「バイオという“目に見えないもの”を感じさせる空間に」小さなミドリムシで挑戦を続けるユーグレナのオフィス戦略 – 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

「バイオという“目に見えないもの”を感じさせる空間に」小さなミドリムシで挑戦を続けるユーグレナのオフィス戦略

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ICCサミット FUKUOKA 2019のセッション「我が社のEX(従業員体験)− オフィスで生み出すコラボレーション体験とは?」と連動したオフィス訪問シリーズ。第1回は、2018年2月にJR田町駅近くの「G-BASE 田町」へ移転したユーグレナを訪ねました。ぜひご覧ください。

▶この記事は ICCサミット FUKUOKA 2019でフロンティアコンサルティングがスポンサーするセッション「我が社のEX(従業員体験)-オフィスで生み出すコラボレーション体験とは?」と連動したオフィス訪問レポートです。

▶ICCパートナーズではコンテンツ編集チームメンバー(インターン)の募集をすることになりました。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18日〜21日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


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今回のレポートでは、微細藻類ミドリムシ(学名:ユーグレナ)を活用した食品・化粧品の販売、バイオ燃料の研究開発を行うバイオベンチャー「株式会社ユーグレナ」のオフィス取材の模様をお届けする。

ユーグレナが2018年2月からオフィスを構えるのは、JR田町駅から徒歩数分の「G-BASE 田町」。“多様な働き方を支援するオフィス開発プロジェクト”として、三井不動産と清水建設が共同開発を進めたオフィスビルだ。
オフィス移転を主導した永田暁彦さん(同社取締役副社長)は、同社HPで「オフィスは重要な会社の経営戦略の一つ」と語る。

実は、永田さんが新オフィスに込めた想いは上記リンクでかなり詳しく解説されている。しかし創業以来常に成長を続けるユーグレナ。その後の変化や課題、そして次に目指すゴールをお伺いするべく永田さんに取材をお願いし、快くお引き受けいただいた。

「目に見えないもの」を伝えられるオフィスに

オフィスをご案内いただく前に、永田さんに今一度、新オフィスの設計時に込めた想いを振り返っていただいた。

株式会社ユーグレナ 取締役副社長 永田 暁彦さん

永田さん「社長の出雲も僕も今30代ですが、東証一部上場のサイエンス系企業で経営陣が30代の企業はありません。そして、サイエンスを基盤にして『世界を変えよう』としている会社もほとんどいません。

僕たちはそれこそが『ユーグレナ』の大きな特色だと思っています。でもこの特色は、目に見えるものではありません。そこでオフィスを設計する際は、そうした『目に見えないもの』をどうすれば働く人や来訪者に伝えられるか、というのをテーマの中心に据えようと思いました。

また、『会社が角を曲がる時、シーンが変わる時に、必ずそこに感動があるように』ということを大切にしています。そして、“ハード”としてのオフィスを“ソフト”で補うことを前提に設計した、という感じです。

それがどういうことなのか、実際にオフィスをご案内しながらお伝えできればと思います」

「バイオ・サイエンスらしさ」をいかに伝えるか?

ユーグレナが入居するのは2〜3階の計2フロア。まずは、来訪者用スペースのある3階からご案内いただいた。

3階エントランスで来訪者を迎えるユーグレナのロゴ

そこで出迎えてくれたのは、ユーグレナのロゴを形どったエントランスサイン。近づくと、エメラルドグリーンの液体の中で「ポコポコポコ……」という音とともに無数の泡が発生しているのが分かる。

 

永田さん「ユーグレナにお越しいただく方に、オフィスという無機質な空間を通じて、いかに“サイエンスらしさ”や“バイオらしさ”を感じてもらうかを考えました。そこで作ったのがこのオブジェです」

まるで「培養槽」をイメージさせるオブジェだが、そこで発生する無数の泡は“常に何かが生まれている”というメッセージのようにも感じる。

気分はバイオ研究者?「ラボ」がテーマの来客フロア

エントランスを通過した一同。次に目に飛び込んできたのは、大きな白テーブルに等間隔に置かれた顕微鏡だ。

エントランスの先に鎮座する巨大なテーブル

顕微鏡の横には何枚ものプレパラートが用意されていて、約150種類存在するといわれる“ユーグレナ”の標本を観察することができる。ちなみに食品やジェット燃料に用いられるのは、そのうちEuglena gracilis(ユーグレナ・グラシリス)という種類らしい。

