ICC FUKUOKA 2024のセッション「Well-being産業の今後(シーズン4)」、全5回の②は、ミレニアル女性向けキャリアスクール「SHElikes」を運営するSHE 福田 恵里さんが登場。熱狂的なコミュニティで知られるSHElikesでは、リスキリングで女性のロールモデルを生み出すだけでなく、個人の価値観や生き方の変革を目指しているといいます。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは住友生命保険です。
▼
【登壇者情報】
2024年2月19〜22日開催
ICC FUKUOKA 2024
Session 8F
Well-being産業の今後(シーズン4)
Supported by 住友生命保険
(スピーカー)
石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事
小林 正忠
楽天グループ
Co-Founder and Chief Well-being Officer
福田 恵里
SHE
代表取締役CEO/CCO
矢田 明子
CNC
代表取締役
(モデレーター)
藤本 宏樹
住友生命保険相互会社 上席執行役員兼新規ビジネス企画部長 / SUMISEI INNOVATION FUND事業共創責任者
▲
▶「Well-being産業の今後(シーズン4)」の配信済み記事一覧
藤本 SHEの福田さんから、お願いします。
登壇者の皆さん、話の途中で質問していただいても構いませんので。
ミレニアル女性向けキャリアスクール「SHElikes」
福田 私たちは、女性向けリスキリングプラットフォーム「SHElikes(シーライクス)」を主要事業として運営しています。
私は26歳の時にSHEを創業しました。
その前はリクルートで働いていました。
滋賀県出身で、プライベートでは1歳と3歳の息子の母です。
先ほど申し上げた通り、SHElikesはミレニアル女性向けのキャリアスクールです。
働く女性の約半分が出産を機に仕事を辞めるというデータがあり、給与総額は女性は男性の3分の1です。
▶女性の賃金、なぜ低い?日本の現実(Yahoo! JAPAN SDGs)
出産と仕事を両立できる社会を作らなければ、日本の未来はないという課題を認識しています。
それがなぜ解決されていないかと言うと、女性の54%が非正規雇用であり、自分で職を選べる、どこででも働けるようになるためのスキルがなく、何かに挑戦しようとしても「私なんか」と自信がない方が多いからです。
▶男女共同参画白書 令和3年版 第1節 就業をめぐる状況(男女共同参画局)
日本人女性の自己肯定感は世界最下位だというデータもあります。
▶日本人女性「成功する自信」 22カ国中最下位(Forbes)
つまり、スキルとマインドの両方が不足しているという課題があります。
学びの入口から就労までをサポート
福田 今、私たちのサービスを使っていただいている方の平均年齢は29歳です。
2020年のデータによると、女性の結婚する時の平均年齢が29.5歳で、出産する時の平均年齢は30.7歳ですので、29歳とは結婚や出産といったライフイベントを目前に控え、「私はこのままでいいのかな」と考える年齢なのです。
▶コラム1 平均値と最頻値考察~「平均初婚年齢」と「初婚年齢の最頻値」の間には3歳から4歳の差~(内閣府男女共同参画局)
▶第2章 東京の子供と家庭をめぐる状況(東京都福祉局)
日本女性が就いている職種ランキングは多い順に、事務、営業、接客ですが、私たちのサービスを使っていただいている方々の就いている職種ランキングは、全く同じです。
例えば、10年事務の仕事をしてきた、営業をずっとやってきた、けれど「これから子どもを産むのに、子どもを産んでからもずっとこの仕事をするのかな」と思われる方が、好きな時に好きな場所で、パソコンひとつで働けるスキルを身につける目的でSHElikesにいらっしゃいます。
日本には今、3,000万人の働く女性がいて、それは日本の人口の4分の1です。
彼女たちにこそリスキリングが必要だと思い、我々は事業を行っています。
今まで事務や営業をしていた方々の中には、Webに関する仕事をしたくても、WebデザインなのかWebマーケティングなのか、何がしたいか、どれが自分に合っているのか分からないという方がすごく多いです。
まずコーチングで、好きなものやしたいことを一緒に考えて、その後は色々なコースを受け放題、学び放題です。
デザインやライティングなどを少しずつ学んでみて、それを繰り返すことで、 自分が本当に熱狂(※)できることを見つけていきます 。
▶編集注:SHE株式会社は「一人一人が自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中を創る」をVISIONに掲げている。
そして、働くということまでサポート、つまり就労支援をします。
学ぶことと、希望の職種に就くことは結構時間がかかりますし、根気も要ることなので、ピアプレッシャーというか、仲間と一緒にコミュニティの中で達成するというのが、私たちのサービスの概要です。
現在(※2024年6月)、14万人の会員がいます。
例えば、高卒で2児の母の派遣社員がデジタルマーケターに転職されて、時間や場所に縛られずに働けるようになったり、キャビンアテンダントがデザイナーに転職されて、月収が3倍になった受講生もいたりします。
皆さんも、コロナ禍の時、ANAの副業解禁がニュースになったことをご存知だと思います。
▶ANA、副業を拡大へ 他社と雇用契約可能に 2020年10月10日(日本経済新聞)
そういった方々の活躍をもっと世の中に発信していかなければいけないと考え、表参道駅に多様なキャリアチェンジを実現した受講生をモデルにした広告を出したり、受講生の変化と挑戦を讃える大規模なアワードを開催したり、POLAとともに女性起業家輩出プロジェクトを行ったりしています。
▶シーライクス、表参道駅で巨大シート広告を実施(SPACE MEDIA)
▶SHE、ポーラ・オルビスホールディングスと協業で開催する女性起業家輩出プロジェクト「NEXT FOUNDERS」第1期生36組から最優秀賞・優秀賞のビジネスアイデアが決定!(PR TIMES)
今年(2024年)は、女性起業家輩出プロジェクトに参加した受講生の中から、12人の女性起業家が生まれています。
「いつかこうなりたい」「私にもできるかも」「うちのママって格好良いんだ」と思ってもらえるようなコミュニティになっています。
ギブを受けた人がギバーになる熱狂的なコミュニティ
福田 SHElikesというワードで検索すると、予測キーワードに「宗教」と出るくらい、熱狂的なコミュニティになっています(笑)。
熱狂的なコミュニティになるには、スタッフが重要です。
SHEでは、「ギバー転換率」というKPIを置いています。
球体型のコミュニティを想像してもらいたいのですが、講師だからとか、受講生だからという上下関係はなく、スタッフと受講生の垣根もありません。
シーメイトと呼ぶ受講生、スタッフ、社員などのコミュニティメンバー全員が、SHEというコミュニティ、SHEというビジョンに対してギブをする存在だと定義しています。
ですから、彼女ら・彼らがどれだけギバーになったかを測っており、熱狂に反映されています。
藤本 DAO(Decentralized Autonomous Organization、分散型自立組織)的な組織ですか?
