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「シビアな決断経験を、いかに早くやらせるか」リクルートとサイバーエージェントに共通する新規事業立ち上げ人材の育成戦略

ICCカンファレンスの特別会場において株式会社サイバーエージェント 執行役員 人事統括本部長 曽山 哲人 氏と株式会社リクルートマーケティングパートナーズ 代表取締役社長 山口 文洋 氏の2名をお迎えし、「新しい事業の柱を創る人材やチーム作り」をテーマに約60分間のインタビューを行いました。3回シリーズ(その3)は、新しい事業を創る人材の開発にスポットをあて、「どうすれば社内から新規事業を担う人材が育つか」という点においてリクルート・サイバーエージェントそれぞれの取り組みについて議論しました。是非御覧ください。

ICCカンファンレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級の招待制カンファレンスです。次回ICCカンファレンス FUKUOKA 2017は2017年2月21〜23日 福岡市での開催を予定しております。

登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016「ICC SUMMIT」
Session 5E 
特別対談「新しい事業の柱を創る人材やチーム作り」
 
(出演者)
曽山 哲人 株式会社サイバーエージェント 執行役員 人事統括本部長
山口 文洋 株式会社リクルートマーケティングパートナーズ 代表取締役社長
 
(聞き手)
井上 真吾  ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン  プリンシパル  
上野 純平
竹内 麻衣

その1はこちらをご覧ください:「R25」「スタディサプリ」を産んだリクルートの新規事業コンテスト「New RING」の秘密
その2はこちらをご覧ください:サイバーエージェント流「出る杭を発掘する仕組み」とリクルート流「M&Aを成功させるPMIの仕組み」


サイバーエージェントの新規事業立ち上げの仕組み

井上 執行役員クラスとか「トップ下」くらいの方が、自分でリーダーシップをとって新規事業をやっていくということは、言うは易しで、どうしてそういうことができているのかということにすごく興味がある方が多いと思います。「企業のDNAです」と言われればそうなのかなと思うかもしれませんが、そのあたりはいかがでしょうか。

曽山 サイバーエージェントの場合だと、5年間生存率が大体50パーセントくらいなんですよ。

経営判断もあるので、これがいいかどうかは分からないですよね。

結構高い方ではないかと思っているんですけれども、そのためにやっていることは、まず新会社で1年目に仮に社長になったとしても、「CA8」と呼ばれるサイバーエージェントの取締役が必ず役員として1人入っているんですよね。

社外取締役というよりは経営アドバイザーの役割として入っていることと、決断は絶対社長にさせるという。

どんなに大変でも。

どんなに労務的な人事の問題であっても、社長の決断ですという、これがセットになっているのが大きいと思います。

なので、経験ある経営者が役員に入っているけれども、最終決断を社長にさせるので、そういう意味ではどんどん若手社長は成長しますね。

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けれども、私が一年目の時もそうでしたけれど、ほとんどがど素人なので、会社経営ができるわけがないんですよ。

やる気と気合だけがあって、後はその量になってきます。

だからそこを、変な大きな間違いをしないように取締役が見ている、という感じですね。

井上 もちろんリスクはあるんでしょうけれども、先程話されていたように、外で投資家からお金を集めてというよりは、セーフな環境で若いうちから経営を経験するような型があるっていう。

曽山 そうです。どれくらい大変な経験を早くからさせるかという、私らは「決断経験」と呼んでいますけれども。

どれだけシビアな決断経験を、いかに早くやらせるかというのは、非常に重要なんですよね。

40歳までずっと一つの職種だけをやっていたら、いきなり社長をやれと言われても、よほど準備していない限り、さすがにどの職種の人もできないですよね。

井上 子会社の経営者になるのは、、若い人だと、大体入社何年目くらいの層になるんですか?

