4. 農家の収入への影響度は、生産技術の改善より流通コストの削減の方が大きい – 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

4. 農家の収入への影響度は、生産技術の改善より流通コストの削減の方が大きい

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「ITの力で農業ビジネスを変える」6回シリーズ(その4)は、農作物の物流について。フードマイレージを小さくするために地産地消すべきという考え方と、適地適作をして採れた農作物を遠くに届けるべきという考え方があるなかで、どのように組み合わせていくのがいいのか、登壇者が徹底議論します。ぜひご覧ください。

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18日〜21日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

ICCサミット FUKUOKA 2018のゴールド・スポンサーとして、寺田倉庫様に本セッションをサポート頂きました。


2018年2月20-22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 5E
ITの力で農業ビジネスを変える
Supported by 寺田倉庫

(スピーカー)
菊池 紳
プラネット・テーブル株式会社
代表取締役

栗田 紘
seak株式会社
代表取締役社長

平林 聡一朗
株式会社ベジオベジコ
代表取締役

安田 瑞希
株式会社ファームシップ
代表取締役

(モデレーター)
岩佐 大輝
株式会社GRA
代表取締役CEO

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本編

栗田 野菜のECはトレンドと言われていますよね。

皆さんに質問したいのですが、ユーザーの今後のニーズとして「フードマイレージ(食料の輸送量と輸送距離を表す指標)」という言葉があり、野菜の物理的な配送距離が世の中のトレンドとして短くなっていくべきだと思っています。

オイシックスさんやベジリーさんは、かなり遠方からキュレーションしてストーリーのあるものを都心の人に届けていくというモデルですよね。

それが世の中のマクロトレンドとどう整合していくのか、皆さんどうお考えですか?

野菜は地産地消されるのが理想なのか?

プラネット・テーブル株式会社 代表取締役 菊池 紳氏

菊池 フードマイレージというより、その野菜は「いつどこで作るのが、適地・適期・適作なのか」ということだと思いますね。

消費者がいつ何をほしいのかということと、いつどこで何を作れるのかということを考えると必然的に長距離で運ぶケースも出ます。夏場の葉物は、暑すぎる南よりも、涼しい北や高原地が適地だよね、とか。

ですが、例えば北海道で切った軟弱野菜やハーブを、クール宅急便で送る理由が僕には全くわからないんですよね。

はっきりいうと、同じ涼しい場所でも長野や新潟の方が東京に近いですし、江戸川区で植物工場建てて作ってくださいと思いますし、もっというと家やお店のプランターで栽培してもいいのでは?と思う作物もあります。

そういう意味でいうと、そもそも運送に向かないものは消費地の近くで作ることが適地・適作だし、一方で北海道のような巨大な露地スペースでやらないと採算が合わない芋や根菜類などもあると思います。やはり都内でジャガイモを大量に育てるのも限界がありますし。

結果的に、誰かが決めた指定産地や大産地という先入観を捨て、栽培方法も植物工場あり、ハウス栽培あり、露地栽培あり、規模も大規模から小規模まで、分散して適地・適期・適作を進めることで、平均的に運搬距離が短くなるのが理想だと思います。

安田 植物工場の特徴は「どこでも作れる」ということですよね。もちろん難しいことは難しいですが。

株式会社ファームシップ 代表取締役 安田 瑞希氏

そういう意味では、私たちは、人間がどこに住むのかをまず考えます。

成熟国家、先進国、発展途上国であっても人はある程度まとまって住みますよね。

特に成熟国家では、人口は都市部に集中してきます。

そうなるとその近辺で作るのが私たちの役目かなと思います。

仮にみんながバラバラに住んでいるのであればバラバラで作ればいいですし。

とはいえ日本は小さな国なので、九州の野菜が東京に届くのもいいと思いますし北海道の野菜が東京に届くのもいいのかなと考えています。そこはどうにかなるという感覚です。

菊池 VEGERYをやると、例えば岡山県や岐阜県とか他の地域から、商品を送って欲しいと言われませんか?

