【NEW】ICC サミット FUKUOKA 2024 開催情報詳しくはこちら

4.「無謀な夢」と言われたが、大人が本気を出せばこんなことができる

カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式X(旧Twitter)をぜひご覧ください!
新着記事を公式LINEで配信しています。友だち申請はこちらから!
過去のカタパルトライブ中継のアーカイブも見られます! ICCのYouTubeチャンネルはこちらから!

ICC KYOTO 2023のセッション「北海道ボールパークFビレッジから学ぶ これからの街づくり(90分拡大版)」、全5回の④は、GRAの岩佐さんが出店するに至った経緯からスタート。「地元をざわつかせるパワー」とは? また銀行員だったファイターズ小林さんが転職を決意した理由とは? ファナティックス川名さんが解説する、Fビレッジがもたらす経済効果も必見です。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターはノバセルです。


【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 7G
北海道ボールパークFビレッジから学ぶ これからの街づくり(90分拡大版)
Supported by ノバセル

(メイン・スピーカー)

小林 兼
ファイターズ スポーツ&エンターテイメント
事業統轄本部 企画統括部長

(スピーカー)

井手 直行
ヤッホーブルーイング
代表取締役社長

岩佐 大輝
GRA
代表取締役CEO

川名 正憲
ファナティクス
東アジアマネジングディレクター(代表)

富山 浩樹
サツドラホールディングス
代表取締役社長 兼 CEO

(モデレーター)

岩田 真吾
三星グループ
代表取締役社長

各務 亮
電通
Creative Director

「北海道ボールパークFビレッジから学ぶ これからの街づくり(90分拡大版) 」の配信済み記事一覧


岩田 話の途中ですが、いっそ、その岩佐さんの話に行きましょうよ(笑)。

岩佐 大輝さん(以下、岩佐) あの…。

岩田 ところで、あなた誰でしたっけ(笑)?

IT企業社長からイチゴ農家に転身したGRA岩佐さん

岩佐 GRAという会社でイチゴを作っている、岩佐と申します(笑)。


岩佐 大輝
株式会社GRA
代表取締役CEO
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部
教授

1977年、宮城県山元町生まれ。日本および海外で複数の法人のトップを務める起業家。 2002年、大学在学中にITコンサルティングサービスを主業とするズノウを起業。2011年の東日本大震災後は、壊滅的な被害を受けた故郷山元町の復興を目的にGRAを設立。先端施設園芸を軸とした「東北の再創造」をライフワークとするようになる。農業ビジネスに構造変革を起こし、ひと粒1000円の「ミガキイチゴ」を生み出す。 著書に『99%の絶望の中に「1%のチャンス」は実る』(ダイヤモンド社)、『甘酸っぱい経営』(ブックウォーカー)、『絶対にギブアップしたくない人のための成功する農業』(朝日新聞出版)がある。人生のテーマは「旅するように暮らそう」。趣味はサーフィンとキックボクシング。

グループ会社として、ICHIBIKOというスイーツショップを運営しています。

そのICHIBIKOという会社が、Fビレッジに出店させていただいています。

地域をどうやって賑やかにするか、活性化させるかを考えた時、何かをしようとするプレイヤーがその地域に迎合しないということが、すごく大事だと思っています。

富山さんもおっしゃっていましたし、小林さんの話もそうです。

私のブランドは宮城県発のブランドですし、北海道に縁があったわけでもなく、北海道はそもそもイチゴが作りやすい場所ではありません。

でも小林さんが私のところに、「一緒にやりませんか」とお見えになった際、小林さんの想いを聞いて、そんなことを言っている場合ではないと思いました。

「今は札幌の状況が良いけれど、北海道からどんどん人が去っていくのに、隣近所、地域のことを見ていてどうするんだ」という考えを聞いて、それに非常に共感しました。

地域に行くとどうしても、隣の町、農家、会社と自分たちを比べてしまうのです。

でもやはりそれだとダメで、小林さんの最初のスライドにもあった通り、グローバルレベルで考えて、自分たちがどのポジションにいるかを見るという視座を持つことに、すごく共感したのです。

自分も辛い経験をしています。

宮城に戻ると、「あいつは宮城のことを見ないで、北海道に出店している」と言われて…。

岩田 皆さん知っていると思いますが、この人はもともとIT企業の社長でしたが、震災を機に宮城に戻ってイチゴ農家になった人なので、一瞬よそ者みたいな感じだったのでしょうか?

