7. お酒をメディアとして、町を未来に残す挑戦を続けるチーム「男鹿」

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ICC FUKUOKA 2025のセッション「「ローカル・コネクテッド」(シーズン2) – ICC地域コミュニティを盛り上げよう！」、全10回の⑦は、「男鹿」チームが登場。メンバーは、モデレーターの荒木 珠里亜さんが所属する稲とアガベの岡住 修兵さんと齋藤 翔太さん、NEWLOCALの石田 遼さんです。人口減少が深刻なまちのシャッターを開けようと取り組んできた、稲とアガベの3年間の挑戦の軌跡が語られます。提案するツアーは男鹿のまち歩きと物件活用を考えるワークショップが中心です。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。

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【登壇者情報】
2025年2月17〜20日開催
ICC FUKUOKA 2025
Session 6E「ローカル・コネクテッド」(シーズン2) – ICC地域コミュニティを盛り上げよう！
Supported by EVeM

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▶「「ローカル・コネクテッド」(シーズン2) – ICC地域コミュニティを盛り上げよう！」の配信済み記事一覧

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荒木　では、続いて男鹿チーム、よろしくお願いします。

3年間の挑戦の軌跡を語るチーム「男鹿」

岡住 修兵さん（以下、岡住）　はい、チーム男鹿です。

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岡住 修兵
稲とアガベ
代表取締役社長

1988年、福岡県北九州市出身。神戸大学経営学部を卒業後、秋田県・新政酒造で酒造りを学ぶ。2021年に秋田県男鹿市に「稲とアガベ醸造所」をオープン。新ジャンルのお酒「クラフトサケ」造りを行うとともに、レストラン「土と風」を立ち上げ。2023年春、食品加工所「SANABURI FACTORY」を立ち上げ、廃棄リスクのある酒粕をマヨネーズにする加工生産をスタート。また同年8月一風堂監修レシピのラーメン店「おがや」を立ち上げる。2024年には宿「ひるね」を開業。今後はホテルや蒸留所の建設を予定しており、多くの優良な雇用を創出することを目指す。クラフトサケブリュワリー協会初代会長。
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僕たちは、僕たちの話しかしません（笑）。

稲とアガベの3年間の挑戦の軌跡を見ていただけるツアーにしたいと思います。

自分の話しかしないのに、スライドも90枚あるので、25分間、プレゼンで終わると思っています（笑）。

（会場笑）

まずは自己紹介を手短にお願いします。

石田 遼さん（以下、石田）　石田です、NEWLOCALという会社を経営しています。

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石田 遼
NEWLOCAL
代表取締役

1986年東京生まれ。東京大学大学院 隈研吾研究室で建築・都市設計を専攻。卒業後、マッキンゼーアンドカンパニーにて国内外の企業・政府の戦略策定・実行を支援、主に都市開発、公共政策などを担当。2017年 都市·不動産向けのスマートシティ・スマートビルのプラットフォームを提供するIoTスタートアップを起業。2022年 株式会社NEWLOCAL創業。「地域からハッピーシナリオを共に」をミッションに日本各地で不動産開発を中心としたまちづくりを行い、人口減少社会における持続可能な地域モデルの実現を目指す。現在は長野県野沢温泉村・御代田町、秋田県男鹿町、京都府丹後地域で展開中。半分は東京、半分は各地を飛び回る生活。
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僕は男鹿と丹後の両方で共同経営をしているので、今日は少しやりにくいなと思っていたのですが、丹後からは分断されたので、がっつり丹後はつぶします（笑）。

