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ICC FUKUOKA 2023のセッション「ビジネスモデルのケーススタディ(シーズン2) – ライフスタイルブランドを創る」、全6回の最終回は、気になっていたことをスピーカー同士が質問し合う展開に。ヘラルボニー 松田 崇弥さんは自治体・行政との関係の作り方を、モデレーターの菅原 健一さんはSNS時代の広告に依存しないブランドのあり方を解説します。最後までぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
本セッションのオフィシャルサポーターは ノバセル です。
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【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 12D
ビジネスモデルのケーススタディ(シーズン2) – ライフスタイルブランドを創る
Supported by ノバセル
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自治体や行政との関係の作り方は?
中西 松田さんに、行政や政府など大きなところを巻き込み、動かした際の、成功事例があればおうかがいしたいです。
松田 私が意識するのは、自社が岩手の会社であるということです。
どこの会社であるかと、ソーシャルの領域、障害の分野に取り組んでいること。
ビジネスであればICCサミットに登壇していますが、福祉や地域創生のカンファレンスなど、どの文脈の場にも出られるような状態にしていくには、タグのつけ方がすごく重要だと思っています。
岩手にはスタートアップの会社は存在していませんから、岩手県知事はヘラルボニーのネクタイを毎日のように着けています。
私は東京に住んでいますが、文登は岩手に住んでおり、コンビニで話しかけられることもあります。
それくらい、局地的に岩手での知名度がすごいのです。
ただ良いブランドであるだけでは応援する文脈はできません。
でも、良いブランドであることが前提で、岩手の会社であるなど追加の文脈を作ることで、色々なところとのパートナーシップは築きやすくなるので、その点は戦略的に考えて行っています。
菅原 行政との取り組みでは、動機が健全であるかどうかが重要ですね。
単に儲かるからという企業体だと、特定企業を応援することになってしまうので行政からすれば選びにくいと思います。
健康や障害者、自然を楽しむなど、健全な動機を作ることが外部の味方を作るコツではないかと思います。
「いい話」的な取り上げられ方が一番辛かった(ヘラルボニー松田さん)
松田 皆さんも作られていると思いますが、用語集を社内で作っています。
菅原 みんな作っているのですか(笑)?
松田 CI(コーポレート・アイデンティティ)規程やブランドガイドラインのようなものを言っています(笑)。
障害福祉分野においてメディアに取り上げてもらうためのガイドラインは、結構しっかりと作っています。
取材を受ける前も、メディアの皆さんに、「『障害者アート』ではなく、こう書いてください」「障害を『持つ』ではなく、『ある』と書いてください」など、実はセンシティブな部分が結構あるので、そこに対して、自分たちがどういうブランドとして見られたいかについての要望書のようなものをお送りしています。
でも、私たちがメディアPRにお金を払っているわけではないので、最終的に決めるのはメディア側です。
ただ、我々のスタンスはこうですと伝えるためのガイドラインは、すごく意識して作っています。
菅原 それは、誰かを傷つけたくないからですよね?
松田 そうですね、いい人風に言うと、まあそうですね(笑)。
(一同笑)
一番辛かったのは、創業後1年から1年半くらい経った時のメディアでの取り上げられ方が、「双子が兄弟を想ってヘラルボニーを設立」みたいな、「良い物語」的なものだったことです。
メディアインタビューも全てヒューマンストーリーを求めてくるようになり、そこにしか需要がなかったのです。
認知を獲得するためにはそういうインタビューを受けなくてはいけないけれど、露出のされ方にはあまり満足していないというジレンマが、最初の2年間は続いていました。
その時、こちらからスタンスを提示しなければいけないと思い、整理をしたのです。
深井 誰が、それだとダメだと気づいたのでしょうか?
松田 双子で話し合ってですね。
深井 この2人のLINEはすごいです、本気で喧嘩しているような…。
松田 まあ、確かに(笑)。
福島さんもお二人で創業されているのであると思いますが、うちはこの間も「帰れ!」とか…。
菅原 兄弟喧嘩(笑)。
福島 いや、うちはないですね(笑)。
松田 ないですか(笑)。でも結構、激しくやり合いますね。
日々行うファン施策で成果を出すには?