岩佐 20歳の頃からずっと離れていたわけなので、よそ者ですね。

それで、「宮城に戻ってきて何かやっているけど、地元の方は向かずに外ばかりで、海外でイチゴを作ったり、北海道で出店したり…」という、ソワソワした感じが地域に生まれるのです。

今回のファイターズの取り組みによって、地元の人たちはざわついていると思うのです。

地元のプレイヤーももしかしたら、「自分たちもやらないとダメかな?」って。

岩田 なるほどね。

岩佐 そのパワーが、ものすごく北海道に貢献しているのではないかなと。

岩田 小林さんたちが、良いざわつきを生み出している。

小林 嬉しいですよね、僕は個人的にそういう目的を持っています。

外から北海道を見ていて、非常に保守的だと思います。

子どもが何かをやりたいと思った時にキャップをはめてしまうようなカルチャーが、昔からありました。

僕は高校受験の時、一番レベルの高い進学校を受けようとしたら、中学校の先生に「諦めも肝心だからね」と言われたのです。

(一同笑)

そういうカルチャーが昔からあり、今に至っているのです。

正直、子どもたちにそんなことを言う大人にいてほしくないですし、大人が本気を出せばこんなことができると示すプロジェクトでもあると思っています。

岩田 めちゃくちゃ良いですね。

実際はどうですか、ざわついていますか?

富山 ざわついていますよ。

でも本当に良い刺激だと思いますね。

先ほど話したように、大資本が外から入ってもいいと思うのは、地元の言うことを聞いていたら、閉じる方向、閉じる方向に絶対行ってしまうので。

岩田 沖縄、宮古島の開発では、あそこは儲かるからと外の人が来て、山を切り崩して…みたいなドラマが、10年、20年前にありましたよね?

そうではない、ということですよね。

富山 北海道だと、ニセコは、海外からの資本や考え方によって、あそこまで、ああなったのです。

小林さんのような実行者が、主体性を持って外の資本を呼び込む場合と、そんな気はないのにいつの間にかそうなっていた場合では、その地域の変わり方は全然違うのです。

各務 大人が挑戦できる姿をちゃんと見せたいという小林さんの言葉が、めちゃくちゃ刺さりました。

「本気で一緒にやろう」とボスがバンコクまで説得に来た

各務 小林さんのように大きな志を持っている方がいても、往々にしてチーム内では浮いてしまったり、むしろ空回りしてしまったりすることが、地域の街づくりプロジェクトでは起こりがちだと思います。

今回そうならなかったのは、何か違いがあったのでしょうか?

小林 幸いにも人に本当に恵まれているのもありますが、トップが本気で人集めをしているのが大きいと思います。

私のボスの前沢は、僕が転職に迷って「辞退します」と伝えた時、タイのバンコクまでわざわざ来て、一緒にやろうと言ってくれたのが大きかったです。

岩田 すごい。

小林 本気で一緒にやろうと言ってくれて、この先こんなことはないかもなと思いました。

富山 断った翌週に、子どものお土産を持って来たのですよね?

小林 ラジコンを2個持って…。

各務 映画になりそうな話ですね(笑)。

富山 このリクルーティングは、企業でもすごく参考になりますよね。

岩田 ちなみに、僕はその前沢さんを知らないのですが、どんな人なのでしょうか?

富山 見た目は堅気ではないですよ(笑)。

岩田 バックグラウンドは?

