「楽天の社内英語化などの施策は、三木谷が組織の潜在能力を信じるがゆえ」(楽天創業メンバー・小林正忠さん) | 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

5.「楽天の社内英語化などの施策は、三木谷が組織の潜在能力を信じるがゆえ」(楽天創業メンバー・小林正忠さん)

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「組織のWell-beingとは何か?」9回シリーズ(その5)では、楽天創業メンバーの小林正忠(せいちゅう)さんが、2010年から2年の準備期間を経てスタートした同社の英語公用語化を振り返ります。「2年以内にTOEICスコア800を超えないと役員解任」、背水の陣に立たされた正忠さんは、当時何を思ったのでしょうか? ぜひご覧ください!

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【登壇者情報】
2019年2月19-21日
ICCサミット FUKUOKA 2019
Session 6F
組織のWell-beingとは何か?
Supported by ネオキャリア

(スピーカー)

石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者

小林 正忠
楽天株式会社
Co-Founder and Chief Well-being Officer

柴田 紳
株式会社ネットプロテクションズ
代表取締役社長 CEO

羽田 幸広
株式会社LIFULL
執行役員 Chief People Officer

森山 和彦
株式会社CRAZY
代表取締役社長

(モデレーター)

中竹 竜二
(公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター /
株式会社チームボックス 代表取締役

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最初の記事
1. デートは「最後」が肝心!? Well-beingを高める「体験」の設計とは?

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4.「昨夜しっかり眠れた?よし、報酬!」オリジナル・ウェディングの先駆け、CRAZYの“クレイジー”な睡眠報酬制度

本編

社長の仕事は、社員と社員の“掛け算”を作ること

正忠 組織におけるWell-beingに話を戻すと、社長の仕事は掛け算を作ることだと思いました。

例えば楽天では、「Believe in the future」がスローガンになっています。

未来を信じられる人が「1.1」、信じられない人が「0.9」だとすると、後者の人間がいくら集まっても、パフォーマンス値は減っていくわけです。

楽天株式会社 Co-Founder and Chief Well-being Officer 小林 正忠さん

でも未来を信じている人であれば、集まれば集まるほど、掛け算の値は大きくなっていきます。

個々人のWell-beingが成立していたとしても、正しく掛け算になっていなければ、会社としてのパフォーマンスが出ません。

ネットプロテクションズのように各社員が自由に仕事をしていても、掛け算してパフォーマンスを出す仕組みを作ることが社長やマネージャーの仕事なのではないでしょうか。

CRAZYのランチやチーム全員での握手というのも、習慣からその掛け算を作る仕組みですよね。

羽田 掛け算という文脈では、みんなが好き勝手している状態を統合するスキルは、今後の経営者やマネージャーには必要だと思います。

ただLIFULLでは、組織に関して掛け算を作るために何かをするというよりは、業績に関することとエンゲージメントに関することについて何かが起こればアクションをとる、という形をとっています。

森山 掛け算については、1.1だという認識が大事だと思います。

また、その「認識を作る」ことが難しいと日頃から思っています。

Well-beingが幸せに近いものを指しているとすると、相対化すればするほど難しくなります。

他社と比べて、自社がまとまっていないとか不幸だとか思いがちです。

それを人の力で変えなければいけませんが、限界もあります。

幸せやWell-beingが相対化されすぎない状態で、絶対性のある認識となるにはどうすればいいのでしょうか。

「組織のWell-being」の評価は相対的? それとも絶対的?

株式会社Campus for H 共同創業者 石川 善樹さん

石川 西洋と東洋でも違いますよね。

冒頭にお見せしたハシゴで10点が最高の組織、0点が最低の組織だとすると、西洋人は10からの引き算で点数を決める傾向があります。

中竹 減点方式ですね。

石川 彼らは10点がどのような状態か、絶対的な何かを持っているのです。

しかしアジア人の場合は5点、つまり中央値からスタートします。

人並みとは何か?という考え方から始めるのです。

しかし、組織内にいると5点がどんな状態かどんどん分からなくなってきます。

例えば働きやすい会社1位になると、ハードルが高くなって大変ですよね(笑)。

森山 そのように、5点の基準が上がってしまうことが問題だと思っています。

幸せを感じにくくなってしまいますよね。

中竹 逆に私は、その5点の状態が何かという基準が上がるのは良いことだと思っています。

スポーツでは、チームづくりにおいてRPE(Rate of Perceptual Endurance)という運動強度を測る基準を使います。

主観的に、その日の練習がどれくらいきつかったかを聞くのです。

今はGPSがあるので、実際にどれだけきつかったかはそれを見れば分かります。

このRPEという手法は、選手が「今日はきつかった」と答えれば次の日の練習が楽になると考えるだろうと言われ、当初はあまり使われていませんでした。

しかし組織の文化が創られていくと、GPS上ではシーズン前に比べて圧倒的に強度の高い練習をしていたとしても、選手は「そんなにきつくなかった」と感じるのです。

これはつまり組織の進化ですから、良いことではないでしょうか。

社員の期待値の調整、制度に対する「慣れ」への対処

柴田 我々の会社は新卒が多いので、他との比較がなかなかできません。

ですから、この文化を他の会社も持っていると勘違いしがちです。

それが転職への呼び水になりますね。

中竹 でも戻ってくるのではないでしょうか?