松田 先ほどご質問(前Part参照)がありましたが、継続的なファン施策はすごく重要だと思っています。
我々の場合、記念日に実施するだけなので、毎日やり続けて成果が出るようなものには取り組めていないので、大きな課題だと感じています。
皆さんがどうされているのか、聞きたいですね。
福島 継続的なファン施策は色々なことをしていますが、一番意識していることとしては、SANUのコンセプトの一つでもあるのですが、「提供しすぎない」ことです。
Uber Eatsで頼んだものがクリック1つで届く時代なので、僕らは消費体験ではなく生活体験を作るようにしています。
象徴的なものとしては、例えば、キャビンの中には花瓶と剪定ばさみだけを置いています。
ホテルでは、完成された内装の空間に入ることが普通だと思いますが、周りに野花が咲いているので、それを切って飾ってもらうことを期待しています。
どれだけの人がそうしてくれるかは分かりませんが、補助輪を静かに置いて能動的に動いてもらう仕掛けを作っておくということです。
そうすることで、自分で動いて楽しみを見つけていくようになります。
それは例えば、花を切る、自然の中でイベントをする、ステイ先で馴染みのお店ができる、というようなことかもしれません。
静かにサポートはするけれど、自ら手にしてもらうような構造にするよう意識すれば、能動的に活動を続けてくれるのではないかと考えています。
深井 めちゃくちゃ面白いですね。
良いと思う一方、それが実際に行われているかどうかは測りにくくないでしょうか?
そういうライフスタイルを提供していても、はさみがあることに誰も気づいていなかった、みたいな。
福島 そうですね。
はさみそのものの利用率よりは、最終的な数字として、サービスの継続利用率で測っていくべきかと思います。
施策全部をKPIに因数分解するわけではなく、コンセプトの具現化策の一つとするということです。
クラシコムの青木(耕平)さんとSANUについて話していた時、SANUは機能ではなく思考のレイヤーで勝負をしていると言っていただきました。
TENTIALは少し違うかもしれませんが、僕らの場合、機能のレイヤーで勝負をすると、もっとラグジュアリーなもの、きれいなものとなり、価格勝負になってしまいます。
そうではなく、コンセプトで勝負をし、施策に効果があったかどうかは最終的な数字で判断することにしています。
そういう余白の作り方をしています。
SNS時代の広告に依存しないブランドのあり方
松田 勉強になりますね。
菅原さんは、色々なブランドを見てきているので、鳥肌が立つくらい、半端ない施策だと言えるようなものを見てきているのではないでしょうか?
菅原 松田さんの質問の背景には、広告依存しないビジネスモデルがあると思います。
僕ももともとは広告ビジネスをしていましたが、今は掛け捨ての広告には反対のポジションをとっています。
広告費を出して顧客を獲得する、コンバージョンレートは5%、みたいな話になりますよね。
それはつまり、95%のお金をドブに捨てることになります。
では、その95%のお金は誰のものかと言うと、会社のお金と思いきや、それは過去に会社に払ってくれたお客様のお金です。
その過去のお客様のお金をドブに捨てた結果、顧客体験は向上するのかと考えると、向上はしないですよね。
まず、ベースとして、そういう風に考えてほしいのです。
ですから、お客様の満足度を上げる、約束を守る、ブランドを作るというベースがあると、広告費を使うことは過去のお客様のお金をドブに捨てることになります。
過去のお客様が払ったくれたお金が大切に運用され、今のお客様やリピーターに必ず還元されるかどうかを出発点に考えたいのです。
継続的なファンとの連携について、皆さんが知っていて分かりやすい例で言えば、ヤッホーブルーイングの「よなよなエール」です。
みんなで集まることで、ブランドと1人の顧客という関係を超えて、ブランドとみんなにし、体験価値を向上させています。
▶イベント(よなよなエール)
1人ずつ飲んでも味は変わらなくても、みんなで飲めば味がなぜか美味しくなると、ビールを飲む瞬間の体験をより良くしています。
もう一つはクラシコムの「北欧、暮らしの道具店」で、コンセプトが強く、SNSのコンテンツで喜んでもらえて、その喜びがあふれたときに消費行動に走る、買ってもらえるようにしています。
物を売る、使ってもらうという前提ではなく、コンテンツでブランドの約束を体験してもらい、ファンとつながり続けるようにしていて、つながり続けるから買ってもらえる。
この2つの例は、広告以外の施策として、今のSNSがある時代だからこそできることだと思います。
松田 なるほど、勉強になりますね。
「みんなと」というのはキーワードなのだなと思いました。
1人で体験するものを、みんなで体験するものに変えた途端、そこに共有価値が生まれて…。
菅原 意味が変わってきますよね、それは大きいと思います。
松田 SANUは本当に、「みんなと」ですよね。
1つのロッジをみんなで共有していますよね。
福島 共有するという意味では、そうですね。
エンゲージメントがすごく強いです。
泊まっていただくと、毎回レビューを頂くのですが、文章の長さがすごいのです。