川名 スポーツ業界が長い人で、子どもっぽさを持っていて、通常の常識では考えられない…それこそ今回は、これだけの規模ですが公設ではなく民設ですし、そんな常識を超えたことをできる人ですね。

今まで、DeNAの球団経営に関わっていたり、NPBの侍ジャパンの原型を作られたた方です。

岩田 ファイターズだけではなく、野球業界で色々…。

川名 はい、ファイターズからスタートしましたが、その後、色々なところで。

小林 「ファイターズ 前沢」で検索したら、顔が見られます。

【ファイターズ新球場】エスコンフィールドを創った男、前沢賢に聞く「鉄の意志でやると決めてここまでやって来た」(YouTube)

富山 先ほど、大企業なのにという話がありましたよね。

孫正義さんや三木谷浩史さんなどが経営するオーナー企業の場合、スポーツ経営をしているところはありますが、ファイターズの場合、前沢さんのように熱狂する人がいないと、これだけ大きなプロジェクトは絶対にできなかったと思います。

大きな仕事をするときは、バディを探せ

小林 飲み会の席で、前沢は僕によく「バディを早く探せ」と言います。

何か大きな仕事をするとき、自分の力だけでは限界があるからバディを探せとのことでした。

そして、彼にとってのバディは三谷(仁志)という副本部長です。

三谷さんも秀逸な方で、僕は心の中で「天才・三谷」と思っています。

数字、物事を見通す力、情報収集に優れており、元商社勤務で、財務もしていた方です。

三谷と前沢のペアで、お互いの足りないところを補って、ここまでプロジェクトを進めてきたのです。

岩田 経営論としては、めちゃくちゃ良い話ですね。

富山 本も出版されています。

岩田 バディ経営の?

富山 いえ、日本ハムファイターズのストーリーについての本です。

ぜひ読んでみてください。

小林 『アンビシャス』という本で、僕も読んだのですが、めちゃくちゃ面白いです。

アンビシャス 北海道にボールパークを創った男たち | 鈴木 忠平 (Amazon)

川名 先ほど話していた、市との関係についてのストーリーがめちゃくちゃ面白いです。

富山 生々しく書かれていますよね(笑)。

小林 自治体でも、想いの強いスーパー公務員のような方が動いてくれていたとか、その時の秋元札幌市長の葛藤とかも描かれていて、読み物としても面白いので、ぜひ。

岩田 絶対読みます。

各務 前沢さんが素晴らしいのはよく分かったのですが、街づくりとなると、10年、20年、50年という長期になると思います。

しかし、前沢さんおよびチームの皆さんは、もしかしたらずっとそこにいないのかもしれないのではないでしょうか。

プロ経営者のような方であればなおさらです。

その点はどうお考えになられているのでしょうか?

小林 少なくとも、5年、10年はいるという言質は取っているのですが(笑)、どこかの時点で継承はしないといけないですよね。

今は本部長、副本部長がいて、その下に統括部長が4人おり、この4人で色々なことを決めていくことになっています。

少しずつ、イズムの継承や、どうプロジェクトを進めていくかは考え始めている状況です。

でも結局、外から想いの強い優秀な人材が入って来て、全然違う方向に進むこともあり得ますし、僕もそれはアリだと思っています。

岩田 昨日、経営者のサクセッションプランがテーマのセッションを聞いていて、似たことを感じました。

特定の個人が住民になって30年、40年続けるよりは、ちゃんと変わっていく仕組みを前提にする方が、サステナブルというか。

そのセッションである方が、「基本的には、ビジョンやミッションに基づいて経営をしているので、それを体現するのがうまい人であれば、経営者は誰でもいい仕組みにしなければいけない」とおっしゃっていました。

