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2.「MiiTel」のセルフコーチングでなぜ電話営業が改善するのか

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ICC FUKUOKA 2023のセッション「急成長を実現する『セールス最強組織の仕組みづくり』とは」、全6回の②は、RevCommの會田 武史さんが、電話営業スキルを磨くサービス「MiiTel」について紹介します。どこにどう着目してサービスを作っているかの解説は、営業スキルだけでなく会話コミュニケーション改善のエッセンスが詰まっており、読む価値大! ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください

本セッションのオフィシャルサポーターは リブ・コンサルティングです。


【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 9C
急成長を実現する「セールス最強組織の仕組みづくり」とは
Supported by リブ・コンサルティング

(スピーカー)

會田 武史
株式会社RevComm
代表取締役

権田 和士
株式会社リブ・コンサルティング
常務取締役COO

田部 正樹
ノバセル株式会社 代表取締役社長 / ラクスル株式会社 取締役CMO

(モデレーター)
加藤 有
株式会社リブ・コンサルティング
取締役

「9C 急成長を実現する「セールス最強組織の仕組みづくり」とは」の配信済み記事一覧


電話営業を分析・可視化しセルフコーチングに導く「MiiTel」

會田 はい、まずは我々のサービス「MiiTel(ミーテル)」の紹介をします。

「MiiTel for Zoom」という、Zoom連携の機能も提供しています。

「MiiTel for Zoom」音声感情認識機能、要注意商談通知機能をリリース(PR TIMES) 

コロナ禍で、Zoom、Teams、Google Meetでリモート商談をすることが増えたと思いますが、電話を活用していたMiiTelが、Zoomにも対応したということです。

セールス体制は、先ほど言及のあった「The Model」型 です(前Part参照)。

人員配置はスライドの青字部分、マーケティングが6、インサイドセールスが14、フィールドセールスが16、カスタマーサクセスが24名で、あとはリファラルチームもいます。

セールスは、インサイドセールスとフィールドセールスを合わせた30名で、結構リーンな組織です。

そして、セールスとほぼ同数のカスタマーサクセス人員がいるということですね。

KPIはシンプルなものです。

それぞれが攻める業界について、ティア(階層)を定めています。

ティア1は、一番重要な「人材・メディア業界」です。

業界規模と企業数で選んでいますが、さらに、これらの業界はファーストコンタクトからコンバージョンまでのリードタイムが短く、CRM(顧客関係管理)を自社で作り込まずにSalesforceHubSpotKintoneなど既存のものを導入し、かつ、セールスのコンバージョンレートを上げるための教育やシステムに、ものすごく投資をしているからです。

面白いのは、最初は不動産業界には注力していないことです。

不動産業界は利益率も高く、営業も強いのですが、SIerを起用して自社でCRMを作っている企業が多いからです。

Salesforceなどは使っていない企業が大多数なのですが、彼らの自社CRMと連携させる必要があるためコンバージョンまでのリードタイムが長くなり、CAC(顧客獲得単価)が高くなってしまうのです。

そこで最初は、人材・メディア業界に注力しました。

まさに今は、成長期にあるかなと思っています。

状況としては、適宜、どのティアを攻めるべきかなど戦略の見直しを行っています。

また、30人の組織ですが、人の入れ替え、人事異動もよく行っていますし、採用も行っています。

よく言われる「100人の壁」のようなカルチャーに関する問題は、うちではあまり起きていません。

創業初期から「RevComm Culture Book (RCCB) 」という社内向けカルチャーブックを作り、入社時に必ず熟読していただきますし、オンボーディングもかなりしっかりと行っているからだと思います。

また、“ザ・セールス会社”でもないため、インセンティブを厚めにはせずに通常の給与テーブルを設定しているので、良いか悪いかは分かりませんが、ギスギスした感じはありません。

RevComm社で実践するヒアリング方法

會田 セールスは全員MiiTelを使って商談しているので、どういう行動をしているのか、つまり1日何件電話をかけ、何件クロージングし、何を話しているのかが全て可視化されており、それをもとに行動分析、コーチングがされています。

