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ICC FUKUOKA 2023のセッション「ビジネスモデルのケーススタディ(シーズン2) – ライフスタイルブランドを創る」、全6回の④は、クラシコムを例にライフスタイルブランドにおいて重要な「枯れないコンセプト」について菅原 健一さんが解説。これをしたら自社のブランドコンセプトから外れてしまうことは?という話題にまで広がります。Sanu 福島 弦さんが考え抜いて出した見解は?ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
本セッションのオフィシャルサポーターは ノバセル です。
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【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 12D
ビジネスモデルのケーススタディ(シーズン2) – ライフスタイルブランドを創る
Supported by ノバセル
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ライフスタイルブランドの「枯れないコンセプト」とは
菅原 僕も、「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムの青木(耕平)さんをお手伝いしているのですが、彼らは、「フィットする暮らし、つくろう。」というコンセプトを持っています。
つまり、消費者というかお客様との約束ごとが、商品ではないのです。
商品で約束してしまうと、どうしても機能でしか約束できないので、飽きられやすいですし、枯渇しやすいと思います。
でも、フィットする暮らしをつくりたい、おうちを豊かにしたい、家での生活をより良くしたいというのは、ほぼ卒業がないのです。
60歳になったら卒業するかと言うと、そうではありません。
ですから、ライフスタイルブランドは、枯れないコンセプトをしっかりと作り、それを商品で体現することが大事です。
そうすると、TENTIALのように、インソールを作ってからBAKUNEを作るということもできるわけです。
普通に考えると、「あれ?ピボットしたの?」と思えるくらい、ちょっと違うものを展開できる。
あれは、商品で約束していないからこそ、できたのではないでしょうか。
深井 こういうブランドについての議論においては、OBゾーンを決めなければいけない、つまり、ここは絶対に違うというところを決めなければいけない、という意見があります。
そういうのは作っていますか?
中西 僕らは、日常生活とスポーツを完全に分離させています。
スポーツブランドと言われることが多いですが、日常生活ブランドにシフトしていますし、どれだけ日常生活をどれだけ生産的にできるかをテーマにしています。
ブランドコンセプトは「よく生きる、カラダへ。」で、これは例えば、70歳になっても走っていたいよね、みたいなコンセプトです。
スポーツ領域には取り組まないと明確に決めているのですが、ゴルフだけはインソールのニーズが高すぎて取り組んでいます(笑)。
60歳の人が70歳までゴルフができるようにしてあげたい、というような想いを持っています。
菅原 OBゾーンの話、面白いですね、みんなに聞いていきましょう。
ブランドコンセプトから外れてしまうゾーンは?
深井 今、悩んでいるので…(笑)。
菅原 (笑)。福島さんはどうですか?
深井 OBゾーンは、「ここに取り組めばSANUではなくなる」というようなゾーンのことです。
福島 なるほど…!
菅原 また1年悩ませてしまう(笑)。
▶編集注:本セッションで福島さんは、SANUのブランドコンセプト作りに1年近くかけたと説明されています。
福島 山にこもるかもしれません(笑)。
松田 B2Bの話ですが、パチンコ業界は悩みましたね。
深井 需要はあるのでしょうか?
松田 正直に言うと、需要はすごくあります。
菅原 需要があるのですか!?
松田 あります。
社会に対してコミットするために、本気で営業をすれば、JTやパチンコ業界で売上を作ることができるだろうという印象はありますし、それはすごく大きな金額になると思っています。
そういう依頼は実はたくさんありますが、今は断っています。
でも、自分の中ではすごく葛藤があるのです。
例えば、パチンコは、軽度の知的障害のある人が依存するものなのです。
依存して、サラ金でお金を借りて、ホームレスになる…、そういう社会問題と直結している領域にまで踏み込めるのであれば、パチンコ業界とも取り組んでいると発信できるかな、とか色々考えました。
でも、やはりまだブランドが確立できていないと思っているので、確立できた後にやろうと思っています。
葛藤はありますし、潜在ニーズが見えているけれど、あえて取り組んでいないですね。
潜在ニーズが見えていて、本当は取り組みたいけれど…という領域はありますか?
深井 いわゆるアパレルブランドは、売れたものを真似するというか…。
菅原 アパレルでは、ほぼ、著作権という概念が存在していないですよね。
深井 そうですね、売れたものを真似することがすごく多いです。
うちでも販売しませんかとたくさん言われるのですが、線引きがすごく難しいのです。
我々の商材は素材なので、「KAPOK KNOT」という名前を出すか出さないかで判断することはあります。
そのOBゾーンが、感性によると思っています。
例えばプロダクトのルールとしては、機能、デザイン、サステナブルという基準で採点をし、基準点を超えたものしか商品化しないということを定めています。
でもパートナーシップの話になると、議論となりますね。
企業の担当者によっても話が変わってきますし、B2Bでは特に難しくて、考えます。
菅原 アライアンスやパートナーシップについては、自分がうんと言えば売上が立つことが分かっているので、究極の選択を突きつけられますよね。
商品と売上を考えると短期で回収できますが、ブランドや消費者への約束という観点からは、長期的に蓄積できるものを貯めるどころか、むしろ減らしてしまう活動になります。
これは経営の難しさですね、面白い。
深井 福島さん、どう思いますか? 山から帰ってこられましたか(笑)?
