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2.「ワンバイナリーで開発すべきか否か」海外展開を見据えたアプリ設計の考え方

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「世界で勝ち抜くプロダクトを創り上げる」6回シリーズ(その2)では、世界で勝ち抜くためのアプリ開発において、その設計をどこまでローカライズするべきかを議論します。スマートニュースが“ワンバイナリー”で開発するのはなぜか? ぜひご覧ください!

▶ICCパートナーズではコンテンツ編集チームメンバー(インターン)の募集をすることになりました。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。

ICCカンファレンス KYOTO 2017のプラチナ・スポンサーとして、ジョブカン(株式会社Donuts)様に本セッションをサポート頂きました。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18日〜21日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをご覧ください。


【登壇者情報】
2017年9月5-7日開催
ICCサミット KYOTO 2017
Session 10A
世界で勝ち抜くプロダクトを創り上げる
Supported by ジョブカン

(スピーカー)

柄沢 聡太郎
株式会社メルカリ
執行役員 VP of Engineering (当時)

鈴木 健
スマートニュース株式会社
代表取締役会長 共同CEO

舘野 祐一
WAmazing株式会社
共同創立者CTO (当時)

(モデレーター)

松岡 剛志
株式会社レクター
代表取締役

「世界で勝ち抜くプロダクトを創り上げる」の配信済み記事一覧


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1.「世界で勝ち抜くプロダクト」を目指せ!スマートニュース・メルカリ・WAmazingの海外戦略を徹底解剖!

本編

注:当記事は2017年9月に開催されたセッションの書き起こし記事です。記事内で紹介される各事業の状況は開催当時の情報に基づきます。

松岡 「世界で勝ち抜くプロダクトを創り上げる」というテーマで議論をする前に、いくつかスコープを整えたいなと思います。

まずは「世界で勝ち抜くとは何か」について、皆さんの定義を合わせたいと考えています。

お三方とも、世界で勝ち抜くという目標を持たれて今もモノづくりをされていると思うのですが、会社の中で定性的あるいは定量的に、「ここまで来たら、世界で勝てたと言えるだろう」といった目標のようなものはありますか?

それとも、ふわっとしている感じですか?

「世界で勝ち抜く」とはどのような状態か?

柄沢 メルカリの場合は、コーポレートのミッションが「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」ですので、会社の活動自体がそれを表しています。

具体的にプロダクトという意味では、「メルカリ」からスタートしたCtoCのフリマアプリというのがあって、日本では結構使って頂いています。

そういった状況を各国へ展開して日本と同じようなムーブメントを作りたいということと、最終的には国境も超えていけたらいいなということは、会社の大きな目標です。

舘野 お二方(メルカリ柄沢氏、スマートニュース鈴木氏)の場合は、まず日本でできた良いプロダクトをグローバル展開されるという形だと思いますが、弊社の場合はインバウンド、つまり日本に旅行に来られる方向けのサービスです。

写真左から、柄沢氏、舘野氏、鈴木氏、松岡氏

まず日本のユーザーにサービスを提供してというのではなくて、外国人旅行者にサービスを提供するので、弊社の場合は「世界中から来る人のサービスのナンバーワンになること」が、世界で勝ち抜くということの定義だと思っています。

2020年に約4,000万人の外国人旅行者が訪日すると言われています。

対外的にも出している数値ですが、まずはそのうち500万人にWAmazingを使って頂くことを目指しており、外国人旅行者の8人に1人にWAmazingを使って頂ければ、ある意味でプラットフォームになれたと言えると思います。

マイルストーンとしては、2020年に4,000万人中500万人がWAmazingを使って日本での旅行を楽しんでいるという状況を目指しています。

松岡 柄沢さんのお話ですごく面白いなと思ったのですが、日本においてはもうCtoCは当たり前になっていて、既にマーケットができている。

新しくグローバルマーケットを創るにあたっては、日本と同レベルに浸透した国がどれだけ増えるかということが、目標や定義になっているということですか?

柄沢  定義というのはちょっと難しいですけど、感覚値としてはそう思っています。

株式会社メルカリ 柄沢 聡太郎 氏

結局日本でもどの国でもそうなのですが、同じようにCtoCでモノの売り買いができるプラットフォームとしては、eBayや、日本だとヤフオク!などの既存プレイヤーがいます。

そこから「フリマ」という文脈でまた少し違った体験をお客様に与えることによって、モノやお金のやり取りをもっと活性化していくというのは、日本の中では需要があるということが分かりました。

アメリカなどにも、やはりそういったスタートアップはあります。

ですから、例えば「eBayではなくてメルカリだよね」とか、または東南アジアにもヨーロッパにも同じようなアプリがありますが、それらではなくてメルカリだよねという状況を作っていくというのが、まず1つのマイルストーンになるかなとは思っています。

松岡 各国で全部置き換えていって、一番になったら世界で勝ち抜くプロダクトだということですね。

柄沢 そうなった時には、世界で勝ち抜いていると言っても過言ではないのではないでしょうかね(笑)。

松岡 ありがとうございます。

鈴木さんもそういった目標がおありなのでしょうか?

