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これまでに配信した、デザインに関する議論を総特集いたします。今回は、ICCカンファレンス TOKYO 2016 より「優れたプロダクトの生み出し方」の記事を再編集して9回シリーズでお届けします。
デザイン特集2(その7)は、グーグルジャパン徳生さんに自己紹介とプロダクト開発において重要だと思うことについてお話しいただきました。ぜひご覧ください。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
登壇者情報
2016年3月24日開催
ICCカンファレンス TOKYO 2016
Session 4B
「優れたプロダクトの生み出し方」
(スピーカー)
佐々木 大輔
freee株式会社
代表取締役
鈴木 健
スマートニュース株式会社
代表取締役会長 共同CEO
徳生 裕人
グーグル株式会社
製品開発本部長
中村 洋基
PARTY
Creative Director / Founder
(モデレーター)
赤川 隼一
株式会社ディー・エヌ・エー
モバイルソーシャルインキュベーション事業部 シニアマネジャー
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【前の記事】
【本編】
赤川 さっきのプロダクトの機能を削ぎ落とすという話で言うと、逆にグーグルはたくさんのメンバーが関わってこうした方がいいと意見を言って、結果的に大企業的な余計なもの載りまくりプロダクトになる、というのが起こりやすい気がするんですけど…徳生さんはどう回避されてるんですか?
徳生 すごい大変ですね。
昔は 20%ルールというルールがあり、今もあるはあるのですが、色々な人が色々なもの勝手に作ってて、1人のエンジニアのアイデアだけで追加された機能というのもたくさんありました。
でも、やはりプロダクトが洗練されて、UXの要求水準も高くなると、足すのが難しくなって、今度はより拡張性のあるインターフェースを考えなくちゃいけないとか、全然別の戦いになります。ガラポンじゃないですけれども、利用者のいる機能を削るなりフレームワークから大きく変えるといった大きな意思決定をして、機能を足せるような幅をまた作っていく。
そこは先ほどのミッションの話じゃないですけれども、何でこれをやっているのか?何でこれが重要なのか?ということが共有されていると、各自の発想や前提が大きくぶれないので楽ですね。
ミッションの共有が重要
徳生 1人のすごい偉い人が全部の方針を決めて、何か出来るということでは全くない。
各自、横で勝手に調整しながら、なんとか辻褄を合わせられる人が集まって、ミッションだけを共有して開発していくという形じゃないと、難しくなると思いますね。
赤川 新しいプロダクトを出す場合にいかに絞るか、いかに全部載せにするかというのは、どういう形で決まっていくんですか?
徳生 やはりコアのバリューは何かいうことだと思いますね。例えば、最近の成功例だと Google フォトがあります。
Google フォトは僕は直接担当しているわけではありませんが、やっぱり3つくらいのしっかりした柱があります。写真がどんどん溜まっていくので、どこかに安心して放り込める場所を作りたい。そうしたら、放り込んだものを検索で簡単に見つけられるようにしたい。そしてあとは、簡単に共有出来るようにしたい。発表から1年になりますが、今でもその3点に非常にフォーカスしていると思います。
あるいはもう本当にリーンにやるしかなくて、機能を盛り込むよりも、成長につながる、機能を成長につながる順番で出していく、ということを考えてやるしかないと思います。そこは多分、他の会社となんら変わらないと思います。
WHYの柱がないと開発はブレる
鈴木 でも、すごいWHYを大事にしているのは、すごく共感しますね。
どうしてもWHATの話とHOWの話に終始しがちじゃないですか。結局なぜそれをやるのかっていうところが無いと、どんどんプロダクトの開発はブレていっちゃうんですよね。
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【参考資料】
ゴールデン・サークル。 同時間帯で行われた「世界で勝負するチーム・マネジメント」でも「何事もWHYから語らなければダメ」などの議論がありました。
WHYのところが柱としてあれば、多分それはすくすくと、いい形に成長していくプロダクトになると思うんですよね。
成長というのは、ユーザー数という意味ではなくて、プロダクトとしての一貫性とか、何を目指しているのかっていうことですね。だから、WHYがすごく大事だなというのは、僕もすごく思います。
徳生 人数が増えてくると、横の調整コストというのは普通にやっていたら大変になりますよね。誰も3千人でやるプロジェクトの工程表なんて書きたくないじゃないですか。
