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3.シンガポールで検証、アメリカを展望するヘルスケアサービス「ユビーAI問診」

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ICC KYOTO 2022のセッション「ITスタートアップにおけるグローバル展開のケーススタディ」、全6回の③は、Ubie久保 恒太さんが登場。東京とシンガポールを拠点とし、アメリカ展開を 見据えるUbieの事業は「ユビーAI問診」。日本ではおなじみの紙の問診票をAIに置き換え、電子カルテを作成するtoC、toB事業を、問診票文化のない国で展開する工夫とは? ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターはネットプロテクションズです。


【登壇者情報】
2022年9月5〜8日開催
ICC KYOTO 2022
Session 3D
ITスタートアップにおけるグローバル展開のケーススタディ
Sponsored by ネットプロテクションズ

角元 友樹
恩沛科技股份有限公司(NP Taiwan, Inc.)
董事長/總経理

久保 恒太
Ubie株式会社
代表取締役 エンジニア

十河 宏輔
AnyMind Group株式会社
代表取締役CEO

中島 克彦
株式会社ビービット
取締役副社長

(モデレーター)

井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
パートナー

「ITスタートアップにおけるグローバル展開のケーススタディ」の配信済み記事一覧


シンガポールに続きUS進出準備中。「症状検索」と「AI問診」のUbie久保さん

久保 恒太さん(以下、久保) よろしくお願いします、Ubieの久保です。


久保 恒太
Ubie株式会社
代表取締役 

東京大学大学院工学系研究科卒。2013年東大在籍時に症状と疾患の関連性をシミュレーションするソフトウェア及びアルゴリズムの研究/開発を開始。エムスリー株式会社で約3年、医師Q&AサービスなどBtoCヘルスケア領域のソフトウェア開発およびWebマーケティングに従事。その後2017年に医師の阿部とともにUbieを共同創業。

私は、Ubieの共同代表を務めています。

バックグラウンドはエンジニアで、前職として、Ubieと同じくヘルステックのエムスリーで働いていました。

2017年に創業したUbieは200名規模の会社で、東京とシンガポールに拠点があります。

そしてもうすぐ、USのエンティティ(事業)もできるというフェーズです。

一般生活者向けの、症状検索エンジン「ユビー」というプロダクトを展開しています。

日本で作ったものですが、グローバル向けも同じ仕様で展開しています。

ユビーは月間750万人に使われており、また、医療機関向けの業務効率化のサービス、「ユビーAI問診」も提供しています。

ユビーという一般向けサービスでは、症状をAIが聞き、最終的にこの病気との関連性が高そうだ、この医療機関に行った方がいいよというアドバイスをします。

一方、医療機関内でも同じ問診ツールが使えます。

医療機関に行くと紙の問診票を記入すると思いますが、それをAIに置き換え、自動で電子カルテも作成するというサービスです。

さらに、医療機関においてAIがどんどん賢くなっていきます。

この、強いAIを作っているという点が、グローバルにおいて競争優位性を生んでいます。

井上 toCのプロダクトは、子どもに使うとめちゃくちゃ便利ですね。

久保 ありがとうございます。

井上 自分のことなら分かりますが、子どものことは分からないので、子どもから聞いた症状を打ち込んでアドバイスがもらえるのは助かります。

重宝しています。

久保 ありがとうございます、まさに小児科向けはパワーアップしています。

是非、皆さんも使っていただければと思います。

我々のステークホルダーは、一般生活者、クリニックや病院、そして大きなキャッシュポイントとしての製薬会社です。

クリニックは小規模、病院は大きめの医療機関です。

患者を正しい医療機関に案内し正しい治療が始まると、薬剤がの浸透が進みますので、我々はマーケティングを支援できるようになります。

Ubie初の海外拠点シンガポール法人を2020年に設立

久保 我々は2017年に創業する前から研究開発を続けており、起業する際、グローバルで勝てるプロダクトを作りたいという思いがありました。

シンガポール法人を2020年に設立しましたが、それ以前にインドにも行っていました。2018、2019年頃から、医療格差の大きいマーケットであるインドでリサーチをし、医療ニーズを捉えようとしていました。

Ubieがグローバル進出の皮切りとなるシンガポール法人を設立。JETRO主催の「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」に採択(PR TIMES)

しかし、インドでは言語やタイムゾーン(時差)の問題がありました。

一方、必要な人材を採用できたため、まずはシンガポール法人を設立し、東南アジアビジネスから始めました。

ユビーはtoCから始めたのですが、最初に伸びたのは医療機関向けサービスだったので、日本でもそちらをメインにしています。

toCは、2021年から伸びています。

問診票を書かない国で「AI問診」のニーズはあるのか

久保 グローバルビジネスを始めた際も、基本的には医療機関向けSaaSのMVP(Minimum Viable Product:必要最小限の機能を備えたプロダクト)検証をずっと行っていました。