曽山 本当にバラバラですね。

私たちの場合だと、新卒入社組でも、まだ20代と30代。ほとんどが20代で社長や役員になっています。

一番若い人だと、22歳の内定者の時に社長になったメンバーもいますね。

そんなにしょっちゅう出すわけではなくて、たまたまそれがよかったからやっただけですが。

【参考資料】
「僕、全然才能ないので」 サイバーエージェント子会社“23歳新卒役員” アプリにかける1年目

山口 子会社を含めて色々な経営経験を積ませる20、30代を増産しているのは、長期的に見てもすごいなと思っています。

その一方で、その中で確率論で上手くいかなかった場合もあるじゃないですか。

子会社社長にしたんだけれども上手くいかなくて止むを得ず会社をたたんだりした後、その社員は大概どういう風なキャリアを歩まれるのでしょうか。

辞めてしまうとか、また本体に戻るとか。

曽山 弊社では、ほとんどの人が辞めないんですよ。

10年前にサイバーエージェントとしての企業文化をきちんと伝えきれていなかったときは、撤退イコール全部やめだったので、退職率がすごく高かったです。

今はある広告子会社の社長をやって上手くいかなず事業撤退になったメンバーが、今また営業の部門でMVPになるなど活躍しているたケースがあるのですが、本人に聞いてみると、当時は本当に辞めようと思っていたと言っていました。

もう本当に恥ずかしさと、自分のできなさと、というのがあったけれども、結果的に残ったのは、担当役員が、「お前には、こういう失敗した経験を、こう活かせば、絶対こういうキャリアがあるから。」という道筋を熱く語ったというのがすごくよかったみたいで。

普通だと撤退というのは本当に苦しいので、辞めたくなってしまうというのはあると思います。

撤退に至った子会社の社長は、やっぱり事業部のマネージャーや部長に戻るケースがほとんどですね。

今はサイバーエージェントも毎年10社程度立ち上げるので、撤退社員が引き抜きに合うというパターンがむしろ多くなってきています。

あいつ、撤退したからうちに引き抜こうと。

そうすると、同じ失敗をしないので結構できる人が多いという、そういう風になってきたんですね。

リクルートの人材開発委員会の仕組み

山口 そういう意味では、リクルートも子会社社長を増産するところまではいっていないですけれども、やはり若手中堅の活躍層は各社できちんと管理しながら、修羅場を与えて、特に、大きな失敗挫折をたくさん経験させるという感じですね。

それでもやはり、失敗や挫折からの内省力というか、どれだけラーニング・アビリティ高く、失敗を学び、次に絶対失敗しないぞという風な学習経験を若いうちに積ませるかが、大きな舞台が揃った時の意思決定のオプションの多さになるのかなと。

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曽山 子会社を任せるとなると、通常のビジネスの中で当然重い決断を渡すことになりますよね。

それは、役員の中で、そういう目利きをし、今この人はこういう仕事だからこの仕事を与えようかみたいなのを、議論されたりするのでしょうか?

山口 それは徹底的にしますね。

私たちは人材開発委員会というのをやっていまして、これは実はほぼ全従業員分、年二回やっていますね。

【参考資料】
人材輩出企業・リクルートグループの人事施策

曽山 年二回、千何百人ですか?

山口 はい。

例えば、部は部長と課長が集まって、部ごとに、そこに紐づいている従業員の、成長しているかどうか、これからの成長プランをどうするかということを一人一人議論はしていますね。

曽山 へえ〜。

山口 そして私たち経営陣になると、自分の会社の執行役員や部長クラス、それに次期部長や次期執行役員を、半日一日かけて徹底的に議論します。

基本的には、会社を成長させるために次の春などにどういうポストでどういう修羅場を課していくかと、数年後に執行役員になっているよねといった長期的なリテンションプランをきちんと考えながら、そこに含めて配置しないとということですよね。

曽山 なるほど。

山口 リクルートでは、短期的な業績オリエンテッドの配置というよりも、人の育成オリエンテッド、つまり人に基づいて組織が創られていくような気がしますね。

だから、組織は戦略に従うというよりも、組織は大上段で、その候補者の育成に従ってみたいな、そのくらいを感じてしまいますね。

曽山 でも新規事業を必ずしもやらない場合でも、どれだけ大きな仕事、つまり彼/彼女にとって新しい取り組みというのを、あててあげるかというのは、すごく重要なポイントですよね。

それが年に二回委員会で回っているのがすごいですね。

そんな感じなんですね。

井上 リクルートにおいて、事業部制ではなく、カンパニーを分けているのは、それこそ経営者や執行役員のポストを増やすことで、人を育成する観点というのが大いに入っているということなんですかね。

山口 私が担当しているリクルートマーケティングパートナーズも含め、リクルートライフスタイルとか、リクルート住まいカンパニーとか、リクルートキャリア、リクルートジョブズなどの事業会社の社長陣と、常務執行役員とそのボスと一緒に、各事業会社の次期社長とか、その下の執行役員ポストに3年後くらいを目指してどういう人をピックアップして育てるか、配置していくか、それも会社を超えた人材の最適化みたいなことを、来週の金曜日丸一日かけて議論します。

井上 会社を超えた人材配置の最適化を考えるというのは素晴らしいですね。年に2回評価されている全社員分の評価についてもでも、カンパニー間で共通にしていたり、共有されていたりするんですか?

