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「ここは“家族”が集まる場所」ヘルステック企業・メドピアがオフィスに込めた集合知とは?

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ICCサミット FUKUOKA 2019のセッション「我が社のEX(従業員体験)ー オフィスで生み出すコラボレーション体験とは?」で紹介する企業のオフィスを訪問するシリーズ。第6回は、2018年2月から東銀座にオフィスを構えるメドピア社を訪ねました。ぜひご覧ください。

▶この記事は ICCサミット FUKUOKA 2019でフロンティアコンサルティングがスポンサーするセッション「我が社のEX(従業員体験)ー オフィスで生み出すコラボレーション体験とは?」で紹介するオフィスのレポートです。

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18日〜21日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


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今回のレポートでは、国内医師の3人に1人が参加する医師専用コミュニティサイト「MedPeer」をはじめとした多角的なサービスを展開するヘルステックベンチャー「メドピア株式会社」のオフィス取材の模様をお届けする。

代表取締役社長CEOを務める石見陽さんは、医師・医学博士の肩書をもつ異色の経営者だ。そんな石見さんがメドピアを設立したのは2004年12月のこと。これまでに計7回のオフィス移転を経験し、現在オフィスを構える東銀座には2018年2月に移転した。

15期目を迎えたメドピアがこれまでどのようなオフィス戦略を行ってきたのか、そしてこれから目指すオフィスの形とは? オフィス内をご案内いただきながら、石見さんにお話を伺った。

オフィス移転は「採用」にも効く経営戦略の1つ

メドピア株式会社 代表取締役社長 CEO 石見陽さん

石見さん「私たちメドピアのオフィスは、ここ東銀座に移転する前は恵比寿に、その前は渋谷に構えていました。オフィスを『経営戦略』の1つとして考えるようになったのは、2014年に渋谷から恵比寿に移転したときですね。

2014年は、ちょうどメドピアがIPOを行った年でもあります。採用も広げていきたい一方、『MedPeer』が医師限定会員制サイトであるために、一般の方からは私たちが何をやっているのかを分かってもらいづらいという課題がありました。そこで、コンセプトにこだわったオフィスがあれば、社外の人にメドピアのことをより知ってもらえるのではないかと思い、『Park(公園)』をテーマにした魅力あるオフィスを創りました。

この『IPOとの合わせ技』でのオフィス創りにより無事採用を広げることができ、その成功体験から、オフィスを経営戦略の1つとして捉えるようになりました」

移転時のこだわりは「ワンフロア」であること

そうした成功体験を得た上での現オフィスへの移転。今回はどのような点にこだわったのだろうか?

石見さん「人数が増え、恵比寿のオフィスが手狭になって移転を考え始めたのですが、その時のこだわりの1つは、グループ3社で『ワンフロアのオフィス』というのものでした。

当時は社員数80人くらい。この人数の段階でツーフロアに分かれてしまうと、社員同士が「上の人、下の人」みたいに呼び合い出すのではないかという思いがありました。そうしたセクショナリズムを生みたくない、だからワンフロアがよい、かつ都心がいいと探したときに、不動産屋から提案されたのがこのオフィスでした。

決して新しくないビルですが(笑)、窓から外を見るとちょうど高速道路の上で見晴らしがとてもよくて、スカイツリーも見えるし開放感があるなという第一印象でした。

オフィスから臨む首都高速環状線

実際に移転してみて、都心ではありますが東銀座という立地柄、銀座の中心より落ち着いた街の雰囲気のよさも日々感じますね」

メドピアの「原点」を表現したエントランス

次に一同は、石見さんと広報の藤野さんのご案内で、エントランススペースを見学させていただいた。

その足元に目をやると、床の一部が他の部分とは違う色になっていることに気づく。

実はこれ、2004年に新橋のトランクルームで創業した際の「1.7帖」のスペースを表現しているとのこと。「3人で創業したものの、当時は2人しか座れない広さでした」と石見さん。

なぜ、オフィスの床に、それもエントランスに“創業時の広さ”をデザインしたのだろうか?

石見さん「自分はある意味、フルタイムの臨床医を辞めてベンチャー企業を起業するという、創業当時にはだいぶ変わったことをしてきた人間です。今でこそ、医師である自分が『なぜ』会社をはじめたのかをしっかりと社員に伝えるようにしていますが、以前はそうではありませんでした。

その『なぜ』を伝える重要性を感じたのは、8年程前に、当時二十数名いたメンバーが次々と退職して7名まで減ってしまったときです。離れてゆくメンバーの背中を見ながら『なぜ自分がこの事業をやっているかを、きちんと説明しなければいけない』と強く思い知らされました。

弊社のミッションは『Supporting Doctors, Helping Patients.(医師を支援すること。そして患者を救うこと)』というものですが、そこにあるストーリーを語ることができるのは僕だけです。この1.7帖のスペースには、そのストーリーをスタート地点からしっかりと伝えたいという思いを込めています」

