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2.「5G時代」はスマホ片手に量子コンピューターにアクセスできる時代!?

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「AI/量子コンピューター/IoT/ブロックチェーンを徹底議論!」9回シリーズ(その2)は、本セッションのメインテーマの1つ「量子コンピューター」について、その現状や課題を議論します。来るべき5G時代には、量子コンピューターはどこまで身近なものになるのか? ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをご覧ください。

ICCサミット FUKUOKA 2018のゴールド・スポンサーとして、日本マイクロソフト株式会社様に本セッションをサポート頂きました。


【登壇者情報】
2018年2月20-22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 7A
AI/量子コンピューターなど最新注目分野を議論
Supported by 日本マイクロソフト株式会社

(スピーカー)

小笠原 治
株式会社ABBALab 代表取締役 /
さくらインターネット株式会社 フェロー /
京都造形芸術大学 教授

小野寺 民也
日本アイ・ビー・エム株式会社
東京基礎研究所 副所長 技術理事

國光 宏尚
株式会社gumi
代表取締役会長

中村 洋基
PARTY クリエイティブディレクター /
VALU 取締役

(モデレーター))

尾原 和啓

「AI/量子コンピューター/IoT/ブロックチェーンを徹底議論!」の配信済み記事一覧


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1つ前の記事
1. メルカリの研究開発組織「mercari R4D」とは? スタートアップ企業が研究所を持つ意義を考える

本編

尾原 具体的に、小笠原さんが「こういう領域は社会実装が近い」「結果は未知だけれどこの領域に張っている」というようなものがあれば教えてください。

小笠原 興味範囲でいうと、量子コンピューティングはやはり、特に今だと量子アニーリングの方が手っ取り早いというのも含めて、注視しています。

▶参考記事:【一挙公開】量子コンピューティングで実現する社会(全7回)

量子アニーリングというのは最適化問題を得意としていますが、そういう問題はメルカリに溢れていると思います。

「誰かがワンピースを売りました」「誰かがハイヒールを買いました」「そのワンピースを売った人が今度はスマホを買いました」と、物がグルグル回っています。

配送も含め、「どういう形で次の人の手に渡るのがいいのか」「ある物を売った人は、どんな物を買うのか」というような膨大なデータを一瞬で計算する用途に適用できるのではないかと考えています。

現状のディープラーニングでは解けない問題?

左から順に、尾原氏、小笠原氏、小野寺氏、國光氏、中村氏

國光 それはディープラーニングではできないのですか?

小笠原 必要とする計算スピードが違いすぎます。

(小野寺氏に向かって)専門家がいらっしゃるので後でより詳しく聞きたいと僕も思っているのですが、「特化した計算なら量子コンピューターの方が速い」というぐらいに今は考えておけばいいと思っています。

「量子コンピューターに上手くはまる問題を人間がどう作れるか」を考えている間に、量子ゲート方式などの新しい技術が数年のうちに僕たちでも使えるようになるのではないかと期待しています。

尾原 小野寺さんはいかがですか?

特にメルカリのような、組合せ爆発(※)の塊のようなところで使えるのではないでしょうか?

▶編集注:組合せ爆発とは、ある問題の会の組合せ的な条件で定義される場合、解が指数関数や階乗によって計算されるために、データサイズが大きくなるにつれて計算時間が増大し、有限時間での解あるいは最適解の発見が困難になる現象。(参考:Wikipedia

小野寺 民也氏 (以下、小野寺) そうですね、昨日の量子のセッション(前述の参考記事参照)でも話したのですが、「オプティマイゼーション」、「マシンラーニング」、「ケミストリー(分子のシミュレーション)」の3つが、量子コンピューターの得意な問題領域だと思っています。


小野寺 民也
日本アイ・ビー・エム株式会社
東京基礎研究所副所長 技術理事

1988年東京大学大学院理学系研究科情報科学専門課程博士課程修了.同年日本IBM入社。以来、同社東京基礎研究所にて、プログラミング言語、ミドルウェア、分散システム等の研究開発に従事。最近ではとくにAI基盤ソフトウェアおよび量子計算ソフトウェアスタックに興味をもつ。現在,同研究所副所長、同社技術理事. 情報処理学会第 41回(平成2年後期)全国大会学術奨励賞,同平成7年度山下記念研究賞,同平成16年度論文賞,同平成16年度業績賞,各受賞.理学博士.Association for Computing Machinery Distinguished Scientist, 情報処理学会シニア会員, 日本ソフトウェア科学会会員

その中でも、オプティマイゼーションについては、いろいろな金融関係者も狙っていますし、活用の可能性のある1つの領域だと思います。

小笠原 そうですよね。

あとは、防災時や大雪のような時に渋谷駅などのターミナル駅に人がものすごく多く集まってしまうことがありますが、あれは一人ひとりの最適な帰宅経路を出していないからですよね。

一般的な最適経路を出してしまうから起こる現象ですが、今のコンピューターではそれが限界だと思っています。

國光 しかし、それも量子コンピューターでなく普通にディープラーニングでも、現状よりはまだましになるのではないかという気がします。

小笠原 今よりはましにできると思います。

しかし、たとえば10万人が一斉に避難するような状況で、一人ひとりに最適経路を算出するというスピード勝負の場合などには、量子コンピューターの方がいい気がしています。

尾原 普通のコンピューターは10のものと10のものを重ねると100倍になる、1,000倍になるというように、組み合わせの掛け算が増えていくと、計算量が幾何級数的に上がっていきます。

量子コンピューターの場合はリニア(線形)なので、組み合わせ数が多ければ多いほど、相対的に速く計算できます。

量子コンピューターの実用化と小型化は何年後?

