KLab五十嵐さん、VOYAGE GROUP 宇佐美さん、メルカリ小泉さん、サイバーエージェント曽山さんが登壇した「強い組織/企業文化の作り方」の第三弾です。多くの方にシェア頂きたい内容です。
参加した経営者の方々から大絶賛だったセッションの「その3」の「成長企業の福利厚生はどうあるべきか? 社員のミスマッチにどう対応すべきか?」を是非ご覧ください。
登壇者情報 ICCカンファレンス TOKYO 2016 Session 2B 「強い組織/企業文化の作り方」 (スピーカー) 宇佐美 進典 株式会社VOYAGE GROUP 代表取締役社長兼CEO 小泉 文明 株式会社メルカリ 取締役 曽山 哲人 株式会社サイバーエージェント 執行役員人事統括本部長 (モデレーター) 五十嵐 洋介 KLab株式会社 取締役副社長 COO
その1はこちらをご覧ください:強い組織をつくるため必要なこととは何か?
その2はこちらをご覧ください:企業文化を浸透させるには何をすべきか?
曽山 そうですよね。
社員のどんどん力を借りて、発言してもらい、関与してもらうんですよね。
ただ、意思決定は経営陣が行うことが重要ですよね。
ここを社員と一緒に行おうとすると平凡なビジョンとかになりがちだなと思います。
人事制度も同様ですね。
五十嵐 今、社員の方をいかに経営とかの意思決定に巻き込んで、当事者意識を作っていくか?という話があったと思います。その中に例えばVoyageさんの「ボーディングパス制度」やサイバーエージェントさんの有名な制度で「CA8」(取締役は8名とし、取締役を定期的に入れ替える制度)があると思います。
お二人(宇佐美さん曽山さん)もその「CA8」を卒業されたメンバーでもいらっしゃるわけですけど、そういうふうにいろんな人を登用して、経営の意思決定に携わる機会を創っていらっしゃると思います。
Voyageさんの「ボーディングパス」の場合ですと、ある種インターンシップ的な感じに経営に入ってくるみたいな感じですよね?
こういう仕組みっていうのは、実際にやってみると案外運用が難しいというか、「ボーディングパス」で入ってきた社員がいる前で本音で議論できなくなったりとかしがちなんじゃないかな?という懸念を皆さん感じると思うのです。
実態の運用としてはどういうふうにされるんですか?
曽山 「ボーディングパス」では若い人が経営会議に参加するのでしょうか?
宇佐美 「ボーディングパス」とは、毎週役員会を開催しているのですけど、そこに3カ月間役員と同様に参加できるという制度です。
四半期毎に社員の中から参加したい人を募集して、役員にて1人か2人を選んで参加してもらっています。
五十嵐 立候補制ですか?
宇佐美 立候補制です。
基本的には、当社の場合はほとんどの人事制度は全て立候補制ですね。手を挙げて、やりたいと言った人の中から選ぶことを基本としてますね。
入社2~3年目ぐらいの若手や30歳前後の中堅であったり、将来の役員候補のような人が入っています。
週次の役員会議だけではなくて、3カ月に1度開催する経営合宿にも参加しています。
曽山 経営合宿にも参加するんですか! すごい。
宇佐美 元々は、経営合宿だけに参加するというかたちでやっていたのですが、経営合宿で議論する内容の「前提条件」が分からないと、「何、話してるか分からない」ということがありました。
そうであれば3カ月間役員会にも参加させよう!という経緯です。
五十嵐 ボーディングパス制度で参加している人は、聴講者のような扱いなんですか? それとも完全に参加者として、発言もするのでしょうか?
宇佐美 発言もします。最近だと、エンジニアの人が入ってきて、「エンジニアは最近こう思ってる」とか、「そういうことをやるとエンジニアが結構嫌だと思う」とかそういうようなことを発言することもありますね。
曽山 年間4人ぐらいということでしょうか?
宇佐美 年間なので、6人から8人ですね。
曽山 結構多いですね。社員数が何人でしょうか?