それに近い感じでしょうか。

小林 そうですね、多数決ではなく合議で決めるというのが我々のカルチャーになっています。

大事なことは前沢と三谷の合議で決めていますし、それ以外のことは例えば私と営業の責任者との合議で決めたりします。

岩田 ありがとうございます。

3カ月間で約150万人が来場、年間300万人達成も視野に

小林 最後に、プロジェクトの狙いを紹介します。

野球は、競技者人口が増えていた時代がありますが、今は減っています。

高度経済成長期に人口が増えて、競技者が増えて、隆盛を極めた時代があったビジネスです。

当然、これから先、競技者を増やそうとしても限界があるので、他の球団もそうではないかと思いますが、我々のアプローチは観戦者人口を増やしていくことです。

観戦者人口を増やすためには、違うコミュニティに対して、野球との掛け算としてアプローチしていくのが正しい打ち手だと考えています。

例えば、シニアレジデンスと書いていますが、国内の2,800万人いるシニアコミュニティにアプローチします。

温泉、サウナは愛好家が2,000万人弱いらっしゃいますので、野球に興味がなくてもまずは来ていただいて、野球も良いと思っていただく。

全員ではなく、そのうちの何%がそうなるという確率論かもしれませんが。

クラフトビールも子どもも同様だと思っています。

色々なマーケットとの掛け合わせで新たなコミュニティを生むというアプローチを行っており、これを大事にしています。

データを簡単にご紹介します。

開業から3カ月が経った上でのデータですが、3ヶ月間で約150万人のお客様が来場されました。

少し新しいデータでは、8月2日に200万人を突破しましたので、年間300万人は達成できそうな状況になっています。

棒グラフの白は野球観戦で、青は野球観戦以外の目的でいらっしゃったお客様の数です。

平日でも5,000人ほどのお客様が、野球の試合がない土曜日は1万人以上のお客様がいらっしゃっている状況です。

先ほど申し上げた通り、行楽地として成立しつつあるというのは、このデータから言えます。

結構、野球観戦以外の目的で来ていただいているということです。

川名 これは我々のビジネスにとってはすごくポジティブなサプライズです。

グッズを販売するストアを運営しており、東京ドームや福岡PayPayドームでも同様に運営しているので、試合日の売上は過去の経験から読めます。

基本的に、試合日の売上を前提に計算し、試合日以外はあまり売上が立たないのですが、今回パートナーシップを組む際、非試合日でも100万人入れるという話には「本当?」という気持ちが正直ありました。

ただ、色々なことに取り組むという話を信じてパートナーシップを組ませて頂きまみました。

初年度なので、たくさん来場されているということはあると思いますが、コンテンツを作り続けていけばこの傾向が続くだろうと信じられるので、すごく良い結果だと思います。

岩田 川名さんは世界中のスポーツビジネスを知っていると思いますが、非試合日でもこのくらい人が来るケースはあるものなのでしょうか?

川名 いや、正直、このレベルはないと思いますね。

例えば、ニューヨークのヤンキースタジアムなど、スタジアムツアーを行う場合はそれなりに来ますが、街ができていて、そこでイベントもして……という他のケースは私が知る限り、アトランタ・ブレーブスというチームがバッテリー・アトランタという20ヘクタールくらいの街を作っていますね。

彼らも球場のある街を作っており、ショッピングエリアとレストランとバーなどがあるのでそれなりに動員していると思いますが、私が訪れた開業当初ははまだそれほど多くなかったですし、ショッピングエリアもそこまで大きいわけではないです。

ですから、継続的にイベントなどを行ってここまで人を呼んでいる事例は、あまり見たことがないですね。

岩田 世界初ですね、よくやりましたね。

小林 思っている以上にうまくいっているのは、試合のない日の集客ですね。

一方で課題は、交通アクセスや飲食店の行列で、お客様からの不満の声として挙がっていました。

交通アクセスについては、2028年に駅ができることは既に発表できましたが、それまでは最寄駅からシャトルバスを走らせて来ていただき、また、シャトルバスの本数を増やすという地道な対応が必要だと考えています。

各務 集客は複合要素によるものだと思いますが、どのマーケティング戦略がハマったというか、手応えを感じられた部分はあるのでしょうか?

小林 中心となっているのは、札幌に住んでいるお客様です。

ですから札幌へのPR、訴求を地道にやってきたのが奏功したのかと思います。

さらに、もともとファンで札幌ドームに来ていただいていたお客様には、ファンクラブ組織を介してケアをしっかりできていたのも大きいと思います。

週末はファミリー層、平日は地方からの団体客が多い

小林 あと、行楽地化というのがキーワードです。

「週末、何も予定がないから行ってみようか」と思うファミリー層や、地方のJA組織の婦人会や修学旅行など、団体のお客様のご来場も結構あります。

実は私のチームが団体ツーリズムの担当ですが、団体のお客様が平日5,000人に貢献してくれていますので、地方で講演会をするなど、地道にPRをしてきた効果が発露しているのかなと思います。

富山 ビジネスカンファレンスでも使わせてもらいました。

北海道と沖縄を結ぶ、「どさんこしまんちゅプロジェクト」というものがあるのですが、ここでツアーをし、カンファレンスセッションをし、サウナに入ってもらい、泊まってもらいましたが、めちゃくちゃ満足度が高いです。

