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リアルテックは、大志を抱く。よりよい未来のために研究開発を続ける8社が、7分間で訴えた社会変革【ICC FUKUOKA 2022レポート】

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2月14日~17日の4日間にわたって開催されたICCサミット FUKUOKA 2022。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。今回は、日本環境設計の髙尾さんが優勝を飾ったリアルテック・カタパルトの模様をお伝えします。ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


今回も選りすぐりのテクノロジーを持つ企業8社が集まったリアルテック・カタパルト。公募のスタートアップ・カタパルト以外、ICCサミットのカタパルトは、幅広い登壇者たちからの紹介、推薦からエントリーが決まるが、このカタパルトについては、リアルテックファンドから推薦をいただいて、ICC代表の小林 雅が検討、面談をして登壇企業を決定している。

1年半前、リアルテック門外漢でありながら初めてこのカタパルトを通して見たときの印象は、たとえテックの知識が多くなくても、すこぶる面白く楽しめるというものだった。

衝撃的な面白さ!リアルテック・カタパルトは、課題は解決できるもの、夢は実現するものだと教えてくれる【ICC KYOTO 2020レポート】

専門性の高いジャンルで、勝手に理系でないとわからないと思いこんでいたが、普段の生活や今の社会の課題を、これほど粘り強く、大きく解決しようとしているジャンルはないと痛感した。研究や技術の凄さは7分のプレゼンでわかりやすく語られ、それが実装される未来への希望が広がる。

今回優勝を飾った日本環境設計の髙尾 正樹さん

今回2度目のレポートとなり、1年半ぶりに再び会場に足を運んだが、登壇企業は違えどその印象は変わらなかった。相変わらず面白く、こんな技術が実現しているのかと驚くような企業が次々と登場した。しかし何かが違う。何が違うかというと、このコロナの2年間でリアルテックを取り巻く環境が大きく変わっていた。

ナビゲーターを務めるリアルテックファンドの 永田 暁彦さんは、最初のスピーチでそれに触れた。

「サステナビリティ、SDGs、社会課題。ちょっと流行りなところもありますね。僕たちリアルテックは、2015年から地球や人類の課題解決をする研究開発型の革新的テクノロジーに徹底して取り組んできた歴史があります。

Portfolio(リアルテックファンド)

本質的価値があり、技術を持っているのに、お金や環境のせいで価値が発揮できない。研究開発の領域は、これがすごく多かったです。社会的インパクトが僕たちにとって最大のリターンですが、それがフィナンシャルリターンに接続される世界を、僕たちは実現したいとこれまでも活動してきました。

リアルテックファンド 永田 暁彦さん

この3年間で、どんどんディープテック領域に投資する人が増えています。ユニコーンと言われる企業に、ディープテック、リアルテックの領域の会社がめちゃくちゃ増えています。つまり今この領域に投資をすること、この領域に参画することが重要になっているということです。

研究者はずっとサイエンスに向き合う、それが大切。だけど経営者は世の中の時流に合わせて、態度、アクションを変容させていくということが常に大切なんじゃないかなと思っています。だから今、お金を集めましょう。今、人を集めましょう。間違いなく今、ディープテック、リアルテックが来ています。

でもぶっちゃけ、それはどうでもいいです。過去20年、30年で考えたら、ディープテックには、だいたい10年に1回波がやってきます。波が来ては去り、だいたいその波が崩れるのは毎回過剰流動性とハイバリュエーションのせいです。

波が高かろうが低かろうが、正直な話、こっちは流行りでやってるんじゃない、という話です。

僕たちは社会課題に本当に向き合ってる人たち、サイエンスに本当に向き合ってる人たち、それを10年やりきる強いチーム、そういう人たちが10年後も20年後も社会を変える活動をすると信じています。僕たちは登壇企業を選ぶときに、必ずそれをテーマにしています」

永田さんは最初の登壇者のプレゼンからトップスピードで走れるようにと、スピーチを常に熱くぶち上げる。ソーシャルグッド・カタパルトのユーグレナ出雲 充さんもそうで、その根底には憤りもあるが、真剣に社会を変えることに取り組む人たち、あるべき世界を実現しようとする人たちを応援する愛がある。

開始前に登壇する8組に拍手を送るセレモニー

「今回登壇するようなベンチャーが日本国内で増えていくことが、日本を変えることにつながると思うし、末長い本当の発展を作っていける、それがサステナビリティなんじゃないかと僕自身は考えています」と、永田さんはスピーチを締めくくった。