宇佐美 現在300人ぐらいです。
曽山 すごいチャンスだな。
五十嵐 手を挙げればチャンスがあると考えると相当いい機会ですね。
宇佐美 この制度はすごくいい効果があるんですよ。組織がある程度大きくなってくると、役員が何を考えてるか分からないとか、結論だけ下りてくるみたいな、そういうふうになりやすいですよね。役員会でどのような議論がされているか分からないみたいな。
そういうところに、ボーディングパス制度で参加した人たちが入ってきて、「意外にちゃんとうちの役員は仕事してるよ」みたいになるんですよね。
曽山 よく考えてると。社員の目線で。
宇佐美 併せて、ボーディングパスに選ばれた人には、実はボーディングパスの予算が出るんです。その3か月間10万円の予算が出て、(社員と)積極的に「飲みましょう」という予算です。
曽山 いろんな人と「飲む」のでしょうか??
宇佐美 はい。もちろん機密情報はダメですが、そういった飲みの場を通じて、経営会議でどういうことを議論しているか、なぜこういった方針になったのかといった結論に至るまでのプロセス等を話すだけではなく、逆に積極的に彼らの声を聞いてきてリアルなフィードバックをくれたりします。
五十嵐 いいですね。それちょっと真似したくなりますね。
宇佐美 そうすると結構誘われるらしいんですよ。ランチでも飲みでも。
五十嵐 お金も持ってるし。
曽山 お金も持ってるし、情報は聞けるし。
宇佐美 あいつを誘えば財布があると。
曽山 それもいいですね。
新たな仲間を受け入れる空気感
五十嵐 Win-Winですね。いい仕組みですね。 ぜひこれ、真似させていただきたいと思います(笑)。
次に小泉さんに角度を変えて質問させてください。最近いろいろな知人がメルカリさんにどんどん入社していってまして、しかもすごく優秀な方だったりとか、知る人ぞ知るある会社のキーマンだったりする方ばかりです。さすがユニコーン(時価総額1,000億円の未公開企業を表現する言葉)の採用力だなと思って感服しています。
一方で、どんどんビッグネームが入って来ることは、組織的にある種、「外から入って来るビッグネームっていう異質なものをどう受け止めていいか?」っていう戸惑いだとか、あるいは、「いくら自分の会社だと思ってコミットしてても、もっとすごい人があとから入ってきて、自分の考えたこと変えちゃうんじゃないか」みたいな不安とかって生まれがちだと思います。
古参で頑張ってくれてる社員の方たちからすると、複雑な思いを感じたりとかして社内が難しくなったりって、結構いろんな成長企業が体験してきてる道だと思うんです。
メルカリさんではそこを予防されたりとか、あるいは奮闘されたりしてることって何かあったりしませんか。
小泉 そういう意味で言うと、まだ会社を創って3年なんですよね。サービスやって2年半で。ほぼ直近に入ってきたメンバーばかりなんですよ。
1年前とかから、人数も増えてますけども、健全に中途者を迎えるよっていう、そもそものカルチャーができてるって感じですかね。
そもそもみんな中途だしみたいな。
やっぱり僕らの会社は、「All for One」というバリューをすごい大事にしてるので。中途のメンバーに対して、情報をちゃんと与えるって言い方もなんですけど、仲間同士で受け入れようっていうカルチャーはすごいしっかり作っています。
意識しているのは、既存社員からお手並み拝見って思われてしまう可能性もあるので、そういう人が入ってきたら、まず分かりやすい成果が出やすいタスクというか、プロジェクトを任せるというのはやっていますね。
なるべく長いスパンの仕事を最初に与えしまうと、その人の評価がなかなか不確定のままずっとズルズルいくと、ネガティブな声とか出てきちゃうと思うんですね。「あの人結局何やってるんだろう」みたいな。
なので比較的短いスパンのものを与えて、1回みんなの中で評価を高めて、滑り出しがスムーズにいくような仕事の任せ方からスタートしていってるという感じですかね。
五十嵐 中途入社者の社内の信用残高をある程度形成してあげる手伝いをしてあげるということですね。
小泉 そうですね。そこだけは意識してますけど、あとはみんな優秀なので「成果が出るか出ないかはお前次第だよ」ということは、どんなに優秀なメンバーでも「失敗したらお前のせいだから」という話をして、普通にすごいプレッシャーをかけてやってますね。
五十嵐 なるほど。健全なプレッシャーとそういう仲間を迎え入れる空気が重要なわけですね。
小泉 結構、空気が大事かなって気はしますね。
曽山 実力がある中途の方が入ってきたときに、分かりやすいミッションというのは、誰が決めてるんですか? 小泉さんがほとんど?
