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俺たちのHARD THINGS② ビザ取得が困難だったフランス修行(松嶋啓介)【K17-1C #3】

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「俺たちのHARD THINGS – 数々の苦難を乗り越えて「今」がある」【K17-1C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!10回シリーズ(その3)では、フランスにレストランを持つ松嶋シェフが、フランス修行時代に体験したHARD THINGSを振り返りました。様々な困難を体験しながらも「大変だ」と言わないようにしていたとのハードボイルドなお話しから、外国人とのコミュニケーション術まで、内容が大変幅広いです。是非御覧ください。

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ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2017年9月5-7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 1C
俺たちのHARD THINGS – 数々の苦難を乗り越えて「今」がある

(スピーカー)
秋好 陽介
ランサーズ株式会社
代表取締役社長

内山 幸樹
株式会社ホットリンク
代表取締役社長

松嶋 啓介
株式会社Accelaire 代表取締役
KEISUKE MATSUSHIMA 総料理長

横山 佳幸
株式会社Nagisa
代表取締役社長

(モデレーター)
井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
プリンシパル

「俺たちのHARD THINGS-v3」の配信済み記事一覧

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最初の記事
【新】俺たちのHARD THINGS – 数々の苦難を乗り越えて「今」がある【K17-1C #1】

1つ前の記事
俺たちのHARD THINGS① やる気があるのは創業者だけ

本編

井上 創業時ということでお話し伺ってきましたが、松嶋さんの場合は少し毛色が違うとは思いますが、ニースで出店されるまでにある程度時間もかかりご苦労されたと思います。

我々がメディアから伝え聞くのは、外国人シェフが最年少で星を取ったという華々しい話ばかりですが、それまでにも苦労があったのではないかと思います。

ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン プリンシパル 井上 真吾氏

松嶋 当時はあまり苦労とは思っていませんでした。好きなことをやれる時間は人生の中で限られていると思います。

僕はフランスに行って起業してフランスでシェフになりたかったのです。

だから修行している間は僕にとってはまったく苦労ではなく自分の夢を叶える過程で、あまり大変だとは思っていませんでした。

大変だったのはビザを取ることです。ビザを取る手段がほとんどありませんでした。

フランスは日本に比べて失業率が非常に高いので外国人を雇うということがほとんどありませんでした。

ビザの問題を解決するためには、レストランを買って自分のレストランを作ってオーナーになる以外は商業手帳というビザが入ってこないので、それ以外には手段がありませんでした。

結構早く結婚していたのですが、ビザを取るために妻に頼んでお金を借りて創業しました。

それがフランスでのオーナーシェフとしてのスタートです。

不法滞在は料理人の間では昔は常識だった

井上 先ほど不法滞在というお話もありましたが、それはどういうことですか。

松嶋 観光ビザは日本のパスポートの場合3ヶ月ありますが、それを使ってレストランに潜り込んで、日本とフランスの間を行き来しながら4年の間に12軒渡り歩きました。

やってはいけないことですが、今となっては時効かと思います。

KEISUKE MATSUSHIMA 総料理長 松嶋 啓介氏

井上 ここで話して大丈夫ですか。

松嶋 はい。昔はそういう方が多く、そのような方の本が結構出ているので、それも有りだと思い僕もやっていました。

しかし今のオーナーという立場ではさすがにそれはできないので、自分の店でそのような形で修行したいと来る人にはワーキングホリデーか学生ビザを取得するよう言っています。

潜り込んで修行して認めてもらうのは僕らの業界の昔の常識でした。

井上 際どいこともされていますが、お話を聞いているとあまり苦労をされていないように感じました。

海外で4年間、何軒ものお店を回ることは非常に大変だったように思えるのですが、そこは本当に好きでやられていて、大変だとは思われなかったのですか。

「大変だ」と言わないように意識していた

松嶋 「大変だ」と口にすることは格好悪くて、口にするくらいなら帰ろうと思っていました。言わないように意識していました。

井上 さきほどの秋好さんのお話と一緒で家族である奥さんを巻き込まれたということですが、奥さんもついて来てくれたのですね。

松嶋 もう投資家ですね(笑)。

色々な人の若い時の人生を見させてもらうと、仕方なくラーメン屋をやりましたとか、仕方なくホテルで働いていますとか、「仕方なく~しています」という風に、自分で決められない人生を歩んでいる先輩方がいました。

だからこそ自分のやりたいことをやれる人生がどれだけあるかと考えました。

そして、それをやっている時に大変だと認識するのは大人としてどうなのだろうという考えが若いながらもありました。

苦労や苦難は今では笑って話せますが、その当時は感じていても口にすることはほとんどありませんでした。

井上 美しい話を聞かせて頂きありがとうございます。

松嶋 僕がもう1つ話しても良いでしょうか。

実はフランスに行って1週間後に警察に捕まっています。駅で職務質問をされました。逃げ切りましたが!

