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スピーカー唯一の現役料理人・大野さんが明かす、知られざる修行時代のリアル。海外の名店へ直談判した経験や、その厳格な階級制度や1日5回の掃除とほぼ寝られなかった日々まで赤裸々に告白。伝説の二つ星Fävikenから学んだ「営業中に怒らない」組織づくりも必見です。最後は山本さんが、ペアリングでさらに真価を発揮する2店「馳走 啐啄一十」「Yama」を紹介します。最後までぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2026は、2026年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。
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【登壇者情報】
2026年3月2〜5日開催
ICC FUKUOKA 2026
Session 9F
-世界No1フーディー登壇- 大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン12)
Supported by EVeM
(スピーカー)
大野 尚斗
Syn
オーナーシェフ
長谷川 誠
NTTドコモ
コンシューママーケティング推進担当部長/シニアプロフェッショナル
浜田 岳文
アクセス・オール・エリア
代表取締役
山本 典正
平和酒造
代表取締役社長
(モデレーター)
榊 淳
一休
代表取締役社長
西井 敏恭
シンクロ
代表取締役
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▶『-世界No1フーディー登壇- 大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン12)』の配信済み記事一覧
榊 では、残り15分なので、大野さん、5分ちょっとでお願いします。
海外有名店で「働きたい」と直談判
大野 今までのシーズンでは海外のお店のことをメインにお話ししていましたが、今回はNo.1フーディーの浜田さんがいらっしゃいますので、お客様からよく聞かれることを、いくつか取り上げてみようかなと思います。
よく、「シェフはどうやったらなれるの?」と聞かれます。
最近、料理人のドキュメンタリーや映画がすごく増えてきました。
すごく楽しくてクオリティも高くて、僕も嬉しいなと思っています。
まず、料理人には、誰でもなれます。
自ら料理人を名乗ったり、ちょっとレストランにいれば、誰でも料理人です。
ただ、シェフというのは、またちょっと違います。
あっ、僕は食べ歩きをしていますが、ちゃんと毎日料理をしています(笑)。
SNSが広まる前は、料理人になりたかったら働きたいお店に、手紙を送る、あとは直談判をするなどの方法がありましたが、僕の場合は、ほぼ直談判でした。
食べに行って美味しかったお店に修行させてくださいと頼んだり、電話をして予約が取れなかったけれど、とりあえずお店に押しかけて頼んだこともありました。

ペルーのCentralは世界一の店なので、世界中からメールが届いて多分見てくれないだろうなと思っていましたが、たまたまInstagramでシェフのヴィルヒリオ(・マルティネス)がオンラインになった時にDMを送ったら、OKと返ってきて働くことができました。
レストラン内の階級と役割
大野 今ちょっと問題にもなっているのですが、「スタジエ(Stagiaire)」という、料理人を目指す人が無給で働く研修制度があります。
無給で頑張って働いて認められたら、そこで初めて「コミ(Commis)」と言われる一番下の見習いになれます。
正社員がコミからか部門シェフからかは微妙なところですが、時給が発生するのがだいたい部門シェフからです。
その上が、スーシェフといわれる副料理長、最後に料理長で、オーナーシェフと一緒ですね。
どんどん出世していきます。

各部署の仕事がどうなっているかというと、スタジエや研修生、日本で言うとインターンもあると思いますが、彼らには基本的に責任がない仕事をやらせるので、よくあるのはお花をちぎる仕事です。
レストランに食べに行った時に、シェフが経歴をたくさん並べているのを目にされたことがあると思います。
僕もまあまあ多いですが、花をちぎっていても、履歴書には書けてしまうので、海外のお店に関しては経歴を一概に信用するのは難しいです。
基本は、花をちぎったり、まな板をセットしたりすることから始まり、その後、コミになると野菜を切る手伝いなどをします。
部門シェフになると、持ち場に対して責任を持ってやるようになりますし、大きな店の部門シェフであれば、営業時間外に営業もしています。
実際に料理を作っているのが、部門シェフです。
副料理長であるスーシェフは、正直、料理をするというよりも中間管理職で、味の確認や火入れが失敗していないかなど、監督をします。
メニュー開発をする方もいます。
Synのような小さい店では、オーナーシェフでも、スタジエがするようなことを全部やりますし、僕はたまに失敗しますが、予約管理もしています。
大きい店のオーナーシェフやエグゼクティブになると、だいたい座ってキッチンでInstagramを見ているような方が多いのが実情です(笑)が、ロビー活動などもします。
僕が働いてきた海外の三つ星レストラン、二つ星レストラン、ベストレストラン50に入るような大きいお店では、メニュー開発のための担当者がいて、一緒にメニューを作ったりしていますね。
1日5回の掃除、ほぼ寝ていなかった修行時代
大野 時代が変わって色々変わりましたが、僕が22歳の頃は1日1時間とか30分しか寝ずに修行していました。
(一同笑)
三つ星になると北欧、スペイン、北米は掃除の時間がえげつなくて、1日5回とかやりますね。

