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「今、HRテックが熱い」【F17-8E】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!6回シリーズ(その2)は、いまHRテックが注目されている背景について議論しました。日本と米国のHRテックにまつわる現状についても分析しました。是非御覧ください。
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ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 8E
注目ベンチャー特集「今、HRテックが熱い」
(スピーカー)
麻野 耕司
株式会社リンクアンドモチベーション
執行役員
表 孝憲
株式会社ミライセルフ
代表取締役CEO
宮田 昇始
株式会社SmartHR
代表取締役CEO
(ナビゲーター)
井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
プリンシパル
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連載を最初から読みたい方はこちら
最初の記事
【HRテックが熱い①】日本のHRを変革する経営者たちが徹底議論【F17-8E #1】
本編
表 起業家としてピッチをすると”Why now?”、つまり事業を行うタイミングとして「なんで今なの」と聞かれることがあります。
「SmartHR」の場合だと、国がAPI公開したのが今だったという結構シンプルな理由があって、誰しもが納得すると思います。
しかし、それ以外のHRテックのサービスに関してはなぜなのか。
麻野さんのお話(サービス業中心への産業構造変化・人材や組織が競争優位性を左右するというお話を前にして頂きました)もその通りだと思うものの、サービス業が広まったのはここ5〜10年の話であるし、ビジネスのサイクルが上がってきたのもここ5年くらいなので、その上で、ではなぜ今HRテックが流行っているのかについて皆さんと議論していきたいです。
いま、HRテックが注目される背景とは?
宮田 2つあると思います。
「SmartHR」が、サービスの初期から投資家の方から比較的ポジティブに見られていたのは、アメリカで成功した”ゼネフィッツ”の存在が大きかったです。
▶︎ゼネフィッツ(zenefits)・・・人事管理・勤怠管理・給与計算・保険の管理などの人事業務を効率化するアメリカの中小企業向けクラウドサービス
”ゼネフィッツ”がなければそこまで良い評価をもらっていなかったと思いますし、巨大プレーヤーの出現は市場を盛り上げるというのを肌で感じました。
もう1つあるとすれば、クラウドに情報をあげる抵抗が多少薄れてきたことだと感じます。
以前はIT系企業でも「ソースコードをクラウドにあげるなんて大丈夫なの?」と、GitHub導入に渋る企業は多かったですが、今ではIT企業であれば当たり前のように使っています。
同様に、クラウド会計サービスが出てきたときにも「会社の会計データをクラウドにあげるなんて」といった抵抗があったと思うんですが、そういったハードルが下がってきました。
「SmartHR」の分野でも、人事情報をクラウドにあげることに対して抵抗は薄くなってきました。それは、サービス提供開始からのこの2年で大きく感じています。企業のクラウドへの慣れてきたことにより、むしろ「PCのローカル環境に保存しておくより安心だね」という意識に変化してきています。
麻野 三井住友銀行が(名刺管理サービスの)Sansanを導入していましたよね。
▶編集注:三井住友銀行が名刺管理『Sansan』をメガバンクで初めて導入~クラウドで全行の人脈情報を共有、顧客サービス向上へ~(2016年11月7日 )
これは結構大きな出来事だと思っています。金融機関がクラウドを使うというのは今まで考えられなかったんですが、あれは大きな潮目だと思いました。
宮田 たしかに。中央省庁への導入もニュースになりましたね。
井上 急に大企業や官公庁がクラウドを導入した背景には何がありますか?
蓄積した先人の努力が実を結んだのか、別の要因があるのか、慣れてきて広まったのか。
表 セキュリティはもとから問題なかったですし、劇的に何か改善した、技術が出たという話は聞いていないです。
僕のイメージでは、あるポイントを超えたと直感的に感じています。
井上 大企業が導入して「あそこがやっているんだったら」ということで、導入が爆発的に伸びるきっかけになるということですね。
麻野 宮田さんが言ったように、ゼネフィッツやSansanなど、トップランナーが風穴を空けるのは、流れが変わるきっかけになるかもしれないですね。
国内HRTechへの投資額は米国のわずか1%
井上 先ほど、ゼネフィッツの話題があがりましたが、日米を比較してHRテックを捉えたときに、今どんなギャップが見えているのか教えてください。
麻野 僕は2016年10月に、アメリカで開催された「HR Technology Conference」に行ってきたのですが、全然盛り上がりが違うなと感じました。
日本のHRテックの投資額はアメリカの1.4%しかないと言われています。そもそも経営におけるHRの位置づけが、アメリカのほうが高いという感覚を持ちました。
色々な会社にCHROがいて、データをもとにHRでイノベーションしていく機運が高いです。
アメリカは、ここ20年の間、金融とITが経済成長を引っ張ったと思います。金融やITは 1人の人間のスキルやコンディションによるボラティリティがすごいので、例えばAさんとBさんで、100倍、1,000倍の差が出てきてしまう。
パフォーマンスを高めていくために、そこをしっかり取り組んでいこうというのが素地としてあるのかなと感じています。
日本はまだ製造業時代をひきずっていて、AさんとBさんのパフォーマンスの差は、工場のラインの中でほとんどないはずです。2倍もないと思います。
なので、そこまでちゃんとやらなくていいという考え方があるのかなと思いました。
井上 外向きのHRと内向きのHRの話はありますか。
例えば、日本の銀行だと人事権を握るのが昇進の条件だというような話があって、それは完全に内向きの視点ですが、米国においてはITや金融業界は、相当人材の流動性が高くて、良い人材を獲得するために外向きに争っているHRの印象があります。