写真左から、日本アイ・ビー・エム 小野寺氏、gumi 國光氏

國光 すごく基本的な質問なのですが、量子コンピューターはCPUを置き換えるのですか? それともGPUを置き換えるのですか? 両方を置き換える?それとも全く別物なのですか?

小野寺 今の例えだとGPUに近いですね。

國光 GPUに近い?

小野寺 普通のコンピューターは残っていて、量子コンピューターは何か特定の問題の計算をアクセラレートします。

國光 量子コンピューターというのは、スパコンのような非常に大きいマシンが1個置いてあるというイメージなのですが、そうですか?

小野寺 まさに、スパコンが今やっているような問題の一部を極めて高速に、あっという間に実行することになります。

國光 将来的に僕たちが今使っているようなノートPCやスマホも量子コンピューターに変わる可能性はあるのですか?

小野寺 それはないと思っています。

小笠原 僕もそれはあまりイメージできないですね。

尾原 ただハードルが2つあって、1つは量子コンピューターというのは今のところ、温度管理の問題があります。

それから、非常に大きなスペースを必要とするという話もありますね。

小笠原 D-Waveのマシンなんて、あれはただの冷蔵庫ですよね。

尾原 はい。

小笠原 ハードとして一番大きいのは冷却装置です。

國光 量子コンピューターにも、チップか何かがあるんですよね。

小野寺 ありますね。

國光 これも半導体ですか?半導体ではないのでしょうか?

小野寺 弊社の場合は、超伝導回路で量子ビットを構成しています。

▶編集注:超伝導体を用いた回路素子。金属の中には、低温で抵抗が完全にゼロとなる物質があり、これが超伝導体である。

超伝導派の人たちは、ジョセフソン・ジャンクションなどを使って作っていますし、慶應のスピントロニクス研究センターの伊藤先生などは半導体のスピンを利用しています。

國光 最終的にではこのくらいの大きさになる可能性もありますか?

(壇上のノートパソコンを指す)

小野寺 あるかないかと問われれば、あるような感じもします。

國光 100年後ぐらいですか?

尾原 昔から常温核融合はあるはずだとずっと言われていますよね。

それと同じ話ですよね。常温量子コンピューター、あるよねと。

國光 では5年以内にはないと考えていいですか?

小野寺 ないと思います。

國光 10年は分からないと?

小野寺 10年もないと思います。

5Gで量子コンピューターのクラウド利用が実現!?

尾原 ただ一方で、サーバー側の話をすると、5Gが来ます。

尾原 和啓 氏

速度が速くなっても関係ないと思うかもしれませんが、5Gの一番秀でたところは、レイテンシー、つまり時差、遅延が減ることです。

そうするとサーバーとローカルの差がほとんどなくなりますし、通信容量に対する値段も下がります。

そうすると量子コンピューターを大きい冷蔵庫の中に入れておいて、スマホでいじってもそれほどパケット代はかからないですし、通信速度が遅延に繋がらないという世界がここ5年ぐらいで実現するはずなので、そこには別の革命があります。

國光 5Gは、今の4Gよりは遅延がないですよね。

たとえば家に繋いでいる光ファイバーとかと比べての遅延はどうなのですか?

そこに近づくというイメージですか、それともそれより遥かに優れているのでしょうか?

尾原 論理的に言うと、ずっと優れています。

しかし、モバイル(無線)の部分の遅延が少なくても、結局どこかでハードライン(有線)に繋がりますよね。たとえばダークファイバーに。

▶編集注:ダークファイバーとは、光ファイバーのうち、敷設した事業者が使用していない回線のこと。他の事業者に有料で貸し出す場合もある。

そうすると、いずれにしても光ファイバーの部分で遅延は起こってしまいます。

なので、今の家での通信速度ぐらいの感覚になると思ってください。

國光 量子コンピューターと5Gが繋がってくると、クライアント(サーバーの対義語)側にそれほどスペックの高いマシンを持たなくても良くなるということですね。

基本的にクラウドにそのような巨大なコンピューターを置いておいて、毎回そこに読み込みにいっても遜色はなく、事実上量子コンピューター的になるという可能性が出てくるということでしょうか。

尾原 そうですね。

小笠原 コンピューティングにアクセスできるという意味では、手の平にあるのと、クラウドにあるのと、ここの体感値が変わらなければ一緒ですよね。

(続)

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続きは 3. IBM基礎研・小野寺氏が語る「ディープラーニング脳」と「量子コンピューティング脳」の違い をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/本田 隼輝/尾形 佳靖/戸田 秀成/鈴木ファストアーベント 理恵

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