この時の僕は、体重が48kgぐらいでした。

レストランによって、色々なルールがあります。
このシカゴのお店には、無駄な音を出さないというルールがありました。
ここで初めて知った単語があって、「quiet」ではなく、「dead silent」というのです。
歩かない、止まらない、走れというルールがあり、病欠はクビでした。

その代わりモチベーションは高く、「One team, one dream」という言葉があるのですが、基本的には互いが互いを蹴落として上に行く、それが世界一を作るというシステムでした。
伝説のレストラン、Fävikenの素晴らしさ
大野 僕が30歳の時にいた、今では閉店したスウェーデンのFävikenという二つ星のお店は、逆に今風で素晴らしいなと思いました。
▶ミシュラン二つ星店が閉店へ、家族優先で スウェーデン (CNN.co.jp)

1日に働く時間は基本的に10時間くらいで、12時にお店に行ったら一斉スタートで、絶対に仕事を早く始めてはいけません。
時間内に間に合わなかったら、自分の仕事の技量がないということで降格させられます。
効率と仕事の技量を問われる、ある意味本当に素晴らしいシステムだなと思いました。
高級店あるあるの長時間労働のシステムが変わりつつある、素晴らしいお店でした。
こちらは、賄いやパーティーで閉店までいた時の様子で、朝、雪山に行き枝を取ったりもしました。

「システムをつくる」ということについて、お話をします。

お店によって色々なシステムがありますが、Fävikenなどさまざまなお店で働いて、良いと思ったところは、自分の店に取り入れています。
労働時間以外になりますが、すみません。
一つは、営業中に怒らないことです。
料理人はだいたい短気ですが、ここ20年ぐらいで料理人やシェフが変わってきたのは、メディテーション(瞑想)をして、アンガーマネジメントをすることです。
僕のことは置いておきましょう(笑)、まだできていないですけれども。
効率良くやることが、お客様のためになります。
それから、マニュアルを作っています。
一つ一つ面倒ですが、ルールやマニュアルを作ることで、初めて来た研修生もミスを起こしません。
「賄いで何を食べているの?」に答える大野さん

大野 あと、お客様によく聞かれるのは、「賄いで何を食べているの?」という質問です。
大きい店の場合は、パートに分かれて賄いを作ります。

30〜60人くらいの大きな店にいましたが、デザートもありました。
研修生だけ、土曜日に自分の国の料理を作るので、僕も色々作って、ラーメンも作りました。
Synでは僕もパティシエも、賄いを作ります。
日本には残り物をうまく使う文化がありますが、海外の三つ星レストランで働いていて面白かったのは、クリスマスに、白トリュフなどを賄いのグラタンに遠慮なくバンバン使うことです(笑)。
ペルーのお店では、皿洗いをしている現地の方が、賄いにペルー料理を作ってくれました。
Fävikenでは、主にスーシェフが作ってくれて、今、Eleven Madison Parkというニューヨークの三つ星のお店で働いている方ですが、賄いが上手でしたね。
こちらの写真は、ペルーのCentralで働いていた時のものです。

ガストロノミーらしくペルーの文化、アマゾンの文化を伝えるお店で、営業の1時間前に1人ずつ毎日15分、ローテーションでスタッフがプレゼンをするという面白い取り組みがありました。
テーマは自由で、食材や自分の国の文化などです。
みんなで、料理だけでなく、文化に対しても深い知識を得ようとし、それをまたメニューに取り入れるという、すごく新しい取り組みだなと思います。
気鋭のレストラン「Syn」が実践する組織のルール
大野 Centralから学び、シェフや先輩が食べた後の皿を下の人が洗う習慣をやめ、自分自身で洗うことにしました。
それから、仕事が間に合えば自由に出勤していいことにしました。
なんだかんだで朝9時から来ますけれども。