メドピアのミッション・ビジョンは、全ての会議室に掲示されている

オフィスはメドピアの「集合知」を体現する空間

ここで、エントランス周辺の特徴的な空間を紹介したい。

エントランスとゲストルームをつなぐ廊下の壁一面に広がる次の写真は、「ヒストリー・ウォール」と呼ばれる、医学の偉人たちの言葉が年表形式で散りばめられたアートだ。

医学史を紐解く「ヒストリー・ウォール」

古代ギリシャの医師・ヒポクラテスの言葉から始まり、2004年の地点にはメドピアの創業が刻まれている。ベンチャー企業であるメドピアが、連綿と続く医学の歴史の上に成り立っているのだというメッセージを感じとることができる。

このウォールを作製した実際の意図を石見さんに伺った。

石見さん「このアートの背景にあるのは、メドピアの『集合知により医療を再発明する』というビジョンです。

私たちは医療に関する集合知が集まるサービスを提供していますので、オフィスという空間でも、『集合知が集まる場』であることを表現したいという思いがあります。

例えば、医学の歴史はまさに集合知ですよね。ウォールの雲の部分には、MedPeerのサイト上で『先生方が大事にしている言葉を投稿してください』と私自身が呼びかけて集まった会員医師の声を記載しています。これも集合知です」

MedPeerの会員医師から募った「格言」が雲を形成する

ヒストリー・ウォールの角を曲がると、目線ほどの高さに約30名の顔写真が並ぶスペースがある。

メドピアグループを支える医師の皆さま

これらの写真は、メドピアの事業に日頃より協力いただいている医師・管理栄養士の先生方だ。メドピアのビジョンに込められた「集合知」というキーワードが、オフィス内において非常に大切にされていることが分かる。

続いて、石見さんがオフィスに込める思いを次のように説明してくれた。

オフィスは、医療の未来をつくる「家族」が集う場所

石見さん「思えば会社自体も『集合知』のようなものですよね。したがってオフィスは、メンバーが常に集合知を発揮できるような場である必要があります。

メドピアの大事にしている人材価値観の一つに『我々は家族である』があるのですが、オフィスもそれを体現するための場所にしたいと考えました。ここで働くメンバーはもちろん、ヘルステック業界で挑戦する社外の人たちもまた1つの家族です。

そうしたコンセプトをもとに、このオフィスでは『Home』をテーマに各スペースのインテリア・デザインやネーミングを行いました。それでは、順番にご案内したいと思います」

社内外の勉強会にも使用される「パティオ(中庭)」

こちらは「パティオ(中庭)」と呼ばれるスペース。収容可能人数は50〜60人ほどで、社内でのイベントや打合せ、ランチスペースの他、社外のイベントにも貸し出しており、銀座界隈のRuby技術者の勉強会「ginza.rb」の会場としても使用されているとのこと。

社員クラブ活動の案内ポスター

壁に目をやると、「究極のTKG(たまごかけごはん)」と書かれた上記のポスターが掲示されている。パティオには石見さんが社員にプレゼントしたという炊飯器が置かれており、炊きたてご飯で美味しい卵かけご飯を食べる「TKGクラブ」が活動しているらしい。

「家族」とは少し違うかもしれないが、仕事以外にも社員どうしの交流があるのは、オフィスが1つの「Home」として機能している証拠のように感じた。

また、パティオの一画には懸垂棒や体組成計「InBody(インボディー)」が設置されている。体組成計はグループ会社のサービス「ダイエットプラス」において管理栄養士が栄養指導のカウンセリングに用いるもので、オフィスにも設置して社員に解放しており、健康を気遣う社員に好評だとか。

執務エリア「リビング」は“一体感”を重視した固定席

次に案内いただいたのは、「リビング」と名付けられた執務エリア。オフィスの中で最も広いスペースだ。

近年、フリーアドレス制を導入する企業が増えてきていると聞くが、メドピアは全社員固定席とのこと。その理由を伺った。

石見さん「座席については、チーム単位で“島”を作り、その中での固定席としています。弊社で働くスタッフの職種としてはエンジニアが最も多く、『エンジニア開発室』のような集中環境があっても良いかもしれませんが、それではコミュニケーションが減ってしまいます。

トレードオフになりますが、それよりも同じチームに所属するエンジニア、PM、ディレクター、デザイナーが一緒にいることで生まれる一体感、コミュニケーションを重視して固定席制としています。

その代わりという訳ではありませんが、特にエンジニアの方は長時間の着席作業になりがちですので、腰を痛めないように椅子はいいものを導入しています」

「リビング」の一画にあるこちらのガラス張りの部屋は、管理栄養士が食生活改善をサポートする「ダイエットプラス」や、健康保険組合向けの特定保健指導サービス事業を行うグループ会社フィッツプラスの執務エリア。

石見さんによると、事業の特性上個人情報を扱うため、セキュリティーの観点から「区切り」を入れなければいけない中で、オフィス全体になるべく一体感がでるようにとガラス張りの設計を施したとのこと。