Uber Eatsなどだと短いものしか書かないと思いますが、例えば、「ここの釘がはねているので、こうしたほうがいいです」とか…、それに対して、1つずつ返信します。
例えば、エコ洗剤が泡立たなかったので違うものに変更したら、そのレビューをくれたお客様から喜びの声が届くというような対話がずっと続きます。
意図しているわけではないですが、そういうファンエンゲージメントが自然に生じています。
菅原 お客様と一緒にサービスを良くしていくということですよね。
福島 応援する人になっていくのでしょうね。
議論を終えて
菅原 というわけで、残り5分になりました。
最後に皆さん、1分ずつくらいで、感想や伝えたいこと、学んだことなどがあればお願いします。
中西 エクイティを使いながら事業を黒字化しようとしていますが、未だにエクイティを使って時間を買ったことが良かったのか、高い成長を追求するべきなのかという悩みを抱えています。
完全自己資本で小さく事業をするならいいかもしれませんが、拡大しようとすると資本主義市場と切り離すことはできないので、そういう悩みが尽きないと思っています。
ブランドを作るなら、最初の段階で、どんなスピードでどのくらい拡大すべきなのかは考えておくほうがいいと思いますし、そうすると戦い方も変わるのだろうと思います。
周りを見て売上を伸ばしていくことも一つかもしれませんが、コンセプトが明確であるほうがいいと思います。
我々の場合、健康技術やアスリート・リレーション、ネットワークを作る、基盤を作ることにエクイティ投資をし、ありがたいことに急成長できていますが、急成長が果たして良かったのか悩んでいます。
本日はありがとうございました。
深井 本日はありがとうございました。
ヘラルボニーの大ファンのような立場で参加していましたが(笑)、とても楽しい時間を過ごさせてもらいました。
僕は地方の後継ぎとして事業を始めましたが、ブランドがあったからこそここでお話しさせていただいていますので、ブランドのパワーを心の底から信じています。
ブランドを作ることは本当に辛く大変だと思いますが、菅原さんがおっしゃったように、欲しい人ではなく信じてくれる人に届けるというのは、自分との対話の世界にいかに深く潜るかが大事だと、改めて思いました。
Sanuの最初の1年もそういう1年だったのだろうなと思うので、僕もできる限り潜ろうと、改めて思いました。
来月、寝具などを対象に、「KAPOK KNOT HOME」という新しいカテゴリを立ち上げる予定ですので、ぜひチェックしていただければと思います。
福島 ノバセルがスポンサーのセッションなのに、広告に依存しないビジネスという結論という、非常に繊細なファシリテーションをしていただきました(笑)。
松田 確かに(笑)。
福島 それは冗談ですが(笑)、すごく楽しいセッションでしたし、会場の皆さんも質問をしていただきありがとうございました。
SANUはまだまだこれからの会社です。
このセッションは「ライフスタイルブランド」がテーマですが、我々がライフスタイルブランドと標榜していいのかどうかについて、3カ月くらいディスカッションをする会社です。
ブランドという言葉もバズワードなので、使うことを恐れるような慎重さを持ちながら、事業をしっかり作っていこうと思っています。
出張費をかけ、カーボンを排出して東京から福岡に来たので、ROI的なリターンで言いますと、「SANU 2nd Home」と検索していただきウェイティングリストに登録いただくと、トライアルでは宿泊ができます。
宿泊後のレビューに「ICCサミットで見た」と一言書いていただければ、「ICCサミットに行ってきて良かったね」と社内で僕が言ってもらえるかなと思います。
(一同笑)
僕らの建築物は、実際に泊まっていただき、触れて、空気を吸っていただかなければ、ホテルなどと何が違うのかは分からないと思います。
極めて体感的なものなので、機会があればぜひお願いします。ありがとうございました。
松田 最近すごく嬉しかったのは、阪急うめだ本店で館コラボのジャックをさせていただいたことです。
下から上まで全階で各ブランドとコラボをし、9階で大型催事をするということを1週間させていただいた時、店頭で自分も立っていて、障害のあるお子さんを連れて涙を流すお客様を5人以上、見ました。
▶阪急うめだ本店が多彩な「ヘラルボニーアート」を販売 ディズニーと協業も(繊研新聞)
それは、「こういうところでもできるのだ」という気持ちからの涙だと思っています。
それが悪いわけではないですが、市役所の一角で、障害者週間のポスターコンクールの一環でアートが掲示されていても、それは涙が流れるものにはならないと思います。
ブランドというものは、人の認識や価値観を変える力があると本当に思っています。
社会に与えるインパクトは色々ありますが、人の考え方や価値観を変えられるのがまさにブランドビジネスだと思っているので、それに向けて頑張っていきたいと改めて思いました。
ありがとうございました。
菅原 ここで終了とさせていただきますが、スピーカーの4名に感想を後でお伝えください。
そして、これからさらに大きくなったり、何かを成し遂げたりするブランドだと思うので、応援をぜひお願いします。
それでは皆さん、ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美