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「Motivation Clouderが語る「強い組織の創り方」」8回シリーズ(その2)では、“Go Bold”等のバリューで有名な、メルカリ社の理念戦略に迫ります。小泉さんが語る同社の組織創りの要諦とは? ぜひご覧ください!
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ICCサミット FUKUOKA 2018のダイヤモンド・スポンサーとして、Motivation Cloud (Link and Motivation Inc.) 様に本セッションをサポート頂きました。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2018年2月20-22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 3A
Motivation Clouderが語る「強い組織の創り方」
Sponsored by Motivation Cloud(Link and Motivation Inc.)
(スピーカー)
青木 耕平
株式会社クラシコム
代表取締役
小泉 文明
株式会社メルカリ
取締役社長 兼 COO
羽田 幸広
株式会社LIFULL
執行役員 人事本部長
(モデレーター)
麻野 耕司
株式会社リンクアンドモチベーション
取締役
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1つ前の記事
1.組織偏差値「Aランク」の企業が組織創りのノウハウを語り尽くす!
本編
麻野 今日はご登壇いただくお三方に、可能な限り各社がどんなデータになっているかを出させていただきます。
最初に出そうとしたデータは「出し過ぎだろ」と控え室で止められましたが、それでもかなりリアルなデータを出してもらっていますので、紹介していきたいと思います。
3社とも、先ほどの11ランクでは「A」という出現率5%くらいの組織状態を創ってらっしゃいます。
「なぜエンゲージメントがこんなに高いのですか」ということと、「今まで実施した施策でこれはやった方が良い」という2点についてお聞きし、その後は会場から質問を受け付けたいと思います。
特にモチベーションクラウド導入企業の方は、聞きたいことがたくさんあるのではと思います。
メルカリの強み:理念戦略、事業内容、人的資源
麻野 では、トップバッターとしてメルカリの小泉さんに聞きたいと思いますので、データを出します。
小泉 最初はもっと赤裸々なデータで弱みまで出ていたので、さすがにそれはないでしょうということで、強みだけにしてもらいました(笑)。
麻野 全体のスコアはもちろん良いのですが、弱みまで出さそうとしていたら昨夜「麻野さん、さすがにちょっと…」と止められて、修正をしました(笑)。
さてメルカリは従業員が約400人いらっしゃってAランク、これは素晴らしいです。
400人規模の企業でAランクというのは、全体の1%もないくらいの出現率です。
先ほどの16領域でいくと、メルカリの特徴は「理念戦略」「事業内容」「人的資源」の3つが特に強み、すなわち期待度が高くて、満足度も高いというものです。
要はこれが、メルカリの社員が束ねられているメインのエンジンです。
今日面白いのは、このあとの2社も全部違う強みで組織が束ねられていらっしゃいます。
ですので、メルカリのものをそのまま自分の会社に当てはめる必要はありません。
皆さんの組織開発の手札が増えれば良いなと、そう思っています。
では、なぜこの3つが高く出ているのか、何を考えて組織開発をしてらっしゃるかお伺いさせてください。
ミッション・バリューの刷り込みを徹底している
小泉 そうですね、まず逆に言うと、メルカリは右側(=上司・職場に求めるエンゲージメントファクター)の期待値が低い会社とも言えると思います。
僕はメルカリが創業して少し経ってから入社したのですが、その前には株式会社ミクシィの経営をしていました。
そこでの経験の中で、「会社と事業をきちんと整理しないといけない」と学びました。
ミクシィなどプロダクトの強い会社で起きがちな傾向として、プロダクトが伸びているときは、放っておいても会社は勝手に一枚岩になっていきますし、特に理念などは気にしなくて良いものです。
しかしプロダクトのライフサイクルによって元気がないフェーズに入っていくと、組織戦略や理念がないというかあまり啓蒙していないので、(プロダクトと)一緒に元気が失われていくというような状況が起きる可能性があります。
そのためメルカリに入社したときに、サービスが強くなる会社だからこそ、会社と事業を分けようと思いました。
どういうことかと言うと、まずはこの会社は何のためにあるのかという理念をしっかり創ると。
理念をしっかり創ると、それに対して事業がきちんとついてきます。
事業は当然様々出てくると思いますが、将来性や成長性をしっかり追っていきます。
さらに僕らの会社には「バリュー」というものがあります。
いわゆる価値基準、評価基準、行動評価みたいなもので、それに合わせて先ほどの3つ(理念戦略、事業内容、人的資源)を連動させながら人材を採用していきます。
そこが僕らの特徴的なところだと思います。