小泉 僕が担当の部門であれば僕ですし、代表の山田が担当するところであれば山田だったりとか、それは役員陣で話しながら、「このぐらいが一番適切なんじゃないの」とか、「あれだったら◯◯さんがちょうどいいんじゃないか」みたいななことを経営会議で議論をしてます。
曽山 彼にこういうのやってもらおうかとか、そういう話をされる。
小泉 最初に採用するときにも、ある程度「この人いはこの仕事を最初やらせたいよね」というのが、もう決まっていますね。
既得権益化させない制度をつくるには
五十嵐 では、続けてテーマを変えてお話を聞いていきたいと思います。
皆さん、制度とか仕組みとか、いろんな社員の人たちに働き甲斐のある環境を作ろうといろんな工夫をされてると思います。
その中で、良かれと思って、例えば、先ほどのmerci boxとか、ボーディングパスとかいろんな制度を作られて、頑張ってこられてると思います。
ついつい、あまりにも待遇を良くしてしまったがゆえに、甘えとか、ある種の勘違いとかそういうのを生んでしまったりとかすることっていうのも、時にはあるんじゃないのかな?と思います。
実際、我々もそういう制度を作ってみたものの、上手く運用しきれず変なフリーライド(タダ乗り)を防げない仕組みにしてしまったことがあり、先ほどの曽山さんがおっしゃっるようなケースになってしまい、苦労してきたところがあります。
ぜひ、そういう甘えや勘違いをいかに予防して、先ほどおっしゃったような緊張感とどのように両立させているのかな?という話を伺えれば。
曽山 ちなみに、五十嵐さんのところは、何か上手くいかなかった制度はあるのでしょうか? 僕らはもちろんある前提ですけど。
五十嵐 本当に皆さんどこの会社でもやられてる制度だと思いますけれども、例えば業務で使うスマートフォンとかの購入補助金とかですね。我々は今でも(補助金を)出してるんですが、昔実際にあったケースでは「退職したい」という申し出をもらった後、最終出社日の直前ぐらいに補助金申請を出してきたりとかですね。「あれ?確か退職する予定だと聞いてるけど、この申請どういうことかな?」というのがありました。
会社としては、それは別にご褒美としてあげてるわけではなくて、あくまでも自己研さんとか、他社さんのコンテンツの研究とか、そういうものに役立ててほしいと思って補助いこうということを考えて最初は制度を作ったわけです。
そういう制度の精神とかではなく、「(会社が自分に)何かをしてくれるんだ」と権益のところだけを、悪気があるなしはともかくとして、そういう自己解釈してしまう。
特にそういう解釈をしてはいけないって明文化しているわけではないので、間違っているかというとそうでもないわけですが、結果的に経営が意図してない運用に落とし込まれてしまうということって時にはあると思うんですね。
この事例は非常に些細な問題ですけど、どの会社にもきっとあることだと思います。
こういうことがあったときにそもそもその制度を細かくガチガチにしていくというのは、あんまりいい方法じゃ僕はないと思うんですね。
例えば、退職が確定してる人間はその対象者から除外するという条項を付ければ解決するのか?というと多分違うと思うんですね。
そもそもで言うと、そういうことが起こらないような風土とか仕組みとかっていうのをもっと定めていく方法はないのかなと悩んだことが過去ありました。
皆さんもそういう経験がきっとおありだと思うので、何か取り組まれてることとか、ベストプラクティスみたいなものがあったら共有いただけないでしょうか?
