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7. 系譜シリーズは「天ぷら」、店と食べ手のフレームワークも完結!【終】

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ICC KYOTO 2023のセッション「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン7)」、全8回の本編最終回は、変態美食家のハセマコさんのお勉強シリーズ。2023年上半期のMVP店の発表にちなんで、今回は「天ぷらの系譜」を解説します。加えて過去のシリーズでも紹介してきた店と食べ手のフレームワークは、「食べ手の技」解説でついに完成!最後までぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは ノバセル です。


【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 9E
大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン7)
Supported by ノバセル

「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン7)」の配信済み記事一覧


2023年上半期のMVPは天ぷらの名店!

長谷川 そして今回、2023年上半期、一番良かったお店のMVPが久々に出ました。

西井 今までで、MVPは…。

長谷川 千葉の「天白」という天ぷら屋です。

天一」出身のシェフのお店で、揚げの技術にとにかくこだわり、心技体のフレームワークで言うと「技」に特化しています。

正直、天ぷら屋の中で一番美味しいと思います。

今、まだ予約も取れるので、皆さん今のうちです。

山本 「みかわ」は超えますか?

長谷川 そうですね、ついに超えました。

毎回ここでMVPとして紹介する店はオススメリストに載るレベルですが、天白には今年既に3回行っているので、5年に1度くらいの当たりのイメージですね。

 へー、すごい。

長谷川 めちゃくちゃ良いお店だと思います。

山本 最寄駅は千葉駅ですか?

長谷川 千葉駅から徒歩15~20分くらいです。

山本 行ってみよう!

西井 予約もまだ取れるし…。

長谷川 西井さんも、勝手に通い始めています(笑)。

(一同笑)

西井 もう3回行っています(笑)。

長谷川 スライド下側には、長野のめちゃくちゃ美味しいカレー屋「ナマステ」、そして東京のイタリアン「aniko」はイタリア郷土料理でかなり美味しいです。

つねちゃん」という大阪の焼肉屋、銀座しのはらの二番手である澤田さんの「澤田」が大阪の福島・新福島駅周辺に最近オープンしました。

今なら予約が取れると思いますが、すぐブレイクすると思うので早めに行ってください。

前回は、すがけん(株式会社Moonshot 菅原健一)さんとパフェについて語ったので、パフェの美味しいお店として「パペルブルグ」という八王子にあるカフェを紹介します。

ここの桃のパフェは、前回話したような、階層になっていて、食べるごとに味や食感が変わる、まさに構造化されたパフェでした。

僕は絶賛しているので、すがけんさんにも行ってもらえればと思っています!

系譜シリーズ、今回は「天ぷら」を紹介

長谷川 さて、天ぷらが出てきたので、天ぷらの歴史について語ろうと思います。

あまりにも天ぷらがおいしかったので、集中的に天ぷらについて勉強してきました(笑)。

以前、和食について語りましたが、その際、和食は平安時代から脈々と、僧侶や武士の文化として受け継がれてきた経緯を説明しました。

スライドの下に簡単に記載しています。

一方、天ぷらを見てみると、案外歴史が浅いことが分かります。

室町時代にポルトガルから伝来したものが元祖と言われていますが、それが長崎から西の方にやって来て、大阪で色々な文化と混ざり、西の文化となりました。

ちなみに、関西では、魚のすり身揚げも未だに天ぷらと呼びます。

伝来した室町時代や戦国時代には今のような天ぷらの姿はしておらず、江戸時代に現状の天ぷらに発展し、屋台文化の中に取り込まれていったというのが、天ぷらの歴史として語られている内容です。

江戸の天ぷら屋台でさくっと食べるという文化が全国に広がり、和食文化と同様、徐々に名店と呼ばれる店が生まれ始めます。

専門店が増え始めると、上手な職人の店が生まれるので、名店の系譜が生まれるということです。

次に、本邦初公開の天ぷらの系譜です。

天ぷらの系譜を作っているのは、僕くらいだと思いますが(笑)。

めちゃくちゃ大きく分けると、「天一系」「天政系」「山の上系」「みかわ系」の4つです。

もちろんこれ以外にもありますが、これ以外は江戸前の正統ルートと言うよりも、独自に修行された店で、大きく分けるとこの4つだと思います。

天一の中には、先ほど紹介したMVPの「天白」や、(麻布ヒルズに)移転準備中の名古屋の「にい留(にいとめ)」があり、それ以外にも名店が揃っています。

天政系」は、比較的リーズナブルで庶民的な店が展開されています。

「山の上系」としては、御茶ノ水の有名な山の上ホテルにある、天ぷらの有名店「山の上」から、「てんぷら 近藤」など名店が生まれています。

また、残念ながら既になくなってしまった「楽亭」からも、系譜が派生しています。

今、天ぷらで一番有名なのは「みかわ 是山居(ぜざんきょ)」かと思います。

「みかわ是山居」は「天庄」からの派生で、「みかわ系」という一大系譜を作り上げており、僕と山本さんで珍しく意見が一致した「秋田 てんぷら みかわ」という素晴らしい店も生まれています。

それ以外にも、「しおや」など、みかわ出身の職人の店が全国で展開されています。

和食や寿司においても、なぜ系譜というものが重要かということを過去にも語っています。

一つの店に行って系譜を辿っていくと、修行のルーツや技が分かりますので、系譜を理解しながら食を楽しんでもらえればなと思います。

西井 ちなみに、同じ系列であればやはり味は似ているのでしょうか?

