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4. 新しい通貨の仕組み「イーサリアム」を発明した「ヴィタリック・ブテリン」

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ICC FUKUOKA 2023のセッション「世界の偉人伝 (シーズン5)」、全5回の④は、Centivの北川 拓也さんが紹介する、19歳でイーサリアムを開発した、ヴィタリック・ブテリン。「お金に興味がない」けれど、仮想通貨を発明するに至ったブテリンの思想を形にした仕組みを、北川さんがわかりやすく解説します。「偉人伝」史上最年少の“偉人”、ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください

本セッションのオフィシャルサポーターは ノバセル です。


【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 5F 世界の偉人伝 (シーズン5)
Supported by ノバセル

「世界の偉人伝 (シーズン5)」の配信済み記事一覧


仮想通貨“イーサリアム”の創案者、ヴィタリック・ブテリン


北川 拓也
Centiv, Inc
CEO

Centiv 創業者、CEO. 公益財団法人Well-being for planet earth理事。元楽天常務執行役員、CDO(チーフデータオフィサー)兼楽天技術研究所グローバル所長。過去に物性物理の理論物理学者として、非平衡のトポロジカル相の導出理論を提案。ハーバード発の米国量子コンピュータースタートアップであるQuEraの顧問を務める。

北川 3人目は、一気に若くなります。

ヴィタリック・ブテリン(1994年1月31日 〜)さん。

皆さん、誰なんだと思われているかもしれないので、まず何を成し遂げた人かを説明します。

ヴィタリックは、イーサリアムという仮想通貨の発明家兼創業者です。

現在、仮想通貨はビットコインが圧倒的に大きいサイズで、時価総額は100兆円くらいだと思います。

イーサリアムはその2分の1くらいで、50兆円です。

ですから、20兆、50兆円規模の時価総額を持つ会社を立ち上げた発明家だと思ってください。

井上 すごいです。

北川 数年前、TIME誌の「この1年のこの人」みたいなものに選ばれたのがヴィタリック・ブテリンさん。

ブテリン氏、米タイム「世界で最も影響力ある100人」に選出──Reddit創業者が紹介文(CoinDesk Japan)

宇佐美 彼は、今は何歳ですか?

北川 それが29歳です。

琴坂 若い!

北川 現在29歳!

琴坂 最年少記録更新か。

北川 若いです。

1994年、ロシア生まれのロシア人(6歳時にカナダに移住し現在はカナダ人)で、若干心配になるくらい細いですが、見た目通りの話し方をします。

歴史は短いですが、2011年、17歳の時にビットコインを知りました。

ジャーナリストだったので、みんなが知らないビットコインについて、ビットコインマガジンのような記事を書いて、1記事5ビットコインで売っていました。

当時の価値で言えば5ビットコインで500円くらいですが、今は1千万円くらいになっていますね(笑)。

ある日、ヴィタリックは記事を書いていて、「ん?」と思いました。

それまで2年ほど記事を書いていたのですが、これだと限界があると思ったようなのです。

そこで、その場でイーサリアムを発明、開発し、リリースしました。

お金に興味がない、根っからの「分散」信者

駒崎 どんな限界があったのでしょうか?

北川 それは後で話します。

一部の人が完全にコントロールできる仕組みは簡単に崩壊しやすく、ガバナンスが効きにくいです。

その哲学を地で行っていたので、自分自身が開発、発行したにもかかわらず、ヴィタリック・ブテリンは1%にも満たないイーサリアム、つまり株しか受け取らなかったのです。

もう根っからの「分散」信者ですね。

お金に興味がないし、哲学を心の底から信じていました。

次世代の人とは、こういう人なのだろうなと思います。

井上 哲学とは、どんな哲学ですか?

北川 「分散」ですね。

当時、彼は、みんなで集まってプレイする、いわゆるマッシブオンラインゲームをしていたのですが、彼がすごく気に入っていた武器を、ある日、運営が「これは強すぎる」と独断と偏見で消したのです。

それでヴィタリックは、逆上したらしいです。

琴坂 ちくしょう、イーサリアムを作ってやる!と。

北川 そう(笑)、「こんな中央集権で勝手に武器を捨てるやつは許さん!」と。

井上 コントロールが嫌いなのですね。

北川 そういう話が有名ですが、彼はロシア出身ということもあり、中央集権的な存在は残念ながら信頼できないことの方が多いので、世の中の本当に大事な仕組みは分散化すべきだと信じていました。