我々の場合、潜在ニーズに対するプロダクトを売っているので、営業トークを可視化しようとはあまりしていませんでした。

顧客と営業が何を話しているのか分からないブラックボックス化問題がありますが、そもそも課題が顕在化されていないので、それは当たり前のことでした。

よって、お客様から課題を抽出する、ヒアリングをすることが重要なので、こちらからのTalk比率は50%以下に抑えようとしました。

会話のラリー、つまりやりとりが増えれば、本音を言っていただきやすくなるので、きちんとラリーをしようと考えましたが、Yes/Noで答えられる質問ばかりでは本音を引き出せなくなるので、ラリー回数は1分あたり7回以下としていました。

また、営業の世界では、話しているスピード、つまりペーシングが重要とされ、お客様と同じ速度で話すべきだとされています。

これには、話している速度と脳の処理速度は相関するという科学的根拠があります。

速く話しすぎるとご理解いただけないですし、話すのが遅すぎるとイライラされて、聞いてもらえなくなります。

今、私は1秒あたり9~10文字という結構早いペースで話していますが、これはセールスのセッションでセールスについて話しているからです。

例えば、経営全般のセッションで人事について話す場合だと、参加者のリテラシーが揃っていないこともあるので、NHKのアナウンサーと同じペースである、1秒あたり5~6文字で話します。

話速ひとつとっても実はめちゃくちゃ奥が深く、売れる営業は、ペーシングがきちんとできています。

超せっかちな社長に対しては、1秒あたり11文字で、結論ファーストで話しますが、部長や課長クラスだと1秒あたり5~6文字の少し丁寧なペースで話します。

また、相手の言葉に被せた瞬間、反感を買ってしまうので、被り回数は1分あたり0.1回以下に抑えることに努めています。

これらの要素を全てレビューし、各人員がどういう傾向にあるのかを自ら振り返るセルフコーチングを行っています。

あと、何曜日の何時につながりやすいかは、業界ごと、会社の規模ごとに全然違います。

大企業には、午前中は基本的につながりません。

なぜなら、稟議書がたまっていたり、会議が入ったりしているからです。

でもお昼の後、15時くらいの、ちょうど集中が途切れる時に電話がかかってくると、嬉しいのです。

ピックアップレートが上がります。

このように、業界ごと、会社の規模ごとに、何曜日の何時につながりやすいかを科学しています。

2週間のセルフコーチングでスコアが大きく改善

會田 スコアリングをすると、ある転職してきたメンバーは、入社時のスコアが100点満点で6.6点でした(笑)。

彼はもともと金融業界出身で、ゴリ押し営業だったので、Talk比率が80%で、何度も相手に被せて発言してしまっていました。

そこで相手の話を聞くようにして、Talk : Listenの比率は4 : 6になったのですが、相手により多く話させた結果、相手の発言に被せて発言してしまう回数がより多くなってしまい、スコアとしては81点となりました。

残り30点を取るためには、相手が話し終わって0.5秒待ってから話し始めるという改善をすればいいのです。

このように、PDCAをめちゃくちゃ短いスパンで回すことで、結果的に2週間ほどでスコアが改善され、うまくオンボーディングできました。

田部 MiiTelのシステムを導入したくなりますね。

會田 ありがとうございます、「MiiTel入ってる」状況を是非(笑)。以上です。

加藤 ありがとうございます。

不動産営業にはプッシュ型が適している

加藤 先ほどの営業スコアは当然、上がればパフォーマンスも上がるという、パフォーマンスとの相関があるのでしょうか?

會田 そうですね。

業界や扱う商材によって違うのですが、情報の非対称性を売っている製品、つまり不動産、金融、保険においては…例えば、三菱商事の株を野村證券から買っても、大和証券から買っても、一物一価であることに変わりませんが、なぜか人は証券会社を選んで買います。