ミッションやバリューの社員への刷り込み・インプットは時間と手間を相当かけてやっている自信はあります。
従業員416人(当時)のうち、カスタマーサポートのメンバーが約半数なのですが、その人たちにもミッションやバリューを常に伝えて、共通認識をもってもらっています。
そのためメルカリでは、エンジニアやコーポレート部門のメンバーだけではなく、カスタマーサポートに従事する従業員のスコアもかなり高いというのが特徴かと思います。
麻野 今のメルカリの成長を考えたら真ん中(=事業内容)は出るでしょう、と思います。
「事業内容」の中には、事業の成長性・将来性、自社の競争優位性などがあります。
ただミクシィ時代の経験から、事業は良いときもあれば悪いときもあるので、まずは理念のところをきちんと取り組んだ、ということですね。
小泉 あとは色々な事業にチャレンジすることが大事だと思いましたね。
手数(てかず)の多い会社にしたかったので、理念とかミッションがしっかりしていないと事業もしっかり立ち上がらないと考え、ミッションをとても大事にしています。
「理念への共感」が全体のスコアに大きく影響する
麻野 モチベーションクラウドには色々なデータベースがありますが、一つひとつのデータの相関性も分析しています。
「この項目のスコアが上がると全体のスコアも上がりやすい」というスコア、要は他に影響しやすいスコアと、「この項目のスコアが上がっても、他の項目には影響しない(相関度が低い)」というスコアの2種類があります。
例えば、休日休暇などは、他の項目との相関度が結構低い項目です。
休みが増えたからといって理念に共感できる訳でも、上司の言っていることに納得できるわけでも、仕事のやりがいが増す訳でもありません。
しかし理念は逆に、他のスコアとの相関度が非常に高いというデータが出ています。
おそらく理念に共感できるからこそ人も魅力的に見えるとか、事業の納得感も生まれやすいなど、そのようなつながりがあるのだと思います。
ですから「何から組織開発を始めようか」というときに特に私が言っているのは、「最初に理念をしっかりと設定することが、色々な意味で投資対効果が非常に高い」ということです。
なぜ理念が与える影響が大きいかと言うと、他の納得感が高まりやすいからです。
先ほど言ったように、組織の偏差値は期待度と満足度の合致度なので、全部満足させるのは大変です。
「これは期待しなくてもいいよ」という項目が社員にちゃんと伝わっているのが(合致度を高めるうえで)大事です。
小泉 弊社も右側(上司・職場に求めるもの)がそれで、基本的には期待値も低いです。
麻野 理念や事業、人への期待値の高さに対して、例えば「上司の支援行動」とかはすごく低いですよね。
小泉 冒頭のスライド左側「会社に求めるもの」は、弊社のモチベーションクラウドでは右上の方(下記参照)、つまり期待値も高いし満足度も高い領域に出ます。
一方で右側の「上司・職場に求めるもの」は、弊社では左下の方(下記参照)に出ます。
つまり期待値も満足度も低いことを示しています。
麻野 右側の「支援行動」の中には部下のコンディションの把握というものがありますが、(メルカリでは)期待度が5段階評価の「2」とかですね。
生々しく数字を言ってすみませんが。
小泉 「自分のメンタルなどは全然気にしないでください」という人が多いということですね。
麻野 メルカリのバリューに「Be Professional」というものがありますが、皆プロなのでそこは上司に求めてはダメだよね、ということが伝わっているのでしょう。
これは、従業員に理念が浸透している賜物だと思います。
ミッション・バリューは少なく、短く
麻野 もう1つ、小泉さんに聞きたいことがあります。
最近のスタートアップや成長企業の経営者の皆さんも理念が大事と思ってらっしゃる方は多いですよね。
しかしメルカリの理念がここまで浸透しているということは、創り方のコツなどがあるのでしょうか?
小泉 コツとしては、ミッションもバリューも短くする、ということです。
長くなると覚えられません。
バリューも3つしかありません。
▶編集注:メルカリは「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションとし、「Go Bold 大胆にやろう」「All for One 全ては成功のために」「Be Professional プロフェッショナルであれ」の3つをバリューとして掲げています。
僕は人間は4つ以上を覚えられないと思っているので、なるべくシンプルに短くすることです。
最近は「Go Bold」を借りても良いですか、とよく言われます。
別に著作権があるわけではないのでどうぞ借りてくださいという感じなのですが、言いやすさというのがあるんでしょうね。
Goという言葉の持っている強さもあるのかなと思います。
色々な制度を創るとき、こうした言葉を決めるのはいつも一番苦労しますね。
麻野 数を3つにしぼったことと、短くしたことがコツですね。
小泉 ミッションやバリューについては、会議室の名前も全部その言葉にしました。
会議室の名前をつなげていくとミッションになりますし、バリューの言葉の会議室もあったりします。
「会議どこでやるの」「Boldでやります」と口に出せるようにしています。
Tシャツにもしていますし、明るい宗教のようなものです(笑)。
麻野 中身はどうやって考えたのですか?