曽山 こういう問題が起きるのは、とにかく福利厚生系の制度なんですよ。
「休暇」や「手当」は辞めるというと、本当に地獄絵図みたいな感じになるので、始めるときには徹底的にシミュレーションすることが必要だと思います
おそらく、(メルカリの)「merci box」も、相当なイメージトレーニングをされて、やってらっしゃると思いますが、本当に大変だとおもうんですよね。
僕らのmacalonも、妊活休暇を支援するというのは、例えば、出産という選択肢をとらない女性の反発を相当イメージしました。
ということもあり、いろんな社員のことを考えてパッケージにするんですけど。
福利厚生系の制度を始めるときに私たちが2つ大事にしてることがあります。
1つは上限を決めるということです。
例えばスマ手当だったら、1人あたり月何万円までと決める。上限を決めないと必ず人によって上までいく。必ずストッパーがかからない。ストッパーを設けるというのが大事です。
それともうひとつは、見直しのタイミングを決めておくということもすごい大事です。
これやってない会社が多いんですよ。
僕らの場合は、人事制度をリリースすると、就業規則に入れないでガイドライン程度にしてるものが多いんです。
就業規則に入れないというのは僕らは結構大事にします。
就業規則に入れると、制度を辞めるにしても役員会決議が必要だったり、手続きが煩雑になるので。ガイドラインにすることがポイントです。
かつ、見直しは1年後とか、「毎年3月31日に見直しするものとする」といった1行が最後にあるだけで、就業規則や人事制度のリストを見たときに、「家賃補助が来年なくなると聞いたんですけど」と内定者が質問してきたりするんです。、そうなると、「大丈夫よ、まだ続けるつもりだから」という健全な対話が生まれるんですよね。
「ストッパー」と「見直しタイミング」はぜひやられるといいと思いますね。
五十嵐 なるほど。上限と期限というストッパーですね。これ、素晴らしいですね。非常に包括的な対応をされてますね。ほかの会社の皆さんは、いかがですか??
小泉 うちはもう、僕と山田が基本的に福利厚生は必要最低限という考え方なんですよ。なので給料で返したいですね。
曽山 いいですね。
小泉 だから、ストックオプションを全社員に配ってます。
だからさっき言ったダウンサイドはやるけど、アップサイドは全くやらないっていう考え方ですね。
ただ、1回ですね、朝ご飯を出してみようかなと思い、どんな効果が出るかなと思ってフルーツを出したんですよ。
実際にデータを取ったんですが、全く出社時間が早くならなかったんです(笑)。
なので、3週間で止めました。
曽山 それは大事ですね。
小泉 3週間で止めたら、みんなから「フルーツ美味しかったんですけど」という謎のクレームがありました。
曽山 言ってくるんですよね
小泉 そういうのを言う割には全然早く出社しないみたいな話で、結局それもあって、やっぱりだめだなと。
プラスサイドはもう上げなくていいなという考え方になりました。
唯一、ジュースだけうちは無料なんですけど、単純に六本木ヒルズで下に降りるのが時間がかかるので、時間の効率が悪いためジュースを提供しています。
五十嵐 コンビニに行く時間を省くわけですね。
小泉 コンビニに行くまでが時間の無駄なので、働く時間を最大化する意味でそこだけやっていますが、基本的にやらないって決めてますね。
昔のライフドアにちょっと近い考え方かもしれないですけどね。
五十嵐 そこには優しさももちろんあるとは言え、合理性というところを必ずセットにすることが重要ですね。
曽山 絶対そうですね。
小泉 やっぱり作らないっていうのが一番いいと思うんですよね。
福利厚生の制度を作るとやっぱりいろんなハレーション生むので、なるべく僕らは作らないでどこまで行けるかなってということを今考えていますね。
五十嵐 制度以前の風土形成をまずやってるということですね。
小泉 最近はそれなりに大きい企業から転職する人たちが多いので、最初にいろんなこと言われるんですけど基本的に全部否定していますね。
曽山 こういう考え方だということを説明するわけですね。
小泉 そういう考えだったら(前の会社に)戻ったほうがいいよ、という感じのコミュニケーションをしてますね。
五十嵐 なるほど。一方例えば、海外拠点とかもおありじゃないですか。特別な福利厚生ではないかもしれないけど、海外赴任者とかに手当とか、そういうのはやったりはされていますでしょうか?
