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7. 「音」で認知症の改善に挑むピクシーダストテクノロジーズ

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ICC FUKUOKA 2025のセッション「最新テクノロジートレンド 徹底解説(シーズン8)」、全11回の⑦は、ピクシーダストテクノロジーズ 村上 泰一郎さんが、認知症予防や認知機能改善に「ガンマ波サウンド」を活用する取り組みを紹介します。現在、国内の65歳以上の認知症推定患者数は5人に1人といわれています。音で認知症という社会課題に挑む取り組みを、ぜひご覧ください! 

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。


【登壇者情報】
2025年2月17〜20日開催
ICC FUKUOKA 2025
Session 2E
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か? (シーズン13)
Supported by EVeM

(スピーカー)

田路 圭輔
エアロネクスト
代表取締役CEO

梅川 忠典
リージョナルフィッシュ
代表取締役社長

村上 泰一郎
ピクシーダストテクノロジーズ
代表取締役社長COO

砂金 信一郎
Gen-AX
代表取締役社長 CEO

(モデレーター)

尾原 和啓
IT批評家

「最新テクノロジートレンド 徹底解説(シーズン8)」の配信済み記事一覧


尾原 時間が押しているので、ご興味のある方は終わった後に語っていただければと思いますが、社会課題が明確に見えてきて、一方、日本の中でもすでに技術が圧倒的に進化しているから、その技術を見てビジネスにしていくというのは、田路さんも梅川さんも一緒ですね。

動物を変えられるのだったら、実は人間も色々変えられるのではないかと。

村上 フリが(笑)

尾原 けれども、今回のパターンは、技術マップを取ったのではなくて、1人の“波使い”という魔法使いが、何か色々なものを出してくるぞと。

それをどうやって、ビジネスの魔法使いとして、逆にビジネスに変えるのか(笑)。

村上 いやいや(笑)。

尾原 村上さん、お願いいたします。

波の魔法使い、ピクシーダストテクノロジーズ 村上さん

村上 ありがとうございます。ピクシーダストテクノロジーズの村上です。


村上 泰一郎
ピクシーダストテクノロジーズ株式会社
代表取締役社長COO

東京大学大学院修士課程修了(工学)。その後アクセンチュア戦略コンサルティング本部にてR&D戦略/デジタル化戦略/新規事業戦略等を中心に技術のビジネス化を支援。また同社在職中にオープンイノベーション組織(Open Innovation Initiative)、およびイノベーション拠点(Digital Hub)の立上げにも参画。ピクシーダストテクノロジーズでは、日本初の産学連携スキームを筑波大学、東北大学と構築し、大学とのオープンイノベーションにも取り組むほか、これまで40以上のR&Dプロジェクトを立ち上げ、うち複数で大手企業とのパートナーシップを締結。同社としては、令和4年度「知財功労賞 経済産業大臣表彰」を受賞、第2回「IP BASE AWARD」でスタート アップ部門グランプリ受賞。経済産業省:大企業と研究開発型ベンチャーの契約に関するガイドライン策定委員会委員、一般社団法人未踏のエグゼクティブアドバイザー等を歴任。

よろしくお願いします。

僕からは、「ガンマ波サウンド」の話を。全く何を言っているか分からないと思いますが。

尾原 全く分かりません!

村上 全く分からないですよね。

尾原 前回のICCサミット FUKUOKA 2024のクローズドセッション(<完全オフレコ>

解説・雑談シリーズ「テクノロジーはどこまで進化するのか?」(シーズン9))では、メタマテリアルという、音が聞こえなくなる技術の話でしたが、今回は全然違うことをやりますね。

村上 そうですね。

前回はメタマテリアルの話をしましたが、今回はガンマ波サウンドという五感刺激、特に音の刺激で脳波に介入するというものについてお話しします。

それによって認知症予防、認知機能改善に活かしていこうという研究の話をしていきたいと思います。

大学院までは理系でコンサル会社を経て起業

村上 せっかくなので、自己紹介をさせていただきます。

つながりがあったので、つけ足したのですが、田路さんがやられているNEXT DELIVERYが山梨県小菅村にあって、僕の出身の大月市はすぐ隣です。

過疎化が進んでいて、僕の母校の小学校ももう廃校になってしまったのですけれども、めちゃくちゃ人口減少していて、物流に非常にニーズがあると思いますね。

大学院までは思い切り理系で研究をしていて、研究領域は2領域ぐらいあって、1領域が実はDNAのシーケンサーなどのセンサー領域でした。

尾原 へえ!

