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ICC地域コミュニティを盛り上げる「ローカル・コネクテッド」から着想を得たICC FUKUOKA 2025のセッション「『グローバル・コネクテッド』(シーズン1) – ICCグローバル・コミュニティを盛り上げよう!(120分拡大版)」、全8回の⑥は、リブライトパートナーズ 蛯原 健さんが、アジア最大の金融ハブかつハイテク都市、シンガポールを解説。質問タイムでは、物が壊れるほどの暑さやスタートアップエコシステムについて語ります。 ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。
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【登壇者情報】
2025年2月17〜20日開催
ICC FUKUOKA 2025
Session 2E
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か? (シーズン13)
Supported by EVeM
スピーカー&モデレーター
(スピーカー)
① サンパウロ(ブラジル)
中山 充
B Venture Capital
General Partner
② ロサンゼルス(US)
福山 太郎
Rice Capital
代表パートナー
③ シンガポール
蛯原 健
リブライトパートナーズ
ファウンディング ゼネラルパートナー
④アフリカ
山田 陽介
オンリーワントラベル
CEO
(リングサイド席)
青木 優
MATCHA
代表取締役社長
大槻 祐依
FinT
代表取締役社長
小林 嶺司
HAKKI AFRICA
代表取締役
盛田 連司
ザリビー
代表取締役
四方 健太郎
Spice Up Singapore Pte Ltd
Managing Director
(モデレーター)
西井 敏恭
シンクロ
代表取締役
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▶「「グローバル・コネクテッド」(シーズン1) – ICCグローバル・コミュニティを盛り上げよう!(120分拡大版)」の配信済み記事一覧
シンガポールは世界のトップ産業が集まる金融ハブ
蛯原 2点目は、金融ハブである点です。

言うまでもなく、シンガポールはアジア最大の金融ハブですが、我々スタートアップの立場からすると、エンジェルから世界最大のファンドであるTEMASEKやGIC(※)まで全部いるので、アメリカみたいに遠くに行かなくても、シンガポールで事足ります。
▶シンガポール政府投資公社 (Wikipedia)
あと、シンガポールはファンドマネージャー大国であり、ファンドマネージャーたちが押し寄せています。
例えば、香港が中国に併合された際は、息子の学校にも香港からたくさん新入生が来たようです。
彼らの親の仕事は、たいていファンドマネージャーでしたね。
また、シンガポールはプライベートバンク大国です。
お金が貯まってきたので運用を考える人がシンガポールに来るようです。
小さい国だからこそ、テックへの投資が進む
シンガポールは小さい国だからこそ、政府は死ぬ気で、ハイテクに関するいろいろなことを頑張ります。

テクノロジーに対する投資や圧倒的な誘致インセンティブなど、EDB(シンガポール経済開発庁)という役所が担当しています。
日本のスタートアップでも、EDBに相談に行くと、親身になって制度を教えてくれたり紹介してくれたりしますので、ぜひ行かれると良いと思います。
小さいからといってバカにできません。
例えば、半導体のシェアは世界の20%を持っていますし、インテルを買収するしないの話があったブロードコムの本社はシンガポールにあります。

TSMCの拠点もありますし、データセンタークラウドでは、世界トップ5に入っています。
クライメートテックについては、カーボンクレジットの取引で上位にいるACXはシンガポールにあります。
バイオやファーマ(製薬系)は相当進んでいます。
チャンギ空港とは逆方向にクラスタがあり、バイオ企業やファーマのR&Dの仕事をしている友人も多いです。
バイオファーマ系のスタートアップは、検討されてもいいのではないかと思います。
航空や物流においては、港湾取扱量は中国に次いで世界2位です。
このように、石油や金融も含め、シンガポールには世界トップクラスの産業が結構あります。
最後に、オープンイノベーションについて。
こちらは、弊社の会社案内からの抜粋です。