山口 今は分社化した中でそれぞれの管理になっていますね。

SBU(ストラテジック・ビジネス・ユニット)体制になってからは、各社の執行役員(エグゼクティブ)以上についてはSBU単位でも認識されるようになっています。

井上 それぞれの抱えていらっしゃる次期エースの方達を、他のカンパニーの社長も把握されていて、固有名詞で議論していくというイメージですかね。

それだけのために合宿をされるんですかね。

山口 まあ、一日ですね。

曽山 時間の大小はあるでしょうけれども、ざっくり一日で何人くらいについて話されるんでしょうか。

山口 まあ、20、30人ですね。

曽山 1日で20、30人だとすると、結構丁寧にやられていますね。

では、(例えば)山田太郎君はこういう状況で、数年後こういう状況を狙わせたいんだけれど、今こういう状況で、みたいな?

山口 私がよく知らない社員だったら、メンター制じゃないですけれど、ちょっと触れ合う時間を作ってみます。

各、事業会社毎に仕組みは異なりますが、弊社の場合はそこは多面的にやっていますし、第三者評価みたいな人事コンサルみたいなのを入れて、多面的な説明とかも入れて、人物のポテンシャル評価とかもしていますね。

曽山 なるほど。

サイバーエージェントの「人材覚醒会議」

井上 サイバーエージェントさんからみてリクルートの人材開発委員会の仕組みはいかがですか?

曽山 いや、もう、純粋にすごいですよね。

委員会があるというのは以前から少しお聞きしていましたけれども、私たちも、「人材覚醒会議」というのを始めました。

【参考資料】
「人材覚醒会議」を開始

それは何かというと、取締役8人で、サイバーエージェントの若手から幹部まで、今 配置転換したらもっと伸びるのではないかという、活躍してポテンシャルのある人材なのに埋もれているのではないかという人材を議論しようという取り組みです。

それを半年毎くらいに開始し、2回実施しました。

実際それで今のところいいんだけれども、本人は責任感が結構あって、異動したいとあまり言わない。

けれども、他に行ったらもっと伸びるんじゃないかという異動がいくつか決まりました。こういったことは、トップダウンでやらないとできないんですよね。

ですから、役員が時間を使って、そういう人材を見つけるための会議というのをやっています。

例えばこの間だと100人分くらいの幹部、管理職以上のリストを持って行って評価の推移を見たりしています。その他には、人事で毎月全社員にアンケートもとっているんですよ。

先月のあなたのコンディションはどうでしたか、というアンケートです。

日経新聞の産業天気図のように、ダブル晴れからダブル雨までとっていて、その24か月分くらいの推移を全部チェックして、厳しい人だけれども晴れをつけるとか、すごく自分に優しいんだけれども雨がついていたら、どうしたのかな、辞めたいのかなみたいなことを考えたりしています。

そのファクトデータとかを持って行くことと、その他には、噂情報ですよね。

何だか彼がちょっと悩んでいるみたいだとか、チャレンジしたいようだなというのを掛け算して、この辺どうですかというのを持ってくるというのをやりました。

毎週やっている役員会にプラス1時間だけもらって、CA8と私の9人で話をするんですけれども、よかったのは、丁度8月末にそれができたことですね。

そして100人分くらい話しました。

でも、1時間だから、この人確かに勿体ないね、というそれくらいの議論なんですよ。

その翌週に「あした会議」があって、先週末なんですけれども、そこでふれられた名前が実際の抜擢対象になったんです。

中堅人材で、もともとよかったのに、彼ちょっと埋もれているよね、という人を抜擢の中の一員に入れておこうというのができたので、よかったなと思っていますね。

山口 私もそういうタイプでしたね。

中途採用で、進学事業というリクルートでも収益規模が比較的大きくない事業にいたので、20代のうちからパイプラインに入っていなかったんですよ。

でも、この人はよく考えてみたら何かいつもこの進学事業という、日の目の当たらないところで、いつも説明責任を果たしているよねみたいな、ちょっと気にかけておくかみたいな。

