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ICC FUKUOKA 2023のセッション「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン6)」、全8回の⑤は、前回時間切れにより1回お休みになった「トップシェフの名言シリーズ」を引っさげ、シンクロ西井 敏恭さんが登場。仕事では上司、美食家としては自分が弟子となるハセマコさんとの相克する関係もお楽しみください。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは ノバセル 、エッグフォワードです。
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【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 10F
大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン6)
Supported by ノバセル
Co-Supported by エッグフォワード
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▶「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン6)」の配信済み記事一覧
榊 残り30分で、アジェンダがあと3つ…。
菅原 またスキップかな(笑)。
長谷川 いやいや、いけますよ(笑)。
西井 僕の時間、下さいよ。今までずっと黙っていたんですから。
榊 では、かなり巻きでお願いしますね。
ミシュランの星獲得数が断トツの日本で食を楽しまない手はない
西井 難しい話が続いているので、僕は楽しい話をしたいと思います。
僕はマニアックな食事のことよりも、日本にいる料理人は素晴らしいという話をします。
これは2021年の、都市別ミシュランの星の数ランキングです。
これは知らない人が結構多いのですが、東京はパリよりも多く、しかもその星の数はパリの2倍です。
京都が3位、4位が大阪、5位がニューヨークです。
皆さんにぜひ知っていただきたいのですが、ミシュランと言えば、海外の方が店や星の数が多いというイメージがあるかもしれませんが、実は日本の方が圧倒的に多いのです。
食べログとは全然違う評価基準なので、食べログでの美味しい店とミシュランでの美味しい店は結構違います。
とは言えミシュランは、素材の質、独創性、コストパフォーマンスなどの基準によって、世界中からきちんと選ばれているので、すごいことです。
僕はレストランを作っている人へのリスペクトをすごく持っており、これらのお店が日本にあることが、僕が日本の色々なお店に食べに行く理由の一つです。
サッカーで例えると、先日ワールドカップがありましたが、日本にリオネル・メッシもクリスティアーノ・ロナウドも、ブルーノ・フェルナンデスも、ケヴィン・デ・ブライネも、ズラタン・イブラヒモヴィッチも、全員いるようなものなのです。
これは本当にすごいことです。
つまり、世界のトップリーグの3つが日本にあるようなもので、この状況を楽しまないのはすごくもったいないなと思っています。
ですから、ぜひ、楽しみたいと思います。
カウンター越しでシェフと話せる贅沢を味わおう
西井 シェフとカウンター越しでお話しできる機会はなかなかないわけです。
例えば、1食2万、3万円の食事は高いと思うと思います。
お腹いっぱいにするだけなら、500円、1,000円でもできますが、トップの方と2時間お話しする機会に5万円と考えてみてください。
ビジネスにおいて、トップランクの人と1時間話すだけで100万円くらいします。
世界のミシュランのトップランクにいる方、極めている方とずっと話していると、すごく良い話をたくさん聞けるので、僕のこのコンテンツはいつも「名言シリーズ」です。
<過去の名言シリーズはこちら>
▶7. ハセマコ、伝説の名店「つぐみ庵」の鰻重に号泣(シーズン3より)
▶6. 世界トップクラスの美食国日本で、シンクロ西井さんが衝撃を受けたシェフの名言(シーズン4より)
長谷川 いつもと言いながら、久々の披露ですよね。
西井 やめろ(笑)。
菅原 やっと言わせてもらった感(笑)。
西井 俺をいじめるのやめろ、上司だぞ(笑)。
山本 懐かしい感じがします(笑)。
▶編集注:西井さんはNTTドコモではハセマコさんの上司。前回のシーズン5では時間切れとなり、発表することができませんでした。
菅原 これは、ガイド付きで旅行しているようなものですよね。
例えば、遺跡を見て何がすごいのか分からなくても、文化背景などを聞いて、それを楽しむことができるという意味では……。
西井 そうですよね。
菅原 しかも、料理を作った人に教えてもらえるのは、最高ですよね。
西井 付け加えると、海外のミシュランのお店は基本的に大箱ですから、シェフと話すことなんて絶対にできないのです。
海外だと、メッシに会いたくても、会えないわけです。
でも日本はカウンターの店がめちゃくちゃ多くて、大体の場合は話してもらえるので、こんなに良い環境のところはありません。
今日、良いお店については僕以外の登壇者が教えてくれますが、高いなと思うだけではなく、僕みたいな感覚でお店に行く人が増えれば嬉しいなと思っています。
菅原 しかも海外だと、シェフズテーブルなので、値段が2倍になってしまいますからね。
でも、日本なら2倍にはならずにシェフと話せるわけです。
山本 前にも言ったかもしれませんが、席数が少ないということはすごいことです。
▶7.シェフの技術が直接味わえる、特殊で贅沢な日本のレストランシーン(シーズン2より)
50人のために作る料理と8人のために作る料理では、明らかに後者の方が、クオリティが高くなるわけです。
日本だと、50人向けの料理だと宴会料理になります。
つまり、結婚式のような料理においてクオリティを保つのはすごく大変です。
日本の料理人のキャリアの最高峰は、8人のカウンターを1回転ないしは2回転させて、客単価は料理だけで5万円で席を満席にすることとされています。
