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勝ち続ける企業の「勝ちぐせ」、ウィニングカルチャーとは? ICC KYOTO 2021のセッション「ウイニングカルチャーについて語り尽くす」は、そんな企業が結集し、自分たちの組織のカルチャーを紹介します。全6回シリーズ(その4)は、ユーザベース稲垣 裕介さんが登場。「あえてビジョンは作らず経営している」という理由とは? ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2022は、2022年2月14日〜2月17日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット KYOTO 2021 プレミアム・スポンサーのリブ・コンサルティングにサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2021年9月6〜9日開催
ICCサミット KYOTO 2021
Session 4D
ウイニングカルチャーについて語り尽くす
Supported by リブ・コンサルティング
(スピーカー)
石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事
井手 直行
株式会社ヤッホーブルーイング
代表取締役社長
稲垣 裕介
株式会社ユーザベース
代表取締役 Co-CEO
小林 正忠
楽天グループ株式会社
Co-Founder and Chief Well-being Officer
(モデレーター)
中竹 竜二
株式会社チームボックス
代表取締役
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▶「ウイニングカルチャーについて語り尽くす 」の配信済み記事一覧
連載を最初から読みたい方はこちら
最初の記事
1. “勝ちぐせ”を持つ組織が結集、ウィニングカルチャーを語る!
1つ前の記事
3. ヤッホー“てんちょ”井手さん「売上が伸びているときにカルチャー作りに着手しよう」
本編
あえてビジョンは作らずに経営、ユーザベース稲垣さん
中竹 では次に、ユーザベースの稲垣さん、お願いします。
稲垣 裕介さん(以下、稲垣) よろしくお願いします。
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稲垣 裕介
株式会社ユーザベース
代表取締役Co-CEO
大学卒業後、アビームコンサルティング株式会社に入社。プロジェクト責任者として全社システム戦略の立案、金融機関の大規模データベースの設計、構築等に従事。2008年に新野良介、梅田優祐とともにユーザベースを創業。2021年から現職。
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弊社は昨年、アメリカのQuartz事業を売却し、明確な失敗だったと自分たちでも反省し、今再起を試みているところです。
▶ユーザベース、米Quartz事業から撤退…経営陣がMBO、代表取締役の梅田氏は辞任 | Media Innovation (media-innovation.jp)
先ほど、ウイニングカルチャーを持っているかについての挙手で少し手を下に下げたのは、その事業があったからです。
ただ、そこには明確な学びがありましたし、日本では一定程度の成長ができているので、それらを踏まえてお話しします。
弊社は、「経済情報で、世界を変える」というミッションと、The 7 Valuesというバリューを旗印として掲げ、経済領域全域の製品を作っていく会社です。(2022年1月現在、ミッションからパーパス「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」に変更)
あえてビジョンは作らずに経営をしています。
というのも、ビジョンはどんどん変わるものだと思いますし、これだけたくさんの事業を抱えているので、それぞれの事業のメンバーに自分たちで描いてほしいと思っているからです。
よって、あえて抽象度を持たせています。
挑戦の結果として得られる幸せをどう最大化するか
稲垣 (石川)善樹さんの話にもあったステークホルダーの幸せの最大化は、本当に重要だと考えています。
同時に、それに向かうエンジンになっているのは、会社のメンバーがワクワクし、強い意志を持って事業に打ち込むことのできる状態だと思うので、経営としては、そこに注力しています。
具体的には、個人の「Willの実現」と会社の「Missionへの到達」を一致させることに、めちゃくちゃ時間を使っています。
バリューの見極めやゴール、OKR(Objective and Key Result)の設定、フィードバックをとにかく丁寧に行い、一人一人の挑戦の結果として得られる幸せをどう最大化できるか、をずっと話し続けています。
一方、Willの実現とありますが、社内における幸せの定義は、例えば大企業で提供可能な安定は、今のうちの会社で提供できる幸せではないと思っています。
ですから、常にワクワク、ヒリヒリし、挑戦をし、成功すれば大きなリターンが得られるけれど、失敗すればそれは仕方がないと再起を目指す、そんな一定のバイタリティがどうしても必要になると思います。