福田 DAOそのものではないですが、近いところはあるかなと思います。
年代や得意なことによってコミュニティがいくつかに分かれており、それぞれのコミュニティをコミュニティマネージャーがまとめている感じです。
また、今のスタッフの9割はSHEの受講生です。
受講後にはスタッフになって、また受講して……と、コミュニティの中で様々な役割の間を行き来していますので、ロールモデルが循環するエコシステムとして、機能しています。
私たちは女性のリスキリングだけではなく、個人の価値観や生き方を変革したいと考えています。
コミュニティ×テクノロジーで熱狂を生み出し、社会の課題解決をしているという感じです。
ですから、誰かへの貢献、つまりギバー転換率を追っていく仕組み、熱狂コミュニティを作る仕組みによって、人と人のベストマッチングを科学し、個人の価値観や生き方を変革しようと日々、事業を行っています。
藤本 ありがとうございます。
すごいですね。
若い女性もそうですが、これからは人生100年時代で、僕らのような中高年の中にも、「あと数十年働く必要があるけれど自分は何をしたらいいのか、できるのか、自信がない」という人がたくさんいると思います。
SHElikesだけではなく、“爺likes”。
福田 (笑)
藤本 おじいさんの熱狂的コミュニティ(笑)。そういうのがあってもいいですよね。
福田 そうですね、これは女性に限った話では全くないです。
ただ、今は顕在化しているジェンダーの課題があるので、まずはここから着手しています。
冒頭も申し上げましたが、日本女性は世界で一番、自己肯定感が低いと言われている中で、我々のプログラムは、自己効力感が高くなるように作っています。
自己効力感は、直接的成功体験、代理体験、言語的説得の3つの要素で作られると言われています。
直接的成功体験は、昨日までPhotoshopは使えなかったけれど今日は使えるようになった、みたいなことです。
代理体験は、同時期に入会した40代の母親が半年後にキャリアチェンジし、活躍している姿を見ると「私にもできるかも」と思える、のような体験です。
言語的説得については、コミュニティの中には「自分の夢も他人の夢も否定しない」「“私なんか”は禁止」という約束事があります。
そういう心理的安全性が担保されている中、第三者から「あなたならできる、大丈夫」と説得を受け続ける中で、自己効力感が高まっていきます。
この3つの要素がSHElikesでの体験の色々なところに散りばめられているので、マインドや価値観の変革につながっています。
藤本 仕組みがすごいですね。僕が“爺likes”を始める時は、それをまるまる模倣すれば成功しそうです(笑)。
定年後の新しいチャレンジが自信につながる
藤本 善樹さんの本の中に、「50歳以上になってからできることが増やせた人は幸せだ」という内容がありませんでしたか?
▶『フルライフ 今日の仕事と10年先の目標と100年の人生をつなぐ時間戦略』(Amazon)
石川 そうですね!
藤本 年を取ってからチャレンジする人は満足度が高い、みたいな。
石川 はい、おそらくその理由は、過去の延長上で人生を生きていこうとすると、年を取れば取るほど難しくなってくるのです。
例えば、部長をしている人は、60歳を過ぎてもずっと部長ができるかと言うと、そうではないですよね。
人は、年を重ねるとものぐさになってきて、自分の強みや得意なことに逃げがちになると思います。
そこで逃げずに、弱みや不得意、新しいことにずっとチャレンジし続けている人は、本当の意味で深い自信が持てます。
どんなことがあっても、必ずしも得意な分野ではなくても生きていけるようになるということです。
定年まで勤め上げた人は、やはり、それまで培ってきた経験やスキルを活かしたいと思うのです。
でも50歳くらいで役職定年をして早期退職し、新しい分野に飛び込んだ人は、最初はすごく苦労しますが、適応できた自分にすごく自信が持てるようになるのです。
そういう人は、その後の人生に何があっても大丈夫になります。
何かあったとしても、また最初から新しく始めればいいんでしょと思えるのです。
そういう傾向はあると思いますね。
(続)
編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成