右が、我々のLPを中心にした日本企業で、左が我々の投資先を中心にしたアジアのスタートアップです。
我々が紹介して資本提携や買収、業務提携につながったもののうち、一部を抜き出しています。
右側の日本企業の、オープンイノベーションやアジア事業開発のご担当者は、たいていシンガポールに駐在しています。
もっと言えば、コワーキングスペースのOne&Coにみんな入っています。
ですから、便利です。
そこで話せば、コラボレーションができるからです。
一人で侍のように耕したいという人はそれでもいいかもしれませんが、仲間がいた方がいい人は、同じような境遇にいる人がたくさんいるので、シンガポールが良いと思います。
以上です。
シンガポールとLAの生活費は年間3,000万円くらい
西井 ありがとうございました。
最初のお金のことも気になったのですが、生活費はどのくらいかかるのでしょうか? LAは…。
福山 日本円で、年間3,000万円くらいです。
蛯原 ほぼ同じくらいですかね。
平米辺りの家賃のランキングは、ニューヨークとシンガポールが世界1位というニュースも出ていましたね。
西井 もう一つ質問です。ファンドマネージャーが多いのは、どういう背景があるのでしょうか?
蛯原 55年間、国をあげて金融大国にしようとしてきて、諸々の税金を安くしたことが一つ。
あと、公用語が英語で、比較的、欧米人が困らない法体系になっています。
各分野の専門家も多いです。
例えば、登記は、資本金を各通貨別で管理できます。
日本だと円のみですが、シンガポールだと、シンガポールドル、米ドルなど分けて書かれています。
あとは、インフラも整っています。
最近だと、ものすごくベンチャーキャピタルフレンドリーなVCFMというものができて、アメリカ人のGPもシンガポールでファンドを作ることができます。
▶︎Venture Capital Fund Management License in Singapore (VCFM)(Relin Consultants)
つまり、ファンドマネージャーフレンドリーな国だからですね。
西井 なるほど、ありがとうございます。

暑さ以外で我慢しないといけないことは?
盛田 最後にシンガポールに行ったのは15年ほど前ですが、その時、ただひたすらに暑いという記憶があります。
当時は学生として勉強していましたが、腕に紙がくっついて離れないのが気持ち悪すぎて、シンガポールには住めないと思いました(笑)。
蛯原 ディスらないでください、本当のこと言ったらダメじゃないですか。
(会場笑)
盛田 今日お話を聞いて「シンガポール、良いな」と思ったのですが、暑さ以外で、我慢しなければいけないことはないのでしょうか?
お金については、冒頭に触れられていましたが。
蛯原 お金が一番大きいですが、おっしゃる通りで、暑い、かつ「蒸し暑い」です。
とにかく物が壊れやすいです。
ドアを開けようと思ったらノブが壊れるとか、エアコンが調子悪いとか、毎日、何かしら壊れているくらいのイメージです。
西井 それは湿度が原因なのでしょうか?
蛯原 そうだと思います、湿度と温度ですね。
冬がないというか、真冬でも気温が28度くらいですので、大変です。
例えば、長期外出の時はエアコンつけっぱなしにしないといけないなど、ライフハックもあります。
盛田 そういう状況であっても、魅力が上回る国ということでしょうか?
蛯原 真面目に答えると、仕事でシンガポールにいる必要がない方は長く住めないというか、実際、母国に帰る方はすごく多いですね。
例えば、先ほど挙げた理由についても、子どもの教育だけが理由だとしたら、ご自身がそこにいる理由は?となってしまいます。
親子留学のような形でいる方もいますが、するべき仕事がなければ厳しいと思います。
西井 イグジット後にシンガポールに住む人もいますが、生活費も高いですしね。
蛯原 あと、小さい国なので、つまらないのですよね。
西井 今、自分でマイナスのことを言っていますが、大丈夫ですか(笑)?
(会場笑)
でも、インドやインドネシアのビジネスを考えると、魅力的な場所ですよね。
蛯原 1時間くらいでビーチに行けるという良い点もあります。
西井 フォローになっているかな(笑)?