（会場笑）

日本のいろいろな地域で、素晴らしいリーダーたちと一緒に街づくりの会社を運営しています。

よろしくお願いします。

▶人・金・知恵の仕組みで、地域リーダーたちとまちづくりの希望を作る「NEWLOCAL」（ICC FUKUOKA 2025）

齋藤 翔太さん（以下、齋藤 翔太）　稲とアガベの齋藤と申します。

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齋藤 翔太
稲とアガベ
取締役CFO

1987年、神奈川県川崎市出身。学生時代10年間を東京都国立市で過ごし、一橋大学を卒業後、日本政策金融公庫（農林水産事業）に入社。宮崎支店、秋田支店、和歌山支店、帯広支店と全国転勤し、一次産業への事業融資に専門的に10年間携わる。秋田支店時代の縁をきっかけに、2022年4月にクラフトサケ醸造を起点にまちづくり事業も行う稲とアガベ株式会社にジョインし、秋田県男鹿市に移住。取締役CFOとして経理・財務を中心にバックオフィス全般を取り仕切る他、営業やイベントのディレクション等マルチに活動。並行して、関連会社として設立した株式会社SANABURIでは代表取締役に就任し、2025年1月より稼働したスピリッツ蒸留所の経営にも取り組んでいる。
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もともと金融機関に勤めていましたが、3年前に男鹿に移住しました。

すなわち、男鹿国王・岡住の忠実な家臣を3年間しております。

よろしくお願いします。

雄大な自然、男鹿半島

岡住　まず、男鹿がどこにあるかと言うと、秋田県の出っ張った半島です。

空港から案外近くて1時間くらいなので、東京からだと、乗り物に乗る時間は2時間ほどです。

秋田と言えばナマハゲのイメージがあると思いますが、実は、男鹿だけの文化です。

また、国定公園（男鹿国定公園）に認定されるような雄大な自然があったり、酒造りに使えるきれいな湧き水があったり、半島なのでめちゃくちゃ美味しい海産物があったりします。

ただ、そのような売り文句は、日本中どこにでもあります。

バブル期は一大観光地だったようですが、僕らが移住した当初は、このようなシャッター街が広がる、めちゃくちゃ寂しい街でした。

NTTも撤退しました。

そんな街で稲とアガベを開業し、丸3年が経過しました。

福岡県出身、稲とアガベを男鹿で立ち上げ

岡住　よく、「アガベって何？」と聞かれますが、テキーラの原料です。

なぜテキーラの原料が社名になっているかと言うと、僕の妻がテキーラが大好きで、「テキーラ姉さん」というあだ名で親しまれていたからです。

そんな妻と結婚した折に家紋として作ったのが、このマークです。

このマークを気に入っていたので、ブランドになり、社名になって今に至ります。

ですので、稲とアガベというのは、僕と妻というような意味合いです。

ツアーに参加いただくと、テキーラ姉さんにも会っていただけると思います。

▶稲とアガベの“アガベ”として、支え続ける──岡住郁美さん（海と – 稲とアガベのWEBメディア）

ちなみに、自分自身は男鹿に何の縁もゆかりもなく、福岡県北九州市出身です。

秋田市にある、新政酒造の酒をある日飲んでめちゃくちゃ感動し、ここで働きたいと思い、そのお酒を飲んだお店で「明日、新政に電話してみようと思います」と言いました。

すると、「新政で働きたい男の子が来た」とお店のFacebookページに投稿してくれて、たまたまそれを見ていた新政の社長が「いいですよ」とコメントしたので、秋田に行きました。

そんな流れで11年前に秋田に移住し、酒造りがめちゃくちゃ面白かったので、3年前に自分で会社を立ち上げました。

男鹿の昔の駅舎にタンクが並んでおり、麹室（こうじむろ）があります。

クラフトサケの浸透にまい進

岡住　日本酒の世界では、完全な新規参入が認められておらず、どこかしら会社を買収しないと参入できません。

そこで、仕方なく、「その他の醸造酒免許」という免許を活用し、技術のベースは日本酒ですが、そこにフルーツやハーブを加えて発酵させる、「クラフトサケ」という新しいジャンルを作った企業です。

クラフトサケの話をします。

もともと存在しないジャンルでしたが、クラフトサケブリュワリー協会を、haccobaの佐藤 太亮さんと一緒に作り、新たなジャンルとして浸透させようとしている企業です。

ICCでも、SAKE AWARDチャンピオンに選んでいただき、前回のクラフテッド・カタパルトでも優勝しました。

▶【速報】新企画「SAKE AWARD」、初代優勝は秋田・男鹿のクラフトサケ醸造所「稲とアガベ」（ICC KYOTO 2023）
▶男鹿の未来を拓く挑戦! サケ造りとまちづくりで、地域の希望の星になる「稲とアガベ」（ICC KYOTO 2024）

