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『「ローカル」×「リアル」の攻略〜プラットフォーマーへの一手〜』全7回シリーズの(その5)は、リアル・ビジネスに進出するIT企業が採用するべき人材について。一見、業界経験者を採用することが近道のように思いますが、セールス職、事業開発職など、職種に分けて考えることが必要のようです。ぜひご覧ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット KYOTO 2019 ゴールド・スポンサーのプライムアシスタンス様にサポートいただきました。
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【登壇者情報】
2019年9月3〜5日
ICCサミット KYOTO 2019
Session 7D
「ローカル」×「リアル」の攻略〜プラットフォーマーへの一手〜
Sponsored by プライムアシスタンス
(スピーカー)
川鍋 一朗
株式会社Mobility Technologies
代表取締役会長
髙島 宏平
オイシックス・ラ・大地株式会社
代表取締役社長
德岡 宏行
株式会社プライムアシスタンス
代表取締役社長
松本 恭攝
ラクスル株式会社
代表取締役社長CEO
(モデレーター)
占部 伸一郎
コーポレイトディレクション
パートナー
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最初の記事
1. ITビジネスで地方のリアル・ビジネスにどう食い込むか? プラットフォーマー4社が徹底議論!
1つ前の記事
4.「競争意識」と「連帯“表彰”」で現場のモチベーションを高める
本編
占部 数日前にすごく面白いニュースが出ていました。
リフォーム希望者と工務店のマッチングサービスを手掛ける平均年齢30歳のIT企業に、60歳の大工さんが入社したんです。
▶平均年齢30歳のIT企業に入社した還暦の大工。「1カ月お試し」のつもりが一瞬でなじんだ理由(BUSINESS INSIDER JAPAN)
たまたま間違えて応募して、そのまま入社して活躍しているそうです。
やはり大工のことが良く分かるので、営業の際にすごく良いという話です。
そういう意味では、Mobility Technologiesはもともとタクシー会社なので業界の知見があると思いますが、オイシックスはそうではなかったかと思います。
IT企業は社員の年齢も若いところが多いと思いますが、業界に精通した方や年配の方がいたほうが相手との信頼にも結びつきますよね。
その辺りについて、組織をつくるときに考えたことがあれば教えてください。
ラクスルで活躍する、印刷・物流業界からの転職人材
写真左から、ラクスル 松本さん、コーポレイトディレクション 占部さん
松本 実は弊社では、去年社員の還暦祝いをしました。
ちゃんちゃんこを着て、全員で写真を撮りました。
61歳の堂本さんという方がいて、彼は56歳のときにラクスルに転職をしてきました。
もともとリョービという印刷機器等を作っているメーカーのご出身で、三菱重工とリョービのジョイントベンチャーの社長をやっていた人です。
その会社を退任されたあとに参画していただきました。
最初はパソコンを使うのに非常に苦労されていましたが、5年経った今、Slackを使って普通にメンバーとコミュニケーションをしていますし、Googleスプレッドシートなども使いこなしています。
そして一番大事なことは、彼がいなかったら今の印刷事業は無いということです。
占部 やはりそういう方がいるんですね。
松本 はい。業界への影響力も大きいし、現場改善の知見も全く違います。
当社のキーマンの一人になっています。
また、物流事業のハコベルのチームについては、半分以上が運送会社の出身です。
どの業界でも、「自分たちの業界はこのままではいけない」と危機感をもって業界を変えようとしている人が何人かいます。
例えば、ハコベルのキーマンの一人は、もともと埼玉で40人くらいの運送会社のドライバーをやっていた方です。
彼が運送業界のチームを作り成長させ、非常にパフォーマンスも高く、どんどん変革をしています。
業界出身者は、その業界とコミュニケーションを取る際の鍵になる存在です。
占部 ちょっと踏み込んで聞きますが、業界とコミュニケーションを取るために業界出身者を採用するという目的がある一方で、ラクスルさんとして求める水準や、カルチャーとの適合など、その辺りは両立している人を採用しているのでしょうか。
もしくは、ちょっと目をつぶってでもそういう人を採用しているのでしょうか。
松本 職種による違いが、結構大きいかなと思います。
セールスは、やはり業界の人がやったほうがいいですね。
会場の奥に、建設業界向けのクラウドサービスを手掛けるオクトの稲田(武夫)さんがいますけれども、そういう話を彼からも聞きます。
カスタマーサポートは分からないですが、物を売るときは相手の気持ちが分からないと売れませんよね。
あとは、業界の中でも本当に業界のことを知り尽くした人、影響力がある人、彼がいるなら話を聞こうという顧問的な存在も、すごく重要だと思います。
あえて農業経験者を雇わない「逆張り」のオイシックス
オイシックス・ラ・大地株式会社 代表取締役社長 髙島 宏平さん(中央)
髙島 今聞いていて面白かったのですが、僕らは全く逆です。
農業経験者をむしろ絶対入れません。1人もいないですね。
基本的に「業界の常識ではないことをやろう」「逆張りしよう」みたいなところがありますし、この業界では「セミプロ」みたいな人が一番嫌われるというのもあります。
占部 「下手に分かった顔をするな」と。
髙島 はい。ですから僕らは、「お客さまのことはとにかくよく分かっています。でも野菜のことは全然分からないので教えてください!」と言える人間が農家さんを回っていく形です。
また、4,000~5,000いる農家さんの組織づくりに関して言うと、一般的に農家は地域単位でコミュニティができています。
