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4. 生身の人には心を閉ざし、分身ロボット「OriHime」には心を開く高齢者

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「コミュニケーション型ハードウェア/サービスは今後どう進化するのか?」7回シリーズ(その4)は、ハードウェアの存在がもたらす、コミュニケーションの増加について。子どもに対する親の関与度が上がったり、心を閉ざした高齢者に効果が出ているそうです。博報堂小野さんが語る行動心理学の興味深いエピソードもあります。ぜひご覧ください!

▶ICCパートナーズではコンテンツ編集チームメンバー(インターン)の募集をすることになりました。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。

ICCカンファレンス KYOTO 2017のプラチナ・スポンサーとして、レノボ・ジャパン株式会社様に本セッションをサポート頂きました。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18日〜21日 福岡市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2017年9月5〜7日開催
ICCサミット KYOTO 2017
Session 1D
コミュニケーション型ハードウェア/サービスは今後どう進化するのか?
Supported by レノボ・ジャパン

(スピーカー)
青木 俊介
ユカイ工学株式会社
代表

小野 直紀
株式会社 博報堂
クリエイティブディレクター / プロダクトデザイナー

梶原 健司
株式会社チカク
代表取締役 兼 共同創業者

吉藤 健太朗
株式会社オリィ研究所
代表取締役CEO

(モデレーター)
尾原 和啓

「コミュニケーション型ハードウェア/サービスは今後どう進化するのか?」の配信済み記事一覧


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最初の記事
1. 注目の「OriHime」「BOCCO」「まごチャンネル」「Pechat」などの創り手が一挙登壇!

1つ前の記事
3. 居場所とは、“用がなくても、そこに居てもいい”ということ(ロボット研究者・吉藤オリィ)

本編

小野 コミュニケーション・ハードウェアの良いところとして、「コミュニケーションの量が増える」ことも挙げられると思います。

僕はPechat(ペチャット)を作って皆に使ってもらっていますが、人によっては直接親子でしゃべればいいじゃないか、という方もたくさんいらっしゃいます。

もちろん僕もそれが前提だとは思っていますが、しかしPechatを使うからといって、親子のコミュニケーションの量が減るわけではないんですね。

むしろ、調査をしている途中ではあるのですが、子どもに対する親の関与度が上がるという結果が出ています。

株式会社 博報堂 クリエイティブディレクター/プロダクトデザイナー 小野 直紀氏

要するにガジェットを、つまりデバイスを通したからといって、そのデバイスを通してでしか話さなくなるというわけではないのです。

単純に今までとは違う形のコミュニケーションが増えている分、親子、もしかしたらまごチャンネルだったら、家族とおじいちゃん、おばあちゃんというところの関与度が増えていっているのではないかと。

BOCCOにしてもそうだと思うのですが、その関係両者の間にあるインターフェースが増えていくことで、そこに生じる関与度を増やすということを実現できているのかなと思っています。

人は「アバター」を介せば素直に話せるようになる?

尾原 そうですね。

実はアバター性というのはもう一つ大事な観点があって、段々暴走しているので止めていただきたいのですが……。

青木 アバター性!(笑)

尾原 TEDというトークカンファレンスで、「裸足の大学」についてのプレゼンがありました。

▶以下よりご覧いただけます。

これは、アジアやアフリカの発展途上国の人々にいろいろなテクノロジーを教えて、彼らが自立できるようにする学校です。

面白いのですが、争いがあった時にどうするかを学ぶために、人形劇をやるんです。

何か争いがあった時に、それぞれが自分の人形を置いて、人形同士で議論をさせるんですね。

そうすると、結局人間ってお互いにしゃべっていると、段々と「事」に向かうのでなくて、「人」に向かい出して、人を攻撃するようになるんですよ。

でも1回、自分の前に人形というモノを置くと、モノを介してしゃべるので、より「事」だけを、より素直にしゃべれるようになったそうです。

そのようなアバター性というのは、先ほどのぬいぐるみを介したコミュニケーションでも見られたと思います。

多分さっきのプロモーションビデオの中で一番大事なのは、ぬいぐるみを通してだったら「パパ好き?」と聞けることなのではないかと(笑)。

これって意外と大事なことだし、娘の嬉しそうな反応を見ただけでも、このデバイスを買ってよかったと思えますよね。

行動心理学の側面からコミュニケーション・ツールを考える

小野 今のアバターの話に繋がるか分かりませんが、最近Pechatを使う中で、行動心理学というのを知りました。

普通の心理学はカウンセリングをして「ではこういうことですかね」と話を聞くことが中心になるそうです。

一方、行動心理学というのは、話を聞いて「ではこういう行動をしてください」という対処法を与えるものらしく、その対処法を与えることで、ある課題というのが解決されていくということらしいのです。

たとえば僕のお気に入りの話なのですが、「どうしても夫を殺したい」と思うほど憎んでいる妻がいました。

それに対してカウンセラーは、「ではあなたはこういう行動をしてください」と話すわけです。

カウンセラーが何を言ったかというと、「夫の首を絞めて殺すつもりで、夫の肩を揉んでください」ということでした。

夫は、自分が妻に嫌われていることにもちろん気づいています。

妻がそれを実践すると、夫としては「なんなんだ、今日は?」という風になりますよね。

しかし、妻としては、その夫への愛情でやっているわけではなくて、カウンセラーに言われたことをやっただけです。

けれども、夫としてはいいことをやってもらっているから、会話が生まれて、最終的には仲良くなるみたいなことに結びついたらしいんです。

そうすると、今の行動心理学みたいな話がPechatを介しても生まれるのではないかと。

たとえば、Pechatというぬいぐるみを介して子どもとコミュニケーションすることで、直接やり取りするのとは違う結果を引き出すことができるのではないかと考えて、今は少しそのような研究もやっています。