すごいのは、これがただのプログラミング言語の開発ではないという点です。

イーサリアムは経済圏なので、経済概念や政治概念を深く理解していなければ作り切れない仕組みなのです。

彼はすごい論文も書くのですが、数学天才児であり、プログラミング天才児でありつつも、経済や政治の造詣がめちゃくちゃ深いのです。

この年齢で?と思えるくらいの天才児です。

どれくらいお金に興味がないかと言うと、2021年、インドのコロナ対策基金に1,500億円ほどの寄付をしました。

今のイーサリアムは、もっと価値が高いですね。

50兆円の1%なので、5,000億円位になっていると思いますが、それでも1,500億円を寄付したのです。

しかもインドですよ。

彼は現在カナダ人ですが、ロシアも何も関係ないインドにです。

井上 何の関係もない。

北川 そういう人が、ヴィタリックです。

通貨のやり取りを自動的にできる仕組みを作った

北川 ここからは、何がすごいのか、中身の説明をしたいと思います。

駒崎さんの言っていた、ビットコインの限界は何だったのかという話に戻ってくるのですが、ビットコインは分散化された国際仮想通貨であり、通貨でしかなかったのです。

通貨の役割しか持っていなかったのですが、実は通貨だけでは金融というものは成り立たないのです。

お金を貸し出せたり、通貨同士の交換ができたり、レバレッジをかけたトレーディングをしたりなど、先物市場も含め、金融市場は色々な仕組みでできあがっています。

でも彼は、国際通貨だけだと、ただドルが発行できるだけで他に何もできないということに気づきました。

明らかに、為替市場を作ってトレーディングできるようにする必要があると考え、彼が起こした革命は、通貨の上にプログラミングができるプラットフォームを丸ごと乗せたということです。

レジャーと呼ばれる、ただ記録、レコードするためのものではなく、記録したものの上にプログラミング言語を乗せられるようにし、通貨のやり取りを自動的にできる仕組みを作ったのです。

駒崎 どういうこと!?

北川 超簡単に言うと、例えば今、ドルと円を交換する時は、証券や銀行など為替取引を行っているところにドルを預けて、円を払い込んでもらうわけですよね。

そこに銀行などが介在するので、僕らはめちゃくちゃ手数料を取られます。

でも、ドルを渡すので円にしてくれ、その価格を決めてくれというだけの話なので、裏でプログラミングが動いていれば、人の介在は不要なので手数料は無料であるべきです。

そういう仕組みがあるべきだと考え、仮想通貨にその仕組みを乗せられるようにしました。

ただ、彼はその仕組みを作るだけではなく、どんなソフトウェアでも乗せられるようになれば色々な仕組みが作れるのではないかと考え、プログラミング言語全体を乗せたということです。

そういう思想を持って、言語開発と通貨開発を同時にやり切ったのです。

21歳で。天才ですよ。

駒崎 天才だ。

北川 しかもそれを、AWSやグーグルクラウド上で行うなら分かりますが、ブロックチェーンという誰もが使える共通基盤上で行うことで、Amazonなどに牛耳られないようにしました。

プラス、そのインフラをメンテナンスするコストをイーサリアムで払わせる仕組みにしたことで、ある意味、イーサリアムの需要を作り出し、プログラミング言語が必要とされればされるほど、イーサリアムの価格が上がるような仕組みを作り出したのです。

ビットコインよりも極めて強い通貨を作ったということです。

まさに、ソフトウェアによる新しい経済圏の構築可能性を作り上げたのが、ヴィタリック・ブテリンです。

宇佐美 ソフトウェアというよりも、OSっぽい感じですか?

北川 OSというよりもむしろ、インフラですね。

宇佐美 OSよりも色々なアプリケーションが乗る?

北川 そうです、DAppsと呼ばれるアプリケーションが乗ります。

DApps(ダップス)とは?仕組みや始め方・おすすめ5選を紹介!【仮想通貨】(ダイヤモンド・サイ)

完全にプラットフォームですね。

イーサリアムを円で買おうとすると、Coincheckなどが資産を抱えていて、円と引き換えで買えます。

でもある時、ヴィタリックは、それは中央集権的で分散されていないと思いました。

そこで、例えば、駒崎さんがイーサリアムと円の両方を持っていたら、両方とも預けておき、僕が100円をイーサリアムに交換する際、駒崎さんがプールしているものと交換し、駒崎さんに手数料を支払うという考え方にしたのです。

駒崎 C to Cでやり取りをすればいい、ということですね。

北川 そうです。

完全に個人間で為替市場が成り立つ仕組みを提案したのです。

面白いのが、ヴィタリックはその提案を、redditというただの掲示板に、let’s runみたいな感じで書き込んだのです。

そういう形で、今は時価総額5兆円くらいのプロダクトを作ったということです。

宇佐美 アイデアを言っただけということですか?

