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5. セッションのゴールとは? 学び or 盛り上がり、満足させるのは会場 or 登壇者、モデレーター泣かせの二者択一、選ぶなら?

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ICCニューイヤーパーティ2020で開催された特別セッション「モデレーター勉強会(シーズン2)」の全文書き起こし記事。全6回シリーズの(その5)は、会場からのQ&Aです。会場に集まった人たちも、モデレーター経験者ばかり。「モデレーターあるある」への登壇者の答えとは? ぜひご覧ください!

▶ICCパートナーズではコンテンツ編集チームメンバー(インターン)の募集をすることになりました。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。


【開催情報】
2020年1月22日
ICC New Year Party 2020
モデレーター勉強会(シーズン2)

(スピーカー)
伊藤 羊一
ヤフー株式会社
コーポレートエバンジェリスト/Yahoo!アカデミア 学長

岡島 悦子
株式会社プロノバ
代表取締役社長

琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)

武田 純人

(モデレーター)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役

【一挙公開】「ICC名物モデレーター直伝!トークセッションを成功に導くための極意とは(シーズン2)」の配信済み記事一覧


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最初の記事
1. ICC名物モデレーターが集結! 4人4様、「己の流派」を明かす

1つ前の記事
4. セッションの初速・ターゲット設定・質問の順番……ICC名物モデレーターが実践する運用テクニック

本編

ICC小林 そろそろ時間も半分を過ぎました。今度は会場を巻き込んで質問をしながら進めていきたいと思います。

まずは、児玉さん、いかがですか?

「会場の盛り上がり」と「学び」のどちらをとるべきか?

児玉 昇司さん(以下、児玉) ラクサスの児玉です。よろしくお願いします。

モデレーターをするときに、知識を持って帰るような話題になるときと、楽しいだけで終わってしまうときがあって、「正しく暴走」してくださる方もいますが、間違った暴走で、持ち帰りは少ないのですが、会場は笑いが絶えないことがあります。

どちらが正しいのか?と思っています。

伊藤 そこが特にモデレーターとしての腕の見せ所であると思っています。

ヤフー コーポレートエバンジェリスト/Yahoo!アカデミア 学長 伊藤 羊一さん

たとえば、ある2人のスピーカーで具体的な話をして、ものすごく盛り上がるとします。

その話が構造化されていなかったら、モデレーターが「つまり、こういうことですよね」と構造化しながら進んでいくと、聞いている方々が、「あっ、そうか。そういうことなのか」と次に行けるので、そういうふうにくさびを打つということは相当意識しています。

それをやっていると、暴走が暴走ではなくなって、「あっ、ちゃんとしたことも言わなければ」と気づくスピーカーも出てきたりして、「具体」と「抽象」の構造化はモデレーターがやるように意識しています。

そうすると、両方満たせると思います。

琴坂 今の質問に直接に答えると、ICCだとしたら、ICCの目的に対してどちらが応えるかというと、明らかに「学び」ですよね。

だから変に盛り上がるのは意味がなくて、難しいのですが、あえて真面目な話の中で盛り上がることを目指すのがいいと思います。

岡島 ICCはすごく大きくなってきて、色々な事業ステージの人がいます。

まだアーリーステージの、たとえて言うなら小学生ぐらいの人に、大学生の話をしても盛り上がらないこともありますし、そのときは学びがなかったとしても、先々学びになるケースもあります。そこはモデレーターは嫌われる勇気を持って、この人たちから高い点数をもらわなくてもいい。

後々見返したら、学びになったと言ってもらえればいい、という感じになるといいなとは思います。

児玉 それでは、議論のレベルはどこに合わせるべきでしょうか。

岡島 そこは、毎回設計します。

社外取締役の効果的な実効性のような話は、3人くらいしかいないベンチャーだとしたら、全然意味がないですよね。

そこと1万人社員がいる会社とは全然違いますので。

ICC小林 おっしゃる通りです。

セッションの設計そのもので、ある程度聴衆のターゲットは決まっているので、「それに合わせてください」というのが基本です。

前回だとレジェンドによるセッションがありました。

【一挙公開】レジェンドが語り尽くす!メガベンチャーを創るための経営者の仕事とは?(全6回)