村上 僕はどちらかと言うとシーケンサー側、測る側の研究をしていたのですが、そういうことを色々やりながら、社会人になってからは思い切り文系ですね。

波動制御を中心に、社会に価値あるものを開発

村上 コンサル会社に入って色々やってきて、ピクシーダストテクノロジーズと共同創業したという流れです。

ピクシーダストテクノロジーズは、「社会的意義」や「意味」があるものを連続的に生み出す孵卵器となる、をミッションに掲げています。

要はアカデミアレベルの、尾原さんがおっしゃってくれましたが、特に波、波動制御に関わるような先進的な技術を、社会に価値ある形でどんどん出していこうと、一生懸命頑張っています。

少しだけ前置きで会社の話をさせていただくと、中心に据えているのは「波動制御」で、ありていに言うと、音や光、電波などを、制御、解析、シミュレーションするようなことです。

その技術を生かして、色々な社会課題にタックルしていきましょうというものですね。

もう少しだけ言うと、結局人間もコンピュータも、外界とコミュニケーションする時に、だいたい波を使っているのですよね。

「波動制御」と言うと、わけが分からないみたいな感じですけれども、AIが色々計算したものを世の中にアウトプットしようとか、コンピュータの中で起こったことをリアルワールドに還元しようと思ったら、ロボティクスのようにアクチュエーターを使うか、だいたい波を使います。

尾原 確かに!

村上 オーディオ、ビジュアルもそうだし、何なら触覚も波で表現できます。

尾原 あとは熱もそうですよね。温めたりとか。

村上 そうですね。だから、色々なところに使えるのですよね。

そういったインターフェース技術だと思っていただければいいです。

音響メタマテリアル、超音波スカルプケアの技術開発

村上 そんな中で、今日ご紹介したいのは、ガンマ波サウンドです。

少しだけ触れると、前回のセッションで色々話題になったのは「iwasemi」という音響メタマテリアルです。

音響シミュレーションによって3次元構造を上手く作り込んであげることで、自然界にない特性を持った新しいマテリアルを作るという分野があります。

木や床やプラスチックなどはだいたい音を反射してしまいますが、特殊な3次元構造を作ると、なぜか音を吸収するプラスチックみたいなものが作れたりするのです。

尾原 しかも、電気を一切使いません。

村上 はい、一切使いません。

その中で最近僕が特に面白いと思っているのは、音は空気の波なので、空気が漏れると絶対音が漏れるのですが、なぜかメタマテリアルの技術を使うと、風は通るのですが、音だけカットするみたいな、よく分からないことができます。

その辺も面白いですが、この調子で話していると、絶対終わりません(笑)。

尾原 そうですね、今日はガンマ波の話を。

村上 はい。今日お話しするのはガンマ波サウンドですけれども、先ほど遺伝子の話があったので、面白かったことに触れておくと、超音波スカルプケアの技術があるのですが…。

尾原 おかげさまで生えました。

村上 ああ、良かった!

最近、クリニックでもたくさんエビデンスが出ていて、非常に効果がありそうですが、これは偶然の産物で、超音波で傷を速く治す全く別の実験をしていたら、たまたま毛が生えてきたので、本格的に取り組んだものです。

調べたところ、休んでいる発毛遺伝子がオンになっているなど、色々なことが分かりました。

梅川 そうなんですね。

村上 そうなんですよ。

梅川 ちなみに先ほどのゲノム編集ツールの酵素も、細胞の中に入れる時に、ソノポ(ソナーポーレーション)と言って、超音波を用いて細胞膜に一時的な穴を開けて、細胞の中に入れるものがあるのですよ。

尾原 酵素を浸み込ませる。同じだ。

村上 へえ!

梅川 みたいなものがあるので、意外と相性がいいかもしれないですね。

村上 ああ、そうかもしれないですね、そういうものもあるのだなと思って。

尾原 一緒に研究すればいいじゃない。

村上 確かに(笑)。

梅川 そうですね(笑)。

村上 先ほど、梅川さんからオンオフできると聞いて、僕らもオンオフできると思いましたが、僕らはたまたまオンオフできてしまったみたいな感じです。今後もっと科学的にやりたいですね。

音で認知症の社会課題に挑む

村上 さて、今日メインでご紹介したいのは、ガンマ波サウンドですけれども、キャッチコピーは「音で、認知症に挑め。」です。

要は、音の技術で認知症にタックルしていくものになっています。

その技術名を、「ガンマ波サウンド」と名付けています。

大前提として、認知症が社会課題だということは、完全に共通認識だと思います。

尾原 そうですね。

村上 何年か前から使っているスライドですが、2025年に65歳以上の5人に1人が認知症と言っていましたが、もう2025年になってしまいました。

尾原 ついに一番人口の多い団塊世代が、75歳に突入するという超介護社会に。

村上 おっしゃる通りで、グローバルでも今後どんどん増えていくし、深刻な社会課題だと思っています。

ガンマ波サウンドを塩野義製薬と共同開発

村上 こういうところに我々は音でタックルしていくということで、せっかくなのでプロジェクトの思いと、どんなことをやっているのかをまとめた動画を作りました。

技術自体若干難しいので、動画で概要を理解いただければと思います。

少し長いですけれども、ご覧ください。

「(動画内音声)

(認知症の義父を介護する)女性 ねえ、これもあったのよ。見て見て、ほら。これはかずはるだよね?