あながちHRの地位が低いというわけでもないのかも?と思ってお伺いしたいんですが。
麻野 経営のなかでのHRの位置づけはそんなに高くないとも思うのですけれどね。
今、井上さんが仰った流動性の違いはあると思います。
アメリカは非常に労働者の流動性が高いので、リクルーティングもそうですし、入ってからのリテンションにも相当パワーをかけている感じがします。
しかし、製造業にしても金融業にしても、日本のエスタブリッシュメントな企業では、良い人材がいなくなって困るというリアリティが持てていないので、流動性の違いは影響しているかもしれません。
井上 日米の違いについて、表さんは海外で過ごされていた時期も経て、どうですか。
USAではデータが整理されている
表 ひとつは、データの整理度合です。
アメリカのサービスでいうと、例えば、Linkedinでログインすると、ログインした瞬間に情報が入ってきて、色々なことが履歴書データなどの入力の手間がなくできます。
我々のサービスは適性検査みたいなものなので、考え方や価値観といったデータをとります。
実際に、Linkedinログインでアプリを作ったら、ログインできないケースがすごくありましたが。そこに関してはサービスを作るときの広がりとか簡単さ、ベンチャーでできるかどうかはすごく違いがあると思います。
Linkedinにログインしていれば、その人がどの段階でどの職種に就いているか知ることができるのは、とても良いと思っています。
なぜそういう世の中ができているのかというと、ジョブディススクリプションの話で、どういう仕事を求めて、どういうスキルをつけたいのかが、企業側も求職者側もすごく明確にあるからです。
なので、例えば半年くらいでスキルをつけて職につくというケースが多いので、仕事を探すサービスで言っても、マッチングでいうとスキルの部分が大事で、そういうサービスはたくさんあります。
細分化もかなり進んでいて、フィンテック専門のジョブボードとかニッチなものもあります。ニッチとはいえマーケットサイズもそこそこありますが。
井上 宮田さんは、色々ベンチマークされたと思いますが、感じているところはありますか。
宮田 実際にアメリカに行ったわけではないのですが、聞いている話とその答え合わせはしました。
麻野さんの話と被るかもしれませんが、アメリカと比べるとHRが「コストセンター」と見られがちです。
企業にとって採用系サービスはまだプラスの取り組みとして投資しやすいように感じますが、「SmartHR」の場合は完全に業務効率化なので、商談をしていると、コストセンターにさらにコストをかけるのかという議論になるケースも、ごくまれにあります。
海外のほうがSaaSの導入が当たり前になっているので、進みやすい文化や素地があるのは感じます。
SmartHRの提案では「コスト削減」とは言わない
井上 ちなみに、日本だとどういうピッチをされるんですか。
宮田 コスト削減を言うことはほとんどありません。
会社の規模や誰が使うかによって、会社のニーズが違います。10名未満の会社だと、経営者とか役員の方が使うケースが多いです。手続の際に従業員の給料がわかってしまうので、アルバイト等に任せにくい業務だからです。
この規模の企業が魅力を感じるのは、学習コストの削減です。
わざわざ社会保険の知識を覚えなくても、「SmartHR」の画面通りにやっていれば処理できる、そこに魅力を感じてもらっています。
10〜30名になると、バックオフィスの専属のスタッフの方が1人いる会社がほとんどです。この規模は、忙しすぎて業務が回らないので、業務効率化を図りたい企業がほとんどです。
井上 金額じゃなくて忙しくなくなるということですね。
宮田 そうです。
これが、従業員30〜50名の規模になってくると、経理と人事にバックオフィスが別れて、人事の方が使うケースが多いです。
業務効率化の目的もありますが、少し違うのが、単純に忙しいというより、採用や制度づくりなど、もっと他にやるべき付加価値の高い業務があるので、誰でもできるような業務は「SmartHR」で圧縮したいといったケースです。
100名規模になると、専属の労務担当がいて、管理部長や顧問社労士とのやり取りの効率化や、業務標準化に魅力を感じていただき、導入が進むケースが多いです。
多くの場合、「金銭的コスト削減」はほぼ刺さらなくて人事労務担当者がより価値のある業務に時間を使えるというのが刺さるポイントです。
麻野 金銭的コストではなくて、時間的コストが下がるということですね。
宮田 はい、そうです。
井上 もっとやるべきことというと、具体的にどんなことがありますか。
宮田 良い事例があります。
クラウドワークスさんに導入して頂いているのですが、担当者の方が、労務にかけるが時間が3分の1になったと聞いています。
その方は、生み出された時間で新しい人事制度を作りました。具体的には、リモートワークや副業を解禁するといった制度です。
従業員の生産性を測ったそうなんですが、その制度の導入前と導入後で60%アップしたそうです。「SmartHR」を導入したことで、人事労務担当者の3分の2の時間が他のことにまわせるようになって、それによってできた制度で従業員の生産性があがったということです。
このような事例をもっとどんどん増やしていかなければいけないと思っています。
麻野 「SmartHR」をいれて、浮いた時間で「モチベーションクラウド」を使ってもらうと最高ですね(笑)
宮田 そうですね(笑)
(続)
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続きは 【HRテックが熱い③】日本企業は”オペレーション人事”を止めて、”戦略人事”に転換すべき をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸
【編集部コメント】
今年(2017年)10月の米国での「HR Technology Conference」、Facebookでも続々と参加されている方が一気に増え、この領域の注目度の高まりを強く感じます。ベンチャーが取り組みやすく、かつ成長市場ということで、この領域での起業や新規事業がさらに増えていきそうです(榎戸)
続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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