このような、誰が売ろうが変わらない商品については、相手よりも多く話し、相手の発言に少し被せて発言をするプッシュ型が正とされるのです。

我々のお客様の不動産会社の方から、そこでのダメな営業トークを聞かせてもらったところ、めちゃくちゃ丁寧な対応をしていました。

例えば、「駅から徒歩何分くらいが良いでしょうか?」など、すごくヒアリングをされました。

お客様は、「3分くらいかな」と答えた後に徒歩5分の物件を紹介されると怒ります。

でも売れる営業の場合、「掘り出し物の物件があります。駅徒歩7分で、めちゃくちゃ閑静な住宅街にあるのですが、住環境が整っていて、平米単価が周りに比べて20%安いので、一度内覧に行っていただけませんか?」と聞きます。

彼らの最重要KPIは、内覧件数なのです。

当日、汗をかいた営業が案内をすると情もわくので、コンバージョンレートも高くなります。

つまり、お客様の言うことを聞いてはいけないのです。

プッシュ型の場合、最適なTalk比率は8割で、被せて発言する方が良く、話す速度もお客様の速度プラス20%くらい速く話すのが良いとします。

これらは簡単に調整ができますので、その目標値に近づくほどスコアが上がるアルゴリズムにしています。

めちゃくちゃ面白いです。

加藤 めちゃくちゃ面白いですね。

マネジメントよりセルフコーチングが有効

田部 点数化しているので、おそらく目標値がありますよね。

営業それぞれがPDCAを回せるので、改善活動を自分でできるのが良いと思います。

つまり、マネジメントをするよりも、目指すものがあって、本人がそのために何をすればいいか考えられる状態の方が良いと思っています。

良い会社は、どこもそうしていると言いますね。

會田 おっしゃる通りです。

私の経験上でも、サウジアラビアやウクライナでオペレーションチームを作った時、悩んだのがコーチングでした。

どのセールスマネージャーと話しても、みんなコーチングに悩んでいました。

営業現場で起きているのは、労働集約型で、極めて属人的な、数を打てば当たるという営業活動であり、定性的な指導がされていたのです。

そして、ウィスパリングとスタンディングが起きていました。

ウィスパリングとは、裏側で上司が顧客から話を聞いている状態で、スタンディングとは、上司が隣に立って指導をしている状態です。

実際に僕は50社くらいにヒアリングさせていただいたのですが、指導において営業は2つのことを指摘されていました。

それは、「相手の立場に立って話を聞いていない」、そして「物を売るのではなく、お前を売るのだ」です。

これらは極めて定性的な、謎のアドバイスです。

(一同笑)

でも現場の営業の人は、「はい、分かりました!」と言っていて……でも、何も分かっていなくて。

相手の立場に立って話を聞くということは、相手の発言に被せて発言しないとか、同じくらいのペースで話すとか、話す時間と聞く時間の割合が4:6とかいう要素に分解できます。

人それぞれ改善点は違うので、セルフコーチングが必要なのです。

まさに田部さんがおっしゃったように、自らコーチングすることがすごく重要だと思っています。

これからのAI、IoT時代には、セルフコーチングツールが、雨後の筍のように出てくると思います。

その先駆けが、MiiTelだったということです。

田部 今回、マーケティングセッションによく出ているのですが、「数字を可視化しよう、全てはそこから始まる」と言われています。

当たり前のことですが、どれだけ投資をしていても、可視化をしている会社が意外とまだ少ないということがあるのです。

同様に、セールスもまずは可視化しないと、何を改善すれば良いのか分からないということですよね。

會田 おっしゃる通りです。

田部 自分も反省しました。

會田 (笑)。

人材業界をターゲットにした理由

権田 事前の打ち合わせの際、MiiTelはホリゾンタルSaaS(※業種に関係なく利用されるSaaS)のような売り方をしているように思っていたのですが、実はHR(人材)業界という1カ所の領域に徹底的に注力していきながら少しずつターゲット業界を拡げていかれているのがすごいなと思いました。

既存業務の置き換えではなく、付加価値提案をしなければいけない商品だと思いますが、しっかりと絞り込んでシンプルにすることで「The Model」に近づけていったように感じました。