これ、誰だか分かる?

義父 すずこ。

女性 すずこ! そう、たいしたもんだ、お父さん。たいしたもんだ。じゃあこの中にも、お父さん写ってる写真あるんだけど、分かる?

(場面が変わって)認知症というのは、本当に記憶がないんですよね。それがもっともっとひどくなっていけば、家族も分からなくなる、自分も誰だか分からなくなる。うーん、やっぱり自分は絶対なりたくないって思う病気だと思います。

ーーーーー

男性 「あなたは若年性アルツハイマー型認知症ですよ」と言われた時は、やっぱり目の前が真っ暗になりましたね。

ーーーーー

認知症の母を3年介護する女性 元気だった時の母がいなくなってしまうっていうのが、すごく怖いとか嫌だなという思いがあるので。

ーーーーー

村上 泰一郎ピクシーダストテクノロジーズCOO まさに認知症っていうのは、それこそ大切な人の大切な思い出も奪ってしまう。

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三春 洋介塩野義製薬ヘルスケア戦略本部長(当時) 認知症は本当に本人だけじゃなくご家族もつらいですけれど、まだこれが治る時代には残念ながらなっていないです。

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辻 未津高ピクシーダストテクノロジーズプロジェクトリーダー 私たちは今生活に溶け込む認知症ケア及び認知機能の改善といったところに取り組んでいます。生活しているだけで認知症が治っていく、音というアプローチで脳波の一種であるガンマ波を増やすことで認知機能を改善していくっていう取り組みを今目指してやっています。

ーーーーー

前田 佳主馬塩野義製薬創薬研究者 着目しているのが、40ヘルツという周波数の音になっています。40ヘルツの刺激、感覚刺激というもので、もしかしたらアルツハイマーに介入できるかもしれない。ここのアイディアは、本当に斬新かつ、やはり最先端かなというふうに考えております。

ーーーーー

長谷 芳樹ピクシーダストテクノロジーズ工学研究者 もともとこの変調音が脳波をちゃんと惹起する、あるいは同期するかどうかというのは誰もやったことがなかったのですね。色々な音を混ぜて研究をしました。思った通り以上に、予想通りの結果が出ていて、ほっとした記憶があります。

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三春 洋介塩野義製薬ヘルスケア戦略本部長(当時) エビデンスが薬と比べるとまだ十分でないものに本当に取り組むのかとかということは社内でも結構な議論はあったんですけれど、10年先、20年先に届けるだけじゃなくて、従来薬では取りえないようなスピード感で、これ自体が本当に会社として新しい取り組みの一つになります。

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村上 泰一郎ピクシーダストテクノロジーズCOO 別にそれは特定のプロダクトである必要はなくて、世の中で音が鳴っている場所っていうのは全て認知機能ケアしうるっていう、そういった未来が作れる可能性があるものなんですよね。

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認知症の母を3年介護する女性 音って、介護する側も本人も、意識しなくても入ってくるものなので簡単にできる。

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(認知症の義父を介護する)女性 音で、少しでも認知機能にプラスになっていくのであれば。

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男性 それが広まっていただけたら、嬉しいかなと思います。

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村上 泰一郎ピクシーダストテクノロジーズCOO まさに認知症っていうですね、これまでいろんな人がチャレンジしてきて、なかなか決定打が出てない、そんな領域、答えのない問題に対しても。

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辻 未津高ピクシーダストテクノロジーズプロジェクトリーダー 研究がもっともっと進んでいくことができれば、もしかしたら認知症というワードすらなくなる未来が待っているんじゃないのかなと思っていますので。

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三春 洋介塩野義製薬ヘルスケア戦略本部長(当時) 音で、認知機能にいいことがあるっていうような、これは希望の光になるんじゃないか」

村上 すみません、長い動画でしたけれども。

尾原 いやいや…、素晴らしい。

村上 塩野義製薬との共同研究、それから共同事業のプロジェクトになっていまして、動画でなんとなくご理解いただけたかもしれないですけれども、ガンマ波という脳波を出してあげることで、認知機能のケアをしていくものになっています。

(続)

カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Xをぜひご覧ください!
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/原口 史帆/浅郷 浩子/戸田 秀成

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