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3. ミッション・ビジョン・バリューは、電気抵抗が最も小さい発電システム(クラシコム青木)

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ICC FUKUOKA 2023のセッション「ビジョン/パーパスについて語り合う」、全4回の③は、 いよいよ議論がスタート。パーパスやミッションは理想ではなく制約条件であるとする主張や、一貫性を担保するためのものとする説、さまざまな意見が飛び交います。今回のスピーカーで一番熱いユーグレナ出雲さんがバイオ燃料について語り出し…ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは エッグフォワード です。


【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 9F
脱炭素社会への変革の取り組み
Supported by エッグフォワード

「ビジョン/パーパスについて語り合う」の配信済み記事一覧


パーパスやミッションは制約条件

佐々木 中川さん、先ほど「ビジョンがきちんと機能すれば儲かる」とおっしゃっていましたが(Part.1参照)、どういうことか教えてください。

中川 儲かるというか、ビジョンやミッションとは大きなことを掲げることになるので、短期では達成できないと思います。

つまり、利益を出さなければそこには絶対に到達できないため、利益も大切なのです。

髙島さんが、ビジョンやミッションを掲げても仕方ない部分もあるとおっしゃっていましたが、僕らの中では、「ビジョンを実現することが51で、利益を出すことが49」と、必ず優先順位を定めなければいけないと考えています。

利益を軽視するつもりはないので、そのバランスが大切だと思っています。

髙島 僕が感じているのは、世の中の名画と言われるもののほとんど全てが、制約条件のあるクライアントからのオーダーがあって初めて、この世に生まれたクリエイティビティであるということです。

例えば、「この教会の壁画にこの神話をテーマにした絵を、このサイズでこの納期までに描いてください」と言われて初めて、人間はクリエイティブなものを創れるのです。

つまり、「好きなように、自由に絵を描いて」と言われて生まれたもののうち、残っている名作はゴッホの絵くらいで、ほとんどないのではないでしょうか。

これはビジネスにも当てはまると思います。

自分たちにとって額縁というか、制約条件が何かというのが、パーパスやミッションです。

この中で戦うという制約条件としてパーパスやミッションを決めるので、例えばクラシコムの場合、儲かるけれどハッピーにならないことは行えなくなりますよね。

▶編集注:青木さんは、冒頭で「自分自身がまず幸福になりたいということをミッションとして掲げている、まあ変わった会社かなと思っております」と発言されました(Part.1参照)。

他社ではしているけれど自分たちにはできないことも生まれるので、自分たちの生きる道をクリエイティブに考えざるを得なくなることが、パーパスやミッションに関して、意味のある一つのポイントかなと思います。

一貫性を担保するためのミッション、ビジョン、バリュー

青木 なぜミッション、ビジョン、バリューを定めたのかと聞かれると、一番の理由は、やはり一貫性を担保するためです。

何らかの事業やプロジェクトは、どこかで発電し、電線を通じてどこかにエネルギーを送り、そこでことを起こすという状況にすごく似ていると思います。

そこで最終的なアウトプットが良くなることが望ましいのですが、発電所でめちゃくちゃ発電していても、電気抵抗があるなど送電の効率が悪く、発電量の10分の1しか届いていない、ということが会社では多く起こります。

しかし、社員の、一人の人間としての想いや幸福と、会社が出すべき成果が、ビジョン、ミッション、バリュー、パーパスとしてきちんと整理されていれば、ドミノが規則正しく並んでいるかのように、一番少ない力で電気を届けられると思います。

マネジメントをしている人たちは同意いただけると思うのですが、なぜこれを行っているのだろうというようなことに迷っている人をエンパワーしたりモチベートするのは、一番面倒でコストのかかる仕事です。

ですから、最小の力で、発電量が少なくても電気がきちんと伝わる状況を作るために、自然と一貫性が担保された、「どこを目指していて、そのためにどういう会社であり、どういう行動をすべきか」があって、それらが機能する戦略や組織が必要です。

電気抵抗が最も小さい発電システムのようなイメージです。

僕はあまり元気がないので、発電量がそもそも少ないのです(笑)。

(一同笑)

元気がない人でもきちんと結果を出すために、送電効率を考えたアプローチをしていて、それを大事にしています。

無限に発電ができるなら、発電効率はどうでもいいとも思うので、会社にもよりますね。

「制限がないと動けない」のは悲しすぎる

小林 青木さんとは、こういう話も含めてよくお話させていただいています。

髙島さんのおっしゃるように、枠を作らないと人は動けないというのは、その通りだと思います。

ただ、僕自身はその事実が悲しすぎると思うので、先ほどお話したビジョンの「誰もが価値創造に夢中になれる世界」を掲げました。

枠がないと動けないというのは、嫌だなと思うんですよ。

本来、生まれた瞬間から、生きる理由を考えなくても人は生きています。

例えば、面白いことに、ペットボトルや段ボールを渡しておけば、子供は一日中それで遊んでいますし、公園に行けば、自分たちでルールを作った遊びで、遊び続けます。

「ああ、今日も楽しかった」「寝たくない」、そんな感じだったりします。

そういう状態だったのに、なぜ制限をかけてしまうのかと思ってしまうのです。

ただ、今はもうそういう状況なので、仕方ないのです。

100年や200年で変わる話では全然ないと思っていますが、僕はその制限を外していきたいと思っているのです。

名画の話も頷けましたが、縄文時代まで遡れば、人はみんな勝手に何かを創っていたわけです。

約1万年という長い期間が続いた時代という背景もありますが、あの時期に人はストーリーという発明もしています。

縄文土器は左右非対称ですが、左右対称にする技術がなかったわけではなく、起点と終点があってストーリーになっており、誰かに何かを伝えるために作られたものだという説もあるのです。