小泉 してますけど、最低限ですね。
また、そもそも日本からアメリカに行く人は最低限の人数にしていますね。ビザのサポートもすごく手間もかかるのと、あんまり日本の企業と思われたくもないので。
現地で採用しているので、実際ほとんど日本からは社員をアメリカに出してないですよね。
過去に人事制度を1回だけ僕ら大きく変えたのが、まさしくその海外と人事制度をある程度一緒にする過程でした。
僕ら「OKR」という制度をやってるんですね。「OKR」の特徴というのは、Key Resultという目標と成果を明確にすることです。ターゲットとする数値なのか、スケジュールなのかを明確にしていく。
曽山 (OKRとは)「Objective and Key Result」ですね。
小泉 それを明確にするというのやっていました。
理由としては目標を明確化することで余計なことをやらずにリソースを最大限活かすことと、日本人はそこをあまり言い訳せずにきちんとコミュニケーションすれば大丈夫なんですけど、彼ら(アメリカで採用しているメンバー)は数字で測れるもので結構しっかりやらないと、いろんな言い訳をしてきて、結局評価にならないということがあって、OKRに制度をリメイクしました。
グローバルで今後マネージメントしていく過程において、僕らは今、共通のOKRでUSと日本で双方のメンバーが受け入れてやってるんですけど。
どこまで共通化してくのか、どこまで離すかっていうのは、ここからのチャレンジかなとは思ってますね。
曽山 OKRは、いわゆる目標設定と、何が違うんですか。
小泉 ほぼ一緒なんですけど、Key Resultを明確化することを大事にしています。
経営会議でもKey Resultの数字をどこに置くのかをずっと議論してますね。
曽山 それを経営陣とか含めてちゃんと議論しているということですね。
小泉 そうですね。やっぱり測れる数字で見ないと、特にグローバルでマネジメントしくといくという意味で言うと今後どんどんバックグラウンドが違う人たちが入って来るので、なるべく透明性を経営として確保するということがチャレンジになってくると思ってますね。
五十嵐 宇佐美さん、いかがですか?
宇佐美 そうですね。福利厚生制度で作ったけれど、途中で変えた制度で言うと5年勤務したら1ヶ月の特別休暇という制度です。
制度を作った意図としては、5年間働いたら1ヶ月休みを取って旅行や自己研鑽などでプライベートも充実させて欲しい、と考えこの制度を開始しました。
そうは言っても業務上1ヵ月取れない人もいるかもしれないから、100万円を支給するという制度もあくまでも補助的に作ったところ、95%ぐらいの人が100万円支給を選ぶということになりました。
曽山 そうですね。お金を選ぶのですよね。僕らも全く同じ制度やって、同じ呪縛にはまりました。
宇佐美 はい、この現金支給をなくすのはとても大変でした。
つまり5年前の時点で100万円があると思っていた人に対しては、やっぱり5年間はそれを維持しないきゃいけない。
でも、この日付を境に入社した人は、5年後に得られます。この時点からは休みしか得られませんという変更をやったんですけどやっぱり大変でしたね。
五十嵐 「ずるい」という話がありますよね?
宇佐美 そうですね。「なんでないんですか」みたいな。
小泉 僕の経験ではミクシィのときに一番大きく変えたのはストックオプションのべスティング(注:一般的にはストック・オプションの行使条件が例えば上場後に4年間に渡って行使ができるものになっており、4年のべスティング期間があれば1年で25%ずつ行使可能という仕組みになっている。) を途中で無くしたということですね。
(なぜ、ストック・オプションのべスティングをなくしたのか?を詳しくお話いただきましたがセンシティブな話題のため編集上カットしております。同じ話は上場を経験した経営者が必ず直面する課題です。編集上カットしておりますが、「わかる人にはわかる」という内容かと思います。)
今回のメルカリにおいてはストック・オプションのべスティングは入れてないんですよね。
べスティングの条項は後から外せるので、(オフレコの内容のような)苦しい思いをしている上場企業の方がいれば、外したほうがいいかなと思いますね。
社内で生じるミスマッチへの対策
五十嵐 次に、会社の運営をしていく上で、ビジョンや会カルチャーに合わない人とどのように向き合うか?について聞かせてください。
皆さんビジョンと合わないような社員やチームにどのように対応していらっしゃいますか?