バリューはミッションや事業の達成のためにある
小泉 メルカリ事業を成功させるためには、もしくはミッションを達成するためにはどういう行動が会社として求められるのかを、ひたすらポスト・イットに書き出しました。
それをある程度グルーピングしてくと、5〜6個になります。
しかし4つ以上は覚えられないと思っていたので、一番重要なところを3つだけ選びました。
なんとなくチームワークっぽいもの、チャレンジしないといけないよね、それから専門性は大事だよね、という3つにして、あとはどんな言い回しにするかを考えました。
基本的には、やはりミッションを達成するためにバリューがあるので、必ずしも創業代表の山田(山田進太郎氏)や僕がこういう働きが良いと思う、ということではありません。
なので、今メルペイという会社を新しく立ち上げていますが、「メルペイが成功するためのバリューとは何か」はメルカリとは切り離してもう1回考えています。
僕自身は、ミッションや事業が違えばバリューが違っても良いのではないかと思っています。
例えばBtoBの会社であれば、「Go Bold」はいらないかもしれません。
そのあたりはしっかりと、経営陣の好き嫌いではなくて、ミッションを達成するためにこれがなければいけない、という考え方をしています。
麻野 この創り方にすごくポイントがあるのではないかと思っています。
理念というのは、社長のこれまでの人生から「これが仕事をする上で大事だ」というものを選んで、というのが昔から多いと思います。
しかしメルカリは、事業、ミッションを成功させるために「バリュー」を作っているので、事業と理念がつながっています。
そして経営陣が「理念を突き詰めていくと事業が成功する」と信じているので、理念にも力が入ります。
一方で理念が浸透しない会社は、経営者が業績は業績、理念は理念と分けているので、業績が悪くなるとすぐに理念が後回しになり、絶対に浸透しません。
しかしメルカリはそこがつながっていて、おそらくその理念に基づいて人の採用もしているのですよね。
人材の採用・評価もバリューに基づいて行う
小泉 バリューに基づいた評価項目で採用のレポーティングが回ってきますし、入社後の四半期の評価も全部バリューに基づいてやっているので、常にバリューがベースにあります。
そこには経営陣の好みはまったく入りません。
「こいつの働き方はなんとなく良い」ということは絶対にないです。
マネージャーの中でもかなり「Go Bold」の捉え方が結構違うのですが、それを1人ずつキャリブレーションしていき、頭を一つにしていきます。
よく、「一人ひとりのGo Boldの判断基準は違うんじゃないですか」と言われます。
しかし僕はそれで良いと思っていて、ある程度言葉の持っているゆらぎを、経営陣がうまく使えれば良いかなと思っています。
ですからGo Boldをさらに3つに分解するというようなことはやっていないですし、そこは経営陣で議論する中で頭を一つにしていくことが大事かなと思っています。
麻野 キャリブレーションとは何でしょうか。
小泉 評価です。
弊社の場合では1つの大きな部門には8人くらいマネージャーがいますが、その8人で自分の部下の評価を1人ずつ提案しながら、8人の合意を取っていきます。
麻野 なるほど、ありがとうございます。
理念が中心にあって、それが事業とつながっている。
かつ採用や評価ともつながっているので、皆が魅力的に思う働き方をする人が採用・評価され、それ自体が魅力を生む。
この理念を基にした一貫したストーリーが、メルカリのエンゲージメントスコアを高めているということですね。
理念をベースにおきながら、事業と人を一つのストーリーで語ることができる。
これは非常に投資対効果が良いやり方だと思います。
小泉 だから、あまり考えなくて良いのです。
常にバリューに紐づいて考えれば良いので。
麻野 バリューを語っていけば事業戦略を語ることにも近づいていきますし、そのような人も集まってきて魅力が高まっていくというやり方ですね。
では次は、クラシコムの例をお聞きしたいと思います。
これはまたメルカリとは違うデータが出ています。
(続)
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編集チーム:小林 雅/戸田 秀成/本田 隼輝/尾形 佳靖
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