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6.「いかにロイヤルユーザーにベネフィットを還元するのか?」 一休.comが実施するロイヤルティ・プログラムの画期的な仕組みを解説!【終】

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「コア・ユーザーのLTVを高めるための秘策とは?」6回シリーズ(最終回)は、モデレーターを務めるラクサス児玉さんの「これを聞いたら、明日からガンガン儲かる話を」という呼びかけに、登壇者の皆さんが答えます。会場の誰もが膝を叩いた一休.comのロイヤルティ・プログラムの仕組みとは? ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うためのエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2018 プラチナ・スポンサーのラクスル様にサポート頂きました。


【登壇者情報】
2018年9月3〜6日開催
ICCサミット KYOTO 2018
Session 6E
コア・ユーザーのLTVを高めるための秘策とは?
Supported by ラクスル

(スピーカー)

青木 耕平
株式会社クラシコム
代表取締役

榊 淳
株式会社一休
代表取締役社長

西井 敏恭
オイシックス・ラ・大地株式会社 執行役員CMT /
株式会社シンクロ 代表取締役社長

森 雄一郎
株式会社FABRIC TOKYO
代表取締役社長

(モデレーター)

児玉 昇司
ラクサス・テクノロジーズ株式会社
代表取締役社長

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最初の記事
1. コア・ユーザーのLTVを高めるための秘策とは? Oisix、一休、クラシコム、FABRIC TOKYOが徹底議論!

1つ前の記事
5. “高級”を自称することなく高級感を演出する「一休.com」のサイトづくりの秘訣

本編

児玉 さて、セッションも終盤となってきました。

ここからは「これを聞いたら、明日からガンガン儲かる」話を共有して頂きたいと思います。

どなたか、いかがでしょうか?

一休.comの「ロイヤルティ・プログラム」とは?

 では、僕から。

一休では、「ロイヤルティ・プログラム」というものを持っています。

年間約100万円を使うお客様をダイヤモンド会員とし、例えばポイントがつくなど、多めのベネフィット還元をしています。

それを、コストを負担せずに実現できたら最高ですよね。

例えば、あるホテルは「宿泊に年間100万円使っている層のお客様がぜひ欲しい」とおっしゃいます。

そこで私たちは、そうしたお客様が宿泊される際、「このお客様はお金を使う方なので、何かしらのベネフィットをつけてくださいね」とホテルに提案するのです。

するとホテルはOKしてくれるのですが、実はホテル側にも追加コストがかかっていません。

例えばチェックイン時間は14時ですが、そのお客様だけはベネフィットとして12時にチェックイン可能にするとします。

しかしホテル側は、朝6時にチェックアウトして12時にクリーニングが完了している部屋もあるので、1人のお客様のチェックインを早めることは難しいことではありません。

こうすることで、一休とホテルのどちらにもコストを発生させずに、コアユーザーの方にベネフィットを還元することができるのです。

児玉 必ずしも金銭的ベネフィットではないということですね。

 そのとおりです。

児玉 他にはどのようなベネフィットがあるのでしょうか?

 アーリーチェックイン以外だと、レイトチェックアウト、アップグレード、ジムや駐車場無料などですね。

我々自身は特にベネフィット内容をコントロールせず、ホテル側にお任せしています。

結果、ホテル同士がベネフィットの内容で競っている状況が生まれます。

アイデアとしては、ベネフィットを提供し、そのコストをパートナーに負担してもらうということですね。

西井 ロイヤルティの高いお客様は、他社にとってもロイヤルティが高いということですよね。

青木さんからも先ほど広告収入が大きいという話がありましたが、ECではお金は落とさなくても毎日サイトを見に来ている方によって広告のマネタイズが成り立っているということですしね。