定性的なアンケートはものすごく熱烈な回答でしたが、評価は普通で、ちょっと上ぐらいでした。

千本(倖生)さんのお話は「人が大事」など、抽象度が高いのですが、刺さる人には非常に刺さったセッションでした。

モデレーターがNPSに抱える複雑な想い

岡島 小林さんに異を唱えるわけではないですが、、NPS®(ネット・プロモーター・スコア)だけで測られると、正直きついというのもあります(※)。

▶編集注:ICCサミットの全セッションは、参加者の終了後アンケートにてNPSを測定しています。測定指標、方法などは下記のリンクの詳細をご覧ください。
【評価レポート】ICCサミット KYOTO 2019 セッション評価など

ICC小林 定性的なコメントも合わせて読んでいますよ。

慶應義塾大学 准教授(SFC・総合政策)琴坂 将広さん

琴坂 いろいろな聴衆がいるセッションで、全員に何かしら学びを与えようとすると、全員のNPSが下がってしまうことは結構あります。

ICC小林 大会場になればなるほど、難しいですね。

岡島 本当にそうですね。

ICC小林 今日のような小さなセッションならものすごく簡単です。顔も見えるし、明るいですし。

琴坂 戦略的に大会場でNPSを上げようとするのなら、学びを捨てるという選択肢も恐らくあって、NPSは高いけど学びの薄い盛り上がりに逃げそうな傾向があるのですが、それはちょっと避けたほうがいいのかなという悩みがあります。

岡島 私は「学びを大事に」と思っていますが、抽象度の高い学びはなかなか難しいです。

ここでしか聞けないから、具体的なエピソードをなるべく聞いていただきたいですし、前提条件が明らかになって、「この前提条件だったら自分にはヒントになるな」という持ち帰り感にしてもらえるといいなといつも考えています。

琴坂 具体的なエピソードも何か罠があると思っていて、たとえばゴシップやシークレットや、タクティクスを入れるとNPSは絶対に上がるんですよ。

そんなことは本に書いてあります。私はそれは自分で読んでくれと思ってしまう派なので、どちらかというとそれを避けてしまう。そうするとNPSが下がるんですよね。そこで悩んでいます(笑)。

岡島 記事化されているエピソードには、その経営者がなぜそう考えていたかという“Why”と、なぜそのタイミングで意思決定したかの“When”は出てこないので、頭の構造をなるべく聞き出すようにしたいと思っています。

琴坂 具体例は出すけれど、その背景で盛り上がっていくという、そのバランスは最高ですね。

伊藤 ICCの会場は観客の理解度が高いので、そこの持ち帰りをあえてあまり抽象化しなくても、バーンと投げて解釈してくれることがよくあります。

モデレーターをするときは、イベントによっては「どのぐらい理解してくれているのかな?」と思ったりします。ICCはそういうところは全然違いますよね。

琴坂 全然違いますね。

「会場の満足」と「登壇者の満足」のどちらをとるべきか?

ICC小林 嶺井さん、何か言いたい感じではないですか?

嶺井さん(以下、嶺井) マイネットの嶺井です。今の話はすごく自分も毎回悩むのです。

特にファイナンスのセッションを担当させていただくことが多いなかで、登壇者同士で真剣な議論をします。

登壇者同士で熱を帯びた議論をしようと思うと、会場がついてこられなくなるんですね。

でも、やはりファイナンスアクションの裏には、こういう戦略なり背景があるという話のほうが、登壇者同士はすごく面白いんですよ。

でも会場に来ている人たちはついてこられないという中で、どちらを取ろうかと。

当然モデレーターをしていて、会場に来てくださる方の満足感を目指す中で、そうすればするほど、登壇者からしたら、当たり前のキャッチボールにどうしてもなってしまいます。

例えば前回の京都のサミットで、「メガ・ベンチャーを創造するためのファイナンス戦略とは?」の「未上場企業編」に出させていただきました。

「上場企業編」は、小林(賢治)さんがモデレーションを担当されました。

議論のレベルで言うと、会場で聞いていて、「上場企業編」のほうが高いと思いました。

「これは面白いな」と思っていましたが、NPSで言えば、自分の担当した未上場企業編のほうが高かったのです。

これは意図的に、会場に来られている方が興味のある内容や、ついてこられる内容に落としたということがあって、正直登壇者や一定のレベルにある人からしたら、上場企業編のほうが、学びが多かったと思います。

岡島・琴坂 すごく共感します。

セッション評価の追加指標決定!