メディア企業は「圧倒的ナンバーワン」を目指すべきか?

スマートニュース株式会社 鈴木 健 氏

鈴木  僕らが「SmartNews」をリリースした時には大ヒットするとは全く思っていませんでしたが、最初から世界に出たいという思いはありました。

SmartNewsを出す前に実は「Crowsnest(クロウズネスト)」というサービスでSXSW(※)に出展したり、元々世界を意識してはいたのですが、こんなに大ヒットするなんて当時は思っていなかったので、あれよあれよという感じではあります。

▶編集注:サウス・バイ・サウスウエスト(South by Southwest:SXSW)は、毎年3月にアメリカ合衆国テキサス州オースティンで行なわれる、音楽祭・映画祭・インタラクティブフェスティバルなどを組み合わせた大規模イベント。(Wikipediaより)

「勝ち抜く」ということについては、僕らはニュース・アグリゲーターというジャンルをやっているのですが、難しいのは、ナンバーワンになってドミナント(独占的)になるのが本当に良いことなのか、ということです。

要するに、競争相手がいるからこそ僕ら自身もなるべく発見のあるコンテンツを届けていこうとしていて、常に良い意味での競争相手がいるというのは、すごく健全だと思っています。

ドミナントになってしまうと、メディアというのはとても怖い訳ですよ。

そういうことは歴史的にも幾度となく繰り返されているので、プレイヤーが多様にたくさんあるという状況自体は、僕はすごく健全だと思っていて、その上でなるべく多くの人に使って欲しいと思っています。

良いものを作っているからたくさんの人に使って欲しい、というのは当然なのですが、自分たちが圧倒的にナンバーワンになるということが目指すべき世界なのか、というのは疑問です。

例えば「インターネットエクスプローラ」がウェブブラウザのシェアを独占していた頃には、本当にブラウザの進化があったのか、といった話もあります。

やはりきちんと進化があり、あとはメディアさんから見た時にきちんと競争原理が働いていて、そこで良い関係を持てることが、健全なエコシステム全体に貢献していくうえですごく重要だと思います。

その一端を担えるというのがすごく重要だと思います。

とはいえ、たくさんの人に(サービスを)使って欲しいと思っています。

ここにいる登壇者は皆、スマホアプリ関係ですが、いわゆる“Web”の時代というのは世界進出は難しかったですよね。

海外の人たちに使ってもらうサービスを日本からやっていくのはものずごく難しかったのですが、やはりアプリができてから、AppleさんとGoogleさんがそのレイヤーをストアとして整えてくれてできるようになったのです。

これがすごく大きかったのではないかなと思いますね。

One App, One Binary? 世界展開をめざすアプリ設計

柄沢 先ほどWAmazingさんが香港、台湾といったローカルのAppストアにしか公開していないとお話されていましたが、「メルカリ」でも各国で展開するにあたって、日本向けのAppストアとアメリカ、イギリスのAppストアでは別々のバイナリー(※)を出しています。

▶編集注:ここで言う「バイナリー」とはバイナリーコード(プログラム)を指す。文脈としては、「メルカリという同じサービスではあるが、プログラムの中身としては国ごとに別々のソフトウェアとしてリリースしている」ということになる。

スマートニュースさんはそこをどうされているのですか?

鈴木 「SmartNews」はワンバイナリーなんです。

これについては社内でも色々と意見があるのですが、今のところ僕らはワンバイナリーでやっています。

というのは、やはり扱っているものがコンテンツなので、なるべく1つのアプリの中に統合して、世界中のコンテンツを世界中の人に届けられるといいなと思っています。

その時にバイナリーが分散してしまうと、「届かないコンテンツ」というのが生まれてしまいます。

最終的、究極的には、僕らがアラビア語のコンテンツを日本語に翻訳して読めたりしてもいいと思っています。

そういうことを考えた時に、色々と社内で意見がありますが、1つのバイナリーでやっていった方がやりやすいと思っています。

柄沢 色々と意見はありますよね。

鈴木 開発のスピードとかを考えると、別のバイナリーの方がやりやすいですよね。

イギリスとアメリカと日本でユーザーの振る舞い方などが違うので、別バイナリーのメルカリさんを見ていると、開発のスピードが速くて羨ましいなと思うのですが、どうなのですか?