決して安くはないですが、食べ手からしたら圧倒的に価値が高いです。
ビジネスだけを考えると、席数を増やしたり、店を増やしたりするべきなのでしょうが、そうしないのが日本の文化になっていますね。
西井 本当にそう思います。
ですから、僕みたいな楽しみ方もあると思ってください(笑)。
名言1「来る回数が多いお客さんほど緊張する」
西井 これは、秋田の「日本料理 たかむら」での言葉です。
「初めてのお客さんより2回来るお客さん、3回来るお客さん、回数が多いほど緊張する」と言っていました。
普通に考えると逆ですよね、初めて来たお客様の方が、どういう人だろうと思って緊張すると思います。
僕は、これは結構ビジネスにも通じるところがあると思います。
慣れてくるとどんどん適当になってくるのですが、「日本料理 たかむら」のシェフは超トップランクの考え方を持っていて、2回目のお客様には1回目以上の料理を出さないともう来てくれない、だから前回よりもさらに良い料理を出そうとします。
そしてその次は、さらにもっと良い料理を出そうとする、とおっしゃっていました。
結果的に僕は長谷川さんについて行って、5、6年通わせてもらっているのですが(笑)、5年前と今とでは全然違うくらい、今の方が美味しいです。
長谷川 LTVセッション返り咲きを狙う、素晴らしい話ですね。
西井 はい、僕はマーケターなので、こうするとLTVが上がるということです(笑)。
榊 まさにこれが、LTVを上げるコツですよね。
山本 先ほど、別のセッション(「コア・ユーザーのLTVを高めるための秘策とは」)でこういう話をしましたね。
西井 そうなんですね。
山本 リピート率をどう高めるか、LTVから考えようという。
長谷川 そのセッション、西井さん不在で行われたわけですね(笑)。
西井 やめろ(笑)、せめてマーケターとしての存在感は…。
榊 では、西井さんの名言シリーズはこれにて…。
西井 やめてください(笑)、ささっと行きますね。
名言2「鮨は引き算の料理」
西井 2つ目が、ハワイにある「すし匠」での言葉です。
「すし匠」はもともと四谷にあった名店で、東京で一番と言われていた職人が、世界中で鮨を作れるようになりたいという思いで、まず一番難しそうなハワイで、ハワイの魚で鮨を作ろうと開いたお店です。
その職人は当然日本一レベルで、日本の鮨と世界の料理の違いについて話していた際、「鮨は日本の料理だから、引き算の料理なんです。」とおっしゃいました。
全てとは言いませんが、海外では、何かの素材にソースをつけるなど、足し算をしていく料理が多く、新しい料理と言えばそういうスタイルが多いです。
しかし日本では、いかに余分なものをなくしていくかで、中でも鮨は、魚とご飯の組み合わせですよね。
引き算の料理なので、ハワイでも余計なことはなるべくせず、引き算をしているということでした。
長谷川さん、これで合っていますか?
長谷川 はい、正解です。
西井 良かったです(笑)。
名言3「今日が最後という覚悟」
西井 次は、東京の蒲田にある「初音鮨」のシェフの言葉です。
東京の端にあるような店で、大将はすごく人気で、名物にもなっている方です。
しかし数年前に奥様を亡くされており、行く度に奥様の話をしていただくのですが、「今日が最後という覚悟」でずっと鮨を握っていると話されていました。
だからこんなに人気なのだな、とすごく思いました。
トップランクのシェフでも対等に接してよい?
山本 せっかくなので西井さんとディスカッションできたら面白いなと思っているのですが、これは、ハセマコさんのおっしゃる心技体の心に通じるかもしれません。
<関連するディスカッションはこちら>
▶6. 店・料理人に好かれるには、食べ手の「心技体」を学ぶべし(シーズン2より)
▶7.シェフの技術が直接味わえる、特殊で贅沢な日本のレストランシーン(シーズン2より)
僕は、シェフがトップランクだと思うことはありますが、そのトップランクのシェフに会えることだけでありがたいと思うことはあまりないのです。
嬉しい気持ちはありますが、それが一方的な感謝になると、ある意味、店にへつらう感じが出てしまうような気がして、それよりは、敬意をもった上でお店と対等に接することができると一番いいのでしょうね。
ありがたいと思うことは、その人がトップランクであることよりむしろその人がこだわっているポイントを聞けることではないでしょうか。
「この人は星付きシェフだからとか、トップランクだからすごい」というスタンスを強めてお店に行くと、客として、ちょっとなめられる気もします。
長谷川 これは良い議論ですね(笑)。
榊 西井さん、僕は西井さんと同じ気持ちですよ。トップランクだとしか思わないですよ。
西井 そうですよね。
菅原 僕はこの位置から西井さんを見ていましたが、完全に固まっていましたよ(笑)。
(一同笑)
西井 いや、もう「残り20分」と出ているので、この話はやめていいんじゃないですか。
榊 だって、トップランクのシェフと自分が対等とは、思えないですよね。
西井 はい、思えないです。
榊 そう思えるのは、やはり…。
山本 いや、僕は思える気がしています。
これはネタではなく、西井さんがこれまで積み重ねてきたものは、たくさんあるわけですよね。
料理において対等でなくてもいいわけです、食べてもらうのにふさわしいと思ってもらえる対等さのことを言っています。
これは本当にネタではなくて…。
西井 真剣な話ですね。
山本 西井さんがトップランクである部分はきちんと存在しているので、それを以ってトップランクのシェフに対峙する方が、ありがたいと思うよりも、心技体の心において是ではないでしょうか。
西井 真面目な話ですが、僕は比較的、大将には好かれやすい気がしています。
が、長谷川さん、どうですか?
長谷川 それは僕の弟子だからです(笑)。
(一同笑)
西井 ふざけるの、やめなさい(笑)。
長谷川 一言で言えば、そういうことです。
榊 僕はモデレーターでタイムマネジメントしなければいけないのですが、残り20分弱です。
この話は……。
西井 面白いのでCo-Creation Nightの方に持ち越して、この後は長谷川さんに譲ります。
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成