北川 reddit上に、気軽に投稿したということです。

琴坂 この会社と何か関係があるのでしょうか?

北川 ないです。

このUniswapは、昨日見ましたが、デイリーの手数料収入4億円、年間で1,500億円の売上を上げているプロダクトです。

宇佐美 イーサリアムがどんどん使われる形になるので、1%でも株を持っていれば…。

北川 そうですね、でも基本的にやはりヴィタリックは、世の中を良くすることには興味がないのです。

彼は、こういうアイデアを、redditのめちゃくちゃ小さいスレッドに小さく、バンバン書き込んでいます(笑)。

天才中の天才です。

ヴィタリックは現代の渋沢栄一!?

北川 もう一例として、クアドラティックファンディングというものがあります。

これは、例えば道路を作るなど公共性の高いプロジェクトを行う時は寄付金を募りますが、土地を持っている人は「この辺りに敷いてくれるなら、補助金を出す」と大量にお金を出すのです。

公共性の高いものは、一部の人に権力が集まりすぎると、非常に変なものができる構造になっています。

それを直すための一つの経済的ソリューションとして、スクエアルートという、100の2乗が10,000なので、1万円出しても100円分の価値しかないというディスカウントをする形で権力を持たせると、ちょうど良い形でファンディングができるという経済論文があります。

これは最適化問題です。

ヴィタリックは2018年に、経済論文を書いています。

これについても、ヴィタリックがそう言っているからと実直に実装した人は100億円近い資金提供をして、ブロックチェーン業界では最も大きなプロダクトの一つになっています。

ヴィタリックのやること成すこと全て、一大産業になるのです。

ブロックチェーン業界における良いアイデアが欲しければ、超簡単です。

ヴィタリックのブログを読んでいれば、山のように出てくるので(笑)。

Vitalik Buterin’s website

彼は惜しみなく、新しいアイデアを数式と一緒にどんどん出しているので、それを追って実装するだけで良いのです。

琴坂 これはもう、経営学者の視点から見てもロールモデルになりますね。

北川 そうですか!

琴坂 最近の経済学の論文は複雑怪奇すぎて、実務側から見ても分からないので使えないのです。

でもヴィタリックのブログは、見ると想像できるし、やってみようと実行できるわけですよね。

これはすごいですね。

宇佐美 渋沢栄一みたいな感じですね。

北川 そうですね!

確かに、現代の渋沢栄一に近いかもしれません。若いですが。

5.約500の会社設立に関わり、約600の公共事業に尽力した渋沢 栄一の思想とは

井上 ある意味、欲がないというか、世の中を良くすることを行っている超天才ということですよね。これはもう、本当にすごいですね。

北川 そうなんですよ。面白いので、ヴィタリックのドキュメンタリーを撮ろうと、カメラマンを入れて密着取材をしたのですが、ヴィタリックは一日中パソコンの前にいて、論文を書くか、何か投稿しているか、プログラミングするかしかしていないので…。

琴坂 絵にならない(笑)。

北川 絵にならないから、何かしてくださいとキレたらしいです(笑)。

 (一同笑)

琴坂 映えない(笑)。

北川 3週間くらいずっとそんな感じだったらしいです。

まるで映えないドキュメンタリーになって、楽しくないという。

彼の全てのアウトプットはブログに置いてあるから、ドキュメンタリーは必要ないということですね。

本当にすごい人で、僕はこの人のせいでブロックチェーンにめちゃくちゃはまりました。

神ですね。

最近も、ブロックチェーンのプライバシーをどう守るかという提案をしており、彼が何かひとこと言うと、全ブロックチェーン住民がすごく盛り上がります。

ちょっと彼は神格化されていますね、色々な意味で信頼されているというか。

井上 これからどうなるか楽しみですね。

北川 この人はまだ若いので、我々は同世代に生きている面白さがあるので、ぜひ追っていただきたい。

ヴィタリック・ブテリン、ちょっとお茶目なところもあります。

井上 ありがとうございます。

(続)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成

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