柄沢 それはアプリの特性によっても変わるなと思っていて、メルカリの場合は、ECかつ今のところその国のローカルでのやりとりしかされないというのは、当然言語や通貨の壁もあるからです。

もちろん将来的な理想はまた別にして、現在のところ、アメリカのユーザーと日本のユーザーとの間では取引がないですし、エスクロー(escrow)という、1回お金を預かるフローを取ることによって安全性を確保している中で、配送や決済の繋ぎ込みはかなり重要になってきます。

そうなってくると、ローカルごとに挙動をカスタマイズしなければならないことがかなりあり、特に決済・取引・配送周りはその国によって全く違うので、そういう意味でバイナリーを分けていくというのは最初に取った判断としては正しかったと思っています。

Amazonさんなども、最近は1つになっていたのですが、途中まで分かれていました。

ミニマムでその国に合ったカスタマイズをしていくというのは、その時点でやらなければならなかったことの1つだなと思いました。

鈴木 なるほど。WAmazingさんはどのようにお考えでしょうか?

サービスの使われ方は、ユーザーの文化的背景に左右される

WAmazing株式会社 舘野 祐一 氏

舘野 現在提供しているtoC向けの「C」のユーザーとしては、日本の方は基本的にゼロで、香港・台湾の方々に使われているという感じです。

そこの部分のグローバル化については前職でも考えてやっていたのですが、やはり難しいのは、特に日本でビジネス的に成功してしまうと、そのモデルを変えることができないという点です。

そして、グローバルでは全く必要ないような機能まで付いてきてしまうのです。

ですから、そこの部分を分離してやっていった方がいいのか、それともある意味痛みを伴うけれども分離せず、少し巨大なバイナリーになるけれども、開発のしづらさなども考えてそれでやっていった方がいいのか、というのは判断の別れるところだと思います。

スマートニュースさんは、それらを総合的に含めてワンバイナリーの方がよいと判断されて、そうされているのですよね。

鈴木 今はアジアで使われている訳ですが、将来的に、例えばヨーロッパやアメリカに展開する時には、別々に展開していかれるのですか?

それとも1個のアプリでワンバイナリーでされますか?

舘野 そこはコンテクストというか、組織の状況やその時のサービスの作り方によって全く変わってくるのかなと思っています。

鈴木 まだ決めていらっしゃらないのですか?

舘野 そうですね。

ですから、どちらもあり得ると思うんですよ。

例えば弊社の場合は観光がメインなのですが、本当にドメスティックにしっかりと事業を展開していかなくてはならない観光産業の場合、バイナリーを切って各種色々なところの速度に合わせて展開した方がいい、という考え方もあるでしょう。

あるいは1個のパッケージを作っていって、ローカルごとのコンテンツは出しつつある程度汎用的なコンテンツを出していくことができるかどうかは、その時々のモデルというか、その時の状況、感覚によってすごく変わってくるのではないかと思っています。

鈴木 どこの国の人かによって、観光文化も結構違いそうですよね。

柄沢  そうですね、それは気になりますね。

鈴木 皆さんの事業でもそうなのですが、やはりグローバルに提供していくと、一人ひとりのユーザーさんが持っている文化的背景によって、使われ方が全く違ってきますよね。

舘野 そこの部分を事業展開・サービス展開をしていく上で、例えばアメリカだとメディアの考え方が日本と全く違いますよね。

鈴木 全く違いますね。

舘野 その辺をどのようにキャッチアップして事業やサービスに活かしていくか。

メルカリの場合もやはりそうですよね。

柄沢 そうですね。

舘野 メルカリがどのようにサービスを展開しているのかというのは、僕自身すごく気になるところですので、ちょっとお尋ねしたいです。

松岡 せっかくなので、この流れで教えてください。

柄沢 ちなみに、「世界で勝ち抜く」ことの定義は大丈夫なのですか?

松岡 もうあきらめましょう(笑)。

「世界で勝ち抜く」ことの定義は、少なくとも3社とも異なっていて、三国志の「天下三分の計」のように天下はそれぞれ違うのだという認識の下、この後の議論を楽しんで頂ければと思います。

柄沢 そうですね。

松岡 ちなみに、この後どういう展開を打ち合わせしていたかというと、「何を・どうやって・誰と」といった話をしていこうということでしたので、基本的に筋は通っています(笑)。

(続)

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続きは 3. クレカを複数枚登録できないECサービスはありえない!? メルカリが米国進出で直面した文化的ギャップ をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/本田 隼輝/尾形 佳靖/戸田 秀成/Froese 祥子

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