やはり大事なことは、世界中で「ありがとう」と告げることです。
僕が海外で修行した時に、「Thank you」と言って頭を下げると、周囲が驚くのです。
おそらく、あまりそういう文化がないのですよね。
あとは、全員で味見をする、個人のステージを用意するということで、一人ひとりその人に合ったステージを作ることも、僕の仕事かなと思っています。
各々が色々な場所に行って仕事ができる環境を作るのが、ひとつかなと思います。
浜田さんのUMAMIHOLICと似たもので、海外の食べ歩きツアーを開催していて、昨年はスウェーデンとデンマーク、今年の2月には台湾に行きました。
11月はポルトガル、来年はフィリピン、メキシコを計画しています。
こうやって料理と文化を色々学んで、お客様に提供していくことを心がけています。
次回は、お客様に色々聞かれることの多い、料理についてお話しできればと思います。
ありがとうございました。
西井 僕が知らない世界だったので、むちゃくちゃ面白かったです。
段階も役割もあって、意外にスーシェフは何もしないのかなとか。
大野 そんなことはないですけどね、忙しいので結構大変です(笑)。
「どこにいたか」ではなく「何をしたか」
西井 あと、スタジエなのに、星付きレストラン出身を名乗っているシェフは誰なのか、後で教えてほしいなと思いました。
大野 ここでは言えないですね。
榊 浜田さん、一言ありますか?
浜田 多分、それはみんなだと思います。スタジエでも書きますので、何をやっていたのかが大事です。
西井 日本でも、「○○で修行しました」と言うような。8割ぐらい、名乗っているイメージですか?
浜田 多分、みんな書くのではないかと思います。
ほぼ100%書くと思うので、どこで何をやっていたかという中身が大事になります。
大野 おっしゃる通りです。
浜田 あとは、大野さんがされたレストランの話は、お客さんが60人入るようなヨーロッパの大型店の話で、日本のお店の99%は小さいので、あれほど細かく役割は分かれていないし、エグゼクティブシェフを名乗っていても、大野さんがおっしゃっていたように、全部の仕事をやります。
ハセマコ 日本人のスーシェフがめちゃくちゃ優秀という話は、世界的にそうなのですか?
浜田 そういう現状はありますが、ただ、今は変わってきているかと思います。
ヨーロッパの名店で働く日本人は明らかに減っていて、かつ労働環境も含めて要求をレストラン側に突きつける人が多くて、レストラン側は使いづらいということで、最近だと韓国人やオーストラリア人、他の国の人を重用する状況があります。
ここから先10年、20年でいうと、ヨーロッパの名店で修業して主要な役割を占めていた日本人は確実に減ると思います。
ハセマコ ちょっと前のトレンドであって、今は減ってきているということですね?
浜田 変わってきています。
今もそういうポジションにいる日本人はいますが、次の世代はかなり少ないと思います。
大野 悲しいことです、本当に。
ペアリングで真価をさらに発揮する店①「馳走 啐啄一十」
榊 では、最後に山本さん、お願いします。
山本 時間が少ないので……

榊 残り4分です。
山本 わかりました。
私はお酒を造る側の人間ということで、非常に素晴らしい、ペアリングでさらに美味しくなるお店をご紹介したいと思います。
馳走 啐啄一十 (ちそう そったくいと)の平野寿将さん、このお顔に見覚えのある方はいらっしゃいませんか?

男前で注目されて、テレビによく出ていた料理家です。
平野さんはご出身が愛媛ですが、広島で日本料理のお店を始めて、お店は大変評価が上がっています。
なぜ広島でお店をというのは、呉の盛川酒造の仕込み水が超軟水で、それに惚れて、それで作る出汁が美味しいという理由で、お店を出されたそうです。
もちろん平野さんのお料理は素晴らしく、国際唎酒師を持っている木村(理恵)さんの日本酒を使ったお燗もまたすごく美味しいです。
これは一升瓶で燗付けをするスタイルで、彼女のこだわりで、45分、米を炊くようにお燗を付けます。
燗酒で、平野さんのお料理にさまざまなペアリングをしていきます。
広島の仕込み水で作られたお料理と広島のお酒で合わせていくのですが、お酒のペアリングがあることでお料理がより引き立ちますので、大変人気で予約の取れないお店になっています。
おそらく木村さんの影響は、大きいだろうと思っています。
ペアリングで真価をさらに発揮する店②「Yama」
山本 時間がないので、もう1店だけご紹介しますね。
Yamaというデザートのコースのお店です。

アシェットデセール(皿盛りのデザート)だけでやっているコース仕立てのお店ですので、これだけでも非常にユニークです。
最近デザートのコース仕立てのお店は増えてきていますが、Yamaは最近ミシュランの一つ星を、このジャンルで唯一、日本で初めて獲得したお店です。
ペアリングはシェフ(勝俣孝一さん)が全部行っていて、アルコールは最初のスパークリングワイン、シャンパンだけになっています。
その他は、全部お茶やノンアルコールのペアリングを楽しめるということで、お酒を飲まない方も楽しめる美味しいペアリングのお店です。
さらに私が特におすすめしたいのはクリスマスシーズンで、なんと普段の禁を破り、デザート以外の肉料理も出てきます。
左から2つ目は、ごま油を使った料理で、ご飯と肉で食べてくださいという、ファンからすると垂涎ものです。
この時、もう一つ禁を破り、ノンアルコールペアリングでなく、アルコールペアリングも完璧にされます。
実はシェフはワインセラーに300種類ワインを持っているぐらいワイン好きで、シェフの方が一皿一皿に合わせてお酒を出されます。
ペアリングの非常に難しいところとして、シェフとソムリエの息が合っているかどうかが非常に大事です。
Yamaはシェフがペアリングを全部決めますので、アルコールペアリングも素晴らしいですし、ノンアルコールペアリングもハーブを使ったり非常に工夫されていますので、ぜひ皆さんに体感してほしいということをお話しさせていただいて終わりにします。
榊 ありがとうございます。
西井 面白かったです。
榊 美食道シーズン12は、いかがでしたでしょうか?
美食家の皆さんに、盛大な拍手をお願いいたします。
ありがとうございました。

(終)
▶カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Xをぜひご覧ください!
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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美


