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「今、リアルテックが熱い」【F17-6F】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その7)では、千葉さんが実感した、リアルテックベンチャーの持つ理解しにくさや奥深さについて語っていただきました。リアルテックファンドを通じて感じた違和感の先にある未来に注目です。是非御覧ください。
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ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2017年2月21〜23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 6F
「今、リアルテックが熱い」
(スピーカー)
千葉 功太郎
投資家・Drone Fund / General Partner
永田 暁彦
株式会社ユーグレナ
取締役 財務・経営戦略担当
リアルテックファンド 代表
丸 幸弘
株式会社 リバネス
代表取締役CEO
(ナビゲーター)
井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
プリンシパル
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最初の記事
【新】「リアルテック」とは何か?-人類の進化に貢献する新技術【F17-6F #1】
1つ前の記事
天才研究者の構想を事業化して人類の進化を促したい(千葉功太郎)【F17-6F #6】
本編
永田 実際に、元コロプラの千葉さんという人がいるということを知り、ファンドのメンバーに「千葉さんに仲間になってもらおうと思っている」と伝えました。
ファンドメンバーは10人弱くらいいるのですが、出資ではなくて、仲間になってもらいたいのだと伝えたのですが、まず全員、千葉さんのことを知らないんですよね(笑)。
(全員笑)
千葉さんって知ってる?(千葉さんの経歴を見て)コロプラって何?とお互いに顔を見合わせている。
丸 我々はもう有名だと聞いてきた後だったから、「え?本当に千葉さんのこと知らないの?大丈夫?」みたいな感じで(笑)。
永田 すぐ皆がWikipediaで調べ初めて、「え?すごい人なんですか?ベンチャー投資家ですか?」って。
その後は、「でも大丈夫ですか?ネット系の人ですよね?」という反応でした。
千葉 忌み嫌うネット系ね(笑)。
永田 恐いんですよ(笑)。嫌いじゃなくて、恐いんです。
”リアルテック度合い”を精査された
永田 とりあえず1回皆で飲みに行こう、ということになり全員で飲みました。
飲み会の後メンバーの皆にヒアリングしたら、「いや、ものすごくゴリゴリじゃないですか!」というフィードバックでした(笑)。
丸 みんな「イメージと違いました」と言っていました。
永田 こちら側の人じゃないですか、と。
千葉 いきなり飲み会に連れていかれたり、チャラテック度(※)で精査されたり、大変な目に遭いました(笑)。
▶編集注:丸さんが、IT企業をチャラテックと呼んでいて、もっとテクノロジー寄りの会社をゴリテックと名付けています。
丸 本当はこっちが精査される側なのにね。
リアルテックの人たちは勘違いしてしまっていて、「俺らが精査してやる」みたいな態度ですよね。普通は逆だろう、という話なのですが。
井上 でも、面白いですよね。
なぜ千葉さんはリアルテックファンドに参加した?
井上 千葉さんは、丸さん、永田さんの想いを受けて、その後どうしてリアルテックファンドに参加されることを決心したのですか。
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン プリンシパル 井上 真吾氏
千葉 飲んだ後にもう1度誘われて、今度はいきなり内部会議に出席させられました。
まだ何の意思決定もしていないのに、いきなり投資先と投資したい先のリストをバーッと見せられて。
丸 この辺の会社の名前、見たことありますよね、って。
千葉 一通り目を通したのですが、既存のポートフォリオも、投資したいと思っている会社の方も、両リストとも、ものすごい社数なわけですよ。
でも、その中の2社しか名前を聞いたことなかったんです。これだけリストがあるのに。
永田 しかも、IT系の領域の中ではかなりゴリゴリの側にいたはずなのに。
千葉 そうなんです。自分の最近の投資先はテクノロジー寄りを見ていたはずなのに、まずどこも社名すら知らない。
何となく聞いたことがあるというレベルの会社が2社という状態でした。後は何をやっている会社だか、想像もつきませんでした。
案件の概要を読んでも分からなくて。
(丸氏、爆笑)
丸 「これすごいですよね!」って言っても、「う、う~ん」と唸るばかり(笑)。
千葉 何を言っているんだか、ベンチャー級に分からないわけですよ、一つ一つが。
その反面、これはすごい、宝の山だなとも思いました。
井上 知的好奇心が喚起されたと。
千葉 自分がこれを全てきちんと理解して、頭の中で消化して、もし上手くチャラテックとピースをくっつけることができるようになったら、化学反応が起きまくるだろうなと感じましたね。
井上 ブリッジですね。
千葉 そう。
千葉さんの役職名に込められた思い