社会がディープテックの価値を理解し受け入れたと喜ぶには時期尚早。それでも今、10年に1回の追い風が吹いているならメリットを賢く享受して、本質を見失わず、技術の力で日本を変える努力をしようという強いメッセージ。それに共感できない人は、おそらくこの会場に来ていないだろう。

8人のリアルテック・ベンチャー起業家たち

8社のプレゼンは動画と書き起こし記事で公開していくが、記事では登壇者のプレゼン動画を合わせて紹介する。登壇前のプレゼンターたちに聞いた話を中心に、ここでは紹介していきたい。

頭髪から直近3カ月のストレス度を解明する「イヴケア」

メンタルヘルスが社会問題となっている現在、働き盛りの世代にも大きな問題であり、従業員50名以上の企業は国からストレスチェックが義務化されるまでとなった。設問に回答したところで、それは正しいチェックなのか? その科学的なエビデンスを毛髪から測定する技術を持つのがイヴケアの五十棲 計さんだ。

ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等(厚生労働省)

「登壇が最初なので緊張していますが、ストレスをなくすというのではなく、それを客観視して向き合っていくことを伝えていきたいです。企業で導入されているところもあり、ストレスを力に変えるサポートができることを伝えたいです」

過去半年分のストレス反応と、抗ストレス反応が後頭部の毛髪からわかるという。たとえば事務職だとストレスがかかったときに、抗ストレス反応が上がりにくいが、クリエイティブ職だと、抗ストレス反応も同時に上がり、むしろストレスが力になっていくことがわかるという。イヴケアでは抗ストレスへの転換を促すサポートができるそうだ。

「ここにいる、ベンチャー企業の方々はわりと特殊なデータをお持ちだと思うので、興味深いですね。できれば髪の毛を持って帰りたいです」

五十棲さんは会場を見渡し、逆境に燃えるようなストレス耐性のある経営者の髪の毛の獲得を狙っていた。

中央大発ベンチャー、ソフトロボットを作る「ソラリス」

デザイン&イノベーションアワードにも出展しているソラリスの梅田 清さんは、人間の腸のぜん動、虫のミミズが這うときのような動きを参考にした、世にも不思議な柔らかいロボットを作っている。プレゼンでは果物や野菜を傷つけずにロボットの中を通して運んでいる様子を見せていた。

「大学発ベンチャーで、知名度がまだ少なくて。我々の人工筋肉を使ったソフトロボット、なかなか革新的なデバイスとは思いますが認知がないのです。

ここにいらっしゃる皆さんは、エンドユーザーというより、ハブとなられるような方々だと思うので、魅力をお伝えして、広げていただけるようなプレゼンができればと思っています」

高粘度材料を混ぜながら運ぶということもできるロボット技術もあり、必要なのは実用、使い道だけ。リアルテック・カタパルトには技術がありながらこういう課題を持つベンチャーが一定数いて、さまざまな企業が集まるこの場で、新たな発想や提案を見つける出会いを探している。

ICCサミット会場で特殊データを収集「メルティンMMI」

こちらもデザイン&イノベーションアワードにも出展しているメルティンMMIの粕谷 昌宏さん。前日に展示ブースを取材しているときに、興味深いことを聞いたので早速ぶつけてみた。この日プレゼンでも語られる「手指麻痺用ニューロリハビリテーション装置」のデモで、体験した審査員たちから特殊なデータが出たという。

▶編集注:体験の様子はこちら お箸からロケットまで大集合! デザイン & イノベーション アワードの展示を全紹介【ICC FUKUOKA 2022レポート】

「そうなんですよ。何百回もリハビリを繰り返して初めて起こるような反応があっさり起きました。

2つの理由が考えられて、1つ目は素直な方が多いこと。もう1つは適応能力が高い方が多いからじゃないかと思います。

これは、脳がどれだけ早く置き換わるかという脳の可塑性の話です。起業家の方はいろんな状況に対応しなければいけない。そういう人たちは脳の再配置が起こりやすいんです。そういう方が多かったのではないかと。僕もびっくりしました(笑)」

通常に反した動きを司令する脳の電気信号を体験するデモで、早々にそれに対応できる人たちが続出したという。図らずもICC参加者の特殊性が明らかになったわけだ。

過去に優勝している粕谷さんだが、今回のプレゼンでは、脳の電気信号の解析とロボティクス両方の技術があるからこそ開発できた、脳梗塞で手足に後遺症が残った人のリハビリをサポートする新しい装置を紹介した。これまで人体の拡張の可能性を追求するクールな印象だったのに、傷ついた人に寄り添うこんな温かいものを作ってくださるとは。