ICC小林 では僕が方針を決めればいいですね。

壇上で盛り上がったほうがいいのではないでしょうか?

嶺井 でも、評価は来場者がするんですよね。

ICC小林 では、来場者の評価と登壇者の評価を分ければいいんじゃないですか。

そうすると「登壇者の評価はこうだった」「来場者はこうだった」と出せますね。

その2つのギャップはなぜかというと、専門的な議論が多いからですね。加えて登壇者が、自分以外の登壇者の評価を定性的なコメントでする。

岡島 両方出してくれるといいですね。そうであれば、すごくいいですね。

登壇者だけで盛り上がっていたという評価が残らないようにはしたいですね。

武田 ごめんなさい、でも僕は両方目指したいんですよ。

来場者、登壇者、どっちかだけではないと本当に思っています。

嶺井さんの今のお話は僕自身もずっと思っていることで、壇上で専門的な話で盛り上がるところと、当然ながら色々な聴衆がいるなかで、全員と等しくは同期できないところではあります。

先ほどのモデレーターが必要かどうかというところでいうと、そこの同期の抽象度を絶妙なところに持っていくのが、モデレーターかと思います。

岡島 本当にそうですよね。

ICC小林 冒頭に「この質問が分からない人は、他の会場に行ってください」と言うべきかもしれません。

(会場笑)

たとえばファイナンスのセッションなのに、「バリュエーションって何ですか?」と言われたら、困りますよね?

琴坂 最初に課題を出して、5問中最低3問に正解したら参加できるとか(笑)。

ICC小林 「TSRって何ですか?」と言われても、話のレベルが違うじゃないですか。

岡島 そこには合わせられないですね。

武田 僕は自分の中でセッションをやる上で大事にしていることがあります。

聴きに来ているの方に学びになるということは当然ですが、その方たちがセッションを聴いて、その後なにか一歩前に踏み出すことができるかどうか。学び、プラス、興奮なんですよ。

そういうセッションをやりたいです。

なので自分は、空気も作りにいくし、設計もします。

伊藤 誰としてモデレーターが立っているか、立ち位置ですよね。

岡島 ありますよね。

伊藤 僕は明確に、聴衆側なのです。

モデレーターの席に座ってはいますが、自分が聴衆だったら「今、これ聞きたいよね」と思うよな、と、聴衆側とシンクロさせてスタンスでやります。

岡島 セッションの内容によりますね。

「レクチャーシリーズ」と言っているものについては、聴衆側で知見を深めることでいいと思います。

それだったら、小さい会場でいいなと思います。

大会場でそれをするのは結構しんどいなと思います。

本当にプロデュースだと思いますね。

ICC小林 登壇者同士でレビューをして、「登壇者」と「来場者」ごとの評価を出すことと、「このセッションはプロ向けです」と、明確に「何とか指定」をつけるということですね。

「エントリーモデル」「プロ指定」など、明確に分かるものがいいですね。

伊藤 「推奨科目」みたいなね。

琴坂 「このビデオを見てから来てください」とか(笑)。

岡島 モデレーターの役割で言うと、滑舌の悪いスピーカーもいらっしゃいますよね。

とても早口で、ものすごくいい話をしているのですが、「客席への浸透度、どうかな?」と思うときがあります。

そういうときは、すごく面白いと思っているときは私自身がウケて、それから「この話ですよね」と言って、解説するようにしています。

解説で補足を入れたりして、壇上だけで盛り上がらないように配慮しています。

小林 では次に、ICCサミット FUKUOKA 2020で初モデレーターをする栗田さんに、聞いてみましょうか。

(続)

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続きは 6. よりよい議論のために、モデレーターが大切にすべきこと【終】 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/尾形 佳靖/戸田 秀成/小林 弘美

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