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ICC FUKUOKA 2023のセッション「急成長を実現する『セールス最強組織の仕組みづくり』とは」、全6回の⑤は、ほぼ全員がセールスとコンサルを行う集団リブ・コンサルティングの権田 和士さんによる、SMBとエンタープライズに対する営業活動の解説。それぞれに対するアプローチの違いや、具体的なノウハウまで惜しみなく公開します。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは リブ・コンサルティングです。
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【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 9C
急成長を実現する「セールス最強組織の仕組みづくり」とは
Supported by リブ・コンサルティング
(スピーカー)
會田 武史
株式会社RevComm
代表取締役
権田 和士
株式会社リブ・コンサルティング
常務取締役COO
田部 正樹
ノバセル株式会社 代表取締役社長 / ラクスル株式会社 取締役CMO
(モデレーター)
加藤 有
株式会社リブ・コンサルティング
取締役
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ほぼ全員がセールスとコンサルを行う集団「リブ・コンサルティング」
権田 我々の会社では、年間900ほどのプロジェクトが行われていますが、そのうちの半分がグロースのお手伝いのプロジェクトです。
何兆円規模のエンタープライズから、社員数30人くらいの会社まで、幅広くお手伝いをしています。
売上は35億円で、売上比率はエンタープライズ、中小企業、ベンチャーの各領域がそれぞれ約3分の1ずつを占めます。
外資コンサルティング会社では、パートナーが営業しているのが特徴ですが、我々の場合、1年目から全員営業活動に関わり、280名いる社員のほぼ全員が営業とコンサルティングをしています。
新卒入社の場合、入社早々1カ月間の営業研修があります。留学生も採用していますが、日本語でひたすらアポ取りをしています。
営業現場が分からなければ、セールスのお手伝いができないからです。
つまり、セールスのDNAをかなり重視している会社です。
SMB(中堅・中小企業)とエンタープライズとベンチャーは、それぞれへの売り方が違います。
ベンチャーは両者のハイブリッドなので、今日はSMBとエンタープライズについて話したいと思います。
我々の祖業は、地方の中小企業の住宅企業やディーラーをターゲットにしたもので、彼らに対してどんな営業をするかという型作りをしていました。
その後エンタープライズとベンチャーに広がっていき、今は11期目です。
今日は、SMBのセールスの型をいかにつくり、エンタープライズにどのように広げていったのかの話をしたいと思います。
SMBセールスの要は「熱を上げる」こと
権田 SMBセールスとエンタープライズセールスは、全く違います。
左のSMBの場合、衝動買いに近いようなセールスをどう作り上げるかで、1対1で、オーナーをどう口説くかというものですから、熱を上げることが重要です。
右のエンタープライズの場合、より合理的で、社内を着実に攻略するための根回しセールスです。
意思決定をする人数はSMBでは1人ですが、エンタープライズでは平均5.4人が意思決定に関わるので、その5.4人を口説く必要があります。
当社はこれら2つの型を作ることで発展してきました。
熱を上げるためには、基本的に、長時間面談が重要です。
例えば徳島県にせっかく訪問したとして、60分面談をして帰ってきても、当日成約することはなかなか難しいです。
大抵、2時間面談を設定できるかがキーで、2時間のシナリオを組み立てて、その時間内で熱を上げ切るることが重要です。
熱を上げるとキャンセルが出ることもあるので、15分のアフタートークを入れることもあります。
120分の時間芸術のようなものなので、そういうシナリオを、予め緻密に組みます。
当日の商談で熱を上げられる力ももちろん重要ですが、実はそれよりも重要なのは前の工程です。
どの段階で初回面談が始まるかというこの図でいうところの切片が、実は一番重要です。
切片が高まった状態で面談に行かないと、2時間頑張って面談をしても、熱が上がりきらず、むしろその後は下がっていく一方で、そこから契約ラインに届くことはありません。
熱を上げた状態で面談を始めるために、あらかじめFAXで面談確認書を送りますし、電話も訪問までに3回かけたりします。
アポを確定した後に20分コールをし、その後、実際に面談に行く担当者から価値づけをして「私が行きますので」と電話をし、仕上がった状態で当日、長時間の面談を行います。
このように、マンションの衝動買いに近いようなことを実現するのがSMBの”熱上げ”セールスです。
2回も3回も面談には行けないですし、オフラインの商談の方が明らかに効率は良いので、1回の商談にどう魂を吹き込むのかがポイントです。
ちなみにかなりアナログですが、SMB向けセールスにおいてはいまだにFAXは効果があります。
FAXの他に、手紙を書いてDMを送ることもあります。
セールスがはじめて商談デビューする際には、その担当営業はエクセルでセールスにおける共通の型に基づき700行ほどの分量のシナリオを書きます。それを上長が赤ペンで細かく添削します。
これを繰り返すと、少しずつできるようになります。
これは面談確認書で、事前に顧客に送って、テストクロージングをします。
アジェンダに見積や成果の出た事例についても記載し、きちんと提案しに行くという温度感を示して、熱を上げます。
慣れてくると、どこで何を話すかが書かれたシナリオはもう少しコンパクトになりますし、面談後の振り返りをしながらOJTとして学習していきます。
綿密なシナリオライティング
権田 3時間ほどそれだけでも話したい内容があるのですが、かいつまんで言うと、先ほど田部さんが、「インサイト」や「心理」とおっしゃっていました(Part.3参照)。