もう一つ行動心理学に絡んだ話があります。

ある子どもが不登校か何かの理由で自信を無くしているような状態でした。

その親とカウンセラーのような人が交換日記をするんです。

交換日記には子どものいいところとかを書くんですね。

「今日はこういうところが良かった」とか。

子どもには、何を書いているかは分からないようにしているのだけれど、何か交換日記をやっているなというのは分からせるようにして、ある日、その日記を机の上に置いておくと。

置いてあった交換日記を、子どもが覗き見るんですね。

するとそしてお父さん、お母さんはこんなに自分のことを思ってくれているというのを知るわけです。

でもそれは直接伝えるのではなくて、本当は見てはいけない日記を見ることによって、より深く実感する効果があるらしいのです。

今のは単なる交換日記ですけれど、今皆さんが作られているものなども、そうした行動心理学に基づいた使い方、と言ってよいのか分かりませんが、そのような使い方で、普通にしゃべるのとは違うコミュニケーションが取れるようになっていく可能性があるのではないかなと思いました。

尾原 オリィさんも反応していましたけど、いかがでしょうか。

生身の人に心を閉ざし、OriHimeに心を開く高齢者

吉藤 そうですね、今の話に近い面白いことがありました。

このOriHimeって小動物感があるじゃないですか。

なので、ご高齢の方の前にOriHimeを置いたりすることも結構あるんですよ。

このOriHimeというのは、遠隔操作をして、孤独を感じている人が遠隔操作をして賑やかな場所にいるように感じられるというコンセプトなのです。

高齢の方もスマホなどを使ってこれを遠隔操作できるのですが、それをやるのはやはり難しいので、仮に反対にしてみようということで、ご高齢の人々の前にこれを置いたんです。

高齢者の方々の中には老人ホームに入る方が多くいらっしゃるわけですが、高級な老人ホームには、元社長であったりとか、元校長先生であったりと、地位の高かった人が多くいらっしゃいます。

そのため、生身の人間が前に立ってしゃべろうとすると、とにかくブスっとしていて、全然リアクションを返さないんですね。

結果、仲良くなるためのアイスブレーキングにすごく時間がかかったりするんですね。

カウンセラーは回想療法を彼ら、彼女らにしたいのに、断られてしまうんです。

そこでOriHimeを代わりにおいて、そこから「ねぇねぇ、おばあちゃん」という風に、普段言わないようなことを言ってみると、割とそこのアイスブレーキングの時間をかなり短縮することができました。

写真中央・株式会社オリィ研究所 代表取締役CEO 吉藤 健太朗氏

さらにOriHimeは、頭を後ろにグっと倒してやると、パンっと転ぶように作っているんですよ。

起きられないので、「起こして!起こして!」と言わせたら、おばあちゃんが起こしてくれたんですよね。

そうしたらですね、その瞬間からおばあちゃんとすごい会話が弾むようになりました。

おばあちゃんにとっては、万能で何でもできる、と言うと言い過ぎかもしれませんが、肉体的には健康的な若者がドーンと目の前にいると、心を開きにくいんですね。

保護したくなるような感覚のものが目の前にいて、自分が起こしてあげたり、何かしてあげたりすることで、立場が対等化したのです。

「愛嬌」に対する心の余白がコミュニケーションを生む

尾原 それって行動心理学で言うと、メタ認知という話と、仮面効果という話だと思うのです。

結局、人間というのは「自分がこういうキャラだ」というものを一度まとってしまうと、なかなかはがしにくくなってしまいます。

それが別の形でもいいから、たとえば、先ほどの「絞め殺してやる!」という気持ちで、全く逆の肩を揉むという愛情行為をやることで、キャラをはがすことができると。

人間というのは悲しいから泣くのではなくて、涙を流しているから悲しくなるし、笑顔が出るから笑うし、怒っている顔をするから怒るのであって、本当に向かいたい表情や本当に向かいたい行動を無理矢理でもいいから、いかに一回させるかということがすごく大事です。

尾原 和啓氏

そういう意味で、このようなロボットなどを利用して、そのような無理矢理プレイみたいなことをさせると、「本当の自分はこういう感情でやっている」ということに気付けて、メタ認知が進むというのがあります。

ロボットをすごく分かりやすく表現した言葉があります。

以前、NHKのテレビ番組『新世代が解く!ニッポンのジレンマ』に出た時に、ロボットアーティストの近藤那央さんが「ロボットというのは、いい意味の下等生物感がいいですよね」と言っていました。

ともすると、ちょっとコケてしまうようなところが愛嬌を生むし、やはりシャープのロボホンもわざと「5歳児」という設定にしているんですよね。

愛嬌を生んで、それによりコミュニケーションが生まれるようにしている、隙間を作れるにしているというところがあって、それはすごく大事なところかなと思いますね。

ということで、コミュニケーション型ロボットの話やサービスの話が大好きで、ここばかり掘っていますとですね、多分ここに来てくださった方のニーズに答えられないのではないかと。

Amazon Echoなどについて、この4名の登壇者がどう思っているかとか、その辺の話も聞きたいと思います。

すいませんね、僕の趣味ばっかりで掘ってしまってね(笑)。

ですので、ちょっとだけ話題を変えさせてもらってもいいですか?

(続)

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続きは 5. Google Home、Amazon Echo、LINE Clovaなどのスマートスピーカーは本当に“スマート”なのか? をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/横井 一隆/尾形 佳靖/浅郷 浩子/戸田 秀成/鈴木ファストアーベント 理恵

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