うちもあるんです。でも、東京から送るのは鮮度、時間、コストの問題もありますし、さっきのフードマイレージの議論で言えば「地産地消」であるべき、岡山へは岡山のモノを配るのが良い、となりますよね。

例えば某大手流通さんは、全国の食材を海老名のセンターに一度集約して、そこでピッキングしてから宅配ボックスでまた全国各地に送っています。

これは僕らの悩みでもあるんですけど、広島のレモンを東京に集めて、また広島に送る、っていうことをどう考えれば良いと思いますか?

平林 僕たちは、エリア内の注文は1時間で届けますが、エリア外は宅配業者と連携して翌日発送でやっています。なぜかというと、ランチェスター戦略は局地戦を行える拠点をいくつ増やせるかがポイントなので、次どこの拠点でやるか意識してテストをしているからです。

宅配をするときにどこの声が多いかというと、まさに岡山の注文もありますし、僕たちの予想では例えば横浜が多いと思っても神戸の注文がすごく多いということもあります。

すると神戸でやってみようとなります。テストをしながらエリアを増やしていきます。ニーズは全国からあります。

私自身宮崎生まれということもあって、宮崎の物をみんなに食べてほしいという思いありきでやっているので、植物工場などが増えていくにしても、自分達は地場の物を売りたいという意識が強いです。

宮崎に来たことがある方いますか?意外と多いですね、ありがとうございます。

宮崎は縦に長いですが横にも実は長いです。

今後30年で人が住む場所は海沿い、例えば延岡、宮崎、日南、都城といったところに集中してくると思います。つまり人がどんどん動いていきます。

というのも小さな町で生活しても病院が1つ潰れ、小学校が1つ無くなり、それこそ子どもが怪我をした時に1時間かけて隣町の病院に連れていくかというと、それならば引っ越そうという選択になりますよね。

そうした時、敷地がどんどん余っていきます。その敷地を使って野菜を作っていくことが地方を観点とした時の次の切り口だと思います。

そこで作ったものを世界に売ろうとか、人がいるところに持っていこうという考え方になるのではないでしょうか。

弱ってきた産地の物流をどのように支えていくのか

写真左からプラネット・テーブル 菊池氏、seak 栗田氏

岩佐 最近ニュースでも見ますが、例えばゆうパックの取扱量が前年比120%という時代になってきていますよね。するとBtoCでもBtoBでも輸送費がポイントになってくると思いますが、その辺りについてどうお考えですか?

菊池 まず、ラストワンマイルという意味では平林さんと同じ考え方を持っていて、弊社も1台の車で40軒以上、多い時で80軒ほど配送しています。そういう意味でラストワンマイルは移動する店舗と捉えて、それぞれが採算が取れないといけないと思いますね。

一方一般的にはあまり使われていませんが、僕らが社内で使っているのが「ファースト・ワンマイル」という言葉です。

産地側での集約機能という意味では、JAこそ最大の資産です。地域で作らせたものをまとめて1カ所に集約し、トラックでピストンで都市部に送る、この能力に関しては世界で最も優れたシステムで、日本が国を挙げて築いてきた重要なインフラだと思っています。

ただこのせっかくの機能は、2つの大きな課題を抱えています。1つは多様な物や、誰の荷物も扱えるようになってはおらず、指定品目だけ扱うようになっている場合が多い点です。

もう1つは、積載量自体が減っていて、便をどんどん減らしている、という状況です。

プラネット・テーブルの本質は、物流などのインフラ・サービスの構築なので、特にこのファースト・ワンマイルをすごく意識しています。

僕たちは今、各地の生産者さんに声をかけ、「週何回、何曜日の何時までに持ってきてくれたら、まとめて送る便をご用意します」と産地で集めてもらっています。

この間ちょうど宮崎でも、大手宅配便会社が1日2回取りに来てくれていたのが、1日1回しか来てくれなくなった、という話を頂きました。田舎に行けば行くほど、集荷や配送の便数はどんどん減っています。そういう意味では、農家の衰退以上に、「作っても、送れなくなる」地域物流の衰退の方が怖いと思っています。

岩佐 菊池さんの場合、トラックも仕立てて自社網を構築しているということですか?

菊池 そうですね。自社でやる場合もありますし、委託している場合も多いです。

岩佐 最近ニュースでも見ますが、例えばゆうパックの取扱量が前年比120%という時代になってきていますよね。するとBtoCでもBtoBでも輸送費がポイントになってくると思いますが、その辺りについてどうお考えですか?