お酒が持つ力で男鹿に人を呼び込みたい

岡住　僕たちは、サケづくりをしながらまちづくりをしている企業です。

なぜまちづくりをしているかと言うと、街がなくなるからです。

高齢者率は50%を超えていて、2万人規模の自治体ですが、毎年1,000人以上の人口が減っているのです。

このままいくと、街がなくなります。

街がなくなると、せっかく借金をして作った醸造所もいつかゴミになってしまうのです。

そんな悲しい人生、ないじゃないですか。

ですから、この街が未来に残るためのことは全部やろうと決めて、チャレンジを続けています。

根底にあるのは、お酒は地域のメディアだという考え方です。

僕たちが作るお酒が、土地の名刺代わりに、日本中、世界中に旅立ってくれる存在だと考えています。

お酒は特殊能力を持っており、飲んで美味しければ、それが造られた場所に行ってみたくなるのです。

この力を借りて、人を男鹿に呼び込みたいと思っています。

シャッター街を開けていく

岡住　ただ、話したように、男鹿の街は人口減が進んでいるので、空き家だらけでコンテンツが不足していました。

シャッターを開けるのは僕らしかいなかったので、シャッターを開けていく決意をし、レストランや食品加工所を作ったり、僕らの事業で年間400トン廃棄されているけれど、栄養たっぷりの酒粕を使って調味料を作ったりしています。

また、空き物件が山ほどあるので、一つひとつ改装し、お店にしています。

▶酒粕を再利用した「発酵マヨ」を生産。セレクトショップとして全国の逸品もそろう「SANABURI FACTORY」（海と – 稲とアガベのWEBメディア）

一昨年（2023年）の8月に立ち上げたのがラーメン屋（らーめん「おがや」）です。

なぜラーメン屋を立ち上げたかと言うと、ラーメン屋がなかったからです。

ラーメン屋のない街に住みたくないですよね（笑）。

僕には4歳の息子がいますが、中学生になった時、「こんな、ラーメン屋もない街に生みやがって」と言われたくないので、ラーメン屋を作りました。

地域の子どもたちは、「こんな何もない街は出て行け」と言われて育ちます。

そうやって育てられると、本当に何もない街にしか見えなくなります。

でも僕にとっては、この街には、「何もないこと」があるのです。

だからこそ、チャレンジするための余白があります。

僕がチャレンジする姿を、地域の子どもたちに見せてあげたい、そんな思いで、なくなってしまったものを取り戻すためにラーメン屋を作りました。

一風堂がメニューを監修

岡住　そんな思いを語っていると、一風堂が手伝ってくれることになりました。

会長の河原（成美）さんが僕たちのお酒を飲んでくれて、めちゃくちゃ感動して、フランスの全店舗で提供しろという指令が出たのです。

それで今の社長の山根（智之）さんとつながった時、一切在庫がなくてお酒は出せない状況だったため、「お酒は出せないですが、ラーメン屋を立ち上げたい」と言うと、一緒にやろうと言ってくれました。

それで、塩ラーメンと醤油ラーメンを作ってくれたのです。

建物を改装して博多一風堂の塩ラーメンと醤油ラーメンを提供する店を作った結果、行列ができるラーメン屋になりました。

▶ラーメン店のない秋田県男鹿駅前に「一風堂」レシピ監修「稲とアガベ」のラーメン店「おがや」7月18日（火）11:30よりオープン 2023年7月14日（PR TIMES）