ユーグレナ(ミドリムシ)のプレパラート

さらに左側の壁に目を移すと、ユーグレナの事業を解説するパネルが飾られている。健康食品から遺伝子検査、そしてジェット燃料の開発まで幅広い事業を展開していることがよく分かる。

パネルの下には模型や実験器具が並ぶ

永田さん「ご覧いただいて分かるように、この空間のテーマは『ラボ』になっています。その狙いはエントランスと同じで、オフィスの空間から“バイオらしさ”を感じてもらうことです。顕微鏡もそうですし、テーブルは黒天板に白脚という実験台、実験器具の横に置いてあるティッシュはキムワイプ、蛍光灯は三角フラスコというようにこだわっています。

ユーグレナのオフィスでは、このように観た瞬間に何かが分かる・感じられるということを大事にしています」

フリースペースでは「科学×アート」のイベントも

さて、バイオらしさが散りばめられたこの空間は、実際にはどのように使われているのだろうか?

広々としたミーティング・スペース

永田さん「ここはフリーのミーティング・スペースになっています。社員どうしでちょっとした打合せを行ったり、ユーグレナのグループ企業リアルテックファンドの投資先企業の人が打合せをしに来たり、というふうに使われています」

ミーティング・スペースをフロアの奥側から眺めた風景

永田さん「その他、記者会見やイベントに使われることもあります。

例えば、ユーグレナがリアルテックファンドと共同で開催している『Mitaxis(ミタクシス)』というサイエンスとアートのイベント(※)。

▶参照:「そんなの常識でしょ」という知識にこそ潜むビジネスチャンス。リアルテックファンドの「Mitaxis Class vol.1」レポート(FINDERS)

僕は、アートのある側面として“言語化出来ないものをひと目で伝える”ということがあると思っていて、ユーグレナもリアルテックファンドもまさに、サイエンスやテクノロジーという“難しいもの”に挑戦している集団です。

『Mitaxis』はその裏側をアートで可視化してゆこうという取り組みで、そのイベントでは(写真左奥の)壁にサイエンス・アートの作品を投影したりしています」

働き方にあわせて、働く場所を変えられるオフィス

もう1つ、ミーティング・スペースに隣接した特徴的な空間をご紹介したい。

胸ほどの高さのパーテーションで囲まれた半個室席。どのように使われているのだろうか?

永田さん「ここは、学習塾の自習スペースをイメージした『フォーカス・ルーム』です。図書館などもそうだと思いますが『誰からも話しかけられないけど、誰かに見られている』スペースって集中できますよね。

ユーグレナのオフィスは、その人の働き方に応じて働く場所を選べるオフィスになっています」

オフィスに込めた想いを語る永田さん

「アカデミア」がテーマの明るい執務スペース

次に、社員の皆さまの執務エリアの中心となる2階フロアをご案内いただいた。

まずはじめにご案内いただいたのは、「アカデミア」をテーマにした執務スペース。天井は3階と同じく開放感のあるスケルトン天井だが、スポットライトと“三角フラスコ”がメインの3階に対して、ライトの数も多くより明るさを感じる。

ちなみに写真左奥のガラス張りスペースが出雲さんと永田さんの居室とのこと。普段は同じ部屋で業務にあたっているらしい。

右奥に見えるダンボールは商品だろうか? 永田さんが少し話しづらそうに解説してくれた。

永田さん「あのダンボールの山は、今度処分しなければならない食品在庫です。食品を扱う企業ですので、どうしても賞味期限切れの商品は出てしまいます。でもそれは、バングラディシュの支援プロジェクトをやっている企業として本来あってはいけないことです。

そこでちょうど明日、出雲と僕から社員にそうした想いを伝えるイベントを予定しています。敢えてこうしてオフィスの中に在庫を並べて、それをどう感じるかというのを話そうと考えています」

ここでも期せずして「見て、感じること」の実践を伺うことができた。さらに執務エリアの反対側に目をやると、そこにも「見える」工夫がされているのが分かる。

壁一面に広がるユーグレナの行動指針「ユーグリズム」

次の「カフェスペース」に向かう廊下でも、ロッカールームの反対側の壁一面は掲示板になっていて、ニュース記事やお客様からのメッセージが所狭しと並べられている。

「カフェスペース」に続く廊下

掲示物自体はどこにでもあるものだが、ロッカーから出るときに必ず目に入る位置に設置された掲示板に「見て、感じる」の徹底が伺える。

月1回パーティー開催、キッチン併設のカフェスペース

次に案内いただいたのは、2階のもう1つの空間「カフェスペース」だ。

オフィスの中で最も賑やかなカフェスペース

「カフェスペース」は文字通り、カフェにいるような気分でコミュニケーションをとりながら仕事ができるスペースだ。

永田さん「ここでは毎月1回パーティーも行っていて、先月は芋煮会、先々月はハロウィーン・パーティを開催しました。他には、四半期ごとに株主の方を呼んで投資家説明会を行ったり、有志のチームが週何回か外のテラスもあわせてエクササイズをしたり、色々な使われ方をしています」