この図の横軸はセールスステップですが、SMBに対しては、セールスステップはあまり大事ではなく、いかに熱を上げるかが重要ですから、気持ちのステップを上げることが重要なのです。
この図でいくと、縦軸の購買心理になるのですが、お客様が「買いたい」に変わっていくよう、順番に階段を登っていくような流れでストーリーを作っていきます。
1つ1つの購買心理ステップに意味がありますが、かなり細かい説明になってしまうので、ここでは説明はしません。
ただ、これがSMB向けセールスにおける2時間面談のシナリオライティングのための軸であり方法論であると理解してください。
各業種に特化して、具体的に響くように行っています。
ちなみにマーケティングについても、紙DMも、手紙も、セミナーも、成果事例DMもそうですが、めちゃくちゃ細かい、具体的な内容でなければお客様には響かないので、かなり尖ったものを届けています。
セールスも仕組み化しており、これらのツールをすべてファイリングし、顧客に提示しながら話します。
かなりアナログですが、これらの準備をして提案し、2時間の面談できちんとクロージングまでを目指します。
これらの事前準備をしっかりと行えば、SMBでは25〜30%の成約率を達成できます。
エンタープライズセールスは「モビライザー」発見から始まる
権田 当社は創業5、6年はこのような形で中小企業向けのセールス&コンサルティングで売上を作っていき、大手企業やスタートアップ向けのトライを6年目に始めましたが、エンタープライズ向けのセールスは型が全然違いました。
入社する人材も違いますし、営業活動の中身も全く違います。
「モビライザー」というのが1つのキーワードです。
誰がこの商談を行うパートナー「モビライザー」になるかを見つける作業が、一番重要です。
イメージとしては、ICCサミットに参加しているような方が「モビライザー」なのですが、「モビライザー」を見つけ、その人をまず価値づけ、さらに、その人と一緒に社内を攻略していくという3つの階段を上らなければいけません。
どう見つけて、どう価値づけし、どう攻略するかを一つ一つ科学します。
アメリカで『The Challenger Sale』という本が30万部ほど売れてベストセラーになりました。その続編として『The Challenger Customer』という本も出版されました。
この『The Challenger Customer』をリブ・コンサルティングが監修し、『隠れたキーマンを探せ!』という邦訳本にしているのですが、そこで「モビライザー」の探し方と、どういう人が「モビライザー」になるのかをまとめています。
ちなみに、上の4つ(ゴー・ゲッター、スケプティック、フレンド、ティーチャー)が「モビライザー」で、下の3つ(ガイド、クライマー、ブロッカー)が「トーカー」です。
「トーカー」に話しても、契約は全く成立しません。
こちらは、どういう人が「モビライザー」かを見極めるためのチャートです。
エンタープライズセールスについては、この「モビライザー」を見つけられるかどうかが仕事の50%を占めるくらい、重要です。
「モビライザー」といかに関係を構築するか
権田 簡単に言うと、世話焼き、おせっかいな人が「モビライザー」です。
例えば、近くに美味しいラーメン屋があるのか聞いたとき、どういう協力体制を取ってくれるかとか、会社に対してどれくらい動いてくれるか、などをもとに診断します。
よくやってしまう失敗パターンは、関係作りが上手いセールスと、会話が盛り上がるトーカータイプの顧客の二者だけで話していても、全然成約しないというケースです。
今は、論客タイプのチャレンジャーセールスだと、決まりやすいです。
トーカーではなく、相手の好奇心をどんどん煽るような質問をする論客タイプと、それを受け止めるモビライザータイプという関係を作っていくのが重要です。
そしてモビライザーと面談できたとしてもソリューション提案をするとまったく刺さりません。そもそもモビライザーとの出会いは課題が設定される前段階になるので、そこで具体的なソリューション提案はミスマッチです。
彼らに対しては、どちらかと言えば好奇心を煽る話をする方が良く、彼らと一緒に問いの設定から盛り上がれるようなディスカッションのパートナーが求められます。
「モビライザー」のニーズに応えるため、独自の視点から価値を出し、継続的なアドバイスをしながら最終的に課題解決のオプションを提供していきます。
SMB向けには行っていませんでしたが、エンタープライズセールスで効果的だったのは、会社案内の後に、我々が顧客の会社についてこう理解していると伝えるための、「弊社の理解」というパートを入れたことです。
こうすることで自然とディスカッションの流れを作ることができ、モビライザー面談の型として機能しました。
このように、業界の状況とその会社について、勝手に我々の捉え方、見方を紹介するのです。
1時間の面談の場合、「弊社の理解」というパートで盛り上がれば盛り上がるほど、モビライザーとの継続的な関係性を築きやすくなります。
ですから、ソリューション提案をするよりもこのパートで盛り上がれる、つまりプレゼン上手な人よりもディスカッション上手な人を育てることが、最初の重要なポイントでした。
「モビライザー」とともに社内を段階的に攻略
権田 「モビライザー」を見つけることができ、協力体制を築くことができれば、その「モビライザー」と一緒に社内を攻略していきます。
会社の中にはコンサル不要派がいる等難しいこともありますが、「モビライザー」を活用しながら、その会社内の人を1人ずつ攻略していくのです。
この流れをうまく作るための社内攻略スケジュールを作り、「モビライザー」との関係構築をしっかり行い、社内の人脈マップを書きながら、パートナーとして社内攻略ができると、契約が決まります。
「モビライザー」に価値づけをし、社内攻略マップを作り、主要キーマンに上申をする流れを作ります。
「モビライザー」が、「社内の人を一気に集めて話してください」と言うこともありますが、そのケースはあまり契約率が高くありません。
どちらかと言えば、じわじわと必要な人を攻略していき、極力外堀を埋めた状態で、全員の前で話す機会を実現するための型化をしていました。
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美