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Minimalは、生産者と共に創る「Bean to Barチョコレート」で“本当の豊かさ”を追求する(ICC FUKUOKA 2019)【文字起こし版】

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ICCサミット FUKUOKA 2019 CRAFTED カタパルトに登壇し、見事優勝に輝いた Minimal・山下貴嗣さんのプレゼンテーション【Minimalは、生産者と共に創る「Bean to Barチョコレート」で“本当の豊かさ”を追求する】の文字起こし記事をぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うためのエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2019 プレミアム・スポンサーのLexus International Co.様にサポート頂きました。


【登壇者情報】
2019年2月19日〜21日開催
ICCサミット FUKUOKA 2019
Session 8B
CRAFTED CATAPULT
豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by Lexus International Co.

(プレゼンター)
山下 貴嗣
Minimal -Bean to Bar Chocolate- 代表
(株式会社Bace 代表取締役)
公式HPSTARTUP DBLinkedInページ

大学卒業後、株式会社リンクアンドモチベーション入社。新規事業立上やマネジメントを経験後、クラフトチョコレートブランド「Minimal -Bean to Bar Chocolate-(ミニマル)」を設立。現在5店舗1工房を展開。モノづくりを通して、世界への日本のプレゼンス向上や農家を巻き込んだエコシステム創りという新しい可能性を見出す。年間4か月強は、赤道直下のカカオ産地に足を運んで、農家と交渉し、良質なカカオ豆の買付と農家と協力して毎年の品質改善に取り組む。カカオ豆を活かす独自製法を考案し、設立3年で世界最高峰のチョコレート国際品評会で部門別最高金賞を日本ブランドで初受賞。グッドデザイン賞ベスト100及び特別賞「ものづくり」受賞やWIRED Audi INNOVATION AWARD 2017 30名のイノヴェイターにも選出。ビジネスしてもサブスクリプションモデルの導入など新しい試みを仕掛け、クラフトマンシップとスケーラビリティの両立を追究する。

「ICC FUKUOKA 2019 CRAFTED カタパルト」の配信済み記事一覧


山下 貴嗣 氏 よろしくお願いします。人生初ピッチで、緊張しております。

私たちは、赤道直下の農園に直接足を運んでカカオ豆を仕入れ、チョコレートを作っているクラフトチョコレートメーカーです。

審査員の皆様のお手元にサンプルを置いていますので、2種類、ぜひ食べ比べながら聞いてください。

この2種類のチョコレートは、ともに原料は「カカオ豆」と「砂糖」だけですが、味が異なります。

これはカカオ豆の違いによるものです。

Minimalのビジョンは「チョコレートを新しくする」

我々は、都内に4店舗と1工房を持って、完全にモノづくりをゼロからやっております。

我々のビジョンは「チョコレートを新しくする」ということです。

チョコレートは、植民地貿易の縮図です。

その流通構造にどのようにイノベーションを起こしていくか、ということが私たちの目標です。

チョコレート業界では、普通、商社が仕入れた原料のカカオ豆を、一次加工メーカーが大量生産工場に持っていきます。

そこで、チョコレートの製菓材料の生地を作り、それをショコラティエやパティシエの人たちが二次加工します。

簡単に言うと、私たちはこの流通構造の全てを自分たちで担っています。

そのため、カカオ豆の産地にも積極的に足を運んでいます。

生産者であるカカオ農家と消費者の皆さんを繋げる、この部分を僕たちが一手に担う。

そうすることで、その両側に、新しい豊かな価値が提供されていきます。

生産者の「誇り」の醸成と生活向上をめざす

まず、生産者への提供価値ををご説明いたします。

僕らは100%フェアトレードでやっていますので、生産者にとっては「誇りの醸成」と「生活の向上」に繋がります。

カカオ豆の原産国は、赤道直下に生育するため、ほとんどの産地が発展途上国です。

場所によっては本当にジャングルです。当然、WiFiは飛んでいません。

僕らは自分たちの足で、31ヵ国300農園以上に直接行っています。

農家に行って一番驚くことは、「カカオ農家ではチョコレートを食べたことがない人が多い」ということです。

そのため、「チョコレートを作るので、いいカカオ豆が欲しい」と言っても、チョコレートを食べたことがないのでどんなものが「良い品質のカカオ豆」なのかが分からないのです。

そこで、僕たちは最初にこんなことをやります。

チョコレート作りのワークショップです。

インドネシアのシャワーは水のみ、WiFiもない農村で行ったチョコレートワークショップを撮影しました。

生産者の皆さんと一緒に、こうやってカカオ豆をすりつぶして、チョコレートを作っていきます。

そうすると、カカオ豆の質に対して、皆さんの観点が変わってきます。

今の映像にあった村は、当初は本当にコモディティランクのカカオ豆を作っていたのですが、僕たちが入って3年で、世界的な国際品評会であるアカデミーオブチョコレートで入賞するまでに変わりました。