最先端の筋電技術で身体を拡張するメルティンMMIがベストプレゼンター(ICCカンファレンス FUKUOKA 2017 CATAPULT -リアルテック特集 – )

サステナブルに美味しいシーフードを作る装置「ARK」

駐車場1台分のスペースで「陸上養殖」を実現する「ARK」(ICC FUKUOKA 2022)

ARKの栗原さんは、前職で拠点としていたロンドンで、EUとサーモン養殖の海面でのDXに携わったときに、そのさまざまな限界に気がついたという。

「最適化を眺めながら、今後これを増やしたり、大きくしていくのはいろんな意味で難しいなと思ったんです。自然の負荷も大きいし、漁船漁業も難しい。それならば自分たちで完結するハードウェアを使って陸上に上げて、サステナブルにおいしいシーフードを作っていく仕組みが必要だと」

プレゼンでも語られたように、駐車場1台分の完全制御されたスペースで、白身魚、エビ、海藻類などを作る。大きい回遊魚は大手に任せて協調関係で市場の拡大を図っていくという。

「500万円でスタートできるので、まずは地産地消から店産店消を目指します。そうすればロジがなくなり、需給のバランスがよくなって、フードロスも減らせる」

聞くまで知らなかったことだが、日本の海は本当に魚が獲れなくなっていて、ARKを歓迎しているのは、水産加工会社や卸、実際に漁に出ている漁業者だという。

「加工業や卸は港から仕入れるだけだったのに、漁獲量が減ってきたので自分たちで作って安定的に確保しようとなっている。漁師さんには船を新しく買うより安く始められる副業ですと、時間をかけて伝えようと思っていましたが、獲れないのでこういうのを待っていたという声を聞きます」

話し終わったあと「審査員の皆さんには縁遠い話なので、反応が心配」と言っていた栗原さんだが、それが懸念に終わったことは、2位入賞という結果が表している。

レアメタルを手軽に回収・精製できる「エマルションフローテクノロジーズ」

レアメタル=枯渇というのは多くの人が知っていることで、資源紛争があり、コンビニで使用済み携帯電話の回収が始まっているほど切迫している資源である。それを本腰入れて精度高く行わなければいけないと呼びかけたのが、エマルションフローテクノロジーズの鈴木 裕士さんだ。

「研究職なので、学会発表ではこういったプレゼンも経験しているのですが、専門外のところでこの規模感でするのはちょっと緊張します。

レアメタルの回収はみんなでやらないと意味がないので、僕たちがやりたいと思っていることをしっかり伝えたいし、オーディエンスや関係するような企業に興味をもってもらいたいです。

リサイクルもそうだし、レアメタルのサプライチェーン強化のためには、もっと精錬を強化して両方バランスをとっていかないといけません。僕らはその両方ができます」

従来技術よりも10倍の生産性、IoT管理による省人化や、誰でもどこでもレアメタルリサイクルが可能な技術を推進しているエマルションフローテクノロジーズ。資源が枯渇して影響が顕在化すると言われているのが2025年。技術の力で私たちはどこまでそれを解決していけるのだろうか。

会場から6,000本のペットボトルを回収、”完全循環”「日本環境設計」

この登壇の2日前に、日本環境設計の衣料品をリサイクルする北九州響灘工場見学ツアーで、髙尾さんにはお会いしたばかり。

「服から服をつくる®︎」”燃やさない”リサイクルとは? 世界の課題に挑戦する「BRING」工場見学ツアー【ICC FUKUOKA 2022レポート】

「今日はペットボトルの話をします」

日本環境設計の「BRING Technology™」は、現在衣類とペットボトルが対象。ペットボトルは今まで3回程度でリサイクルの回転が終わって焼却処分になっていたものを、永遠にリサイクルし続けることができる。技術を確立するまで一体どのくらいかかったのだろうか。

「めっちゃ大変でした。一番最初に開発をスタートしたのが1998年なので……24年かかりました」

24年もかかった技術は、フランスの国営企業を通して世界にライセンスされていく。髙尾さんのプレゼンの最後で、スクリーンいっぱいに廃棄ペットボトルの山が映し出されたとき、プレゼンを見ていた全員が「宝の山だ」と同時に思った、そんな一体感が会場を満たした。