丸 千葉さんが参加されるにあたって就いた「クリエイティブ・マネージャー」という役職名は私が命名しました。何しろ、クリエイティブなことが起こりそうな気がするんですよね。
全く知らなかった世界を知った瞬間に、今まで持っていた知識と、バチンとが繋がるはずなんです。
これは何か起きるなと、面白いなと思っています。
永田 弊社では例えば「キャピタリスト」という名前が嫌いなので、あえて使わず、「グロース・マネージャー」と呼んでいます。
技術と起業をグロースしましょうという思いを込めて、グロース・マネージャーです。
丸さんと2人で代表して、千葉さんの役職名をどうしようか考えたのですが、「クリエイティブ・マネージャー」がいいのではないかと思い付き、メールを送りました。
まずメールを使っている時点で、千葉さんに突っ込まれたんですけどね(笑)。
「Slack」じゃないのかと。
(全員笑)
丸 え、メーリングリストってもうないの?みたいな(笑)。
千葉 石器時代かと思いました(笑)。
丸 メール見ないって言っていましたもんね。
千葉 そうなんです。
永田 IT系の人って恐らく、クリエイティブという言葉に、アートとか、制作物というようなイメージを持っているように思います。
我々はどちらかというと、クリエイティブと聞くと、既存の何かと何かを組み合わせて生まれる価値というようなものをパッと思い浮かべるので、言葉一つとっても、リアルテックとは全く捉え方が違うなと感じましたね。
それはそれで非常に面白いなと思います。
丸 千葉さんが来てくれたことで、リアルテックファンドに足りなかったピースが埋まりましたから、ますます面白くなりそうだなと、勝手にワクワクしています。
この「勝手に」が大事なんですよ。
リアルテックは奥深い
千葉 その一方で、2017年1月くらいから毎週全部の会議に出させてもらっているのですが、やはりなかなか理解が進まなくて、難しいですね。
ざっと見て理解して、まずは第1階層の表層を理解して、一つずつ少しずつ深掘りしようとしているのですが、本当に難しくて。
それでいて、自分の前には、こんなに理解が進まない大量の情報が存在しているんだという、深淵なるワクワク感があります。
丸 分かります。
千葉 ですから、チャラテック(※)と違って、これは時間がかかるなと思っています。
▶編集注:チャラテックとは丸さんが生み出したIT系の会社を指す言葉です。
チャラテックなら30分バーッとヒアリングすれば、ある程度の深さまでほぼ理解できるのだけれど、リアルテックはいい感じに分からなくて。
第一印象は、とにかく時間がかかるなということでした。
丸 10年スパンと50年スパンの違いというのは、ここなんですよね。
千葉 そうなんです。深いなと。
永田 そしてまさに、この領域に資金がなかなかつかない理由も分かりますよね。
分からないことに投資しよう!
千葉 そう。つまり投資家としては、パッと理解できないから投資ができるわけがありません。
丸 そうなんです、皆「分からないことに俺は投資しないよ」と言うんです。
私は逆に、「えっ?分からないから投資するんじゃないの?」と思のですが。
自分の理解を超えるからこそワクワクしてお金を出してしまうんです、我々の場合は。
それは投資家としては間違っているかもしれないけれど、自分が理解できる技術だったら、自分がやればいいと思います。
まずもって、(投資先である)オリィ研究所の技術が、理解できていないですからね。あんなロボットが果たして売れるのだろうかと。
▶距離や身体的問題を克服する分身ロボットを開発する「オリィ研究所」(ICC FUKUOKA 2017 リアルテック・カタパルト)
オリィ研究所が販売しているOriHimeというロボット
丸 メタジェンもそうですよ、あれをどうやってビジネスにするんだろうと。理解を超えています。
▶【保存版】腸内細菌解析技術で病気ゼロ実現に挑む「メタジェン」(全2回)
でも彼らは、こういう世界がある、こういうことも起きている、と見せてくれるんです。
永田 そうなんですよね。
丸 「孤独を解消できるんです!」、「茶色い宝石(便)が世界の健康のカギを握っているんです!」と言われて、こちらからすると、「はぁ……?」という世界なのですが、でも同じ部屋にいると、いつの間にか巻き込まれて熱くなっている自分がいます。
一歩外に出ると、「ん?、ウンコか……まだ遠そうだなぁ」となるのですが。
何というか、ユーグレナで起きたような流れを感じます。
永田 ミドリムシの時と同じですね。
丸 まさにミドリムシの時に起きた、その部屋の中では熱くビジョンが見えるのだけれど、一歩外に出ると冷めるという、熱量の差、エネルギーの大きさの差、ここが私はレバレッジだと思っているんです。
脳内では既にドローンが大量に飛んでいる
千葉 私にとってのドローンがそれにあたります。
慶應義塾大学でドローン社会共創コンソーシアムを立ち上げて研究をしているのですが、その研究員のメンバーというのが全員「変態」なわけですよ。
丸 何が起こるかということが、もう見えてしまっているんですよね。
千葉 そうなんです。
私も含め、コアメンバーが7人くらいいるのですが、そのメンバーの脳内では完全に、ドローンが自分たちの頭上を完全自動飛行ドローンが大量に飛んでいるんです。
本当に飛んでいるんです、イメージではなくて。
丸 飛んでいるんだよね、そうそう。
千葉 当たり前のように飛んでいるし、ドローンがリモートセンシングしたり、物を運んだり、何か作業をしたりしているんです、当然のように。
この上、このホテルの上、福岡も、東京の上空も。
海の上も、電源が開発されてドローンが単独で長距離飛行しているんです。