ちなみに先日のハロウィーン・パーティーでは、永田さんは「ひょっこりはん」に仮装したとのことで、そのときの写真をスマホで見せてくれた。

「出雲社長も仮装されたのですか?」という質問には、「出雲は常にミドリムシの仮装をしているようなものなので(笑)」と永田さん。

併設するキッチンはお洒落なカウンターつき

永田さん曰く「麹菌がミドリムシを資化した甘酒」とのこと

社員のこれからを考えて設置した「ゆーぐりん保育園」

カフェスペースのキッチンの横からは、オフィス移転とともに開設された社内託児所「ゆーぐりん保育園」を覗くことがきた。

オフィス内とは思えない、温かな雰囲気

永田さん「ゆーぐりん保育園は、今すでに子どもがいる社員というよりかは、まだ子どものいない社員のことを考えてつくった施設です。そうした社員にとって『会社に託児所があること』が前提にあれば、これからの人生設計がしやすいですよね。

開園当初こそ利用者がいませんでしたが、今は常時4人くらいの社員が利用しています。どうしても仕事の都合がつかないときなどに臨時で利用する社員もいます」

そう話しながら、園児たちを眺めて顔をほころばせる永田さん。小さな子どもを持つ社員の働きやすさはもちろんのこと、職場で子どもの顔が見られることの幸せを思うと、2歳の子をもつ筆者も率直に「うらやましい」と感じる。

「ゆーぐりん保育園」の入り口

ユーグレナのオフィス見学は以上で終了。最後に、ユーグレナのオフィス戦略の「今後」を伺った。

「見えないもの」を伝えて、「大きな力」に

永田さん「僕が代表を務めるリアルテックファンドでは、出勤不要、時間管理不要、1週間に一度、2時間のコアミーティングタイムがあるだけでそれ以外はどこで働いてもOKという規則にしています。

それで困っているかというと、全く困っていません。なぜかというと、少人数の組織でフィロソフィーが完全に浸透し、それと働き方がマッチしているからです。

これはオフィスという「ハード側」の問題というよりか「ソフト側の問題」ですよね。ユーグレナでもそうした“ソフト”をどう鍛えるか、ということを実践していきたいと考えています」

食品から化粧品まで幅広い「ユーグレナ」製品

ユーグレナは、2020年のバイオ燃料によるジェット機のフライト実現に向けて、この取材の約1ヵ月前の2018年10月31日、日本初となるバイオジェット・ディーゼル燃料のプラントを竣工した。

ユーグレナ社、日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントが完成、日本をバイオ燃料先進国にすることを目指す『GREEN OIL JAPAN』を宣言(PR TIMES)

この記事をまとめながら、永田さんが冒頭でおっしゃった「会社が角を曲がる時、シーンが変わる時に、必ずそこに感動があるように」という言葉の意味を考える。

目には見えない小さな「ユーグレナ」から、バイオ燃料が生まれる。それを積んだ世界初のジェット機が空を飛んだ日、かつてオフィスで処分する食品在庫の山を見た社員は何を思うだろうか? 壁一面の「ユーグリズム」や、毎日目にした掲示板はどう見えるだろうか?

その際にはぜひ今一度、ユーグレナのオフィスを取材させていただき、社員の皆さまの声を伺いたいと願う。

永田さんと、フロンティアコンサルティング佐々木さん・稲田さんと

【株式会社ユーグレナ オフィスデータ】

所在地 東京都港区芝五丁目29番11号 G-BASE 田町 2F・3F
オフィスフロア
平米数
約1,850㎡(2フロア合計)
設立 2005年8月
従業員数 204名(2018年9月時点)
事業内容 1.ユーグレナ等の微細藻類の研究開発、生産
2.ユーグレナ等の微細藻類の食品、化粧品の製造、販売
3.ユーグレナ等の微細藻類のバイオ燃料技術開発、環境関連技術開発
4.バイオテクノロジー関連ビジネスの事業開発、投資等

(終)

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/浅郷 浩子/戸田 秀成

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