まず、シンガポールやアジアマーケットと日本の大きな違いは、そもそも医療機関で問診を行っていないということです。

我々は、紙の問診票をAIにリプレイスすることで業務効率化をするというソリューションを提供していたので、どうやってニーズを獲得するのかが大きなチャレンジでした。

一方で、シンガポールのマーケット全体は日本とかなり近く、慢性疾患が非常に多くて、医療費自体も高いです。

我々のクライアントは製薬企業ですが、シンガポールでは、新薬と言われる、新しくて、独占販売できる特許が切れていない薬の利用が多く、我々のビジネスはクライアントのニーズにかなりフィットすると思っていました。

そして2020年8月、JETROに支援もいただきながらシンガポール法人を設立し、ビジネスを開始しました。

そもそも問診を行う文化がなかったので、プロセスを1つ追加してまでAI問診を行うことが受け入れられるのかという問題がありましたし、PMFに向けてフィードバックをもらうための、最初のクライアントを見つけるのにもとても苦労しました。

直接、医師のところへ出向くなど、アウトバウンドも含めた現地での営業活動を繰り返し、10以上のクリニックに使っていただけるようになり、ある程度、ビジネスとして成り立つかどうかの検証ができました。

我々のコア技術は病気を症状と疾患の関連性を示すエンジンです。

例えば、東南アジアには、蚊によって媒介されるマラリアという病気がありますが、国によって考えられる病気が違うので、データのマイナーチェンジが必要であるため、医師もチームメンバーになってもらう必要がありました。

よって、Ubieの中に、日本のエンジニア、そして現地で採用した医師も含めたグローバルチームを立ち上げました。

国内B2C事業の成長でグローバル戦略を転換

久保 一方、日本において、2021年頃に我々のビジネスモデル上の勝ち筋が変わってきたのです。

それまでは医療機関向けtoBサービスが主流だったのが、B2Cのビジネスがどんどん成長していったのです。

この背景には、製薬企業のニーズが非常に強かったということがあります。

そこで、グローバルとして、もっとtoCのサービスで攻めようという意思決定をし、シンガポール法人における戦略も変わりました。

日本では、toCのサービスはSEOによって非常に伸びていました。

しかしSEOは、USでやるのとあまり変わらないというか、結局英語版のプロダクトを作って戦っていくとなると、シンガポール単独で勝っていくというのは結構難しいということが見えてきました。

シンガポール事業を大まかに振り返ってみると、グローバルチームができて、その中で色々なメトリクスを見ていると、ある一定のPMFはできていると感じています。

英語版プロダクトの開発についても、かなり検証できたと思います。

月間で20万人以上のユーザーにも使っていただきました。

精度高いターゲティングを強みにUSマーケットへ進出

久保 一方、シンガポールのマーケットはやはり大きさが限られるので、シンガポールの外に出ていって、英語版のtoCサービスを以ってUSマーケットを攻めるべきだと考えました。

我々のキャッシュポイントである製薬企業という視点から見ても、マーケットとしてはUSが一番大きいので、直近ではUSにどんどんシフトしています。

マーケティングについては、日本では、個人の患者向けに医療用医薬品の広告は禁止されていますが、USではテレビCMもできます。

マーケットの大きさがかなり違うので、勝機ではないかと考えています。

USでは、テレビCMを使ったマスマーケティングによって、薬や病気に関する宣伝が行われています。

我々のプロダクトは非常に精度の高いターゲティングができるので、患者に情報提供ができるサービスと捉えられています。

今、USには競合サービスもありますが、ユーザーからのフィードバックで、競合と比べてもプロダクトのメトリクスが良いことが分かっていますので、この勝ち筋を進んでいこうと思っています。

▶編集注:2022年4月にUS版 症状検索エンジンの Ubie AI Symptom Checker をリリース。

ご清聴ありがとうございました。

井上 Ubieには、苦労話も含めて共有いただきました。一言で言うと、何が一番難しいですか?

久保 そうですね、我々の場合、症状チェックというサービス自体の定義がないので……。

製薬事業でtoCが伸びるとか、SEOが勝ち筋であるとかは、予想していませんでした。

我々はコンテンツサービスではないので、まさかSEOで伸びるとは思っていなかったですね。

これらが想定外にすごく成長したのですが、グローバル全体のビジネスとして、それを予想できていなかったです。

あと、toBのSaaSを現地で実装しようとすると、事業進捗のスピードとして、toCに比べるとかなり時間がかかってしまうので、めちゃくちゃ難しいです。

そこも甘かったかなと思います。

井上 ありがとうございます。

では続いて、ビービットの中島さん、お願いします。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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