今回、ICCサミットでは日本環境設計の協力で、会場で使用済みペットボトルの回収を行った。その数約5,000本、段ボール箱にして50箱。それが工場に到着して粉砕された状態の写真をいただいた。これは分子レベルで不純物を取り除いて飲料メーカーに素材として納品され、いつか私たちの手元にペットボトルとして戻ってくる。

一緒に歩いてくれるテクノロジー「あしらせ」

靴に装着する歩行ナビ「あしらせ」は、足への振動で視覚障がい者を安全に目的地へ導く(ICC FUKUOKA 2022)

本田技研の千野 歩さんが作っているのは、アプリに目的地を登録すると、靴に装着したデバイスの振動で、曲がるところや目的地付近のお知らせなど、歩行をサポートしてくれる、視覚に障害を持つ人の安全を確保するテクノロジーだ。

足に装着させることから方位センサーを正確に保つことができ、GPSの誤差を踏まえた上で、なるべく迷わせないための技術に加えて心地よい振動を伝えるデバイスの設計と、いかに直感的に無意識でルートを感じられるか、視覚に障害のない人が歩くときと同様の感覚の再現を試みている。

「白杖を持っても『あしらせ』で余裕をもって歩けることで、いつも歩く道にこんな店があったんだと気がついたりするそうです」

「あしらせ」は今回デザイン&イノベーションアワードにも出展しており、そこで取材したときに、千野さんは嬉しそうにそう言った。最新技術がゴリゴリに入ったプロダクトだが、完成したものは思いやりに満ちた、とても優しいものだ。

細胞治療薬量産の実現が近づいてきた「セルファイバ」

今回、登壇を予定していた1社がキャンセルとなり時間が空いたため、セルファイバの柳沢さんには過去優勝者としてゲストスピーチをお願いしていた。もしくは、一度優勝はしたけれど、審査対象としてカタパルトに登壇するか。そう打診をしたところ、柳沢さんは再度登壇したいと答えた。

▶【優勝プレゼン】セルファイバは、“細胞エンジニアリング”で新時代の再生医療・細胞医療を実現する!(ICC KYOTO 2019)【文字起こし版】

優勝時は、ラボレベルで細胞培養が実現したという話だったが、それから2年半、ついに商用生産レベルまで進み、その進捗を伝えたいという。医療に使う細胞は大量培養が難しく、現在は本当に高価で限られた人しか手に入れることができない。もしも実現すれば、細胞治療薬の価格が下がり、多くの人の命を救うことができる。

プレゼンの最後では、将来の食糧難を見据えた培養肉の生産や動物実験を代替するミニチュア臓器の実現などについても触れられた。柳沢さんの視野には、食の課題や動物まで入っている。

◆   ◆   ◆   ◆   ◆

リアルテックの人々は、こういったプレゼンやコンテストで、言葉で表現するのは他の領域の人たちよりも苦手かもしれない。しかし取り組んでいる事業は、地球という環境や人間性への想いが溢れており、実装されると実際に救われる人たちがいて、社会課題が解決に向かう。

どれだけかかっても実現することの尊さ、テクノロジーの凄さとはこういうことなのかと、改めて実感できる8社のプレゼンだった。

先鋭的な技術の量産・実装を加速させるために

小橋工業の坂下さん

プレゼンが終了すると、リアルテック・カタパルトをスポンサーしてくださっているKOBASHI HOLDINGSの坂下 翔悟さんからのプレゼン。リアルテックファンドの永田さんとKOBASHIの小橋 正次郎さんは、このカタパルトに登壇する・しないに限らず、これはと見込んだベンチャーをサポートしている。

リアルテックファンドとKOBASHI、リアルテックベンチャーの製造支援を行う「Manufacturing Booster」を開始(PR TIMES)

いくら素晴らしい技術があっても、それが製品化され世に実装されるまでの道のりは険しく、新しいテクノロジーへの世間のハードルは髙い。

量産化や顧客開拓で壁にぶつかるリアルテック・スタートアップを、100年以上ものづくりに関わってきたKOBASHIのノウハウがサポートし、リアルテックファンドは社会実装でサポート。この領域で頼りになる2社が、素晴らしい技術を世に出す手助けをする「Manufacturing Booster」を紹介した。