井上 なんと!松嶋さんはレストランを経営している中で誰かに裏切られたとか、突然辞められてしまったというお話はありませんか。

松嶋 良くありますが、それについては自分が悪いと捉えます。

辞めていく人は辞める人なりの理由はあるので、そこは正直諦めて経営しています。

内山 たくさんの外国人を採用していますよね。外国人をマネージする中で、どういう「HARD THINGS」がありますか。

フランス人は明確な目標がないと働かない

松嶋 フランス人はラテン系なので、とにかく目標設定をしっかりしてあげないと働きません。

日本人だったら長くその場にいるのが好きな人がいますが、フランス人は明確な目標がないと動きません。

数字もそうですが、日本人のやりがいとは違います。

日本人の場合は修行で、自分がやることに重きをおいてフランスに滞在しています。

労働ビザを出した日本人でも日本に帰ってビジネスしたいと考えているのでフランス人とは少し意識が違います。

一方で、フランス人のスタッフはずっとフランスに住んでいます。

その部分でフランス人と日本人は考えの根本が違うので、彼ら同士のコミュニケーションが全然駄目ですし、フランス人をマネージできる日本人が出てきたことが一度もありません。

フランスに住んでやろうという気持ちやフランスで結果を出してやろうと思っていたら自分で起業をしているはずです。

だから、自分の会社の中で人を育てていくのは難しいと思いながらフランスで日本人の採用をしています。

日本人は飲みと下ネタが足りない

松嶋 また、日本企業から派遣されて海外駐在している日本人スタッフの方たちを見ているといつも外国人の使い方に困っています。

その時によくどうやってフランス人を扱うかという話をするのですが、皆さん(一緒にお酒を)「飲んで」いません。飲みが足りないのと、下ネタが足りません。

楽しい人だという安心感を与えていないのが問題です。仕事だけしている日本人は信用されません。

内山 飲みに行こうと言ったら「仕事の範囲外だ」と言わず皆ついてきてくれるのですか?

松嶋 ついてきてくれます。

(左)株式会社ホットリンク 代表取締役社長 内山 幸樹氏

松嶋 しかも、休みの日に家族も参加できるバーベキューを企画すると、本当に家族も来てスタッフの奥さんが私の妻に仕事の状況を聞くことができます。

そういうことができるスタッフは長く続けてくれます。

そのような人たちは、年齢も国境も肌の色も気にせず弊社で頑張ってくれるスタッフです。

最近 妻を通してスタッフの状況を聞き出すようにしています。

内山 お嫁さんを連れて行かないと駄目ですか。

松嶋 そういうところには連れて行かないと駄目ですね。

井上 内山さんは連れて行かれていましたか。

内山 海外イベントは連れて行っていましたよ。

井上 外国人の方でも意外と日本でいう「飲みニケーション」が大事なのですね。

日本人は雑でもいいから相手の懐に飛び込め

松嶋 僕がいつも言っているのは、日本人は丁寧に何でもしようとしますがそれが良くないということです。

雑でも良いので相手の懐に飛び込んでみましょうという話を良くします。

これは最近あった話ですが、サッカー選手の吉田麻也の面倒をここ1年半くらいみています。

サウサンプトンFCの監督が僕の友達で、その時に色々話をしていました。

現地の人たちの中でどれだけ自分が飛び込んで、その中で少しずつ自分をアピールしていかないと自分の立場を作れないという話をしていました。

彼はそれを見事にやりのけ、昨シーズンは大活躍しました。今年もやってくれると思います。

日本人は現地の中に飛び込んで掘り下げるという作業をできる人が少し少ないです。

きれいな言葉を話せる必要はありません。輪の中に入っていくよりも自分の肩書きや立場を大切にする人が駐在者の中には多いです。

しかも、期間が3年間だと全く人間関係を築けません。海外にいたという肩書きをつけるためにだけ赴任している人が多いという印象です。

弊社でもそのようなことがあります。僕自身も変わらないといけないと思っていますし、日本人のメンタリティも変わっていかなければいけないといつも思っています。

井上 松嶋さんのお店で修行して日本に戻る人の中に、「このやろう」と思うようなことはありませんか。

松嶋 「このやろう」というよりは、「日本は経済が落ちていくのにどうするのか」と言っています。

そこを冷静に判断していないこと自体が大丈夫かと逆に聞きます。

井上 なるほど。

(続)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/本田 隼輝

【編集部コメント】

日本のITベンチャーも海外進出を進め、ICCの読者層の方々が外国人をマネジメントしなければならない機会が増えていくかと思いますが、その際に役立つご助言がたくさんありました。(横井)

続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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