どさんこしまんちゅプロジェクト|北海道と沖縄から日本を元気にしよう! (dosanko-shimanchu.jp)

岩田 前半で話した、周りとの連携の話に関わる質問です。

ツアーで来る方は、今ならエスコンフィールドHOKKAIDOやボールパークが見たいという理由だけで来るかもしれませんが、普通、それだけでわざわざ飛行機に乗ってくることはあまりない気もします。

周辺のエンターテインメントも合わせて体験するために、札幌で1泊、北広島で1泊という形なのでしょうか?

小林 結構多いと思います。

我々は札幌市内のホテルとも連携しており、ホテルの部屋にQRコードを配布してもらい、試合日がチェックできて、その場で試合のチケットが買えるようにしています。

行政区はあまり関係ないと思っています。

結局はアクセス人口なので、Fビレッジを中心として1時間以内で来ていただくマーケットを重視しています。

だから、札幌だからとか、北広島ではないからという風には考えずに運営しています。

また、北広島市にはホテルが少ないので、札幌市との補完関係にあり、うまくやれているとも思っています。

岩田 ありがとうございます。

開発の程度としてはまだ5割

各務 もう少し聞かせてください。

今は本当にプロモーションがうまくいって、話題になっているから行くという良いサイクルが生まれていると思います。

もちろん、これを継続していく方法を考えていらっしゃると思いますが、そもそもお客様はFビレッジには、何を期待して来るとお考えですか?

コンセプトというか、ユーザーが来場し続けるためにお届けするバリューや価値をどう設定しているか、教えてください。

小林 「体験型」というのが、一つのキーワードだと思います。

もちろん野球観戦も体験の一つだと思いますが、先ほどご紹介した自転車や、ジップライン、空中アスレチックのできるアウトドアパークなど、北海道らしい体験ができる場所というのが、我々が軸としている部分です。

これからも、そのような体験型アクティビティや施設を増やしていく路線があると思います。

それ以外では、お客様のアンケートやリサーチを行うと、「開放感」というキーワードが見られます。

この球場に来ると、すごく開放感を感じるという意見です。

例えば、屋根が開いてビールを飲むと開放的な気持ちになるとか、サウナに入りながらフィールドを見ていると開放的な気持ちになるとか。

ですから、施設面、ソフト面で、開放感というテーマで何かできないかなと、最近はお風呂で考えています。

岩田 (笑)進化してきているということですね。

小林 はい、まだ開発の進捗としては、32ヘクタールのエリアの中ではまだ5割もいっていないと思っています。

開発の余地はまだ5割以上残っていると思うので、その5割で何をしていくかです。

体験型、開放感のある施設も一つの案ですし、また、大学やオフィスという機能も備わっていかないと定住人口や関係人口は大きく増えないので、連続成長ではなく非連続成長させるためには、大きな打ち手も必要だと思っています。

岩田 なるほど。

余地の開発については、例えばレジデンスだと、レジデンスの運営はファイターズが行うのですか?

それとも土地を貸して、パートナーに任せるのでしょうか?

小林 どちらのケースもあります。

例えば、これは北広島市との契約にもなっていますが、我々がマスターリースを受けている土地をサブリースしている事業パターンが多いですが、レジデンスなどは土地売買もあります。

岩田 コンセプトや、最低限のトンマナ(トーン&マナー 雰囲気などの一貫性)は合わせてという感じで開発してもらうのでしょうか?

小林 そうです、やはりランドスケープとトンマナは大事にしています。

ランドスケープは、十勝千年の森などを手がけている、高野ランドスケーププラン二ングという会社とご一緒しています。

ですから、どこに何を作るかという相談はまず、コンサルティングをしていただいている高野ランドスケーププラン二ングにします。

カラーやマテリアルパレットなど、トンマナにはすごくこだわりがあるので、それに基づいて協議となります。

旭山動物園を抜き、北海道で一番人気の観光地へ

岩田 すごくお金を投下しているので、初年度は良いとしても、今後どう回収するのかは、みんなが気になるところだと思います。

控え室でもそういう話をしていましたが……これが最後のスライドですか?