パターンとしては3つほどあって、1つは集荷場を持っている方のところに、周辺の生産者さんに持ち込んでもらうというやり方です。

2つ目は自治体と組んで、空いているスペースや直売所を集荷場として使わせて頂くこと。

3つ目はミツバチのように地域で集めてくる人を、僕たち自身で用意しています。これは実験的に約1年やっていますが、やはり地域で集める人がいることは喜ばれますね。

生産者は減っていますが、それ以上に実は「物流が無いから、出せない」「物流費を考えると価格が合わないから、買ってもらえない」というケースも多いのです。とはいえ、生産者だけでなく物流を担う人も苦しいので、どちらもマネタイズできて、続けていけなければ共倒れになってしまいます。

ですので、僕は「物を運ぶ」というのは「農業」と同義と考えています。

ラストワンマイルの配送をどのように効率化するか?

seak株式会社 代表取締役社長 栗田 紘氏

栗田 toCでもtoBでも、Uber POOL(相乗りサービス)的な考えは許容されるのではないだろうかと思っています。

例えばタクシーだと最適なルートを回るために、ここまで歩いて来てくださいとなりますよね。

ラストワンマイル届け切らなければいけない、というのが配送では重いと感じています。

例えばベイエリアでGood eggsさんがやられていたような、お客さんに商品を取りに来てもらうピックアップエリアを設けることによって、より配送が最適化されたり、タイム性が増したり、配送料が下がったりするのではないかと思います。

そういうニーズはあるのでしょうか?

菊池 あると思います。

実際マンションの下に持ってきて、住民に取りに降りて来てもらうということでもいいと思いますし、駅前でみんなに受取ってもらうということでもいいと思います。

toCは、やりやすいと思います。toBはお店の都合や衛生管理の課題もありますが。

生産技術の改善より流通コストの削減の方が農家の収入へのインパクトが大きい

平林 そうですね。うちの場合も、宅配先のマンションの中には、4回くらいインターホンを押してやっと上に上がれるところもあります。

下に降り来てくださるお客さんも中にはいらっしゃるんですが。確かフードデリバリーの楽天デリバリープレミアムさんが、近くに来たら取りに来てもらうモデルをされていたと思います。

それから補足すると、うちはなぜ宮崎や九州の食材が多いかというと、自社で仕入れからやっていて、毎日自分たちで農家さんに野菜を取りに回って、宮崎の1カ所に集約して宮崎の拠点から築地や太田、豊洲に野菜を送るモデルをやっているからです。

株式会社ベジオベジコ 代表取締役 平林 聡一朗氏

菊池さんがおっしゃるように、流通コストをいかに下げるかが実は非常に重要です。

特に九州に関しては野菜の価格の7割を占めるともいわれる流通コストをいかに下げて農家さんへの還元率を上げるかが重要です。

農産物の生育にかかる費用をIoTで改善しても、残りの7割を占める物流コストを下げないと農家さんの利益は原価プラス1円、2円しか上乗せできません。

おっしゃられた通り、農業と物流はかなりリンクしていると思います。

岩佐 ありがとうございます。

先ほど適地適作という言葉を頂きましたが、日本は農業政策から変えないといけないのではないかと考えています。

例えば今の日本の農政予算は都道府県や地方自治体単位に配賦されているので、それぞれの地域で品種改良をしたりしています。

例えばイチゴでいうと、この狭い日本に約300種の品種があります。しかもイチゴは冬暖かい所で作った方がいいのに、ほとんど曇りの地域で作る品種まであります。もちろんおいしいです。

なので、国家戦略的な議論でやっていかないと、我々だけでは適地適作を実現するのは難しいのではと最近思っています。

(続)

本セッションのモデレーターを務めた頂いた、GRA 岩佐 大輝さんの著書もぜひご覧ください!

『絶対にギブアップしたくない人のための 成功する農業』(岩佐 大輝/著)、朝日新聞出版

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編集チーム:小林 雅/本田 隼輝/浅郷 浩子/戸田 秀成/KYOU MARKETING

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