なぜHRに絞り込んだのか、絞り込んだ後、どこまで具体的に落とし込んで営業に渡したのかについて、教えてください。

會田 ありがとうございます。

おっしゃる通り、MiiTelはホリゾンタルSaaSなので、業界や企業規模はあまり関係がありません。

しかし、誰にとっても良いものは、誰にとっても良くないものになるリスクがあると考えました。

ホリゾンタルSaaSであっても、バーティカルに攻め、横展開をすることで、結果的にホリゾンタルSaaSになることが正しいやり方と思っています。

僕はランチェスター戦略(※中小企業が大企業に勝つための集中戦略)が好きなのですが、経営戦略においても、橋頭堡(きょうとうほ:ここでは、事業への足がかりの意)を獲得することが重要だと考えています。

ランチェスター戦略とは?ビジネスでの事例を交えてわかりやすく解説(コボットLAB)

そしてMiiTelにとっての橋頭堡として4つ候補があったうち、市場規模、企業数、業界の歴史の浅さという観点から、一番良いと思ったのがHR領域でした。

また、HR企業は色々な企業と接しているので、彼らがMiiTelを使うと、彼らのクライアントに口コミで広がっていく仕掛けもできると考えました。

そしてHR業界においては、リクルートやエン・ジャパン、パーソルなど長が決まっているので、彼らのアカウントを獲得すれば、小さい企業にもどんどん導入されていきます。

権田 會田さんは、変数を絞り込んでまず一つの業界に注力し、その後、また次の業界に…という形で面を広げていっているのですよね。

會田 おっしゃる通りです。

ターゲットをいかに絞り込み、決定するか

田部 ターゲットの絞り込みは、マーケティングにおいても一番重要です。

ただ、絞り込むというのは、他の顧客を捨てることになりますので、そこを本当に狙っていいのか、狭い領域なのではないかという葛藤もあるのではないかと思いますし、結構怖いと思います。

HRに絞り込むという意思決定をできたのは、なぜなのでしょうか?

會田 僕は結構、捨てるのは得意な方なのです。

捨てるのは怖いですが、捨てないことによるリスクの方が大きいと思っています。

これは起業における思考プロセスとも近いのですが、生物学的に人間はホメオスタシス(生体恒常性)なので、現状を維持したがります。

現状で取り得る選択肢を捨てることは、機会損失になるので怖いと思うわけです。

例えば、三菱商事を辞めた時、もし失敗したら周りから残念と思われるのではないかと感じた気持ちは、ホメオスタシスから来るものです。

ビジネスにおいても同じで、色々な領域を攻められるという現状をなるべく維持したくなるので、全てのオプションを取りたくなるものなのです。

どのスタートアップにも共通することは、リソースがないということです。

全てのオプションを取れば、リソースが分散してしまって死んでしまいます。

それよりは、クライテリア(評価基準)をいくつか決めて、仮説を持って、どこが良いかを決めてそこを攻める方が良いと思います。

捨てない、捨てるを比べたときに、捨てた方が良いということで、ロジカルに納得させています。

権田 戦略の作り方も営業の型作りも、一貫して、現状維持バイアスを解消させていますよね。

田部 とは言え、ティア1のHR領域のMRR比率が20%ですよね?

會田 おっしゃる通りです。

でも、もともと70%ほどでした。

田部 売上比率の高いところを抽出していった結果そうなったので、そこを狙えばいいという、分かりやすい戦略になっていますよね。

會田 今はそう収斂していますが、私がビジネスを始めた時は、HR業界以外は見ていませんでした。

今は、結果的に出た売上比率をベースに、戦略的にティアを定めたということです。

権田 HR業界の次は、どこに注力したのでしょうか?

會田 大きかったのは、SaaS業界ですね。

業界としては小さいですが、インサイドセールスに取り組んでいて、アーリーアダプターがたくさんいて新しいもの好きなので、すぐに投資をしてくれるからです。

権田 ターゲットが変わると、業界に合わせて、話す内容やセールスの型は若干、會田さんが調整をするのでしょうか?

會田 いや、全然しないです。

ペインポイントは、本質的であればあるほど、共通のものであるのです。

営業におけるブラックボックス化問題は、どの業界でもどの国でも起こっています。

インドネシアでも起こっています。

細かい調整は営業側でしてもらっていましたが、基本的には何も変えませんでした。

加藤 ありがとうございました。

では、続いてノバセルの紹介をお願いします。

(続)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美

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