それはどういうことかというと、例えば、日本トマト協会、日本ブドウ協会みたいなものはないということです。
そうすると、この地域の色々な農家さんが集まっているコミュニティはあるけれども、トップレベルのトマト農家さんが技術情報を交換するコミュニティはないのです。
そこで僕らは、地域を超えたコミュニティ、品目別のコミュニティをつくって、それぞれの中で情報共有や相互訪問をして、従来のコミュニティではないことをやろうとしています。
このように常識にとらわれない価値創造をするためにも、業界出身者を採用していません。
事業開発職として「業界出身者」を採用すべきでない理由
松本 実は、ラクスルも業界の人をほぼ採用してきませんでした。
物流事業では半分以上が業界出身ですが、印刷事業では150人くらいのうち1〜2人くらいです。
理由は、各事業のビジネスデベロップメント(事業開発)とセールスのバランスです。
やはり、セールスが発生する場合は業界出身者のほうが圧倒的にパフォーマンスが出ます。
一方でビジネスデベロップメントや新たな価値創造という点では、業界出身者はその慣習に引っ張られて劣化コピーのようなものを生み出しかねません。
髙島 業界をよく知っているからこそ「できない理由」が分かってしまい、それがバイアスになることがありますよね。
松本 はい。ですから顧客価値をつくるビジネスデベロップメントやシステムの領域には、業界の人は一切いません。
それをデリバリーする部分では、業界の人のほうがコミュニケーション力が高いので機能します。
印刷事業についてはマーケティングで集客をしているためお客さんとのコミュニケーションは特段要らないので、業界出身者はいないですね。
占部 ありがとうございます。それでは次の質問です。
ローカルを攻略するにあたり、地方の業界団体や地方自治体、場合によっては国とどのように付き合っていくのか、皆さんの取り組みをお聞きしたいと思います。
占部 ありがとうございます。
地方自治体予算を使った実証実験のメリット・デメリット
占部 それでは次の質問です。
ローカルを攻略するにあたり、地方の業界団体や地方自治体、場合によっては国とどのように付き合っていくのか、皆さんの取り組みをお聞きしたいと思います。
川鍋 タクシーの場合、業界というのはどうしても強いです。
株式会社Mobility Technologies 代表取締役会長 川鍋 一朗さん
運賃改定などは業界全体でやらないといけなくて、そこは自分も内側の人間ですからやります。
でも例えば、自治体の予算を獲得して実証実験をやるようなことを自分もいくつもやってきましたが、結構難しいというのが正直な感想ですね。
占部 どう難しいのでしょうか。
川鍋 やはり手間がかかるし、予算規模もそんなに大きくなく、労多くして……という感じなのです。
何よりも行政側の担当が代わったり首長が代わったりなどで、継続性が担保されないこともあります。
占部 それをやることで地域へのコミットメントを示せるとか、公に認められた取り組みとしてPRできるとか、そういった効果も考えられると思いますが、その点はいかがでしょうか。
川鍋 あるのかもしれないですが、同じことはたぶん自前でやってもできるはずです。
もちろん地方自治体に嫌がられるのはまずいと思います。
でも、よほど特殊な権益が絡むようなものでない限り、例えば駅前にバス停をつくらせてもらうとかでない限り、1,000万〜2,000万円のお金をいただけるという理由だけで地方自治体の予算を使って実証実験を行うのは、スピード感的にももったいない感じがします。
占部 なるほど。貴重なご意見ありがとうございます。
地方自治体の行事は、採用ブランディングの絶好の機会?
德岡 弊社では今、鹿児島と秋田に500人ずつぐらい社員がいます。
自治体との関わりで一番意識しているのは「採用」です。
人材を採用するためには、地域でブランドをつくらないといけません。
ブランドをつくるために、我々は地方公共団体と色々なイベントに参加しています。
例えば、鹿児島では毎年11月におはら祭という南九州最大の祭りが開催されますが、弊社から80人くらいの社員が参加して踊ります。
▶CSRの取り組み ~社会貢献活動~[鹿児島センター] 第68回おはら祭に参加しました。(2019年11月3日)
これは非常に大きなインパクトがあります。
それから、市電を当社の名前でラッピングして走らせたりもしました。
地方自治体の行事に入り込んで、当社を広く知ってもらうことで、人材の採用につなげるということをやっています。
地方自治体との連携は極めて重要だけれども……
髙島 本当にお二人のおっしゃる通りだなと感じます。
僕らは神奈川県海老名市の配送センターで、1,000人近くを雇用しています。
やはり地方自治体との連携は極めて重要で、僕らの配送センターを緊急避難場所に指定してもらっています。
それ以外にも、茨城県と統括提携したり、熊本県と提携したり、徳島県では色々な自治体と見回り協定、ご高齢の方が倒れているのを見つけるというような協定を結んでいます。
それで、いくつもやって分かったのですが、トータルで言うと全然ペイしません。
もちろん素晴らしい提携もありますよ。
特にベンチャー企業だと、自治体と組むことはちょっとした高揚感があります。
川鍋 そうですね。やはり民間ではなく官と一緒にやるのは心揺さぶられるというか、社会貢献感があるんですよね。
でも、そこに使命感を感じるのだったら役所で働けばいいし、ベンチャー企業ってそうじゃないだろうと思うんです。
もっとシェアを取って、早く動いてとやらないといけません。採用にプラスじゃないとは言いませんが。
髙島 そうですね。雇用の実態があるエリアとそうでないエリアとで、また話は変わってくるかなとは思います。
占部 ありがとうございます。では、次のトピックにいきたいと思います。
ずばり、「ローカル」×「リアル」は儲かるのか? です。
(続)
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/小林 弘美/SNOWLIGHT/戸田 秀成
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