【NEW】ICC サミット FUKUOKA 2025 開催情報詳しくはこちら

2.市場を求めて拡大した近代以降の帝国主義とは

新着記事を公式LINEでお知らせしています。友だち申請はこちらから!
ICCの動画コンテンツも充実! YouTubeチャンネルの登録はこちらから!

「歴史から学ぶ『帝国の作り方』(シーズン2) 」全9回シリーズの(その2)は、COTEN深井さんのレクチャーからスタート。今回は舞台を近代に移し「近代の帝国」の定義から解説します。産業革命が起点となって、世界に拡大した第一次世界大戦で、何が勝敗を分けたのか。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 プレミアム・スポンサーのリブ・コンサルティング様にサポート頂きました。


【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICCサミット FUKUOKA 2021
Session 6A
歴史から学ぶ「帝国の作り方」(シーズン2)

Supported by
リブ・コンサルティング

(メイン・スピーカー)

深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役

(スピーカー)

宇佐美 進典
株式会社CARTA HOLDINGS 代表取締役会長 / 株式会社VOYAGE GROUP 代表取締役社長兼CEO

奥野 慎太郎
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
マネージング パートナー

北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員CDO(チーフデータオフィサー)グローバルデータ統括部 ディレクター

山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役社長

(モデレーター)

琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)

「歴史から学ぶ『帝国の作り方』(シーズン2) 」の配信済み記事一覧


連載を最初から読みたい方はこちら

1つ前の記事
1.シーズン2は「生き残る帝国」から、事業やビジネスに活かせる学びを徹底議論

本編

琴坂 まずメイン・スピーカーの深井さんから、投げ込みをお願いできますか?

深井 はい、よろしくお願いいたします。

前回のシーズン1ではオスマン帝国(1299~1922)を取り上げ、そこから学べることを話しました。

今回は、色々な帝国を扱ってみたいと思います。

第一次世界大戦で成功した帝国・失敗した帝国

深井 第一次世界大戦(1914~1918)に参加した国はほぼ全てが帝国ですが、「成功した帝国」と「失敗した帝国」があります。

その違いを見て、学べること、ビジネスに汎化できることを議論したいと思います。

前回に引き続き、まず帝国とは何なのかからお話ししましょう(※) 。

▶編集注:シーズン1でも帝国の定義から議論が開始された。1. ビジネスカンファレンスでなぜ「帝国の作り方」を議論するのか?

COTEN深井さんによる「近代以降の帝国の定義」

深井 これは近代以降の帝国に適用される定義ですが、2つの定義があります。

まず1つ目の定義は、一定程度の「広大な領域」を持っていることです。

そしてポイントとなるのは、コア地域と呼ばれる「自分たちのコアな部分」と、コア地域ではない「文化的にも歴史的にも違う部分」で成り立っていることです。

例えば大英帝国の場合、イングランドやスコットランドが「コア地域」で、インドなどの植民地は「周縁地域」です。

そして2つ目の定義が、帝国の統治エリートとそうではない住民の間に、「支配と被支配の関係」があることです。

大英帝国では、イギリス人とインド人の立場は当然違って、支配層と被支配層に分かれていましたね。
このように帝国を定義した場合、第一次世界大戦の時にどのような帝国があったのでしょうか?

なんと、ほぼ全部が帝国です。

北川 へえー。

琴坂 全部ですか。

深井 はい、ほぼ全ての国が今挙げた2つの定義に当てはまるのです。

まず、分かりやすいのは大英帝国、そしてフランスも共和国ではありますが、アフリカに植民地を持っています。

▶参考:アフリカの植民地化(世界の歴史まっぷ)

北川 そうですよね。

深井 ですからフランスも、先ほどの定義上は帝国になります。

ドイツ帝国(1871~1918)は、名前の通り帝国ですし、オーストリア=ハンガリー帝国(1867~1918)は、今のオーストリアよりも圧倒的に広大な領土を持った帝国でした。

あとは、ロシア帝国(1721~1917)ですね。

第一次世界大戦時には清帝国(1616~1912)はほぼ無い状態でした。清帝国とは中国です。

1299年に建国されたオスマン帝国は未だに続いていて、そして、大日本帝国があります。

日本は中国に進出しようとしたり、朝鮮を植民地化しようとしていたりしたので、帝国ですね。

あとはアメリカ合衆国もですね。

帝国とそうでない国との違い

写真左からCOTEN 深井さん、CARTA HOLDINGS / VOYAGE GROUP 宇佐美さん

琴坂 なぜこのように、全ての国が帝国という状態になってしまったのでしょうか?