その結果として、色々な事業が生まれて、Missionの到達に近づくことができると思っているので、幸せの定義とは、ワクワク&ヒリヒリとMissionの到達を紐づけることだと考えています。
スライドに、「Willに基づく挑戦の文化」とありますが、うちの会社で言えば、事業の役員たちはWillが顕在化しています。
資本市場には当然コミットすべき数字がありますし、ホールディングスの会社としての強度を持った経営は当たり前に行うべきことです。
しかし、それぞれの事業の目標数字やどれだけコミットするのかについては、各事業のメンバーに任せています。
それらを期首時点でしっかり合意し、私たち経営陣が市場にコミットをし、その後の各事業の経営については、目標数字を達成するのであれば全て任せると決めています。
ですから、自分たちで意思決定をします。
当然うまくいかないこともあるので、それをどうカバーするのか、予算をどう使っていくのかも含めた挑戦ができますし、リスクとリターンのバランスのとれた報酬設計になっています。
ただ、Willがクリアではない人も当然たくさんいますし、クリアに持っている人の方が少ないのではと思っています。
よって、成長支援として、Willを醸成していく仕組みに力を入れています。
例えば、採用面接では、候補者にとって何が幸せなのか、うちの会社で働くことが幸せなのかどうかを、狂ったように何度も聞きます。
入社してくれた方の事後アンケートを見ると、「幸せか」というワードが、おかしいくらいに会話の中に出てきたという意見を見ます。
でも、それくらいおかしい会社だから入社しましたというような人が実際に入社してくるのです。
お互い意志が合っていることを重視していますし、Willが見えない人が入社すると、何がしたいかを聞き続ける会社なので、不幸になってしまいます。
たまに「Willハラ(ハラスメント)」などと揶揄されますが、それくらい言い続けています。
行動を促す3つの仕組み:事業を創る、Willの育成、副業制度
稲垣 ただ、聞いているだけではなかなか形にできないと思っています。
何がしたいという意図を決めた裏には必ず、原体験があると思っていて、僕は、原体験は作れると思います。
でも、考えているだけでは原体験は作れないので、行動を促すのが何より重要です。
そのために取り入れている仕組みが、3つあります。
まず、”ISSUE-DRIVEN”で事業を創ることです。
私や代表取締役 Co-CEOの佐久間(衡)がやりたいと思った事業案を全社に発信し、社員がそれにエントリーします。
最初のきっかけは私たちですが、エントリーしたメンバーが深堀りをし、考え、行動すると共に、その事業のCEOになることを支援しています。
2つ目が”think beyond”で、リクルート出身の麻生(要一さん、グループ執行役員(株)アルファドライブ 代表取締役 CEO)が担当しています。
リクルートの、いわゆるRingの仕組みで、Willを育てることを狙いとしています。
今年は1回目で、優勝したのは新卒社員の1年目でした。
彼は最初、何がしたいか分からないけれど何かしたいとエントリーし、いくつアイデアを出しても通らず、何度も落選する状態でした。
しかし、ユーザーヒアリングに行くようになってから、少しずつ原体験となるものがたまっていって、最終的には素晴らしいプレゼンを行いました。
多くのメンバーが彼の行動に感動し、本当にWillは作れるんだと思えた、良い事例になりました。
最後が、”DIVE”という社内副業制度で、各事業それぞれに楽しさはあると思いますが、そこから少しはみ出るためのものです。
せっかくいいメンバーがいるのに、他社で副業をされるのはもったいないので、社内で副業ができる仕組みを作ったのです。
業務委託契約を交わし、単価を決めて仕事をしてもらっています。
これにより、社内の枠組みを広げることができました。
会社に合わない個人には一定期間を設け退職を勧奨
稲垣 Willに基づく挑戦の文化をすごく大事にしているからこそ、曖昧にしない強度が重要だと思っています。
ですから、会社のMissionと個人のWillが合わないと思った際は役員陣が介入し、合致させるための一定期間を設けるも、本当にダメであれば退職勧奨もきちんとします。
これは徹底して行っていることで、3つの事例を紹介します。
例えば、香港の役員を解任した際は、国が違うので価値観の違いという課題もあるのではと考え、できるだけ併走したいと取り組みましたが、やればやるほど不幸になってしまったのです。
最後、香港の転職エージェントと、その役員のダメージコントロールについて話した際は、少しでもその人を思うならお金を積んでくれと言われました。
「そうすることで安心して転職ができるし、合わないと分かっているなら、これ以上コミュニケーションを取るのもやめてくれ」という意見でした。
本当にその通りだと思いましたし、コミュニケーションを取って何とか解決しようとしていたのは自己満足だったと痛感しました。
相手を思うからこそはっきりさせ、早く転職の支援をすべきだと思いましたね。
2つ目が、Quartz事業の撤退です。
失敗したことは仕方ないのですが、私が13年間一緒に経営してきた、創業者の梅田(優祐)が退任したいと言い出したのです。
まだ一緒にやろうと話したのですが、本人としては、失敗の責任を取りたいというものでした。