井上 フラグが立ったんですね。

山口 「あした会議」ではないですけれども、その次の「New RING」でいきなり出してきて、グランプリをかっさらったと。

その掛け算で、次の4月にいきなり課長から執行役員になっちゃったんですよね。

だから課長は1年しかやっていないんです。

そういうのってやっぱり大事ですよね。

曽山 大事ですよね。それはデカい。

狂い足りない

山口 本当の意味での「出る杭」が、サイバーエージェントさんの中にもリクルートの中にもいないのかなという思いになります。

私なんかより、出木場という人間の方がもっとすごいんですけれども、「indeed」という会社を、何が何でも買わせてくれと言った。

色々な反対があっても、絶対これで成功しますから賭けて下さいという意気込みと、それまでに積み上げた仕事の成果というかクレジットがある。

私は私でそれまでコツコツと脇で仕事をやってきて、何が何でも「受験サプリ」やらせてくれって。

その後も、世界に出たいからこの会社を見つけてきて買わせてくれって。

なぜお前なんかが教育のグローバルについて語るんだ、まだ「受験サプリ」だって黒字になっていないだろう、まずは日本だみたいな反対もあります。

いやいや、このタイミングだから必要なんです、みたいな。

目茶目茶にダメ出ししてから、ちょっと待って下さいよみたいなところで、何回も粘って粘って、言われてもいないのに経営会議にもう一回来ました、もう一回聞いてくださいと。

這いつくばって這いつくばって、粘って粘って機会を得るからこそ、気迫と、もう一方で毎回来るからこそ論理が積みあがって、アイディアから本当に大きい事業戦略と計画になっていくと思うんですけれども、そこまでの迫力と気概と気迫で来る人があまりいないなと思います。

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反対を押し切って、その後ちゃんとコミットして成果を出す人が少なくなっているなというのはすごく課題です。

だからサイバーエージェントさんでも、もちろん藤田さんが創った会社なんだけれども、藤田さんが俺にもうバトンタッチしてくれというか、藤田さんが作ったアメブロ(アメーバブログ)よりもアメーバ(Ameba)よりも大きい事業だぜこれは、みたいな、すごいそういう異物な人って出てこないんですかね?

曽山 それは欲しいですよね。

なので私たちの場合はもう、新会社で社長を作って、煽っていくのと広くやっていく感じなんですよね。

この中で突き上げをしていくしかないなということですね。

藤田はまだ43歳なので、その突き上げをやらせてもらう時間を作りながら、やっていくという感じですよね。

でも、若手で抜擢されて結果を出したメンバー、まあ30歳手前くらいのメンバーに聞くと、新規事業が叩かれていたのによく生き残ったねという風に聞いたら、やっぱり「しぶとさ」とか「しつこさ」という声が出てくるんですよ。

ずっと言い続けるとか、そういう、しぶとさ・しつこさって外からは見えないんですよね。

大体、密室で役員会で行われたりとか、上司に直訴するとかって表に出ないけれども、ここの差が結構、事業の成否を分けているなというのを、最近、人事としてヒアリングしていて、感じました。そこをもっと煽らなければなと思っています。

気迫の違いが「結果」を変える

山口 だから、そこの気迫が、全てのチャンスを得るか、小粒のチャンスで終わってしまうのか、そもそもダメなのかを決めると思っています。

リクルートが50年生きながらえてきたのは、多分、その時代時代、俺が次のリクルートを引っ張って行ってやるという傑出した人が、一人ではなく数人いて、その人が経営の役員が連邦経営をしてきたからなのかなと。

40歳前後で傑出した変わり者とかぶっ飛んだ人が集まって来るから次のリクルートが面白いのかもしれないですね。

次の30代とか20代の中からも、そういう人をどう発掘して、修羅場を与えていくというのも一つなんですけれども、その人自身が自己成長としてどう、自分もなんですけれども、与えられたところで修羅場でどうこうというよりも、勝手に自己成長するという確率論を待っているような、運命論というか確率論を最近ちょっと肌で感じてしまっているのが悩みなんですよね。