青木 そうですね。例えば我々が作ったブランデッド・コンテンツを自社で広告をまわして、我々のサイトにランディングさせてくださるクライアントもいます。

その場合、広告費を支払っていないのに、我々のサイトにお客様を呼び込んで頂けることになります。

また、グリコさんとの取り組みで我々の商品をプレゼントするキャンペーンを行った際は、『「北欧、暮らしの道具店」の商品が当たる!』というTVCMを作って頂いたりもしました。

またある企業との取り組みとして、30万個ほどのコラボパッケージを作る予定もあります。

▶参照:【BRAND NOTE】毎日の洗い物をちょっと楽しく。食器用洗剤「Magica」とキッチンアイテムを作りました!(北欧、暮らしの道具店)

我々としては広告費を頂きながらリテンションのきっかけももらえて、そしてお互いにコストを下げられるような、そういったwin-winな取り組みも結構ありえるよなと思います。

施策によるLTV向上を「可視化」することの重要性

西井 僕も榊さんがお話しされたように、ロイヤルティ・プログラムは作った方がいいと思っています。

ただ、ロイヤルユーザーにどう還元したら何が起こるかを可視化できていないケースが多いのではないでしょうか。

先ほどの話に少し戻りますが、「やってはいけないこと」として、サービスが完成する前に広告投下するという失敗パターンがあるかと思います。

つまり、ロイヤルユーザーにいくら還元したらLTVがどのように向上し、それが果たしてサービスとして成り立つかどうか、をしっかりと理解することが大事です。

前職の化粧品会社の時にLTVが一番上がったのは「プロダクトが変わったとき」でした。

オイシックスでもKit Oisixというミールキットをつくったときです。

そしてどちらの場合も2年間、既存ユーザーへのテスト販売をし、サービス改良もした上で、年間でのLTV向上が確信できたので、ローンチをしたのです。

そのプロセスをないがしろにしてはいけないのかなと思います。

児玉 CPA(顧客獲得単価)とLTV(顧客生涯価値)の関係をしっかり見て、LTVがCPAを上回ることを確認するということですね。

西井 そうですね。

今ちょうど中国市場での立ち上げをしているのですが、日本とは全く市場環境が異なる中で、現地の生活環境にフィットする製品やサービスの開発について、半年から1年かけて探っている状態です。

あくまで強いプロダクトをしっかり作るということが重要だと思います。

「そんなにたくさんお客様がいない」と言う会社もありますが、例えば、一休のお客様は? オイシックスのお客様は? という話になった際、メインであるコアユーザー、ロイヤルユーザーの方がいるわけですよね。

本当にロイヤルユーザーがいなければ事業として成り立っていないはずですから、たとえ1人だったとしてもそのお客様に向き合うことが大事です。

オイシックスも、最初は全く売れませんでした。

当時はクレームも多く、社内にも疑問の声が上がっていましたが、「これがないと生きていけない」という熱狂的なお客様がいたのです。

その声を信じてプロダクトをアップデートしていった結果、花が開いたというわけです。

ロイヤルティ・プログラムでは「レベル上げ」の設計が大切

西井 そしてこの「プロダクト」とならんで最も効果があるのが、前述の「ロイヤルティ・プログラム」です。

ロイヤルティ・プログラムは、設計の仕方が大事です。

僕はよく「ドラクエ」に例えるのですが、初めて戦場に出た時にはスライムを倒すのが楽しいですが、スライムを倒し続けていてもゲームとして成り立ちません。

ただ、スライムを倒しているうちに経験値が上がり、武器が増えてくると、もっと楽しくなってのめり込んでいきますよね。

ロイヤルティプログラムも、一段階目から二段階目に上がるためにはスライムを20匹倒さなければいけないとなると飽きてしまいますし、レベルが上がることを知らずに終わってしまうかもしれません。