本人の意思が固いのに、それをねじ曲げる説得を無理やりするというのは、どうしてもできなかったのです。
ですから、もう彼を応援するしかできないと考え、僕がユーザベースを続けることで彼がまた戻れることもあるという思いで、今に至っています。
Quartzを失って梅田が代表を退任したことは、メンバーにとってはすごく大きなことだったので、彼らにとっても、何となく仕事を続けることはできないだろうと思いました。
そこで、この件が理由で退職を希望するメンバーに対し、会社から退職金を出すことで意図をはっきりしてもらうことにしたのです。
2020年内にそれを明確にすることで、年明けの時点、一緒に乗り越えたいという意図のあるメンバーだけが残るようにしました。
結果、800人のうちの8人が退職し、それ以外は残ってくれました。
最後、3つ目の事例は、先ほど紹介した社内の新規事業コンテスト”think beyond”の結果に関するものです。
優勝したチームのアイデアは、セルフコーチングのようなものでした。僕たちは経済情報を扱う会社なので、方向性に若干のズレがありました。
これをどういうふうに接続するかと考えたときに、彼らに対してすごく良いアイデアだけど1億円、2億円をパッと出すことはできない、でも人材領域に入り込みたい会社なら、投資したいと考える可能性があります。
だから僕たちの会社が囲って無理やり事業化するのは間違っていると思ったので、彼らに独立する道を示したのです。
彼らに「それでもユーザベースで事業化したいのであれば一緒にやろう、そうではないならアイデアの権利を放棄するから独立を」と伝え、今もまだ議論中です。(2022年1月、UBグループから独立し法人設立済み)
▶︎ユーザベース、新規事業育成プログラム「think beyond」により、2つの事業を新たに創出(2021年10月1日)
今のところ、ユーザベースから一定額をマイノリティ出資した上で、組み合わせて一緒にやる、そして将来可能性が見えれば、もっと一緒にやることをお互い選択できるようにしようと話しています。
つまり、曖昧にせず、相手が意思決定をする状態を作ることがかなり重要だと思っています。
ですから、Willに基づく経営をしているというのが、ユーザベースの根幹です。
中竹 ありがとうございます。拍手をお願いします。
(会場拍手)
井手 本当に共感したので、最後の部分にコメントをしてもいいですか?
うまくやれる場合はいいですが、志や考え方が違ってやはり合わない場合があります。
例えば、相手が辞める判断をした時、どうしても引き止めたくなりますが、お互いのために別れることがいいなと僕も思います。
ただ、その人を追い出す形になると退職後の関係にヒビが入りますし、社内のメンバーがそれを見ているので、「この会社は、失敗したら辞めさせられる」、「反論したらクビにされる」と思ってしまうかもしれません。
カルチャーを大事にする会社にとって、それは良くないと思います。
でも稲垣さんは、合わないなら相手のことを思って、お金を積んででも退職勧奨をすると話されていて、これは勇気が要ることですが、とても重要だと僕も共感しました。
退職を前向きにとらえ卒社式を行う企業も
石川 2日前のセッションで、マザーハウスの山崎(大祐)さんが、マザーハウスではWillとミッションが離れた場合、卒社式をするとおっしゃっていました。
入社式ならぬ、卒社式です。
そこでは退職される方と社長が2人で対談するのですが、従業員はもちろん、マザーハウスのお客様も呼んで、有料イベントとして開催するらしいです(笑)。
中竹 すごい企画ですね。
石川 そして退職される方が、どういう思いでこれからの人生を歩むかについて、みんなの前で宣言するらしいです。
辞めることは決してネガテイブなことではなく、前向きなことだと捉えていて、毎回、涙、涙で終了するようです(笑)。
中竹 それはまさに、ウイニングカルチャーですね。
石川 ウイニングカルチャーを作っていると思いましたね。
中竹 コメントありがとうございます。
稲垣さん、Willに基づいて話をして頂きましたが、一貫性がありましたね。
稲垣さんとは普段からよく一緒に登壇させて頂きますが、今日の話はWillを最も感じました!
稲垣 ありがとうございます(笑)。
中竹 個人のナラティブ(物語)としても…。
小林 会社として、めちゃめちゃ誠実ですよね。
中竹 そうですね。
小林 従業員という表現はあまり使いたくないのですが、従業員に対してこれほど誠実に向き合う組織は、なかなかないです。
すごいなと思いました。
中竹 このようにフリーコメントも入れながら進めたかったのですが、あっという間に時間が過ぎてしまっています。
皆さんそれぞれ5分くらいでお願いしますと伝えていましたが、誰も時間を守っていないですね。
石川 そうでしたっけ(笑)?
中竹 全く問題ありません!
では(小林)正忠さん、お願いします。
(続)
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続きは 5. 「カルチャーなしでサステナブルに勝ち続ける企業はない」と考える楽天グループが言語化したもの をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸
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