曽山 サイバーエージェントにはミスマッチ制度という制度があります。
「チームの中で合ってない人」「組織と価値観があわない人」というミスマッチ人材をピックアップして本人に警告し、それでも改善されずにイエローカードとなった場合、イエローカード2回で部署異動や転職を見据えた対話をするというものです。
このミスマッチ人材は役員会決議で認定しており、(サイバーエージェント在籍の2,000人の社員のうち)半年で10人から20人ぐらいですね。
根本思想は、組織に合ってないのにそこで働き続けるのはお互いアンハッピーという考え方ですね。
だから、本人が変わってくれて一緒に働ければ、それが一番いい。
僕らも採用した責務があるので、一緒に真剣に働こうよという思いですね。
なので、ミスマッチ人材となってしまった人との面談はほとんど僕か人事部長クラスが行っています。
(ミスマッチと認定された)メンバーを本気で成長させ、組織で活躍できるようにするつもりで面談に臨んでいます。
その代わり、「今は組織と合ってないから、変わったほうがいい」と率直に言ってます。
そして、本人の現状に対する意見を真剣に行くことを行っています。
五十嵐 曽山さんや人事がしっかり向き合ってくれるのは、今の上長との相性とか今のポジションでできることに限られないフィードバックや対話ができるという意味でも非常に良いですね。
普段、直接仕事をしてるわけではない人と、それこそ何千人からいる人たちの中の一人と向き合わないといけないわけですから、相当、その人のバックグラウンドやこれまでの活動を知らないと向き合えないというところもあると思うのですがいかがでしょうか?
曽山 そうですね。この面談は本当につらいんですよ。僕も初対面であったりするので。
そういうときにはいろいろ情報を調べて、は「こういう話を聞いてるけど、どうなの?」と必ず聞いてます。
「お前、こうだろ」と断罪することは僕はできないので。
「どうなの?」と聞いて、しっかり本人の話を聞いています。一緒に仕事をしている人がこう言っているから、ここはマッチングしてないという事実だけは分かると伝えています。
五十嵐 あくまでミスマッチであるという言い方をする。
曽山 そうです。事実、組織と合ってないだけなんですよ。パフォーマンスでミスマッチ人材を選んでいるわけではない。だから、ほかの部署に異動して社内表彰されるくらい変わるケースもあります。実際、ミスマッチ人材と認定された人の3割ぐらいよくなるんですね。
五十嵐 3割もよくなる?
曽山 はい。よくなってます。周囲からの360度評価とかがよくなりますね。
五十嵐 やっぱり対話が大事ですね。
曽山 実際、率直に言ってあげないと本当に変わらないので。なので、率直に言ったうが誠実だと僕は思ってます。
宇佐美 曽山さんの人間性だからできると思いますね。
曽山 場数を積み重ねたということはありますけどね。
宇佐美 対話能力がないと無理ですよね。
曽山 いきなりやったら揉めますからね。
宇佐美 これができる人っていうのは、社内の中にはなかなか…
曽山 少ないですよね。
宇佐美 しかも、経営目線を持ってないと多分できないですね。普通に人事のマネージャーにこれをやってっていうのは、絶対無理ですね。
曽山 僕らも人事マネージャーにはやらせてないです。
宇佐美 部長クラスや、役員経験者クラスとかで、対話しながらちゃんとできる人っていう感じですね。
曽山 人数規模があまり多くないときは、役員以上でやられたほうが一枚岩になってやれるのでいいですね。
僕も正直気が重いですけどね。
五十嵐 でも、今3割もよくなると聞いてかなり勇気出ますね。
曽山 よくなります。本当によくなります。
五十嵐 素晴らしいですね。本当に3割もよくなると聞いて、もっとそういうことしっかりやっていかなきゃいけないなと思いましたね。
小泉 人が合ってないのか、仕事が合ってないかということが、ごっちゃになりがちなのですね。
どっちなのかってまず紐解いてあげることが大事かなと思いますね。
五十嵐 上司との相性とかもありますよね。
曽山 あります。上司の特性と、そのメンバーがたまたま合わないというのもあるので。
異動すれば解決する話も結構あります。
(続)
編集チーム:小林 雅/根岸 教子
続きはこちらをご覧ください:ミドルマネジメントをどのように育成するのか?「副業」をどう考えるべきか?
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