4.AIは「創造性」や「知性」を持っているのか? – 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

4.AIは「創造性」や「知性」を持っているのか?

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「未来のテクノロジーが実現する新しいビジネスモデルを徹底議論」9回シリーズ(その4)は、ゲームでのAI活用から議論が始まります。チューニングやパターンマッチングの先に、AIが「創造性」や「知性」をもつことはあるのか? そして人間に求められるものとは? ぜひご覧ください。

ICCサミット FUKUOKA 2018のゴールド・スポンサーとして、日本マイクロソフト様に本セッションをサポート頂きました。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2018年2月20-22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 2A
未来のテクノロジーが実現する新しいビジネスモデルを徹底議論
Sponsored by 日本マイクロソフト

(スピーカー)

國光 宏尚
株式会社gumi
代表取締役社長(登壇当時)

村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表

横山 直人
フェイスブック ジャパン
執行役員 新規事業開拓 兼 パートナーシップ事業(登壇当時)

(モデレーター)

澤 円
日本マイクロソフト株式会社
マイクロソフトテクノロジーセンター センター長
サイバークライムセンター日本サテライト 責任者(登壇当時)

西脇 資哲
日本マイクロソフト株式会社
コーポレート戦略統括本部 業務執行役員 エバンジェリスト

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最初の記事
1.マイクロソフト・ナデラCEOが掲げる3つの投資領域

1つ前の記事
3.進むAI技術の民主化 − AI活用の「アイデア」が問われる時代に

本編


村上 國光さんにお聞きしたいのですが、ゲームはやはり課金が重要ですよね。

課金ポイントの設定、例えば(アイテムの)出現確率の設定など、マネタイズを軸に考えながら職人芸のようにやっているようなところも、実際にはパターンが潜んでいるんだと思います。

人の行動パターンや課金パターンなどを分析して、一番利益が出るところにチューニングするというのは、やはりAIやマシンラーニングでできたりするのでしょうか?

ゲームへのAI活用はどこまで進んでいるのか

國光 絶対にできますし、海外の会社ではやっているところもあるのではと思います。

横山 やっているところはありますね、少しずつですが。

國光 たぶん日本のゲーム会社では、どんな会社であれ、ゲームの中心となるレベルデザインなどのまさにAIが活用できそうなところが、ほぼ職人芸で作られています。

(その設定が)一番良いかどうかは、とりあえずそれでゲームを作ってみて、実際にプレイしをしてみて、というようにやりながら見出していくというやり方です。

写真左より西脇氏、國光氏、村上氏

村上 それこそ、キャンペーンを実施している時の数字を計測しながら、ダッシュボードでチューニングをして、というのをずっと繰り返しているわけですよね。

國光 そうです。

けれども、どこをどう考えても、そのチューニングなどはAIがやった方がよさそうです。

 そうですね。

西脇 そうしたニーズはすごく多くて、マイクロソフトもXbox(家庭用ゲーム機)を開発・販売していますが、「Xboxのゲームの中で使われているAIを、うちのゲームに使わせて欲しい」というニーズはやはりあります。

國光 マイクロソフトのXbox用のゲームには、どのレベルまでAIが活用されているのですか?

西脇 それはゲームコンテンツによってバラバラですね。

日本マイクロソフト株式会社 コーポレート戦略統括本部 業務執行役員 エバンジェリスト 西脇 資哲氏

我々はプラットフォーマーですので、やはりユーザー管理であるとか、脱会管理、あるいは課金の動向であるとか、その辺りへの応用がベースになります。

しかし、ゲームクリエーターとしては、もっともっと特化したAIが欲しいわけですから、その部分は、(各ゲーム会社が)それぞれ勝手にやっているわけです。

それに対して、「マイクロソフトさん、プラットフォームをやっているのだから、クラウドでうちでも使えるようにしてくれませんか」というリクエストは結構あります。

國光 きっと、そのゲームが面白いか、面白くないかという部分も、AIで最適化できてしまいますよね。

 そうですね、あとは見栄えでしょうか。

「Forza(フォルツァ)」というレースゲームがあるのですが、ガーンと車同士がぶつかった時の壊れ方の計算には、裏側では当然AIが使われています。

必要なのは「衝撃を受けたらどうなるか」という自動車メーカーがテストするような観点ではなくて、そこにゲーム的なテイストを加えられているかという観点です。

そのような見栄えやユーザーのエキサイトメント(興奮)の部分などは、計算されて、最終的にウケがいい最適なコンテンツの形に落とされるので、ここもAIができる部分のはずです。

「今までなかった体験」を生み出す

 ただ1つ付け加えたいのが、「機械に置き換えられる仕事」というのが最近よく話題になりますよね。

でもクリエイティブネス(創造性)を求められる仕事は無くならない、というか、「無くなるべきではない」と言った方が正確なのかもしれませんが、そこの部分はやはり人間が付け加えていきたいところですよね。

まさにゲームコンテンツなどのクリエイティブネスは、人がずっと守ってもいい領域なのかもしれないと思います。

國光 それについては「クリエイティブネス」の定義が必要ですね。

今は、クリエイティブネスというのもどちらかというと職人芸的な感じで、ゲーム内のパラメーターを調整したりとか、打撃感を調整したりとか、そういう感じですよね。

 そうですね。

西脇 それを課金サービスとして、他の企業に使ってもらうというような発想はどうでしょうか?