おまけに時々落ちたりもして、そこそこ事故も発生していると。
(全員笑)
それでも、社会が成り立っていると。そのようなビジョンが明確に見えているんです。
丸 見えているのですよね。
千葉 そう、その映像が明確にあるのに、なぜ皆には見えないのだろうと逆に不思議がっている(笑)。
ビジョンが明確にあるから、その時々に出てくる社会課題を全部解決しなくてはならないので、このようなテクノロジーが必要だね、このような法整備が必要だね、このようなベンチャーが必要だね、という具体案が出てきます。
そのおかげで、今ドローンベンチャーにとても投資がし易いですし、研究開発のプロジェクトも明確に、未来に必要となるだろうピースを研究プロジェクトにしています。
でも、この話をいくらドローン関係者以外の人にしても、全く伝わらないんですよね。
丸 温度差があると。
千葉 ドローンを飛ばして、それで一体どうするんですかね?というような反応です。
リアルテックにはお金のビジョンがない
丸 これが基本的にリアルテックのビジョンなんですよ。
通常だと例えば、売り上げや、マーケットサイズというような論点がありますよね。
我々には、お金の話は一つもないのだけれど、技術が実際に使われている映像があるんです。
これを私は「ビジョン」と呼んでいます。このビジョンがあれば、後はその絵をつくるのに必要なピースを集めていくことができるようになります。
ところが、外に一歩出ると冷えると。
千葉 そう、間違っても外では発言してはいけません、というような雰囲気です。
丸 変態扱いされますからね。
千葉 ですから、ICCカンファレンスやドローン関連のイベントで登壇しても、なるべく皆さんに伝わりやすいトーンとマナーで、ドローンのことを話すようにしています。
しかし、インナーの会議は完全に、もうドローンが飛んでいることが前提なので、断然ハイコンテクストな感じです。
井上 飛んでいるということから入ると、そこから話が始まると。
丸 インナーの話し合いは、お酒がおいしくて仕方ないですよ。
頭の中に脳内麻薬が出てしまっているから、すごい状態ですよね。
その分、外に出ると、すごく冷えますけれどね。
(会場笑)
千葉さんが20年前に思い描いていた未来
千葉 20年前に、初めて仕事をした時、社会人デビューした時に、頭の中にあったのが、日本人が全員、手の平の上でインターネットをして、ゲームをしたり、音楽を聞いたり、映像を見たりしている映像だったんですね。
1997年のことです。
その時の電話はまだ、カタカナで2行くらいの文字表示ができて、電話帳が100件くらい登録できるというような代物で、iモード以前の話なので当然インターネットにも繋がっていませんでした。
丸 そうでしたね。
千葉 たまたま社会人として初めての、最初に携わった研究プロジェクトで、インターネット携帯電話のサービスを考えるという仕事をやらせていただきました。
全部「たら・れば」の話で、もし携帯電話がインターネットに接続され、ブラウザーが載り、インターネットのプロトコルを理解して、Javaプラットフォームとかが使えるようになったら、どのようなサービスが考えられますか、どのような社会ができますか、ということを考える研究プロジェクトでした。
死ぬほど考えて、ゲームをダウンロードできるようになる、音楽を聴けるようになる、アプリケーションが動くようになる、位置情報が取れるようになるだろうと、そうなった広告も、もっと進化するのではないかとか、いくつかの大テーマを出しました。
ところが次第に、自分の頭の中に、電車の中で日本人が手の平の上で携帯電話を操作している未来の映像が出来上がってしまったんです。
間違いのない未来、こんなに簡単な間違いのない未来が来るのに、自分がやらない手はないと思い、即刻仕事を辞めて、携帯電話スタートアップベンチャーのサイバードへ飛び込んでいきました。
そこには変態がいまして、同じように妄想して、それだけで起業した変な奴らがいて、仲間に加えてください!みたいな感じでした。
丸 それが「ビジョン」ですね。
丸さん「チャラテックもカッコいいね!」
千葉 それ以来ずっと飽きずにやってきたのはまさにそこで、コロプラでもスマートフォンゲームでも、「やっときたかゲーム!」というような感覚でした。
20年経って、ようやくゲームが(自分のイメージに)追いついて来たと。
丸 それを聞くと、ゲームも何だかかっこいいですね。
千葉 そうでしょう?
チャラテックもバカにできないですよ。
丸 いきなりゲームだけが見えてしまうとチャラいと思うけれど、今の話を聞くとね、印象が変わりますね。
千葉 ビジョンですね。
携帯電話でゲームができる未来ってすごくクールなことですよ。
だって、電車の中でゲームがダウンロードできるんですから。
丸 本当にそういう世界、そのような世界観を持つ研究者をもっとラボから連れ出して、社会実装の研究をさせたいですね。
(続)
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/本田 隼輝/鈴木ファストアーベント 理恵
【編集部コメント】
ちなみに僕が考えているけれど他の人にあまり理解されないことは、アニメのキャラクターが完全に人間と同じレベルの人格を持つことですね。現在の一般人と俳優の関係と同じような形での一般人とアニメのキャラクターの関係が形成されるということです(字足らず)(横井)
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