育成しなければならないとか、後継者を見つけてとも思うんですけれども、ちょっと待てよ、と。

俺そこまで発見されていないぞとか思ったりもするんですよ。

曽山 もちろん提供される側ですよね、する側と。

やはり、本人が勝手に決めて勝手にやるというところを最大化しながら、本人が突き進まないと、本人自身が成長しないというのはありますよね。

山口 だから、本当にスタートアップの起業家って、皆自分でリスクをしょってやりたいからやるというので、今日 ICCカンファレンスに来ている皆さんはやられているわけじゃないですか。

でもやっぱり、社内のアントレプレナー(起業家)でも、やっぱり本当に、絶対この投資を返しますからやってくださいというのが、気迫が欲しいです。

そうなれば、「New RING」とか「あした会議」なんていうイベントはそもそもいらないと思うんですよ。

だって、本当にやりたかたったら、思った瞬間にイベントが開催されていない期間でも来いよという話ですよね。

竹内 麻衣 氏(以下、竹内) 山口さんは、「New RING」を通る前に、予備校講師を口説いて2人くらい辞めさせちゃったという話を伺いました。

山口 そうそう。家族がいたから、生活を背負った人の人生を変えてしまったけれど、それくらい背負ったから、何が何でもこのコンテストに勝たなければならないみたいなプレッシャーを自分に課せるじゃないですか。

だから、そこまでの気合が、私が出た後はなかなか感じにくいなって。

自分の過去の失敗で言うと、3年前に、実は、本気の奴だけ来いという風なブランディングにしちゃったんですよ。

そうしたら応募が20件しか来なかったんですよ。

これって20件で、確かに来る人は来るけれども、それはもう完全に、リクルートという、(新規事業が)ポコポコ生まれてくるという企業カルチャーとか、リクルートマーケティングパートナーズ1,300人の中に漂っている、何か社員が創らなきゃという空気がなくなっちゃう、絶滅の危機だなと思ってしまったんですよ。

確かに、確率論で1,300人の内の1人とか数人がやりたい時に来ればいいんだけれども、でもそれって、過去のリクルートのイメージがあるから今入ってきて、それをたまたま行動しているけれども、もう1,300人中20人しかチャレンジしてこないようなものが当たり前になって形骸化していくと、次に入ってくるリクルートの人はリクルートのイメージとかが変わってしまうんだろうなと。

訳のわけらないすごい人がたまたまいて、その人に頼った会社みたいな感じで、自分には何もチャンスがないと思ったので、だからこの2年でもう一回、審査員やかけるお金もちょっと変えて、20件が100件、今年は200件くらいに戻したんですね。

井上 サイバーエージェントさんはいかがでしょうか?

曽山 結局、新規事業プランコンテストがあるかどうかはどちらでもよくて、結果的にはちゃんと提案が死なないで生まれているかということと、優秀な人材が埋もれていないかどうかだけが重要なんですよね。でも、ある程度のサイズが出てくると、皆が言ってくるわけでもないし、言ってくる人はいるけれど、言ってきた人が必ず当たるかどうかはまた分からないですからね。

私たちも試行錯誤という感じです。

自己承認欲求を満たすことも大切

山口 あと、一番はこういうことかなと私が思っているのは、結局、何かこれやりたいぜという人は、どこかで、別に私は「受験サプリ」をやりたいというのを、教育を変えていくという社会性や社会責任的なものも持っているんですけれども、どこかで、目立ちたいとか自己満足したいとか、自己承認欲求を満たされたいという欲も働いていると思うんですよね。

その時に、勝手に社長に行って認められましたと言うよりは、会社の中でひと盛り上がりしている大きなイベントの中で、皆が注目している中で一等賞になりましたという方が、始まりとしてもすごくいいスタートと言うか。

曽山 応援してもらえるし、注目もしてもらえますもんね。

山口 そういう意味で、俺は密かに狙っているんだという奴にも、盛り上げた中でスタートを切れる空気感の醸成は必要なのかなと。

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曽山 確かに。

井上 このICCカンファレンスで、さっき仰っていただいた通り、色々な起業家の方が、トップのアントレプレナーの方を含めていらっしゃっているじゃないですか。

そういう方たちの熱量に触れるみたいな経験というものも、今 皆さんが考えていらっしゃる、なかなかこう若い方で骨のあるというところに寄与するみたいなことってあり得るんですかね。

お二人のように、この辺りが既にある方が、更に、富む者は富むではないですけれど、更にパワーアップしていくという…

自らのアクションがとにかく大切

曽山 私は、ICCカンファレンスの参加者は視点の高い人が多いので、視点が高い人と触れることによって、自分の視点の低さを目の当たりにするというのは、当然こういう場だからこそあることで、これは刺激になると思いますよね。