徒歩で歩き回れる8つの拠点をオープン

岡住　僕たちが事業を立ち上げるスピードよりも街が衰退していくスピードの方が速く、例えば、宿がなくなりました。

宿がないと、男鹿を訪れるためには、秋田市に宿を取って、電車で日帰りになります。

それは非常にもったいないので、ここにいる荒木さんと一緒に宿を作りました。

さらに、鉄工所を改装して酒粕スピリッツの蒸留所（早苗饗（さなぶり）蒸留所）を先月オープンし、新商品をリリースしました。

▶秋田・男鹿にスピリッツ蒸留所 酒かすのアルコール活用（日本経済新聞）

今、NEWLOCALの石田さんとホテルを作るプロジェクトを行っています。

もともと簡易宿だった建物を改装し、「ホテルかぜまちみなと」を4月にオープンしました。

▶︎秋田県男鹿市の船川港船川エリアの「旧船川港湾労働者会館」をリノベーションしたサウナと町中華が楽しめる宿泊施設「ホテルかぜまちみなと」を6月6日（金）にグランドオープン

また、もともとスナックだった建物を、名前はそのままで改装して新たなスナック（シーガール）も作りました。

丸3年で、このエリアに新たに8つの拠点を作りましたが、これらは全て徒歩圏内です。

徒歩圏内の景色が変わると、地域の人たちもチャレンジしてくれるようになってきました。

例えば、3軒の飲食店や旅館が復活しました、が、その間に銀行と信用金庫が1件ずつ支店を撤退しました（笑）。

ただ、金融機関もサポートしてくれていて、僕ら2人の個人報酬も含めてですが、総額6.5億円をゼロから借入することができました。

そして大きな企業も手伝ってくれるようになり、移住者もたくさん生まれました。

1日目は街歩き、2日目は物件活用をグループで議論

岡住　今回のツアーは、 今日話したことを全部見に来てくださいというツアーです。

1泊2日で、1日目はラーメンを食べて、街を歩いて、僕たちの作った宿のサウナに入って、2日目はワークショップをしたいと思っています。

ワークショップは、実際の物件を活用して、どんな拠点にするかについて考えるグループワーク形式です。

もともとENEOSの保養所だった築90年の建物がありますが、最近購入しました。

この建物をどう活用していくかについて、具体的に考えてもらいたいと思っています。

決して、買ってしまった建物の用途を考える暇がないので皆さんに考えてもらおうということではありません（笑）。

泊まっていただく予定の宿には、サウナがついていて、目の前に入江の景色が広がる水風呂もあります。

ぜひ、遊びに来てください。

サケづくり体験や、耕作放棄地を開墾した田んぼでの農作業も、オプションとして考えています。

ツアーの三大特典を発表

岡住　ICCツアーの特典を3つ用意しています、まず稲とアガベ飲み放題です。

また、僕らのコーポレートシェフである井上 豪希という、スペシャルシェフを招聘します。

昔、寒風山という山でレストランイベントをしたことがあり、今年それを復活させたいと考えています。

8月に来ていただき、寒風山で美味しいご飯を食べていただければと思っています。

3つ目の特典は、借金の仕方セミナーです。

（会場笑）

個人保証で、僕が5.5億円、齋藤さんが1億円、遼さんが4億円ほどの借金をしています。

この写真は借金をする前のもので、2年前、会社を立ち上げた頃です。

（会場笑）

ほがらかな顔をしていますよね。

で、アフターが今の僕たちです、借金をすると覇気をまとうという（笑）。

顔つきが変わってきますので、皆さんも学んでいただければと思います（笑）。

辺境、男鹿から革命が起こる！

岡住　僕たちは3年間で、ありとあらゆることを、とにかく急いで行ってきました。

本当に、何もない、ゼロからのチャレンジでした。

このチャレンジは、本当に多くの人に勇気を与えるのではないかと考えています。

ありがたいことに、男鹿に来てくれる多くの人に、勇気をもらったと言っていただけています。

今、何かに悩まれている方も、男鹿に来ていただければ、悩みを吹っ飛ばすくらいのチャレンジを見せつけますので、ぜひお越しください。

最後に、「革命は辺境から」という言葉があります。

勘違いかもしれませんが、今、この男鹿から革命が起こる気がしています。

辺境から起こる革命を皆さんに体感してもらいたいですし、来ていただき、当事者になっていただきたいなと思っています。

以上です、ありがとうございました。

荒木　素晴らしいプレゼンテーション、ありがとうございました。

（続）

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編集チーム：小林 雅／小林 弘美／浅郷 浩子／戸田 秀成