長谷川 良い質問ですね!

西井 素人なので(笑)。

長谷川 「山の上系」と「みかわ系」は、結構似ています。「天一系」は、かなり違います。

西井 そうですよね、「天一系」の店を見ていて、全部違う感じがしました。

長谷川 山の上とみかわ是山居は偉大な味すぎて、初代のその味をみんなが受け継いでいるイメージです。

守破離で言うと、どの店も「守」をやっているイメージです。

逆に「天一系」は、破って離れて、独自の道を行くような…まあ、天一系は規模が大きいという理由もありますが。

「天一系」の職人は、自分の道を行く人が多いのかなと思っています。

ハセマコが半年間、練りに練った最新フレームワーク

長谷川 今日一番話したかったのが、こちらです。

美食道ではフレームワークを使って店を分類しているわけですが、個性が陽か陰か、スタイルが伝統か革新か、バランスが心技体、系譜が守破離、というふうに分けられます。

過去のセッションの中で、心技体のうち「心」と「体」の分解は既に行ったので、今回は「技」の分解をしたいと思っています。

店の「技」の分解です。

「技」は、高さと幅と奥行と構成で成り立っているというのが、今回一番話したかったネタです。

「高さ」は、基礎技術です。

食材があって、それを美味しくする、シンプルに引き上げるスキルです。

「幅」は、ジャンルを超えるスキルで、柔軟性やメニューの多様性などです。

「奥行」は、説明が難しいのですが、深く掘り下げ、磨き抜く、つまり研鑽を感じさせられるかということです。「高さ」とは違い、重厚さというか、深みのようなものですね。

それに加えて「構成」は、例えばコース料理の店であれば、全体のバランスや抑揚、順番であり、これがめちゃくちゃ大事です。

店の技をを見るときに、高さ×幅×奥行×構成をイメージしてもらえれば、理解しやすくなると思います。

山本 フォーディメンションですね。

長谷川 まさにその通りです。

構成の要素が必要なので、どうしても三次元だけでは足りないのです。

前回のパーパスもそうですが、三次元で収まらなかったものを外出ししています。

ただのイメージですが、フォーディメンションのイメージはこんな感じです。

1皿目、2皿目それぞれに高さ、幅、奥行があり、それが10皿目などにつながっていく流れが構成です。

この図は適当ですが、1皿目は高さが低いけど幅が広いのでトリッキーな料理、2皿目は奥行と高さがあって幅が狭いのでその店の本流、正統派の料理、みたいな感じで構成が生まれます。

最終的にはその構成も含めて、トータルのバランスがそのお店のスキルと言えると思います。

単なるイメージなので、細かくツッコまないでください(笑)。

西井 最近、一緒に食事に行くと、「高さが足りない」とか言うんですよ。

(会場笑)

長谷川 (笑)。

 このセッションを意識されているのですね。

西井 明確にこの図を使って説明してくれているのですが、僕の頭の中にはこの図がなかったから、何を言っているか分からなかったわけです(笑)。

 これは、半年考えて行き着いた結論ですよね?

長谷川 これはずっと話したかったので、練りに練ったネタです(笑)。

(会場笑)

宮下 作る側としては、これは意識していますね。

DJのセットリストに似ているとも言いますが、抑揚は気にしています。

山本 単品のお店だと、3Dで成立するのかもしれないですね。

長谷川 おっしゃる通りですね、一皿だと3Dで成立します。

食べ手の技とは、知識×経験×味覚

長谷川 続いて、食べ手側のフレームワークです。

過去にも似たようなことを話していますが、心技体の体はメンタル、フィジカル、財力で、心は真善美とパーパスで分解をしたので、今回は技を分解してみます。

食べ手の技とは、知識×経験×味覚です。

山本 会場の皆さんが、めっちゃ写真撮ってる(笑)。

何なんだ、このセッションは(笑)。

長谷川 知識とは、食材についてや、先ほどの天ぷらの系譜など、シンプルに食に関する知識です。

経験は、時間軸も含め、幅広い食経験を積んでいるかということです。

味覚は、店に共感できるくらい、正しく味を理解しているかということです。

西井 僕の場合、どうでしょう?

長谷川 え、まず知識が足りないですよね。

(会場笑)

知識が足りない、でも一緒に食事に行っているので、まあ経験は徐々に積んでますよね。

味覚は…西井さんの味覚は鋭く成長してきていると思うので、知識を身につけてください。

西井 分かりました(笑)。

(一同笑)

らしいです、頑張ります(笑)。

長谷川 フレームワークが出揃ったので、まとめてみました。

店のフレームワークがあり、さらに心技体は細かく分解されます。

食べ手のフレームワークも今回、同様に「技」まで分解しました。

店と食べ手がこのように分解されるので、このフレームワークを頭に入れながら食事を楽しんでいくと、徐々に美食道に入り込んでいけると思います。

いつも勝手にまとめているので、今回もまとめました。

今日は食べログアワードの地域別分析とアワード紹介をし、MVPの店を発見したので天ぷらの歴史と系譜を語り、技を(高さ×幅×奥行)×構成に分解しました。

まとめると、地域、時系列、技を立体的に捉えることで解像度を上げ、美食道において精進していきましょうということです。

以上です。

 皆さん、いかがでしたか、シーズン7。

(一同拍手)

1分オーバーしましたが、改めて登壇者の皆様に拍手をお願いします。

今日はありがとうございました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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