そこで、「2匹倒せばちょっと上がる、上がればお金がもらえて武器屋で何かが買える」という設計をする必要があります。

例えば航空会社でも、一番上のクラスまで上がったお客様に対しては、他の航空会社の方が安かったとしても、そちらを利用したくなくなる状況を作ることが大事です。

この設計ができていないと、LTVがなかなか上がらないと思いますね。

児玉 最近、Yahoo!ショッピングや楽天でもたくさんポイントをくれますが、すぐに失効してしまいます。

だから、いっぱい買わないといけなくなるという(笑)。

西井 そうしたショッピング・モールみたいになるとプロダクト特性が見えづらいので難しいかもしれませんが、ある程度商品が限られているケースであれば、休眠しないためのポイントは1年間はもたせておきつつ、値引きやポイントじゃないようなロイヤルティ・プログラムを別に設けるといった施策は有効かなと思いますね。

そこで重要なのは先ほど言ったコストで、ロイヤルティの高いユーザーさんにいくら掛けられるのかを明確することが、結果的には、新規の顧客獲得にいくら掛けかけられるかという点にもつながっていきます。

フラッシュマーケティングや新商品投入でLTVを高める

青木 やはり、プロダクトが一番インパクトが大きいですよね。

僕らがLTVを上げるために行っているのが、フラッシュマーケティング的な商品政策です。

「その瞬間だけ買える商品」を投入し続けるというスタイルで、商品の投入自体がリテンションになります。

僕らは顧客理解と開発力がコアコンピタンスにあるので、「目を離せない」と思ってもらい続ける構造となっています。

 FABRIC TOKYOも全く同じです。

冒頭で紹介した自転車用のスーツや出張者向けスーツのような商品は月1回出すようにしていて、「サイトに来れば毎回、新商品がある」のが、お客様に楽しんで頂けるポイントかと思います。

商品をリリースすると、売上ランキングのトップになりますし、それを買うリピーターも増えます。

青木 ファッションや雑貨を扱っている僕らは、娯楽に近い形で買い物をしてもらう場ですから、定番で売上を伸ばす場合とは状況が違います。

プロダクトのニュース性を高める、言い換えれば「小さな事件を定期的に起こす」のが本業になっています。

細かい販促の積み上げよりも、そちらの方がインパクトが大きいですね。

児玉 それぞれビジネスモデルが違うので、それぞれにふさわしいスタイルを選ぶのが重要ですね。

LTVを長期でとらえ、顧客の心を動かすサービスを

児玉 では、90分が経ってしまいましたので、最後に言い残したことなどコメントをいただきたいと思います。

 ビジネスウェアはだんだん着られなくなってきていて、我々は斜陽産業です。

しかし斜陽産業を選んで良かったのは、競合が出てこないので独占できる可能性があることと、既存プレイヤーがイノベーションを起こさないことです。

というわけで斜陽産業、すごくおすすめです(笑)。

本日はありがとうございました。

西井 久々にLTVについて話しましたが、話すことでビジネスによって勘所が違うのを理解できてありがたかったです。

私はEC業界に16年間いますが、過去にやってきたことを整理できたので、皆さんの参考になればいいなと思います。

 自分がやっていることは長期的な果実に結びついているのか? という点について再考するきっかけになりました(笑)。

ありがとうございました。

青木 お役に立てる話ができたか分かりませんが……。

あの、中学時代に好きだった子をFacebookでふと検索することってありますよね?

(会場笑)

児玉 え、それが言い残したことですか!?

青木 いえ、そうではなくて(笑)。

一度でも真剣に心が動いた場合、「そういえばあの店、まだあるのかな?」と思い出し、実際に活気があるのを見ると、LTVが途切れていたとしても、数年の時を経て復活する可能性があると思うのです。

ですから、LTVを長期で考え、最初の出会いで心を動かすことと、久しぶりの接触で「まだきれいじゃん」と思ってもらうことに注力するのが大事だと信じています。

これからも、ふわっとしつつも、こだわりながら頑張りたいと思います。

ありがとうございました。

児玉 ではこれで、セッション6Eを終了します(笑)。

ありがとうございました!

(終)

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編集チーム:小林 雅/上原 伊織/尾形 佳靖/戸田 秀成/大塚 幸

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