、ミクシィのエンジニアもそこに参加して開発してました。

柄沢 その後の開発もずっと外でされているのですか?

松岡 正直、僕はその後に抜けてしまっているので、確かなことは知らないのですが、伸び始めたタイミングにおいては、どんどん中の人間を投入していきました。

結局あれも当たった瞬間に、負荷分散が課題になったのです。

負荷分散の技術や人材というのは、昔のミクシィの負荷分散をしていた人間のそれとほとんど一緒だったので、どんどんそういう方が移って頑張って対応してくださいました。。

山崎 (会場の方は)ご存じかどうか分かりませんが、「モンスト」って岡本さん(岡本吉起氏)?

松岡 そうです。

山崎 岡本さんって「ストリートファイターII」を作られるなど、元々ヒットメーカーなのですよね。

そういう点で言うと、一度講演でお聞きしたことがあるのですが、彼はファミコン的な家庭用ゲームでもヒット作を生んでいて、「ストリートファイターII」というゲームセンターのゲームでもヒットを生んでいて、今回「モンスト」というスマホゲームでも当てたという「三冠」を成したとおっしゃっていました。

彼はどうしても三冠を目指したかったそうで、そういう点では、先ほどの話の流れで言うと、モチベーションやインセンティブが結構一致していたのかなと思うんですよ。

ですから、すごくいい外注さんを当てたという話なのかなという気はしますけれどもね。

松岡 ありがとうございます。

まとめると、外注してイノベーティブなプロダクトが生まれる時というのは、外注・内製関わらず、どれだけモチベーションを1つにし易いか、インセンティブを設計し易いかといったことが大切なので、結局、社員の方がやり易いことが多いよという結論でしょうか。

ありがとうございます。

(続)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/Froese 祥子

【編集部コメント】

最近、『システムを「外注」するときに読む本(ダイヤモンド社)』というのが流行っているらしいですね。(横井)

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