シンガポールのスタートアップエコシステム
小林 スタートアップエコシステムについて教えてください。
日系企業がシンガポールに行って提携が生まれるということは理解しましたが、インドや東南アジアの経営者による情報交換やコラボレーションも生まれているのでしょうか?
大企業の場合はシンガポールで登記するケースもあると思いますが、ミドルにいかないくらいの規模のスタートアップであれば、シンガポールに行くべきでしょうか?
蛯原 基本的にはスタートアップ大国ですし、東南アジアの金融ハブなので、スタートアップはシンガポールに集中していると思います。
資金調達できる環境もありますし、インド辺りもシンガポールからレイズすることが多く、インドも含めたエコシステムがあります。
ICCでこういうことを言うと怒られるかもしれませんが、日本には、スタートアップのイベントがすごく多いです。
人もたくさん参加しています。
でも、シンガポールはここまでではないですし、アメリカもそうだと思います。
スタートアップはいるので、情報交換も起こりますし、アクセラレータープログラムも一通り揃っています。
環境として成熟していて、資金調達額も日本より多いですね。
小林 スタートアップの経営者がシンガポールと日本を行き来して、周辺国に展開する状況があって、そういう方に会えるということでしょうか?
蛯原 正直に言うと、私はステージによると思っています。
アーリーステージの場合、ビジネスを伸ばそうとしている国にいた方がいいです。
インドならインド、インドネシアならインドネシアに。
でもその国の数が増えてきて、いろいろな国をカバーする段階になった時はシンガポールが便利だと思いますね。
大槻 私も東南アジアでチャレンジをしていますが、インドネシア、フィリピンなどの都市別で拡大させようとしています。シンガポールにいる人材の方が、チームワークの面などで優秀である可能性があるのかなと思いましたが、どうでしょうか? もちろん国が増えて行き来が増えてきたときに、シンガポールで立ち上げるメリットがありますが、人についての観点があればお願いします。
蛯原 これも正直にお答えしますと、ステージによると思います。
ミドルからレイトステージであれば、シンガポールをおすすめします。
CFOなど、Cレベルの人材をシンガポールで採用しているレイトステージのスタートアップは、めちゃくちゃ多いですね。
例えば、ユニコーン企業のCEOがパパ友にいますし、向かいに住んでいる人ももうすぐユニコーンになる企業のVP of productです。
グローバル企業のAPACの本社がシンガポールにあることが多いので、大組織を管理する専門屋がたくさんいるわけです。
彼らはたいていインターナショナルスクールに子どもを通わせているので、そこで会うことが多いです。
そういう人は良いですが、私は、起業はローカルなものだと思っているので、ローカルの起業家に投資することが90数パーセントです。
例外はあっても、起業の初期はローカルメンバーがほとんどだとも思います。
西井 シンガポールにいた人がシンガポールで起業したパターンと、海外から来てシンガポールで起業したパターンがあると思います。
どの国から来て、どんなメリットで起業するのでしょうか?
日本からもそうですし、マレーシアやインドネシアの人があえてシンガポールで会社を作るケースの場合、何を目的にしているのかということです。
蛯原 個別各論なのですよね。シンガポールのスタートアップの頂点は、Sea Ltdという会社で、ShopeeというECとGarenaというモバイルゲームを展開しています。
時価総額は3兆円くらいで、中国人が作った会社です。
創業者は前職時代にシンガポールに来ていて、ビジネス機会を発見して起業しました。
2つ目はGrabで、創業者のAnthony Tanはマレーシア人です。
起業時から、東南アジアで頂点を目指すと決めていたので、それならシンガポールだと考えて移住をしてから、ビジネスを始めたというパターンです。
西井 ちなみに、Seaは今、どのマーケットが一番大きいのでしょうか?
蛯原 東南アジアと台湾です。
彼らは、Greater Southeast Asiaという地域を勝手に作ってIR活動をしていますし、社名のSeaもSoutheast Asiaからつけられていますが、「日本株式会社」みたいなものですよね。
おこがましいと思っていますが(笑)、まあ、すごいですよね。
西井 今の2社の例だと、東南アジアという市場のために、東南アジアのハブであるシンガポールでスタートしたということでしょうか。
蛯原 あそこまで大きくなるには東南アジアという市場のほとんどを獲得しないと無理だという結論ですね。
GDP規模を考えるとそうなります。
数10億ドルという価値は、1か国だけでは長期的には正当性を認められないと思います。
スタートアップエコシステムができて以来、10数年経た上での我々のラーニングとしては、東南アジアという市場のほとんどを獲得するのはめちゃくちゃ大変なので、長期でそういうビジョンを持ちつつも、1つずつ攻めていくというのが現実的な方法だと思います。
西井 なるほど、ありがとうございます。

中山 蛯原さんの東南アジア愛は、学生時代のバックパッカー旅行によるものらしいですが……。
西井 そうなんですね。
中山 まだブラジルにいらしたことがないらしいので、安心して聞きますが……一番好きな国はどこですか?
蛯原 インドに決まっていますね。インドにフォーリンラブです。
残りの人生を懸けてもいいくらい、巨大なオポチュニティです。
西井 国としても好きですか?
蛯原 そうですね、大好きです。
福山 シンガポールよりもインドの方が良いということですか?
蛯原 本当はね(笑)。
(一同笑)
西井 マイナスポイントにしようとしていますね(笑)。
山田 シンガポールを拠点に東南アジアに広めるのは理解しましたが、シンガポールを拠点に、アフリカや中南米など世界展開を考えた時にメリットはありますか?
蛯原 それを狙うならインドが良い、という説が有力です(笑)。
中東にインド人がめちゃくちゃ多いのはご承知の通りですし、物理的にも近いです。
ヨーロッパとアフリカの上のほう、中東では、大企業も含め、インドを中心に考えている企業が増えています。
日本だとパナソニックもそうですね。
西井 このセッション、ぜひシーズン2を開催して、次回はインド代表で登壇してほしいですね。
蛯原 私も、正直そうしたいですね(笑)。
西井 会場の皆さん、アンケート結果が良ければシーズン2が開催されるので、よろしくお願いします(笑)。
インドについても、聞きたいですね。
ありがとうございました。
(続)
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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成