小林 いえ、もう少しあります。

来場者の3割は道外から来ているというデータ、それから、北海道で今一番お客様がいらっしゃっている観光地は旭山動物園で、来場者は年間140万人らしいのですが、北海道ボールパークFビレッジは300万人とお話ししたので、北海道で一番お客様がいらっしゃる観光地になりつつあるというデータです。

また、DXとしては完全キャッシュレス化をしています。

公式目安箱としては、Fビレッジおじさんという形でX(旧Twitter)を使っています。

富山 このアカウント、もしかして小林さんが運営しているのですか(笑)?

小林 私ではないです(笑)。

誰がというのは内緒ですが、ボールパークのトイレなどにはQRコードを掲示しており、「#聞いてよFビレッジおじさん」のハッシュタグで投稿されれば、我々はそれを見て、トップダウンで一気に解決していく、爆速PDCAを行っているのも特徴です。

ベンチが少ないから増やしてほしいとか、暑いのでウォーターサーバーを増やしてほしいとかは、すぐに対応しました。

大人が本気になったら、こんなことができる!

小林 最後に、動画をご覧いただければと思います。

このプロジェクトを始めた時、政財界から「そんなのできるわけがない」「やる意味がない」など、色々言われていたのですが、映像で伝えた方がいいのではと考えて、当時、「こういうものを作ろうとしている」「こんなことをしようとしている」というイメージ動画を作ったのです。

これは、実際に開業してから作った、「言っていた通り、こんなものができました」というアンサームービーなので、そういう構造になっています。

「大人が本気になったら、こんなことができる!」ということを子供たちに伝えるため、分かりやすい動画を作ってみました。

ぜひ、見ていただければと思います。

(会場から拍手)

富山 これを見ると、すごく鳥肌が立ちますよね。

岩田 すごい!

富山 作っている途中でも、色々なことを言う人が地元にもいるのですよ。

岩田 言ってたんじゃないんですか(笑)?

富山 いや、僕は言ってないですよ(笑)!

ICCスタンダードの「挑む人の応援者たれ」ではないですが…。

「あんなの、札幌以外に作っても成功しない」とか「結局は経済的にはうまくいかない」とか言っていた人がいっぱいいました。

だからこの動画を見ると、すごく感動する。

岩田 動画の中にも「無謀な夢だと思った」とありました。

数字面も、当然きっちり計画して作られていると思いますが、最後にその話をしていただいてからフリートークにしたいと思います。

小林 そうですね、一番の難所というか、このプロジェクトを始めるところにたどり着く前の話で、僕が入社する前のことなので前沢と三谷から聞いた話なのですが、親会社の説得が結構大変だったようです。

日本ハムグループは上場している大きな会社ですが、もちろん株主への説明も必要ですし、そもそも野球だけにそんなにお金をかけていいのかという社内の議論もあったようです。

それをどう突破したのか聞くと、資料を全ての角度から分析し、論理的に固めて説明したとのことでした。

僕は当時の資料をいまだに大事に持っていますが、すごい内容です。

前沢と三谷がお互い補い合いながら仕事をしてきたのが垣間見えるような…熱もあるし、緻密さもある資料です。

資料をしっかり作って説明をして承認を得て、色々なパートナーからの助けや協力をながら、ここまで進めてきました。

数字については、10年、20年、30年後のキャッシュフロー計画を緻密に立て、どのようにファイナンスを組むか、どう稼ぐかを考えています。

基本的には野球の試合チケット、つまり観戦収入でプロジェクト自体は絶対に赤字にならない担保を作りながら、それ以外でプラスオンするという思想で進めてきました。

岩田 ありがとうございます。

本当は、プレゼンは15分間という話だったのですが(笑)、主に僕のせいで……。

(一同笑)

岩田 残り、もう20分くらいです。

各務 あと20分ですね(笑)。

岩田 では、各務さんにまとめていただいて……(笑)。

(続)

カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式X(旧Twitter)をぜひご覧ください!
新着記事を公式LINEで配信しています。友だち申請はこちらから!
過去のカタパルトライブ中継のアーカイブも見られます! ICCのYouTubeチャンネルはこちらから!

編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!