長い時間軸に耐えられるコンセプトを作る
福島 (笑)。正解ではない気はしますが、僕はSANU 2nd Homeユーザーなので、ユーザーとして嫌なものはやらないですね。
菅原 それは大事ですよね。
福島 買いに行く立場で、買いたいと思わなかったシーンを見たという経験もあるかもしれませんが、そこは大事にしています。
そろそろ僕らも、フェーズ的には憲法的なものを作って点数化するということも行う必要があるのかな、と聞きながら考えていました。
でも今は、自分自身が月55,000円を払っているので、自分だったらこの建物に本当に来たいかなとか、この建築クオリティを是とするかなとか…、究極の利己主義は利他主義につながっていくかなと何となく思っています。
そういう考えからサービスを始めているので、その感覚は大切にしています。
深井 自分が一番のペルソナであるということでしょうか?
福島 そうですね、一方、それでいいのかなと悩んでもいます。
これまでのフェーズでは、ビジネス業態として、特定多数から多くの売上を作るというモデルでした。
しかし他の皆さんの場合、ターゲットがもっと多いと思うので、自分だけをn=1のユーザー像として捉えるのはどうなのかとも思います。
僕らも、そういうフェーズになれば、客観的指標が必要になるのかなと思いました。
松田 SANUは、セカンドホームと謳っていますよね。
タグラインとして、面白いなと思っています。
仮に自分がSANUの経営者であれば、ホームではなく違う言葉にして、大学生向けにパーティーコンテンツを作るとか…(笑)。
福島 (笑)。
松田 もしくは、今の流行に乗って、サウナ宿を作る方が集客できるのではないかとか、コンテンツを入れ込むことで集客を加速化できるのではないかと考えます。
でも、住む、ライフスタイルという要素にすごくこだわりがあるのではないかと思っていました。
福島 そうですね、時間軸を長くしようと常に思っています。
キーワードは「時代の試練」であり、時代の試練に耐えられるものを作ることを目指しています。
松田 「時代の試練に耐えられるもの」?
かっこいいですね。
福島 ライフスタイルは、変わっていくものですよね。
小さな波で何か起こすのではなく…、自分という存在がなくなった後の300年、500年、その先は想像できませんが、自然はそういう時間軸で動いています。
VCから資金調達しているので10年以内に上場しなくてはいけませんが、時間軸を長く捉えるようにしています。
僕らの「Live with Nature.自然と共に生きる。」というコンセプトを実現するために、例えばサウナだったら、本質的にどんな役割になるのかを真面目に考えます。
コンセプトを作ることが、ライフスタイルブランドでは重要です。
皆さん、「別荘」という言葉を聞くと、「昭和」「お金持ち」「軽井沢」などの概念だと思います。
それをガラリと変えたいと思っていました。それがブランドの考え方の1つです。
そういう意味で、「別荘」ではなく少しずらして「セカンドホーム」とすることで、新しい感覚を持つ人が、新しい利用形態で、自分の富の象徴として100平米の豪邸を持つのではなく、家族にとって必要な、心地よい小さな家を持つというように、概念を変えることを意識して作りました。
そこには、平日に子どもと行って仕事をしたり、焚き火を囲んだりするかもしれません。
菅原 言葉の持つ意味は、既にありますよね。
例えば、僕は大企業にアドバイスする仕事をしているので、5、6年前くらいから、自分のことをアドバイザーと名乗っています。
でも当時は日本にアドバイザーという言葉はなく、あったのは顧問という肩書だったのです。
松田 重い感じですね(笑)。
菅原 「顧問」だと、白髪のおじいちゃんが会議室の社長椅子に座って、「あいつに電話してやる」と人を紹介するようなビジネスを想像しますよね。
言葉にはブランドの意味もありますが、言葉そのものが意味や印象を持つので、言葉を丁寧に扱うことも、ライフスタイルブランドを作っていく上でのヒントかもしれないですね。
SANUは需要を先に作り出すことに成功
菅原 ちなみに、SANUにはウェイティングリストがありますよね。
サブスクリプションですが、設備の数が限られているので、行けなくて待っている人がたくさんいるのです。
それだけ、コンセプトに共感して、行きたいと思っている人が待っているということです。
そうすると、逆に、どこにセカンドホームを作れば人が来てくれるのかが分かりますし、その需要に対して供給ができるのです。
ブランドって最初は、供給をしたくて、ものを売りたくて始めますよね。それだと需要がなくてつぶれていくこともあります。
そこでいかに最初に需要を作り出せるかというと、それは商品ではなくて、コンセプトだと思うんです。
福島 僕らなりに、クラウドファンティングを行ったとも言えるかもしれないですね。
菅原 そうですね、まさにそういうことだと思います。
すぐに売るのではなく、ウェイティングリストに入ってもらっているということです。
SANUは、需要を作り出すことに成功されたのではないでしょうか。
福島 おっしゃる通りですね。
僕らの特徴は、「特定多数」とお付き合いをする事業形態であることです。
菅原 不特定多数ではなくて、ですね。
福島 「一緒にこういうふうなことを作っていきませんか?」と、SANUのミッションである「Live with Nature.自然と共に生きる。」という言葉を、社員やメンバーさんにも、清掃してくださる業者にも伝えています。
僕らはお客様のことを、会員ともお客様とも呼ばずに、メンバーと呼んでいます。
あまり垣根を作らずに、共同体を作っていくという考え方をそもそも持っています。
その共同体をいきなり1万人規模にしてしまうと、非常に薄い関係性になってしまうので、数百人規模の、本当にいいねと思ってくれる人だけを対象に始めたのです。
これは、ビジネスを通じて社会を変えていく1つのアプローチではないかと考えています。
菅原 良いですね。
欲しい人ではなく、信じてくれる人から始めたいですよね。
松田 良い言葉ですね!
菅原 そこはすごくポイントな気がします。
盛り上がって、順調に時間が押しているので(笑)、質問コーナーに進みますね。
(一同笑)
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美