國光 自分たちがそれを作って、ということですが?

西脇 はい、ベンチャー企業にとっては、そういうのもあってもいいかなと思います。

國光 もし本当にAIを使って何かをやるとして、僕がより興味があるのは、これまでとは違う楽しみ方をどう実現できるか、ということです。

今現在、職人が頑張ってできているところをAIが代替しても、ユーザーにとっては関係ないですよね。

今でもできているのですから。

だから、ユーザーないしはお客さんにとってのバリューアッド(付加価値)というのはそんなにありません。

それは、どちらかというと僕たちがやるというよりは、マイクロソフトさんなどが作って、営業提案してくれればいいのかなと思います。

 そうですね。

株式会社gumi 代表取締役社長(登壇当時) 國光 宏尚氏

國光 今までできなかった遊び方、これまで全くなかった楽しみ方を生み出すことの方が重要で、どうやったらそれを実現できるか、ということはある程度見えています。

今のゲームには事実上のクラウドゲームというのはありません。

例えば「モンハン(モンスターハンター)」でも1個の限られたマップの中に入ったらこのエリアで敵がこう動いてきて、という感じのAIを組んでいるだけに過ぎません。

なので、1個の地球のような世界で、バタフライ・エフェクト(※)のように、ここで何かが起こったら、こっちに影響を与えて、という感じのゲームはありません。

▶編集注:バタフライ・エフェクト(バタフライ効果)とは、ある系の初期条件に加えたわずかな変化が、その系の後の状態に大きな影響を及ぼしてしまうという現象。気象学者のエドワード・ローレンツの予測可能性に関する講演が由来とされる。(参考:Wikipedia

しかしクラウドゲームにAIを使えば、今までのように限られたマップの中だけでイベントが起こるのではなく、1つの世界の中である場所で起こったことがこちらに影響して、さらに別の場所にも影響して、というようなことができるようになります。

クリエイティビティに関して言うと、そのような「今までなかった体験」を作るということがより重要になってくるような気がします。

 そうですね。

村上 モンスター同士が勝手に繁殖してしまったりね(笑)。

國光 そう、さらにそこに「Minecraft」のような世界観がくっついて、こっちの方で木を刈り過ぎて、木が無くなったところに街ができ、そのおかげで環境が破壊されて、となったら鳥が出てくるとか。

村上 あのBエリアだけに生えている草が、こっちでも生えてる、みたいな!

國光 そうそう(笑)。

西脇 何か違うゲームになって来ている……!

村上 面白いですよね、そういうの。

ただそこで思うのが、今のマシンラーニングの延長線上にあるというのは、とはいえパターンマッチングですよね。

つまりこの延長線上には、いわゆる「知性」とか「知能」というのはやはり無いわけです。

今のAIの延長線上には「知性」がない?

村上 これはたぶん、今回のICCサミットだと石川さんや安宅さん(石川善樹氏、安宅和人氏)が登壇する「知性の核心とは何か?」のセッションがその手の話になると思いますが、(現状のAIは)あくまでパターンマッチングだと思うんですよね。

リンクトイン・ジャパン株式会社 日本代表 村上 臣氏

とすると、AIが適用できるものというのは「パターン化」されるものですよね。

パターン化し得るものには私たちが言うところの「AI」が適用できる一方で、そこに至る前の段階はやはり人がやるしかないと思うのですが、その認識は合っていますか?

 僕はそう思っています。

ただ、その前段階の部分というのはある意味、仕事をしていてもつまらない「作業」の領域とも言えるので、そこの部分はとにかくAIにやらせてしまうと。

AIは文句を言わないですからね。

村上 パターン化できていて「作業」になるものは全部自動化ということですよね。

 そうですね。

村上 いわゆる、AIに仕事が奪われる状況になりますよね。

 そうすると、結果的に他のところに割く時間が生まれてくるという感じですかね。

國光 例えば最近流行りのAlphaGoからAlphaZeroみたいな流れでいうと、今までは囲碁などでAIを人間に勝たせるためには、過去の棋譜のようなもの、つまり今まで打たれたデータを学ばせて、その中から(勝つための)パターンを見つけて、というやり方でした。

それが今ではAIが自分たちで学習し始めていて、最終的には人による打ち手も要らずに勝手に自分たちの中で打ちまくって強くなる、という流れもできつつあります。

写真左から、國光氏、村上氏、横山氏

村上 そうですね、彼らのAIはマシン同士でひたすら何万回と対決させて、経験を積ませるという強化学習のさせ方をしています。

國光 そういう意味で、AIで早く改善するべきなのは交通渋滞とかですよね。

(信号機が)なぜここで赤になるんだ!みたいに感じることがあります。

もし信号機の調整をAlphaZeroに学習させたらすぐに……

村上 その点は中国がやはり今やフロントランナーですよ。

AIの普及が猛スピードで進む中国

村上 中国のタクシー配車サービスに滴滴(ディディ)というものがありますよね。

▶参考:中国・滴滴出行、ソフトバンクとタクシー配車で連携 (日本経済新聞)