世界は変わるのです。

生産者の誇りが醸成され、いいカカオ豆ができ、そしてフェアトレードの結果、生活は向上していきます。

これが、私たちが提供する「生産者への価値」です。

少量でも驚き・喜びを感じるプレミアム体験を提供する

次に、消費者への提供価値です。

私たちのチョコレートを少しでも食べていただくと、市販のものと味が違うと感じると思います。

しかし冒頭で申し上げたとおり、カカオ豆と砂糖以外、何も入れていません。

こうした少量でも得られる豊かな体験こそ、まさに「プレミアムな体験」だと思っています。

ここに、お客様から私たちのSNSにいただいた感想を掲載しています。

「ちょっとだけ幸せになった」

「ペアリングを楽しんだ」

「新しい楽しみ方がある」

「健康にいい」

このようなことをお客様に感じていただいています。

「モノづくり」に徹底的にこだわる

僕たちのコア・コンピタンスは、完全に「モノづくり」です。

今までこうしたピッチコンテストの場に出てこなかったのは、ずっと「モノづくり」に集中していたからでもあります。

カカオ豆の品質はまだまだ安定していないですし、カカオ豆は産地や天候、そして農家のつくり方で変わる、ある意味で一期一会の農作物です。

毎回微妙に変わっていくカカオ豆に向き合って、丁寧にレシピを調整した結果、僕たちは昨年1年間で3,199回、レシピを変えていました。

1日10回以上変えることもあります。

(香料を使わず)カカオ豆だけで表現したフレーバーは50種類以上にのぼります。

ひたすらファナティックに、熱狂的なほどに、モノづくりにこだわり抜いています。

そのこだわりの結果、チョコレートにおける世界最高峰の国際品評会で、僕たちは3年連続、合計26の賞を受賞しています。

日本のブランドとしては、部門別で初めての金賞受賞という快挙を成し遂げることもできました。

それだけではなく、自分たちのデザインに思いを込めることで、「グッドデザイン賞ベスト100」や「グッドデザイン特別賞[モノづくり]」の受賞、「WIRED Audi INNOVATION AWARD 」イノヴェイターへの選出、Business Insider Japanによる「Game Changer 2019」への選出など、モノづくりだけでないブランド全体の取り組みをご評価いただけたのは、お客様に価値を伝えてきた結果だと言えるでしょう。

生産者・製造者・消費者を「三方良し」の輪でつなぐ

生産者、僕たち製造者、そして消費者を「三方良しの輪」で繋いでいく。

この輪をしっかりと、末広がりに大きくしていく。

そのエコシステム創りを、僕たちはやっています。

本当に「三方良し」のビジネスを大きくすることができれば、世界がちょっとだけ良くなる。

僕たちは、ビジネスインパクトとソーシャルでエシカルなインパクトの両立を目指しています。

「認知」を「購買」につなげるための3つの戦略

ありがたいことに、メディアには多く取り上げていただき、1週間前にもテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」の生中継に出演させていただきました。

ソーシャル経済メディア「NewsPicks」に特集を組んでいただいたりもしました。

参照:【実録】日本人だから作れた、究極のチョコレートの「正体」(NewsPicks)

こういうことで、今は少しずつ露出が増えてきており、かなり認知をしていただいています。

ただ、まだまだ僕たちは購買層が少ないので、ビジネスとしても、このギャップを埋めていくための戦略を実施しています。

ここにおいて一番大事なことは、僕たちのビジネスが、原料調達という川上から、チョコレート加工という川下まで、全部自社でできるということです。

原材料をも売ることができるのです。

今のところは、チョコレート製品をお客様に販売するだけですが、製品以外にもどんどんと広げていくことが可能です。

その1つは、D2C(direct-to-consumer)の「チョコレートのサブスクリプション」です。

しかも「楽しくやりたい」ということで、新サービスでは、毎月定番のチョコレートに加えてカカオ産地や造り方などの違うチョコレートをお客様の元にお届けしてします。

そうすることで、世界一周をカカオで体験することができます。

カカオ農家に教えてもらった「本当の豊かさ」

僕は当然、起業家としてはビジネスを大きくしていくということを考えています。

ただ僕がカカオ農家に教えてもらったことの一番大事なことは、「本当の豊かさとは何か?」ということです。

私がカカオ豆を「3倍ぐらいの価格で買いたい」と言っても、買わせてもらえませんでした。

カカオ豆は市場で取引価格が決まります。

農家には価格の決定権がなく、彼らにとっては、100トンぐらいの量を売らないと意味がありません。そういう経済構造なのです。

ところが私は1トンほどしか買うことができませんでした。

そうすると、3分の1の価格でも100トンを売った方が儲かります。

私は、最初これを「逆フェアトレード」と呼んでいました。

そんな中で、この写真のサロモンさん、彼はインドネシアのカカオ農家ですが、この方が、私を選べば収入が減るにもかかわらず、選んでくれました。

「どうして私を選んだのですか?」と聞いてみると、彼ははにかみながら、こんなことを言いました。

「僕は30年間カカオ豆を作ってきたけど、今まで自分の生活を削って、量を作るということしかなかった。

山下君のところが初めて、自分たちの生活を守りながら自分たちの収益を上げて、自分たちの豆が世界にブランディングされる、ということをやってくれた。

だから僕らは、君たちとやりたい」と。

無意識なのですが、僕にはそれまで、フェアトレードには「良い事をしている」という、どこか傲慢さがありました。

しかしその時に気づきました。

豊かなことというのは「選択できる」ということなんだなと。

どちらが正しいということではなく、正しさはその人にとって相対的なモノで、大事な事は選べる選択肢があるということ。

この場合は、「安い単価で量を売るか」「少量でも高い単価で売るか」の選択肢です。

誰かに押しつけるのではなくて、選択するという価値。

僕は、カカオ農家にも、そして消費者の皆さんにも、新しい選択肢としてのチョコレートを提示していきたいと思います。

ぜひ、チョコレートを新しくして、世界を本気で変えていきましょう。

ご清聴ありがとうございました。

(終)

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/戸田 秀成

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