時代として、一番アート作品が多かった時代とも呼ばれており、何のために作られたのか分かるものもあれば、分からないものもあります。

枠や意味などないのです、ただ、作りたいから作っていた。

それほど自由だったのに、今は制限がないと動けなくなってしまっていることが、僕はすごく悲しいので、青木さんの言っていることは分かりますが、最終的には制限を外したいです。

ユーグレナさんがそうしているように、ビジョンは、なくてもいいのです。

みんなが思うようにやればいいと思いつつ、今は、ビジョンがなければどこにいるか分からなくなってしまうので、あえて言語化している感じです。

佐々木 出雲さん、何か話したそうなので、どうぞ。

出雲 僕、喋りますよ?

儲けるために来ている人、耳をふさぐ準備は良いですか?

▶編集注:出雲さんは冒頭で、「良いビジョンやパーパスを作ってお金を儲けたいと思っている人がいれば、僕の話を聞くのはやめた方がいいです」と発言されました(Part.2参照)。

(一同、会場笑)

出雲節炸裂

出雲 逆のことを話しますからね。

ユーグレナは狂っています、ですから、儲からなくてもやります。

だって、そもそもユーグレナって儲かりそうにないでしょう?

儲けようと思って、ユーグレナに取り組むわけがないじゃないですか。

(一同笑)

少し、大上段の話をします。

今の賢い人はみんな同じことを言いますが、今の社会において、現在のやり方の延長線上では絶対に解決できない問題が2つあります。

まず格差問題、2つ目が地球温暖化、気候変動です。

これらは今の資本主義という社会システム、つまり「儲ける」という制約がかかると、絶対に解決できない問題なのです。

僕は、バイオ燃料の仕事を一生懸命しています。

ユーグレナ社のバイオ燃料『サステオ』(ユーグレナ)

バイオ燃料は、地球に優しいので良いねと言われますが、最後には「いくらなの?」と言われます。

そして、「CO2削減も大事だけど、我々もボランティアではないので、儲からないなら使わない」と言われるのです。

石油は、掘れば出てくるものであり、安すぎるのです。

地球をめちゃくちゃにしているというコストを誰も負担しないから、1リットル150円なのです。

僕らの作るカーボンニュートラル社会の実現に貢献し得るバイオ燃料「サステオ」は、現在1リットル10,000円です。

めちゃくちゃ高いですよね。

商売になりそうにないですよね。

でも、狂うほどに地球環境の問題を解決しようとしなければ、みんな、どれだけ儲かっても、地球に住めなくなるのですよ?

住めなくなった時に初めてようやく優先順位を変えて、「儲からないけれど、1リットル10,000円のバイオ燃料「サステオ」を使った方が良い」と言ってももう手遅れだということを直感的に分かっている人は、今からバイオ燃料を使うのです。

儲かる範囲で、制約条件の中でというのは、今までのルールの上に成り立っているのです。

これまで、ほとんどの問題はそのルール上でも解決できていましたが、格差が広がることと地球環境問題は解決ができないです。

一人でそれを解決しようとするのは寂しいので、儲からなくても、志を同じくする人たちと…究極、うちの会社は潰れてもいいのです。

いや、永田(永田 暁彦CEO)がいるので潰れないですよ(笑)?

(会場笑)

大丈夫だからこそ、言っているのですが(笑)。

全体の16%でも、儲からなくても解決しようとするリーダーや社長が、今までのやり方の延長線上にはないことをしようとすれば……。

ですから、パーパス経営によって儲けるなんていう道筋は、考えたくもないです。

それを考えだしたら、どこまで行っても、今までの大企業と同じ土俵で勝負させられてしまうのです。

今、間違って私の話が聞こえてしまって、良いなと思った人は、ぜひソーシャルグッド・カタパルトにご参加ください。

【速報】まちなか留学で子どもたちの世界を広げる「HelloWorld」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2023)

佐々木 皆さん、出雲さんへの反論はないですか?

中川 出雲さんのおっしゃることはごもっともだと思う一方で、ICCサミットの場でこういうテーマで話させてもらう時、出雲さんのように話せる方は、ごくごく一部だと思うのです。

でも、それだと変わらないことがたくさんあると僕は思うので、儲けたいと思っている人もビジョンをきちんと持って、ビジョンに向かってまっすぐに取り組むことと儲けることを両立してもらえれば、結果的に儲かると思ってもらいたいです。

そう思って動いてもらうためにあるのが、今日のこのセッションだと思っています。

出雲さんのおっしゃることは正しいと思いつつも、そこの話をしたいんですよ。

今日のセッションを聞いている皆さんが、パーパスを定める経営が、遠いもので、危険で、狂気の沙汰なのだと思われてしまうのはちょっとなあ…と思います(笑)。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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