審査員の講評&結果発表

すべてのプレゼンが終わり、8人のプレゼンターたちは壇上に呼び戻され、審査員の講評の時間となった。壇上に戻ってきた永田さんは、マイクを手に取るなり、これを言わずにいられるかという面持ちで一言。

「始まる前にここが優勝かなと予想していたけれど……本命馬なし、すべてスター選手でした!」

審査員たちも、登壇者たちのレベルの高さを絶賛。千葉道場の千葉功太郎さんは、ARKのプレゼンを見ながら永田さんにメッセンジャーで「今すぐ、3個買いたいぐらい」と伝えていたそうだ。

千葉さん「衝撃を受けました。皆さんレベルも高いし、面白い。こういう技術はお金が集まってこそ。投資家が数百万〜数千万のスモール投資をしやすいパッケージができて、エクイティではないお金の集め方ができるといいのではと思います。皆さんのやりたいことを、全部実現してほしいし、応援します!」

窪田製薬 窪田良さん「長い間研究開発を続けられて、粘り強くものづくりをしてきたところに感動しました。製品が出る前にかなりの投資をしなければいけないのは、相当の工夫がないと続けられません。

セルファイバの細胞培養はいろんな課題があり、なかなかスケールできないという歴史を僕も知っています。それがついに出来るようになる。感動しました。それぞれのビジネス、素晴らしいなと思いました」

プランテックス 山田 耕資さん「技術的に面白く、ビジネスとしても成立性が高くてとても練られているので、すごく刺激になりました。審査は難しかったですが、オリジナリティという点で、ソラリスのソフトロボットに投票しました。分野的に詳しくないのですが、ロボットの稼働でああいう動き方を見たことがなくて、独自性を感じました」

ファームノート小林 晋也さん「プレゼンを見て、本当に素晴らしいなと胸がいっぱいになっています。量産してモノを売っていくその手前がすごく大変だということを知っているので、皆さんの苦労が伝わって感動しました。

僕が投票したのは、日本環境設計です。すでにペットボトルの4%弱がリサイクルとして市場に出回っているというのがすごいです。最後のスライドで、これは何に見えますか?とペットボトルの山を見せたときに、僕はすぐ宝の山だ!と思いました。

途上国に行くと、路上にペットボトルやプラスチックが路上にたくさん落ちていたりしますよね。ああいうものすべてがリサイクルされて、サステナブルになっていくのかと思うと、胸が熱くなり、感動しました」

両端のAshirase千野さんとセルファイバ柳沢さんが同率3位、2位はARKの栗原さん

1位は既報の通り、日本環境設計となったが、登壇した全社は突出した技術を有するスター企業であった。優勝が発表された瞬間の髙尾さんは、嬉しいというより驚いていて、むしろ言葉少なだった。

カタパルトが終了して、多くの名刺交換を求める人の波が終わったころ、髙尾さんはようやくリラックスした表情で、近くにいたICC小林と写真に収まった。

コープさっぽろの対馬さんは、早速髙尾さんとアポを取り、何かできないかと考えているそうだ。
北海道での社会貢献事業を行うコープさっぽろは、地元で資源回収事業を進めておりコープさっぽろ「エコセンター」のページを見ると、2017年度ですでにペットボトル47トンの回収実績がある。

カタパルト終了後に髙尾さんと話をする対馬さん

インターネットやニュースで情報は無限に得られるが、実際にプレゼンを聞いたり、経営者本人とすぐに話をできることの価値、未知の技術やアイデアとの出会いは、リアルに勝るものがない。

とくにこういったリアルテックは、論より証拠というか、実際にものを見ながら説明を聞いたり体験をして、それからプレゼンを聞くと理解度やインプットが何倍にも増す。そもそもディープテックのベンチャーで、ネット上の情報から、それがどんなにすごいことか分かる人のほうが少ないだろう。

髙尾さんの24年の研究の成果が、この優勝から今まで接点のなかった人たちとつながっていく様子を見ながら、革新的かつ、一見不可能と思えるような社会課題を解決しようとするベンチャーこそ、こういったリアルイベントでの存在を高めていくべきと感じた。

ここにはそういう挑戦を続ける人たちが集まっていて、その難易度の高さを理解し共感してくれて、思わぬ出会いから、課題解決を併走してくれる可能性がある。それに普段縁のないような人間にこうして熱く語らせるほど、リアルテックは面白く、意義のあるものという理解者・共感者を増やすことは、本物の追い風を吹かせるために決して悪くないはずだ。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

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