深井 当時は「列強」と呼ばれる国が出てきた時代で、「列強」と呼ばれる国は、先ほどの帝国の定義にほぼ当てはまるのです。

帝国が第一次世界大戦に参戦した結果、当然「勝った帝国」と「負けた帝国」が出て、そこには明らかな傾向がありました。

「うまくいった帝国」と「ダメになった帝国」を見ていこうと思います。

琴坂 帝国以外の国々は、帝国とどう違うのでしょうか?

深井 帝国以外の国々は、近代化において、遅れていることになります。

結果、列強に都合よく扱われている状態ですね。

北川 産業革命が起こったことで余剰の富が生まれ、自国の外に出て行こう、帝国になろうとする力が働いた感じでしょうか?

深井 そうですね。

一番の理由は、産業革命によって資本主義が勃興したことです。

資本主義の最たる特徴は、「マーケットを探し求める」ことです。

イギリスは特にそうですが、「誰に物を売るか」を考え始めます。

そして、アジアやアフリカ、特にアジアに物を売ろうとしました。

売られるほうは近代化していないため、質が高くて安い製品が流れてくると国内産業が崩壊し、困るわけです。

ホールディングスは現代の帝国

琴坂 奥野さん、現代に例えると、どういう会社が帝国だとみなせるのでしょうか?

ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン マネージング パートナー 奥野 慎太郎さん

奥野 ほとんどが帝国化する傾向があるのではないでしょうか。

市場を求めるという話がありましたが、会社は常に市場を求めて広げていきますよね。

先ほどの定義で言うと、「コア」と「周辺」に分かれているか、まだ「コア」のみの状態なのかで、差はあるでしょうね。

多角化してホールディングスがあり、色々な事業を持つ楽天のような形になると、もはや帝国以外の何物でもないような感じがしますよね。

北川 いやいや(笑)。

我々はまだまだ携帯事業を始めたばかりの会社ですので、お気になさらず(笑)。

(一同笑)

琴坂 イメージとしては、成長志向があって外部領域に拡張し、かつ、最初のコア事業を超えて周辺領域に浸み出していくような企業は、おそらく帝国と同じ状態ですよね。

深井 そうですね。

琴坂 上場した後のスタートアップ企業、まさに上場後のCARTAみたいな感じですね。

宇佐美 その文脈で言うと、M&Aは植民地を増やすみたいな感覚なので、帝国化していくのではないでしょうか。

琴坂 確かにそうですね。

コアを持ちつつ、グループとして事業を増やしていくということですよね。

深井 まさにそういう話です。

実は当時も、M&Aの仕方によって、それぞれ変化していったのだという話をしようと思っていました。

「うまくいった帝国」と「うまくいかなかった帝国」とは、単純に、戦争に「勝った国」と「負けた国」です。

(一同笑)

琴坂 そりゃそうだ(笑)。

北川 そのまんまですね(笑)。

深井 勝ったのは、大英帝国やフランスなどです。

第一次世界大戦の時、日本はほとんど戦っていませんが、日英同盟を結んでいましたので、一応勝ったほうに入っています。

そして大勝したのがアメリカ合衆国ですが、これがなぜだったのか後(Part.3~4)で話します。

一方、うまくいかなかったのは、ロシア帝国、オーストリア=ハプスブルク帝国、ドイツ帝国、オスマン帝国、そして大敗したのは清帝国です。

北川 日清戦争はどのタイミングでしたか?

深井 日清戦争(1894~1895)も日露戦争(1904~1905)も、第一次世界大戦の前ですね。

なぜ帝国の命運が分かれたかというと、いきなり結論から言います!

琴坂 おっと(笑)。

(続)

次の記事を読みたい方はこちら

続きは 3. 第一次世界大戦で、国民意識が芽生えた「国民国家モデル」の帝国が勝った理由 をご覧ください。

新着記事を公式LINEでお知らせしています。友だち申請はこちらから!
ICCの動画コンテンツも充実! YouTubeチャンネルの登録はこちらから!

編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成/大塚 幸

他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

更新情報はFacebookページのフォローをお願い致します。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!