柴田 戻ってくることは結構あります。

新卒採用と中途採用のバランスが必要だと思っていて、7:3くらいでしょうか。

新卒で背骨をつくった上で、外からの刺激を入れるのが良いと思っています。

羽田 うちは逆に、中途採用が7割です。

以前、即戦力として積極的に中途採用を行い、それによって文化が乱れたことがありました。

最近は社是である「利他主義」を打ち出して、期待値を調整しています。

中竹 その結果、その主義を理解した人が入社しているのですよね?

羽田 そうです。

石川 ちょっと話が戻りますが、森山さんが仰っていた認識を揃える難しさとは、具体的にどういう時に感じるのでしょうか?

森山 例えば、ランチには45分使いますが、慣れてくると「仕事したいな〜」と思うようになります。

つまり、制度に慣れると、それが評価する対象ではなくなってくるのです。

そうなると、「もっとエキサイティングな職場であるべきだ」という声が出てきたりして、いたちごっこになってしまいます。

みんなが幸せだと感じられるような状況を作るのが、組織がWell-beingだと評価されるためには大事ではないでしょうか。

正忠 ところでなぜ、人間は比較してしまうのでしょうか?

石川 良い質問ですね。

なぜ、他社や他者と比較してしまうのか?

正忠 例えば楽天は、朝食も昼食も夕食も無料です。

最初は感動しますが、数ヵ月経てば当たり前に変わり、感動が継続しなくなります。

今日のメニューを美味しいレストランのそれと比較すると、感動どころかガッカリさえしてしまいます。

人間が比較をやめるには、どうすればよいのでしょうか?

他人と比較することをやめれば、もっと幸せを感じられると個人的には信じているのですが。

「今日も、新しい1日が始まる」という、本当であれば素敵なことに感動できない人が、たくさんいます。

つい「あの人は自分よりいい車に乗っている」となってしまいます。

どうすればよいのでしょうか?

石川 脳を取り替えるか、退化させるしかないですね(笑)。

他の哺乳類にはない人間の特徴として、「自分が体験しなくても、他人の体験から学べる」というものがあります。

ですから、他人を見てしまうというのは、そうプログラミングされている気がします。

中竹 ミラーニューロンと言われますよね。

石川 期待値が下がるのは、大病をした時です。

大病をすると、有難い、つまり有ることが難しいと感じるようになります。

羽田 ランチを一旦やめれば、3ヵ月くらい経ったら「やっぱりランチ大事だよね」となるのではないでしょうか。

中竹 その揺らぎが良いのかもしれないですね。

森山 やめてみるということですね。

楽天の“揺さぶり施策”は「組織の潜在能力を信じるがゆえ」

石川 楽天は、揺らぎの入れ方が上手な気がしますよね。

中竹 揺らぎというか、揺さぶり感じがしますけどね(笑)。

(会場笑)

正忠 そうですね(笑)。

この間、2000年(創業4年目)に入社したある社員と、うちの会社のドタバタやトラブルについて振り返っていました。

彼が最後にメールで送ってきた言葉にグッときたのです。

それは、「楽天はモーターボートサイズからタンカーサイズになっているにもかかわらず、モーターボートのごとく舵を切り、スピードを上げている」というものでした。

つまり、英語化の当時は10,000人規模になっていたのに、突然「英語だー!」となりました。

そうやって舵を切ると、振り落とされる人もいるし、壊れる部品も出てきます。

しかし完全に曲がり切ると、そこには全く新しい世界が広がっていたのです。

世界中の素晴らしい才能を持った人たちが働ける職場に変わりましたし、世界中のスタートアップを買収できる会社になりました。

個人的なお話を1つ共有させてもらうと、英語化を始めた時、三木谷は僕に日本語を使わなくなりました。

一対一で話しているのに、ずっと英語のわからない私に向かって英語で話し続けるのです。

羽田 プライベートでもですか?

正忠 プライベートでも。

私が英語ができないのを知っているので、甘えさせてくれなかったのです。

少しでも日本語を使うと、正忠は甘えてしまって結果的にはマスターできないと考えたんでしょう。

ようやく日本語が解禁されたのは、ここ何年かのことです(笑)。

石川 それは優しさですね。TOEICである基準をクリアしないと、給料が下がるのでしたっけ?

正忠 給料が上がらなくなり、昇進もできなくなります。

当時のスコアが320くらいでしたが、2年以内に800を超えなければ役員を解任されるという状況でした。

役員には、背水の陣で臨ませたいという意図からです。

役員が率先垂範で社員に背中を見せるべきだということです。

当初の平均点が520ほどでしたが、今の平均点は840を超えています。

中竹 すごいですね。

正忠 別に全員が海外と関わる仕事をするわけではないのですが、全社員向けの会議なども英語でやります。

中竹 その組織を作ったのは、揺さぶりによるものですよね。

正忠 誰よりも、三木谷が人間の潜在能力を信じているのでしょうね。

「海外に出れば、4歳や5歳の子どもでも英語を話しているのだから、できないわけがない」と。

石川 楽天の英語化施策は、日本の企業としてはトヨタ以来、ハーバードビジネススクールで必修授業で教えられるケースとなりました。

すごいことですよね。

中竹 ではそろそろ、会場から質問をお受けしたいと思います。

(続)

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続きは 6. 社員の業務内容にどれくらい「自由度」を設計するか? をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/戸田 秀成/大塚 幸

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