執務エリアはまさにオフィスの中心。一見したところ変哲のない執務エリアに「Homeらしさ」はあるのだろうか?などと思いながら見学していた筆者だが、石見さんの口から立て続けに出た「一体感」という言葉が、その答えの1つであることに気づいた。

自由に議論ができるミーティングスペース「テラス」

次に一行は、執務エリアに隣接する「テラス」と名付けられた空間を案内いただいた。

高さの異なるテーブルやソファー席が並ぶほか、窓際にもボックス席が配置され、用途や気分にあわせて使用できるオープンスペースだ。

社内でも人気のスペースで、ちょっとしたミーティングに利用される他、夕方になると気分転換にこちらで作業するスタッフもいるとのこと。

石見さん「執務エリアは固定席ですが、集まりたいときに気軽に集まれたり、集中して仕事をしたいときに一人になれたり、そのように働く場所を自由に選べる空間創りも大切にしました」

テラスの奥側に並ぶ「バルコニー」

窓際のスペースは「バルコニー」と呼ばれ、ファミレス席や集中スペースが並べられている。「最近はメンバーも来客も増え会議室が埋まってしまうことがありますが、そうした際にもバルコニーが活用されています」と広報の藤野さん。

気分・用途にあわせて使い分けられる会議スペース

最後に、オフィステーマである「Home」らしいネーミングの7つの会議室をご紹介したい。「テラス」と同様に、気分や用途にあわせて使い分けられる表情の豊かな会議室がそろっている。

会議室「シアタールーム」

会議室の中で一番大きなこちらの部屋は「シアタールーム」。壁にはロビン・ウィリアムズ主演の「パッチ・アダムス」などの医療に関連した映画のポスターが飾られている。ポップコーンメーカーが置いてある会議室は日本広しと言えどもメドピアだけではないだろうか。

会議室「プレイルーム」

「プレイルーム」は、子ども部屋をイメージにつくられている。カラフルなラグが目にも楽しい。

会議室「ダイニングルーム」

「ダイニングルーム」は、家族団らんをイメージした会議室。壁にはキッチンの絵が描かれている。

会議室「ガレージ」

前出のポップな会議室とは少し雰囲気の異なる会議室、その名も「ガレージ」。

「Google、AmazonもHPも、ベンチャー企業はガレージから生まれました。弊社もヘルステックベンチャーとして、ガレージ風の内装で『ベンチャーマインド』を忘れないようにしたいと思いこの部屋を作りました」と石見さん。

会議室「DEN」

「DEN」は、リラックスして仕事ができる「書斎」をイメージしたスペース。会議室で唯一ソファーが置かれ、その雰囲気から、カジュアルな社内面談によく使われているとのこと。

会議室「クリニック」

そしてこちらが、メドピア名物(?)の「クリニック」。前の前のオフィスから社員とともに引っ越してきた骸骨が佇む。ステンレス台は通常の会議机より少し高めに設計されており、立ちながら短時間で効率的に行う会議などでも活用ができる仕様とのこと。

会議室「ゲストルーム」

そしてこちらが、スカイツリーを望む「ゲストルーム」。窓側とは逆の壁一面には、ガラス製のホワイトボードが設置されている。以上でオフィス見学は終了した。

次も「ワンフロアの一体感」にこだわりたい

メドピアは現在、年間40〜50人のペースで社員数が増加しているという。そのため、すでに会議室が埋まりがちの状況とのことだが、次のオフィスはどのような設計にする予定なのだろうか?

石見さん「このビルは2020年過ぎには解体される予定です。元々2・3年の予定で移転してきたので、もう間もなく移転先を検討しなければなりませんが、次も『ワンフロア』にはこだわりたいですね。一体感のあるオフィスが、私たちには必要です」

そう話しながら、「賃料が上がることは覚悟しています(笑)」と一同を笑わせてくれた。

会議室でいただいた来客用のペットボトルに目をやると、そこにはメドピアが掲げる「クレド(約束)」が記載されていた。優しい口調から感じる石見さんの印象とは一見異なる、非常に力強い言葉が書かれている。

主軸の「MedPeer」プラットフォーム事業を拡大し、2019年春には薬剤師集合知プラットフォームの提供も開始するメドピア。次のオフィス移転は、東京オリンピックが開催される2020~2021年頃の予定だ。

そのとき、メドピアに集まる「集合知」は一体どのような形で医療を支えているだろうか? そして志を共にする「家族」が集まるオフィスは、どのような空間へと進化しているだろうか? 望むらくは、次のオフィスの変化が、メドピアの次なる成長を体現しているだろう。

【メドピア株式会社 オフィスデータ】

所在地 東京都中央区銀座6-18-2 野村不動産銀座ビル11階
オフィスフロア
平米数
970㎡
設立 2004年12月
従業員数 118名(2019年01月時点、連結)
事業内容 医師専用コミュニティサイト「MedPeer」の運営、その他関連事業
– 医師向け臨床およびキャリア支援事業
– 企業向けマーケティング支援および広告・リサーチ事業
– 一般向け健康増進・予防支援事業

(終)

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/浅郷 浩子/戸田 秀成

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