滴滴は各自治体と連携して信号も含めた交通渋滞などの情報を収集し、いわゆる最適化問題に取り組んでいて、自分たちのAIを使ってこうしたらいいのではないか、というようなことを各都市に提案し始めています。

西脇 中国は実際、AIの活用を前提として新しく街づくりをしていて、その際に、信号機のシステムから全部変えているんですよね。

村上 変えていますね。

西脇 もともとのベースは物流の最適化だったのですが、人間の居住環境の改善へと、AIの応用先が変わってきているんですよね。

横山 中国は今、非常に熱くて、AIがものすごいスピードで普及していく様子を皆がチェックしていると思います。

今までは、カリフォルニアの大きいテクノロジーカンパニーが、いろいろな分野でリードしてきたのですが、そのようなダイナミズムが変わってきているというのが、本当にこの3年くらいの間に起こっている変化だと思いますし、中国の方は皆とても勉強していますよね。

写真左から村上氏、横山氏

村上 そうですね、中国では国を挙げて人材を育てていますしね。

LinkedInでは「Workforce Report(ワークフォース・レポート)」と題した各国の労働環境に関するレポートを発表しているのですが、この間中国版を出しました。

▶参考:US・UK版 LinkedIn Workforce Report

その中では、中国ではAIやディープラーニングを専門とするエンジニアは北京に最も集まっているというデータが出ています。

 それは、自然発生的に集まっているものなのですか?

村上 やはり北京大学などを中心に、大学ドリブンで集まっているようです。

國光 競技プログラミングの大会などでも、やはり中国の会社は強いですよね。

 昨日たまたまなのですが、シンガポールの国立大学である南洋理工大学(Nanyang Technological University)のMBAコースを受講している学生が僕のセッションを聞きにきてくださったのですが、40人のうち半分が中国人でした。

シンガポールの大学なのですが、中国からも学生が多く集まっているようです。

まさにAIなどの研究がかなり進んでいる大学で、中国人の学生も引き寄せています。

日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長 サイバークライムセンター日本サテライト 責任者(登壇当時) 澤 円氏

國光 僕はAIに関してはおそらく、ここからはどんどん文系の時代になってくるだろうと思っていて、AIエンジニアはそんなに必要なくなるのではないかと考えています。

村上 AIプラットフォームがグローバルで公開されていけば、それを使えればいい、という発想ですよね。

國光 そう、使えばいい。

ディープラーニングなどの部分は、むしろそこが一番最初にAIにディスラプト(破壊)されるのではとも感じています。

AIに何ができて何ができないのかを理解して、その上で、AIを使ってどのような新しいサービスができるか、ということを考えていくのが重要なのではないでしょうか。

村上 だからこそ、(2020年からの)小学校でのプログラミング教育の必修化というのは正しいと思うんです。

プログラミング・スキルは問題解決に役立つ?

村上 結局のところ、創造力というのは既存のものの組み合わせでしかないですよね。

だとすると、テクノロジーの組み合わせで問題を解決する時、その解決のアプローチというのはプログラミングそのものです。

だから、やはり文系の人であってもある程度プログラムを書けるように、手続き型言語(※)の構造を分かっていないとたぶん駄目なんだろうなと思います。

▶編集注:手続き型言語とは、プログラムの上から順番に処理を実行していくプログラミング言語のこと。代表的なものに、COBOL、Fortran、C言語などがある。(ASCII.jpデジタル用語辞典

そう考えると、一般教養の中に、国算社理に加えてプログラミングや英語が入ってくるのが、今後の社会における教育の必然なのかもしれません。

プログラミングを教える人材をどう確保するのだろう、と心配になりますけどね。

西脇 先生達こそプログラミングを学ばなければなりませんからね。

横山 実際に一番困っているのは先生方みたいですね。

西脇 先生向けの勉強会を開催しくれと、マイクロソフトにもよく要望が寄せられます。

村上 そこでやはり副業解禁ですよ(笑)。

SIerの人たちが、地元の小学校で週1回一コマ、バイトをすればいいのではないかと思います。

西脇 ではそろそろ技術の話に戻しましょうか(笑)。

村上 戻しましょう(笑)。

(続)

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続きは 5.MRデバイスに関する誤った考え方 −「何ができるか」より「何を解決したいか」 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/浅郷 浩子/尾形 佳靖/鈴木ファストアーベント 理恵

【編集部コメント】

ふと「シーマン」のような育成シミュレーションゲームに現在のテクノロジーを導入したら、面白いゲームができそうだなと思いました!(古くて恐縮です)。次回は、本セッションのもう1つのテーマ「MR(複合現実)」についてマイクロソフトの澤さんが解説します。ぜひ引き続きご覧ください!

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