井上 だからこそ自分で見つけて自分で動かないと意味がないということでしょうか。

曽山 「行ってきなよ」と言われた時の研修が、本当にダメじゃないですか。

やはり自分が死ぬ気でやりたいから、そこに勝手に行ったというくらいでないと、やっぱり厳しいというのはありますよね。

そういうところに集まるような場があること自体を、行きたいと思うようなイベントに当然なるので、そういうイベントを増やしていくことというのは、すごくインパクトがあると思いますけれどね。

あそこに行ったら視点が上がるんじゃないかとか、そうなるだけですごくいいと思うので。

山口 私もそう言いますね。

行かされるより行きたいとか、あとはやはり最後はアクションをとることですね。

やはり、一歩踏み出すということをやらないと、何も始まらないと思うので、その一歩を、新規事業を自分で考えたりするのも、いきなり自分で自己資本を出してどうとかって言うと、すごく重いので、たまたまこういうサイバーエージェントさんとかリクルートみたいな会社があって、そこの中にいるのであれば、その中でこんなに低リスクなことはないから、絶対にやった方がいい。

(在席している間に社内でどれだけチャレンジと失敗を経験するかが大事かなと思います。

曽山 私たちの場合は、50、60代でガンガンに独立するような人材を社内で増やしたいんですよ。

自分がシニアになった時に、すごく攻めている60代とかになりたくて。

サイバーエージェントはそうでないと面白くなくなってしまいます。

そういう会社は今までにあまりないので、そういうのを作らなければなということを感じます。

そういう意味では、自分たち、今役員が40代中心なので、これがすごく攻めまくっている状態と、若手をどんどん煽ってやっていくというのをずっとやり続けて、藤田を抜く人材が出れば、という感じですよね。

山口 私が思うのは、リクルートって40歳くらいで辞める人も多くて、「元リク」とか言われていますが、独立してリクルートの事業の周辺領域で仕事をしている人も多いんですよね。

多分、リクルート経済圏みたいなのがあるんですよ。

サイバーエージェントさんが考えるのは、結局、サイバーエージェントさんという本体の外に、リクルートのように独立するのではなくて、サイバーエージェントさんがひと噛みした資本を入れる中で、でっかい経済圏が連結経営で、いつか1,000社、2,000社だってそれで1兆円とか2兆円ありますみたいな、そんな感じですよね。

曽山 グループ内にエコシステムを作りたいという感じですよね。

井上 今回初めてこうしてお話をされたと思うのですが、おそらく、外からお互い気になっていたことも色々とおありだったかと思うのですが、今回、お互いのお話から何を学ばれたかなというのを、是非、締めの言葉として頂きたいんですけれども。

曽山 私はやはり、純粋にお話をお聞きしていて、弊社内にもしぶとく、しつこくチャレンジする社員を増やさなければなというのは、すごく感じましたね。

そういう人材が多ければ多いほど、弊社内での新規事業がどんどん増えてくるだろうなと思いました。それをやらなければなと思った反面、やり方だけはこれから考えなければと思ったくらいに、難易度が高いなと思いました。

ありがとうございました。

山口 私も曽山さんと初めてゆっくりお話ししたのですが、飲み屋でリクルートの同僚と話すくらいにぶっちゃけて話せました。

注:「ぶっちゃけて」とありますがこの記事は広報の確認を頂きマイルドに編集されております。

感じるのは、本当に、同じ価値観というか、同じ”人”への可能性の追求の仕方みたいなものをしていているんだなと。

あとは、今日、改めて話しながら、曽山さんやサイバーエージェントさんがやっていることを聞いて、リクルートもサイバーエージェントさんから学べることがあると思ったし、特に「あした会議」なんて、自社ではできるのかチャレンジしてみたいと考えています。

井上 先ほど、曽山さんが、「New RING」や「あした会議」の「HOW」との前に、なぜそれをやるのかという「WHY」があるじゃないですか。

「WHY」の部分が、両社かなり共通されていて、「HOW」はそれぞれ、やはり異なるアプローチをとっていらっしゃって、非常に面白い対談ではなかったかなと思います。

どうもありがとうございました。

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(終)

編集チーム:小林 雅/石川 翔太/榎戸 貴史/戸田 秀成

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