なので、自律的に調整しながら動ける形にしたいので、やっぱりWHYというのは基本なんだな、と思います。
赤川 特にプロダクトを出すまでの間は、ユーザーにちょっと触ってもらったら文句言われるとか、第三者とか投資家に会ったらダメだよと言われるとか、色々あったと思うんですけど、WHYの部分以外で軸がブレない秘訣を伺いたいです。
佐々木 WHY以外は、なかなか無いと思いますね。
それ以外だと本当に1人でやるとかですね。たしかに、それで言えばリリースしてから半年くらいまでは、全部やっぱり自分で開発する内容を決めていましたね。1人でやっているからブレないっていう時期もあると思うんですね。
それを越えてくると、ゴールとかWHYが共有されているという前提でのテクニック論の話になってきて、(当時はGengoにいた)徳生さんに相談に行ったんですよ。
「いっぱいやりたいことあるんだけど、何からやっていったらいいか、よく分からないんです」ということを相談しに行き、実際に今後向こう1年くらいにやりたいことのリストをワーーって出して、どう思いますか?と質問しました。
そうすると、あーなるほど、と。「大体、今君がやりたいことは3つあるね」と言われました。
この3つが何のためにあって、どういう風な優先順位かみたいなのをディスカッションしました。
優先順位を明確にする
佐々木 それは当時まだ1年目だったのかな、その翌年の確定申告のためにやりたいことと、その後でも別にいいことっていうのが混在していたんですよね。
「あーなるほど。この確定申告のために出来ることにだけフォーカスすれば良かった」ということが、徳生さんとのディスカッションがあって分かるようになりました。
そこから上手くブレずに形にしていきましたね。社内の開発プロセスの中でも、きちんと個々の開発機能だけではなく、どんなゴールのためにやってるんだっけ?というのをやっぱりすごく整理するようになりました。
徳生さんとのディスカッションはすごく良かったな~と感謝しております。
赤川 先ほどインパクトという単語もありましたが、ゴール逆算とか目的志向というのが、freeeは強い会社ですね。
佐々木 そうですね。目的とかゴールとか最終的にどのようなプロダクトでありたいか、3年後どうなりたいのか?によって、1年後くらいにこうなってないといけないねというのが、全部定義していますね。
それを実現するためにどう育てていったらいいか?という最短経路を描いていますね。
赤川 中村さん、ブレるブレない観点で何かありますか?
中村 まあ、私、ブレまくってますからね(笑)。
(会場笑)
中村 ブレまくってるから、いかにブレてもどんどん新しく開発出来るように、プロトタイピングを高速で回して、出来た瞬間にPRチームが動く、という会社の構造を、いま作っています。
プロトタイピングは、あまり止まらないでパッとつくる、というのをいまやっていまして。
最近「Song Wig」というヅラを作ったんですね。ヅラの髪の毛が全部イヤホンで出来ているという、メディア・アートに近いようなプロダクトなんですけど。
もともとニューヨークでの展示に使うために企画したのですが、これは、ふと立ち止まって「これはなんなんだろう」と自問したら止まるな、と考え、勢いでばーっとつくってしまいました。
SXSW(サウスバイサウスウエスト)にも出展してみました。まぁ予想外に引き合いが来たんですよ、そんな変なヅラにですよ。その小さな成功体験があると、次から「自分でも予期せぬ所にニーズがあるかもしれない」と、プロトタイピングに自信がつくので、手が止まらない。PRも、ある程度ルーティーン化できます。
そうやって、パッと思いついたものをつくってみる、ということをしやすくするようにしています。
たとえばゲーム開発にしても、失敗の中から「これは失敗」「これは成功」、じゃあ次はこういう風にやろう、といった小さな成功体験を積み上げる、業界的に言うとPDCA回すみたいことを仕組み化しているのですか?
赤川 そうですね。スライドで議論しても正直よく分からないから、早く作ってプロトタイプベースで議論しよう、みたいなのはやっぱり数年のトレンドとしても増えて来ているかなとは思いますね。
(続)
続きは 「ブレる」と「ピボット」は違う – サービス開始後の停滞期に考えるべきこと をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/藤田 温乃
【編集部コメント】
続編(その8)では、プロダクトをローンチした後の停滞期(悲しみの谷)やブレることとピボットの違いなどについてお話しいただきました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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